72.ナンバーズ~やっぱりお前か!~
碧はレティシア、ロゼッタ、グレイズに連絡を入れ、レティシアの邸宅に集まることになった。
その際ナンバーズを連れてくることを頼み。
碧は知りたかったのは「ナンバーズ」について──
「……」
その日、私はレティシアさん、ロゼッタさん、グレイズさんへ連絡を入れ、レティシアさん宅に集まることにした。
その際、ナンバーズを連れて来るようにお願いした。
本来ならば会社に来て貰いたいのだが、レティシアさんの赤ちゃんに何かあったら困るので、レティシアさんの家へ。
大勢で押しかけるのには滅茶苦茶謝罪したが、レティシアさんは私の考えを読み取っているかのような発言をした。
『知りたいのでしょう、ナンバーズについて』
そう。
だから桐人兄さんも呼び出した。
もちろん咲良ちゃんも付いてくるだろう。
咲良ちゃんに聞かせるべきかは後々判断するとして、私は念の為、被害に遭わないように宗一お爺ちゃんと兄の涼兄さんも連れて行った。
クラレンスたちは装甲車で待機してもらい、何かあればすぐ連絡をくれるよう伝えた。
さらに宗一お爺ちゃんと涼兄さんの護衛も任せた。
レティシアさんの住む邸宅へ着くと、私は言った。
「ノウェムさん、見張りお願いできる?」
「ああ、構わない」
「じゃあお願い」
「君の護衛は?」
「他の方々がいるわ」
その言葉に私はそっとノウェムさんを抱きしめた。
「貴方に聞かせたくないことだから、我慢して」
「……分かった」
もし私の勘が当たっていたらノウェムさんはショックを受けるかもしれない。
ショックを受けたら受けたで、対応はするけれども。
「おじゃまします」
「いらっしゃい」
「あの、グレイズさんは?」
「孫に会わせろとうるさいから少し黙って貰いました」
そう言って恐る恐るリビングを見ると腹を押さえてうずくまるグレイズさんが。
レティシアさんは拳を握り締めていた。
こうなるくらいのパンチを入れたんだな。
と、遠い目をしながら、私は桐人の到着を待った。
「レ、レティシア、元気そうで、な、何よりだ……」
「ええ、元気よ。デケムの健康管理のせいでね!」
じろりとグレイズさんを睨み付けた。
健康管理って、何をしたんだグレイズさん。
「もう、何度帰ってと叫んだか分からないわ……」
レティシアさんげっそりしてる。
デケムさんの健康管理、怖いなぁ。
「食べ物でも、食べられないのにコレを食べるのを推奨しますとか言われた際はブチ切れて『でてけー!』と叫んでしまったわ」
「妊婦さんあるある……」
レティシアさんの言葉に、あー、妊婦さんって確か、特定の物しか食べられなくなる時期があるって聞いたことがある。
いつ頃なのかは分からないけど。
そんな時期にそんなこと言われたら出て行けと言いたくなるか。
「おーい! 来たぞ」
来たな、ついに。
桐人兄さんが部屋の中に入ってきた、が咲良ちゃんの姿はない。
「あれ、咲良ちゃんは?」
「聞くと色々と面倒な事になるから外でノウェムと護衛してろって言った」
「ありがとう」
今回ばかりはそれに感謝した。
さて、問いただすことがある。
「レティシアさん、ロゼッタさん、グレイズさん、貴方たちはナンバーズの制作者、最初の制作者をご存じですか」
「はい、勿論」
「ええ、勿論です」
「当然だ」
私は桐人を指差した。
「それは──この桐生桐人で間違いないですね」
三人は一時無言になった。
やがて、グレイズさんが口を開いた。
「その通りだ」
「さて、桐人兄さん。聞かせて、何でナンバーズを創ったの?」
「それはもう知ってるだろう、モナル社創業者のグレイシア・キーアとその子孫を守るためだ」
「じゃあ、聞くよ。直接制作に携わったのは誰と誰?」
「ウヌスとノウェムだ」
その言葉に、レティシアさんは耳を疑うような表情をした。
「貴方なの桐人⁈ ノウェムをあんな風にしたのは⁈」
その声には怒りがこもっている。
「反対はしたが、結局俺も作った。そんな道具みたいなの創って──いや面白いかって」
「待てやコラ、今面白いとかぬかしたよね?」
私は桐人兄さんの言葉に、怒り交じりの声で尋ねた。
「面白いとは思った。だからって道具扱いしたい訳じゃねぇ」
「だったら最初からそんな言い方しないで!」
「でも、一応、何かのきっかけがあれば感情を取り戻すようにはしといたんだぜ、ノウェムの奴。レティシアたちにはできなかったけど、碧にはできただろう?」
「そういう問題じゃ──」
ガタン。
物音に振り向く。
そこには──
ノウェムさんが立っていた。
「私の感情は、すべて、つくり、もの?」
やばいと思い私はノウェムさんの所へ駆け寄り抱きしめ、顔を見合わせる。
「それは違う、その感情は、心は貴方自身のものよ。作り物なんかじゃない、貴方だけの心。そうでしょう、ノウェムさん」
「だけど碧……」
「だけどもじゃないの! 貴方の心の始まりが例え作りものだったとしても、私との間に生まれた感情は確かに本物よ。だからお願い、自分を信じて」
「……分かった、私が愛した、君が言うなら」
