63.碧の暴露とドゥオの余計な行動~ノウェムの本心~
翌日、トレースから桐人からの分厚いパワードスーツの説明書を渡されるが、ノウェムに奪われる碧。
ノウェムはそれに全て目を通し説明する。
桐人のパワードスーツを褒めるとノウェムが嫌そうな顔をし──
翌日、社長室にトレースさんがやって来た。
「碧様、忘れておりました。桐人様から説明書が」
「パワードスーツの?」
桐人兄さんから貰って忘れていたもので説明書となるとパワードスーツかな?
そう思って問いかけるとトレースさんは頷いた。
「見せろ」
「破かないでくださいよ」
むすっとした顔でノウェムさんが凄い勢いで頁をめくる。
本当に読めているのだろうかと思ったが、最後まで目を通したらしく、ノウェムさんはトレースさんに分厚い説明書を渡した。
「碧、アイツが説明しなかったことを簡潔に言うぞ」
「うん」
ノウェムさんの言葉に私は頷いた。
「あのパワードスーツは強力だが、相手の強弱も読み取ってそれで力加減をしてくれる能力が搭載されている。また戦艦から離れている時自動で戦艦の位置を特定して帰還させる機能も搭載されている。宇宙空間でも適用されるし、空気も自動生成されるらしい」
「なるほど、どっちも便利だね」
と言うと、ノウェムさんはむすっとした顔をする。
もうこの困ったちゃんは。
「ノウェム、あまり碧さんを困らせると本当にドゥオに碧様の護衛を任せますよ?」
「ぜっっったいに嫌だ!」
トレースさんの言葉に、心底嫌そうな顔をするノウェムさん。
ドゥオが嫌いか。うん、私も嫌いだ。
「トレースさん、私にも護衛を選ぶ権利はあります、その場合はトレースさんにお願いをします」
「碧様がそうおっしゃるなら」
呆れた表情で私がそう言うと、トレースさんは丁寧に会釈をした。
それを見たノウェムさんはうろたえ始める。
「あ、碧⁈」
「私は碧様のご意思に従います」
「やめろ! 碧は私が護衛する!」
ノウェムさんは机まで早足で来てトレースさんから私を引き離す。
椅子がガチャンと倒れた。
ふーふーっと獣じみた呼吸をしている。
「分かったなら! 今後あんまり桐人兄さん関係で困らせないで欲しいの!」
「分かった、桐人は嫌いだが、我慢する、だから──」
ぎゅうと私を抱きしめて離さない。
「あのね、トレースさんも本気で言ってる訳ないじゃない」
「そうですよ、貴方が碧様を困らせているようだから言ったまでです」
ノウェムさんはその言葉を聞いてまたむすっとした。
「だからと言って言って良いことと悪いことがある……」
「そうしなければ『今』の貴方は言うことを聞かないでしょう?」
ノウェムさんはしょんぼりし始めた。
「別に責めている訳では無いですよ、ただ貴方があんまりにも焼き餅を焼いているから碧様が困ってらっしゃる」
「……」
焼き餅、まぁかわいく言えばそうなるか。
でも、事態はもっと面倒臭い。
「レティシア様から貴方が桐人様に言われたことも聞きましたし、ドゥオがこの間持ってきて処分させたブツの件もありますしね」
「桐人のは今は我慢できる、ドゥオは今我慢ができなくなりつつある」
最近はしょっちゅう抜け出しては、ノウェムさんにちょっかい出してトレースさんに引きずられて整備室まで連れ戻されてるんだよな。
その上で宗一お爺ちゃんとトレースさんにダブルで叱られてるんだもの懲りないなぁ。
それにしても、ブツとはなんぞや。
「ねえ、処分したブツって何?」
「碧様には言えません」
「同じく」
二人とも気まずい顔をしている、どんなブツだろう。
私は頭をひねった。
……そういえば。
兄貴のエロ本から得た知識を総動員させる。
ピコンとひらめいた。
「あ、アレだ! 多分女性同士で性行為──」
「「ストーップ‼」」
言おうとしたら、制止され、ノウェムさんは顔を真っ赤にして詰め寄ってきた。
