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66.ウヌスの突撃現場調査~ナンバーズについて~

ウヌスが会社にやってきた。

どうやらドゥオの現場調査に来たようで──



「ウヌス、なんで今日来た?」

「現場観察だ、主にドゥオの」


 その日何の予告もなくウヌスさんはやって来た。

 ノウェムさんは少し警戒したものの、その理由を聞くと納得したようだった。


「ドゥオはどこにいる?」

「整備室」


 ウヌスさんは整備室の場所を知らないため、私が案内することになった。


「……大きい扉だな。ロボット用か」

「はい」


 そう言ってウヌスさんが扉を開けた途端──

 ウヌスさんの顔面にスパナが直撃した。

 ウヌスさんはスパナを掴み静かな声で言った。


「誰でしょうか、スパナを投げたのは?」

「すまん、儂じゃ! ドゥオが真面目にやらんから我慢できず……」

「ほほぉ、ドゥオ。お前はレティシア様の仕事も十分にこなせないのか?」


 ウヌスさんは、宗一お爺ちゃんにスパナを返して頭を下げた。

 宗一お爺ちゃんは慌てて「頭を上げてくれ」と言い、自分も頭を下げた。


「げぇ⁈ ウヌス⁈ 何でお前が此処に……」

「レティシア様直々に職場調査訪問だ、お前の仕事ぶりを確認するためにな」


 ウヌスさんの出現にドゥオは明らかに嫌そうな顔をしている。

 そんなドゥオを見て、ウヌスさんは怒っていた。

 というか、直視したくないレベルで怖い!


 そう思っていたら、ノウェムさんが私の目を隠した。


「碧、君はここからは直視しないほうがいい」


 ノウェムさんなりの配慮なのだろう。


「貴様、レティシア様の命令違反だけでなく、パトリ社にまで迷惑をかけて……」

「だって整備の仕事めんどくせぇんだもん!」

「トレース、お前はどうだ」

「確かに手間はかかります、それだけやりがいがあります」


 ドゥオの言葉を聞いて、トレースさんに尋ねた。


「トレースがおかしいんだって!」

「セムは事務補助になって、美奈という女性の手助けをしているようだが、お前はそういう頭もないのか?」


 ドゥオは必死に言い訳を続ける。

 対するウヌスさんの口調には、先ほどよりも怒気が混じっていた。


「ナンバーズの恥さらしめ、此処で引導をくれてやる」

「やべ‼」


 ダン! と床を蹴る音。

 バン! と何かが叩きつけられる音。

 今度はずりずり引きずる音が聞こえた。


「ウヌス、本気で引導を渡す気か?」

「さてな」


 ノウェムさんの問いかけにどっちとも取れない声がした。


 ウヌスさんは倉庫を貸してくれといったので、貸すと──


「ぎぃやああああああ‼」


 断末魔とも取れるドゥオの声が響いてきた。


「し、死んでないよね? 生きてるよね⁈」


 怖くなってノウェムさんに確認する。


「あの声なら生きてるだろう、ただ今日は使い物にならんが」

「いや、そういう問題⁈」


 ノウェムさんの言葉に安心したけれども、同時に安心もできなかった。

 死んでないみたいだけど、断末魔みたいな声出してたんだよドゥオの奴!


「失礼、倉庫を少し血で汚してしまったので洗浄する、洗浄機はないか」

「それなら倉庫にあるぞ」

「どれか教えてくれ」


 ウヌスさん、血で汚してしまったから洗浄するって何かヤバいことしましたよね、絶対。

 そしてノウェムさん、なんでスルーしてるんですか⁈


 ノウェムさんはまるで気にした様子もない。

 ……あ、ドゥオだからか。


 しばらくして戻って来たノウェムさんとウヌスさん。


「あのードゥオは?」

「人の原型を留めていません。本日の倉庫への立ち入りはおすすめしません」

「ええええええ⁈ い、生きてるんですよね⁈」


 私がドゥオの現状を聞くと、信じられない言葉が返ってきた。

 じゃあ、ナンバーズってなに⁈

 なんで人の原型とどめてないのに生きているの?