「ならいいの」
ノウェムさんは私の隣に座り、手を握りしめている。
やはり不安なのだろう。
「桐人兄さん、アンタ相当非人道的よ」
「いやいや、俺より俺を創った人間たちの方が非人道的だぜ?」
「?」
それから桐人兄さんは語り出した。
内容は凄惨極まる内容だった。
複数ある心臓の一つを麻酔なしで破壊し修復過程を見る。
脳の一部も麻酔無しで切除し、修復するか確認。
無重力空間に放りだし、空気などがない環境下で生きられるか確認。
海の環境を再現した場所で、深海から、一気に上昇しても破裂しないかなどの確認。
全身を大やけどさせても皮膚が下から再生するかの確認──
とにかく、色んな酷い内容が桐人兄さんから語られた。
その結果、多くのルプスが死に、生き残ったのはアダム、もとい桐人兄さんだけだったらしい。
イヴも途中まで耐えたが、心がそれについていかず、精神崩壊。
そして処分されたと。
「じゃあ、ナノマシンイヴは誰が持ってたの⁈」
「ネブラの野郎の中に関係者の血筋か何かがいると思うが……俺の悪い予感が当たってなきゃいいんだけどな」
「?」
「まぁ、それはそれとして聞きたいこと他にある」
「待って、桐人。デケムは?」
「知らねー俺手伝ってねーもん」
レティシアさんの質問に桐人兄さんはつまんなさそうに返した。
どうやら本当に関係ないらしい。
「……お、と、う、さ、ま?」
「いや、それはだな……お前の健康を思って──」
「貴方のせいで私どれほど大変な思いを──‼」
ガルガルモードになってレティシアさんはグレイズさんに説教し出した。
「グレイズの奴も馬鹿だなー、俺に頼めばもちょっと繊細な健康管理のナンバーズ作れたのに」
「桐人! そういう問題……」
「だって、セスから聞いたぜ。会って早々『お願いだから帰ってぇえええ!』って絶叫するレベルの代物だったんだろ、デケムは」
「失礼ですね、私はお嬢様の為を思って──」
「そこの思考回路をもうちょっと柔軟にできたって話だよ、俺がやってたら。なぁグレイズなんで相談しなかった?」
桐人兄さんが咎めるようにグレイズさんの名前を呼ぶ。
するとグレイズさんは──
「いや、私達でもできると思ったから……」
「千年以上経っても問題無いようには創ってあるが、それでもデケムの出来はひでぇぜ?」
なんか桐人兄さんの言い方にカチンと来た。
「だから、出来がどうとか言わないで。彼らも人なのよ」
「俺は?」
「普通の人じゃない。でも、私にとっては桐人兄さんなんだよ」
「相変わらず甘いなぁ、まぁそこが俺は大のお気に入りなんだが」
桐人兄さんがそういうと、ノウェムさんは私を抱きしめた。
「ノウェム、お前は感情が作り物じゃないかと危惧したろ、それはねぇぞ。だったら制作者──創造者の俺に刃向かうように作られねぇぜ普通は」
「──桐人兄さんは反抗できなかったの?」
「残念ながら」
「じゃあ、誰が桐人兄さんをここまで──」
「その話はおいおいな。こう言うセリフがある『今はまだ語るべき時ではない』ってな」
「はぁ……」
語るべき時ではないのなら、いつが語るべきときなのだろう?
「取りあえず、今日の話はここまでだ、俺は帰るぜ」
「あ、ちょっと待って!」
「何だ」
桐人兄さんが気だるげに言う。
「ドゥオは何であんな問題児になったの⁈」
「それは俺が知りてーわ。ウヌス以降、ドゥオからオクトーまでは俺は性格づけにかかわってねーもん」
「……当時の担当者のみが知るってことか……」
「そゆこと」
私は色んな意味でまた頭が痛くなった。
ナンバーズの創造者は桐人、しかし性格に関して手を下したのはウヌスさんとノウェムさんの2人。
しかもノウェムさんはグレイズさんの要望によってああなっていた。
レティシアさんも聞きたくはなかっただろう。
「お父様、今日も我が子らには会わせませんよ」
「何故だー!」
「オーク! お父様を連れて帰って!」
「はいよ、お嬢様!」
引きずられて帰らされるグレイズさんを見て、自業自得とはああいうことなんだなと若干黄昏れた。
ちなみに私はテオくんとミネルヴァちゃんに会わせて貰い、可愛い2人の寝顔をスマートフォンの写真で写すと、そのまま家に皆で帰った。
特に問題は無かったが、桐人兄さんの発言がやはりショックだったのか、ノウェムさんはその日は食事をする時も、眠る時も、片時も私から離れようとしなかった。
可愛いけど、どこか可哀想でもあった──
はい、分かってる人はもう気付いて居ると思いますが、ナンバーズの制作者は桐人でした。
そして桐人はナンバーズでそのような実験を行わずに、彼らを作れたのは自分の経験、自分を元にしたことがあることを示唆しています。
そしてグレイズ、相変わらず孫の顔を見せてもらえませんでした、多分ノウェムとデケムの件がでかいでしょうね……
ノウェムは色々とショックを受けていますが、碧がいるから大丈夫でしょう。
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