73.アルジャン社にて~碧の不安とネブラ襲来~
碧は桐人の不穏な発言に危機感を抱いていた。
そんな矢先、深刻な顔をしている宗一とウヌスとトレースに遭遇、理由をきけば──
桐人兄さんのどこか不穏な発言から数日後。
ウヌスさんとトレースさん、宗一お爺ちゃんがため息をついていた。
「どうしたの、三人とも」
「何があった?」
私は不安を覚えながら尋ねると、ノウェムさんも表情を曇らせた。
「ドゥオがですね」
「あの馬鹿がな」
「ドゥオじゃがな」
あ、また何かあったんだと即座に理解する。
「彼奴整備には向いておらん」
「直ぐに飽きて碧様のご家族のプログラムをいじろうとする」
「え」
「いつも未遂でおわるがの、桐人のセキュリティが働いて──」
『えー、パトリのロボットの思考改造をしようとするおバカさん達、残念でした! 俺のセキュリティを突破することなんてまず不可能でーす! おととい来やがれ!』
「──と、いう風な警告音声が流れて」
「プログラムをいじろうとした本人が電撃で吹き飛ばされます」
「ドゥオ……もう他の仕事任せる?」
これ以上問題を起こされても困る。
何より桐人兄さんのそういう警告音出すような行為をしているのが一番問題だ。
クラレンスたちは思考を調整されないように、がっちりと桐人兄さんのセキュリティシステムでガードされている。
もしこのガードを突破するという人物がいるとすれば──
それは桐人兄さんと同レベルかそれ以上の頭脳の持ち主になる。
そんな人物もしいたら──
考えただけでぞっとした。
大事な家族を兵器にされるなんてたまったものではない。
不安を抱きながら思案していたら、通信機がなった。
「はいこちらパトリ──」
『はーい! こちら桐人お兄さんですよー!』
「切っていい?」
かなり深刻になやんでいた。
なのにこんなに脳天気な声をかけられたからそう返してしまった。
『どうしたんだ? なんか凄い深刻そうな声だぞ?』
「……実は──」
私は事情を説明した。
『あ゛ードゥオのアホんなことやってたのかよ、アホかアイツ?』
「うん……」
『確かにその不安、分からないでもないな』
「え?」
桐人兄さんの言葉に私は小さく驚きの声を発した。
『いいか。本来は内密案件だったが話す。俺と同レベルの頭脳を持つ奴がネブラにいる。そいつのせいで俺は散々苦労させられてきた』
「じゃ、じゃあ……」
『だから、依頼だ。アルジャン社に来い、四人とメカニック連れて。ドゥオは留守番でも構わねぇ、いるだけ邪魔だ』
「う、うん。いつ」
『今すぐ来い』
「わ、分かった」
私は通信を切ると、整備室に向かった。
宗一お爺ちゃんたちに、クラレンスたちもいる。
「みんな、桐人兄さんから直々に依頼! アルジャン社に来るようにだって!」
「へ? 桐人から? どういう依頼なの?」
メフィストが首を傾げる。
「依頼内容は不明。とにかくアルジャン社に来るように、だって」
「……」
ノウェムさんが納得できない顔をしている。
「桐人兄さんも何か話したい様子だったの、お願い。ノウェムさん」
「……なら仕方ないな」
ノウェムさんは諦めたようにため息をついた。
「あ、ドゥオは留守番」
「ヤッター! 整備仕事から解放……」
「お前さんには宿題を置いて行く、全部こなさない限り他の事をすることは許さんぞ!」
宗一お爺ちゃんがどかっと宿題の山とも言える整備の基礎本から、練習用の基盤などを置いた。
「そ、そんなぁ~~!」
「ウヌスさんも同行をお願いできる」
「勿論」
「さぁ、みんな急いで出発よ!」
「「「「おー!」」」」
「了解した」
「了解」
「了解いたしました」
ノウェムさんも、トレースさんも、ウヌスさんも、桐人兄さんの話になるとどこか空気が張り詰める。
何かあるのかな?
