【幕間】裏での桐人の苦悩~咲良の献身~
これはパワードスーツを制作を請け負ったという桐人たちの働きについて──
桐人の邸宅の隠し開発室にて、レティシアを狙った襲撃事件から帰還した直後だった。
「レティシアの奴~~! こんな短期間で今の奴よりも遥かに高性能なパワードスーツ作れとか鬼か!」
桐人は大量の設計図と素材の山の前で、頭を抱えていた。
「しかも、ノウェムのは無骨じゃなくスマートなのを作れとかデザインまで指定してきやがって!」
「桐人、落ち着いて?」
イラ立っている桐人を咲良は宥めた。
「そもそも言い出したのは桐人でしょう?」
「あれは俺から言い出したように見せただけ! 出産直後に依頼が入ってきてたんだよ!」
「まぁ……」
桐人の衝撃の言葉に、咲良は驚いていた。
言い出したのは桐人だと聞いていたが、実際は逆だったとは。
「あ゛ー! デザインが決まらない! 俺デザイン既存の奴流用するほうが得意なんだよ! 咲良、一応書いた奴あるから選んでくれ!」
「わ、私⁈」
「もうデザインを考えるのは疲れたー! 俺は休む!」
デザインの選択を任された咲良はうろたえた。
しかし桐人はそれを無視するように机へ突っ伏し、動かなくなった。
「うーんと、えーと、コレは無骨すぎ、これはちょっと体にフィットしすぎ……うん、ノウェムさんにはこれかな? で、碧ちゃんは……可愛いのがいいよね!」
嬉々としてデザインを眺め、目を輝かせながら一枚一枚めくっていく。
「コレは無骨、コレは魔法少女? 何か振り幅が──あ、これがいい」
デザインを二つ決めた咲良は桐人の肩を叩く。
「桐人、決めたよ」
「マジか⁈」
桐人は飛び起きた。
それをみた咲良はあきれた様に笑い、二つのデザインを渡した。
「こっちの白くてスマートなのがノウェムさん、でこっちの可愛いのが碧ちゃん」
「ノウェムはいいが、碧は納得するかぁ?」
「女の子だもん、可愛いのが似合うよ!」
桐人は二枚を何度も見比べた。
「……咲良、お前センスあるじゃねぇか」
指定されたデザインを見て桐人は納得する。
咲良はにっこりと嬉しそうに微笑んだ。
「よっしゃ! じゃあ作るぞ!」
「頑張ってね!」
「おう!」
ようやく作る段階に入り、気力が戻った桐人に、咲良はエールを送った。
咲良は元気になった桐人を見て安堵して部屋から出て行った。
その後、耐久テストや性能テストを経て、二つのパワードスーツを渡した桐人だったが、碧の反応は予想外でもあり、同時に予想の範囲内でもあった。
だから桐人は、なんとなく納得して帰路についた。
「碧ちゃん、気に入らなかったのかな……」
「本気で嫌ならたたきつけてるよアイツ、何だかんだで気に入ってはいるんだろう?」
「そ、そうかな……」
パトリからの帰り道、咲良は自分の選んだデザインにちょっと罪悪感を感じているようだった。
それを見た桐人は宥めるように言った。
その言葉に咲良はすこしだけ安心した様子だった。
すると通信機が鳴り響いた。
「はーい、こちら徹夜続きの桐人ですがぁ⁈」
通信してきた相手が分かっている様子で、桐人はやけっぱちになって声を出した。
『あら、ごめんなさいね。桐人』
「本当だよ! いい加減俺を寝かせてー」
まずは謝罪の言葉を口にしたレティシアが通信の相手だった。
桐人は目の下のクマが見えないことを理解しながらも恨みがましく言うが──
『あのね、ドゥオが何かしたとき、ノウェムが激怒したのを止めるのにトレースのも作ってほしいのよ。あ、デザインはノウェムと同じでいいわ』
「ハァ──⁈」
レティシアのお願いに、桐人は信じられない言葉を聞いた様な声を上げる。
咲良はそんな桐人の様子を見ておろおろしている。
「いつまでだ⁈」
『今週の土曜日の早朝までにはトレースに渡して欲しいの』
「時間ねぇー!」
桐人の問いかけにレティシアはほのぼのとした口調で答える。
桐人は発狂しそうな声で絶叫する。
「俺は帰る、今すぐ帰る! 連絡はするな以上!」
桐人はそう言って通信を切って完全にオフの状態にしてしまった。
咲良の腕を掴み、そのまま走り出した。
「き、桐人。どうしたの⁈」
「レティシアの奴俺に、もう一体分作れって言ってきたんだよ! あ゛──‼ 俺の睡眠はいつ来るんだ!」
完全に桐人が頭を抱えていることに困惑し尋ねる咲良。
それに頭を抱えながらも歩みを止めないまま桐人は答えた。
「……耐久テストと性能テスト私やるから仮眠してていいよ」
「いいのか?」