「……ここでは何でしょうし、話をしましょう、応接室へ行きましょうか」

「アッハイ」


 ウヌスさんが私の考えを読み取ったような表情をしている。

 そして隣ではそれが分かったらしいノウェムさんがむすくれてる。


 いや、分かりやすい図だなー……


 そう思いながら応接室に入り、ソファーに座る。


 ノウェムさんは部屋に盗聴器がないことを確認すると、念入りに扉へ鍵をかけた。


「碧様はナンバーズについてどこまでご存じですか?」

「えっと、ノウェムが正式名称:新型人工生体兵器№9だって言うのだけで、人と姿は基本的には変わらないけどノウェムは特別だって……」

「ではもっと深掘りしましょう」


 深掘り、何かあるのか?


「私は正式名称、新型人工生体兵器№1ウヌスだ。百年以上前に創られたが、性能面では未だ現役だな」

「えっと100年以上⁈」


 100年以上も生きているのに驚いた。


「私共はモナル社で、モナル社を守るために創造されました。特に私とノウェムは制創造者自らが生み出しています。全ナンバーズは疑似的な不老不死の生命体であり、人智を超えた肉体を兼ね備えています」

「制作者は?」

「……残念ながら私は知りません」

「私もだ」


 何かウヌスさん、少し言いよどんだぞ?

 あと、やっぱり制作者さんはコールドスリープとかしてるのかなぁ。


「ノウェムの感情をそぎ落として創るよう要望したそうですが、創造者がノウェムにわずかな感情を残すことで、今のノウェムがいるとレティシア様からお伺いしました」

「……」


 レティシアさん、何処まで知ってるんだろう?


「……レティシアさんは、ナンバーズのことが嫌いなんですか?」

「いえ、我々は人間として扱われることはまずありません、特にノウェムはレティシア様のために体を犠牲にしてきたでしょう」

「……」


 レティシアさんがデケムさんが創られたと聞いたとき、激怒したのは嫌いなんかじゃないのか。

 単純に、ナンバーズが増えることへの後ろめたさがあったんだ。

 特にノウェムさんみたいな子は創りたくないのだろう。


「ノウェム、聞いてみるが。もしレティシア様が戻れといったらお前は戻るか?」


 え、ちょっと止めてよウヌスさん。

 そんな質問止めて。


「初期の頃の私なら戻っていただろう。」


「だが、今の私は戻らない。」


 私は不安になってノウェムさんの服を掴んでしまう。

 ノウェムさんは私にただ穏やかに微笑んでいた。


「なら問題ないな」

「「は?」」


 不穏の空気を出すだけ出しておいた、ウヌスさんは珍しく口元を歪めた。

 思わず私とノウェムさんは間抜けな声を出す。


「これで戻るなんて言い出してたら『一番守らなければならないのを理解してないおバカさんをしばき倒してきてください』と言われててな」

「レティシアめ……」


 ウヌスさんの発言にノウェムさんは額に手を当てた。


「あの、疑似的な不老不死の生命体ってどれ位で死ぬんですか?」

「負傷ですか? 流石に頭部を一瞬で完全破壊されたら死にますね、心臓も二つあるうちの両方を潰されたら死にますし」

「逆に、そうじゃなければ生きてると?」

「ええ」


 私はノウェムさんが死にづらいことに安心しつつも、ノウェムさんが無理しないように釘をさした。


「ノウェムさん、これを私が知ったからって無理はしないように」

「……分かってる」

「ノウェムさん?」


 あ、目を逸らした。

 これやらかす態度だな。


「あーあ、そんなことするなら指輪売っちゃおうかなぁ」

「‼ わ、分かっている! そんなことはしない‼」


 ノウェムさんは明らかに慌てた様子で私にいう。


「本当、大事にしてくださいよ」

「はい……」


 ノウェムさんはしょんぼりしていた。

 それを愉快そうにみているウヌスさん。


 なんか既視感があるぞ。

 どこだ?

 誰だ?