そう思いながら戦艦に乗り込み、ワープを行ってアルジャン社へ向かった。
戦艦から下りると、仁王立ちした桐人と不安げな咲良ちゃんが。
「ねぇ、桐人兄さん……」
「今日は大がかりになるから俺の機械をアルジャン社に持ってきた、証拠が無かったから今まで手が出せなかった、だが個人的には確証が持てた」
依頼内容を告げずに桐人兄さんはそう言い出した。
大がかりな作業、となると──
「パトリのロボットが捕まって思考プログラムが消去されたりする可能性があるからな、そうしないための作業と──」
「部品全部対パラシートゥス用の素材に取り替えだ」
「……そりゃあ、大がかりじゃの」
桐人兄さんの言葉に、宗一お爺ちゃんが口を開いた。
「言っとくが本気モードでやるからな、ヘマするなよ。涼、トレース」
「勿論です」
「お、俺もぉ⁈」
「当たりまえだ! 手が足りないんだよ!」
桐人兄さんの怒声に、涼兄さんは半泣きになりながらトレースさんに宥められて連行されていった。
「咲良ちゃんは……」
「……今回の作業が全て終わるまでの護衛をしてるの」
咲良ちゃんの手がかすかに震えている。
私は握り返して尋ねる。
「大丈夫? 怖いの? 無理しないで……」
「う、ううん! 無理はしてないよ! ただ……」
「ただ?」
「……桐人があそこまで深刻な顔しているってことは相当な事態に発展してるんじゃないかなって……」
その言葉に私は納得できた。
桐人兄さんがあそこまで深刻な表情を浮かべることは滅多にない。普段はいつも笑っている。
私達を安心させるような笑顔ばかり見せる人だ。
だが、それが今回どこか、少なかった。
作業内容自体は私達を安心させるようだが、目的はもっと別の所にあるように見えた。
「碧ちゃんたちは、戦艦で待機して周囲の状況連絡してくれる?」
「わかった、すぐ伝える」
そう言って私達は戦艦に戻った。
何もないといいのだけどと思いながら待っていると通信機が鳴った。
スピーカーモードにする。
「はい、こちらパトリ」
『桐人だ、俺は作業しながら話すことになるが真面目な話だからよく聞け』
「うん……」
『ナノマシン・イヴ、そして俺をアダムと呼ぶ奴がいることで確信した。人工生命体「ルプス」の生き残りがいる』
私たちは驚きのあまりしばらく言葉を失った。
「え、でも全員死んだって……」
『一人、死んだのを確認してない奴がいる』
「え?」
『カイン。俺と同じ「ルプス」で、兄弟みたいな奴だった。』
『研究所の破壊原因もアイツだしな。生きてる可能性はないと思ったが、死んでるのを確認していなかったのは奴だけだ』
もし、もしそうなら──
「さ、咲良ちゃんが適合すると知ってて……」
『ナノマシン・イヴを投与した可能性が高い。その上、頭の良さは俺と同レベルと来る』
「つ、つまり?」
桐人兄さんの言葉に息がつまりそうになる。
『パトリ社のロボット連中が殺人ロボットにされる可能性があるって訳だ、今のままだと』
「‼」
頭の中が真っ白になった。
顔が青ざめる。
立っていられない。
座り込み、呼吸が乱れる。
私の大事な家族が殺されるだけでなく、その死体を利用して人を殺させるの?
止めて!
止めて止めて!
「碧様、桐人様はそれを防ぐ為に行動しておられるのです」
『そうだ、あの四馬鹿をそんな事には利用させないし、思考だって破壊させない……だー‼ メフィストじっとしてろ! は? もう疲れたから動きたい⁈』
ウヌスさんの言葉と、桐人の言葉に少し安堵した。
そしてメフィストの行動の話でより落ち着くことができた。
『ダメだダメだ! もう少し大人しくしてろ! じゃねえと、後で菓子キューブやらねぇぞ!』
「……ふふ、メフィストのこと、食べ物で釣ってる桐人兄さん」
不謹慎だが、思わず笑ってしまった。
日常という存在は非常に大切なのだとさらに理解させられた。
それから一時間後──
『よし、全員のセキュリティレベルは俺としてはMAXだ、コレを超えられたらお手上げだがな』
「やめてよ、不穏なこと!」
『はは、悪い。後は──』
戦艦の警報器がけたたましく鳴り響いた。
『敵性登録:敵性勢力ネブラのものと一致』
戦艦とアルジャン社を囲むように黒い点が無数に表示されていた。
「敵性勢力は」
『敵性勢力、推定1万』
「いちま……」
そんな勢力を、どうにかできるのか?
『碧ちゃん聞こえる⁈』
咲良ちゃんの通信が入って来た。
『7割くらいならたぶん私一人で何とかできる、問題は残りの三割! これをお願い!』
「感謝する、3千なら何とかなる」
「碧、いけるか?」
「うん!」
私達はパワードスーツを装着し、それぞれの戦場へ飛び出した──
ドゥオのやらかしと桐人の何か確証を得た言葉。
それは本当にそうなのか、まだ確証を持てたが、まだ何かが足りない状態です。
それを補うものがあれば良いのですが……
そして推定1万の敵を咲良はどうやって撃破するのか、パトリ社はどうやって対峙するのか。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
誤字脱字報告等ありがとうございます!
次回も読んでくださるとうれしいです!