咲良の発言に、桐人は足を止めて振り返った。
「うん、一時間くらい仮眠できれば復帰できるでしょう?」
「良し、じゃあ行くぞ、振り落とされるなよ!」
そう言って桐人は咲良を抱きかかえる。
背中からめきめきと服を破って機械の翼が生える。
「桐人スピードおとし……きゃー!」
戦闘機を超える程の猛スピードで桐人は自宅へと戻っていった。
「もう、あんなスピード出さないで!」
桐人の自宅に到着するなり、咲良は大声で怒った。
「悪い悪い……ハイテンションになってな」
桐人はばつの悪そうな顔をした。
桐人の自宅は少し広めの一軒家に見えるが、地下には防音等様々な物で作られた部屋が複数ある。
入れるのは桐人と咲良だけだ。
桐人と咲良は家に入り鍵を閉めると、トイレの個室の前に立つ。
桐人が鍵を差し込むと、トイレの個室ではなく、小さなエレベーターになっていた。
二人はそこに入り、下へと移動する。
すると開けた空間があり、扉が13個並んでいた。
部屋は円状になっていた。
その部屋の一室に桐人は入った。
製作所と書かれており、咲良は外で30分ほど待っていた。
「おらぁ! できたぞ! 念の為予備として作っていたフレームを流用し作っておいてよかったわ、マジで!」
桐人は血走った目で出てくると、テスト部屋と書かれている部屋に入った。
パワードスーツをマネキンのようなものに装着させる。
「後は任せた!」
そう言って桐人はソファーに寝っ転がり爆睡し始めた。
「……本当、大丈夫かな」
咲良は桐人を心配そうに見てから装置を起動させた。
一時間後──
「桐人、終わったよ」
「ふぁあああ……終わった? 良し、じゃあ手直しして提出だ!」
そう言って、部屋の外に出た直後通信機が鳴った。
「はい、こちら桐人ですがぁ⁈」
『ああ、桐人言い忘れたことがあるんだけど、パワードスーツは直接トレースに渡してほしいの』
「いや、別にいいが、どうした?」
ヤケになって出た桐人に対して、穏やかにそれでいて念を押すようにレティシアが喋ってきた。
それに桐人は首を傾げる。
『ノウェム達に少し時間をあげたいの、だから金曜日の夜から土曜日まではあんまり関わってほしくないの』
「あー……うん、善処する」
桐人は何かを察したらしく言葉を濁した。
「どうしたの桐人?」
「ん? このパワードスーツは直接本人に渡してほしいって」
「それだけ?」
疑問に思う咲良に、桐人は内容を深くは話さなかった。
きっと勘づくだろうと思ったから。
そして土曜日の朝パトリに来た咲良と桐人。
トレースが会社の入り口で待っており、彼にパワードスーツに必要なブローチと時計の二つを渡した。
「お手数おかけします」
「おお、ところで社員連中は?」
「宗一さんは早々に酒を切り上げてまだ眠っております、涼様は飲み過ぎて現在進行系でトイレにこもっています」
「わ、私見てくるね」
「おう」
トイレの方に行く咲良を見送って、桐人は問いかけた。
「レイジングたち『ロボット』連中はどうしてる?」
「ガンツ様の余計な一言によって酒の効果も吹っ飛んだらしく扉を開けようとしています……」
おそらく扉とは碧とノウェムの部屋の扉だろう。
最近物騒だし、強化したいし、ついでに出歯亀もしたい気持ちで向かった。
「あかねぇえええ!」
「なんと頑丈な!」
「もー!」
「お前さんら、やめとけって」
扉を開けようとしているガンツ以外の「ロボット」達を見て、桐人はため息をつき、扉を蹴り壊した。
その瞬間、クラレンス達が絶叫した。
──裸で抱き合っているだけじゃねぇか──
あまりにも予想通りの光景だった。
──……こいつら、本当に初心だな──
と黄昏れつつ、無神経に的確なことを言ったことをノウェムに謝罪した。
我慢しているノウェムを見て成長したなぁと思ったが、ドゥオの直球発言によってブチ切れたのをみて思った。
──あ、やっぱり変わってねぇな──
──レティシアに追加料金を請求してやろう──
──睡眠時間込みで請求だ──
桐人は本気でそう思った。
桐人が言い出したようにみせて、実はレティシアから依頼を受けていたという話。
しかもタイムリミットは短い。
デザイン指定も一部入ってる、桐人も「やってらんねー‼」になります。
しかも、それを送りに行った時、追加注文もはいり桐人もやけくそ、咲良のフォローがなかったら多分色々ぶん投げてたでしょうね。
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