「全く、昔のお前は人形のようだったが、今のお前は可愛げがある。ドゥオへの怒りが消えてしまうほどな」

「そのように言われても嬉しくない」


 愉快そうに言うウヌスさんに対し、ふてくされたようなノウェムさんを見て、私は少し焦ってしまった。


「わー! 私の恋人取らないでー!」


 ノウェムさんに抱きついていうと、ノウェムさんは顔を真っ赤にして、ウヌスさんは一瞬あっけにとられたような顔をしてから笑い出した。


「わ、笑わないでくださいよぉ!」

「すみません、碧様。貴方様があまりにもレティシア様がおっしゃる通りの御方でしたので……」

「はい?」


 レティシアさーん。

 ウヌスさんになんて私のこと伝えたんですかー?


「『どちらも可愛らしい』とね」

「レティシア! 私の何処が可愛らしいんだ!」


 あ、ノウェムさん、可愛いと思われるのは不服なのね。


「私が可愛いかはともかく、ノウェムさんは可愛いですよ。直ぐに顔にでるし、可愛いし」

「なっ……⁈」


 ノウェムさんは口をぱくぱく動かしてから、悩み出した。


「碧様、貴方の方が上手ですね」

「伊達にこちらから告白してません」

「なるほど。さようでございますか」


 ウヌスさんは愉快そうに笑いながら、悩めるノウェムさんを見守っている。

 うーん、既視感がやっぱりある。

 なんだろう、だれだろう?


 いつか分かるかな?


 そう考えて、ノウェムさんを抱きしめる。


「そんなに悩まなくていいのよー。可愛くなかろうが、可愛いかろうが、ノウェムさんは私の一番大事な人なんだから」

「ありがとう……碧」


「いえいえ」


 私はノウェムさんの髪を撫でた。


「まだ、今のお前を見ていない他のナンバーズがいたら驚きそうだな」

「あの、他のナンバーズって」


 私が問いかけると、ウヌスさんは簡単に説明してくれた。


「ナンバーズは現状1~10までいる。私は1で、ドゥオは2,トレースは3、6はセス、7がセム、ノウェムは9。残りは4、5、8の三名だな」

「へー……何をやってるんですか、残りの方は?」


「4と5はロゼッタ様の護衛と秘書を務めている」


「8はグレイズ様の護衛兼監視役だ」


 ウヌスさんはそう説明してくれた。


「仕事が忙しいようだが、ノウェムのことが気になっているようだから来る可能性はあるだろう、その時はまた宜しくな」

「はい!」


 私はそういって会社の入り口までウヌスさんを見送る。

 ウヌスさんは先日と同じお菓子とお茶を「倉庫を汚してしまったから」と渡して来た。

 そこまで気にしなくてもいいのに……。

 それよりも、ノウェムさんが倉庫に「今日中は立ち入り禁止」の張り紙と鍵をかけてしまったので、ドゥオがどうなったのか見る事はできなかった。


 翌日げっそりしてるドゥオが「すみません今日は休ませてください、お慈悲を……」といってきたので休ませてあげた。

 ノウェムさんは「あれくらいぐちゃぐちゃにされたなら今日いっぱいはグロッキーだろうな」とか言っていた。

 ドゥオは一日中青い顔をしていた。

 やっぱりウヌスさん、怖い人だと思った。







前回正式登場したウヌスの再登場です。

現場視察ですが、ドゥオのやらかしでスパナが顔に直撃するという事態に。

宗一に怒りを向けず、宗一をそこまで怒らせたドゥオ、人の原型を止めない姿にされたそうです。

それでも生きてるからナンバーズってやべぇんだなって思ってください。

またそんなナンバーズの基礎を作った人物もヤバいと思ってください。


ここまで読んでくださりありがとうございました!

誤字脱字報告等ありがとうございます!

次回も読んでくださるとうれしいです!

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― 新着の感想 ―
あああああああ!!今日も!!ノウェムさんが!!可愛くて!!ニヤけが!!止まらない!!ありがとうございます、わたしは作者様のノウェムさんとノウェ碧と音彩たんを見るために生きてるんですね……。そして発狂し…
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