トレースさんも頭を抱えている。
「どこで、そんな知識を?」
「え、涼兄さんのエロ本ジャンル別に仕分けして机の上に並べたとき」
私の言葉に二人はそろって額を抑えた。
「涼……」
「人の趣味はとやかく言いませんが、なんでそんなことに……⁇」
涼兄さんのやらかしのお仕置きを知っているノウェムさんは、誰に八つ当たりすればいいのか分からず悩んでいるようだった。
トレースさんも頭を抱えている。
そこへ、ドゥオが空気を読まずに箱を持って現れた。
「ノウェム! これならお嬢ちゃんと――」
最後まで言わせず、ノウェムさんとトレースさんのダブルラリアットが炸裂した。
「空気を読め!」
ドゥオは床に沈んだ。
「これは処分してきますが、ノウェム。くれぐれもドゥオにとどめを刺さないように」
「……ああ」
トレースさんが箱を持って出ていってしまった。
ノウェムさんはドゥオの股間を踏みつけてる、ドゥオからギャーとかうるさい悲鳴が聞こえる。
「俺のブツ使えなくする気かー!」
「とどめを刺すなとは言われたが、使えなくするなとは言われてない」
ドゥオはノウェムさんの足を掴んだ。
「それ以上やったら寝込み襲うぞテメェ!」
「やった瞬間引きちぎってやる!」
見ているこっちの頭まで痛くなる。
だが、今回の発言は看過できない。
「ドゥオ、ノウェムさんにそんなことしたらレティシアさんに報告しますからね」
「げっ⁈」
レティシアさんに報告してやる。
ノウェムさんの寝込み襲ったら私がガルガルモードでのめしてやる、その上でレティシアさんに報告してやる。
絶対に許さないんだから。
「処分して参りました」
「そうか」
トレースさんが手をハンカチで拭いながら言った。
そしてハンカチをゴミ箱に捨てた。
「ハンカチが勿体ないよ」
「いえ、それは使い捨てなので触らないでください」
勿体ないと思ったけど、使い捨てなら仕方ないと手を引っ込めた。
「俺がせっかくお前を思って買ったのに……」
「貴様の行動が余計なのだ!」
ノウェムさんまた凄い勢いでドゥオの股間を蹴り出した。
ドゥオは床に倒れて股間を手で押さえている。
「ノウェム、落ち着きなさい、見てるこっちも痛くなります。ついてない貴方には分からないでしょうが」
トレースさんがそう言って止めた。
まぁ、確かにノウェムさんには男のものはついてない。
今はそれがコンプレックスになってるのかなぁ?
「ちょっとトレースさん、ドゥオ連れて出て行ってくださいますか?」
「分かりました、行くぞドゥオ」
びくんびくんと痙攣しているドゥオの足を引きずってトレースさんは出て行った。
「あのね、ノウェムさん、話したいことが──」
「ちょっと待ってくれ」
そう言って部屋を調べだし、小型の物体が出て来た。
「ドゥオめ! あの短時間で四つも仕掛けるな!」
「……盗聴器」
私は急ぎトレースさんに連絡する。
「トレースさん、ドゥオの持ってる盗聴を傍受する機械──受信機壊しておいてくれます?」
『四つほど持っていたので壊しておきました、仕置きをしておきます。それが終わったら仕事に戻ります』
「お願いします」
予想通り受信機を持っていたので壊して貰えたようだ。
ドゥオの件が片付き、部屋に静寂が戻る。
私はノウェムさんを見る。
最近ずっと考えていたことがあった。
私は深呼吸をした。
覚悟を決める。
息を吐き出しノウェムさんに聞く。
「ノウェムさん、単刀直入に聞くけど、私とそういうことしたい? したくない?」
「あ、碧⁈ な、何を突然⁈」
そういうことの意味が理解できたようだ。
先ほどの流れから読んでくれてありがたい。
「じゃあ、私からぶっちゃけます。ノウェムさんとそういうことしたいです! できないなら裸で一緒に寝るくらいでもいい!」
「⁈⁈」
ノウェムさんは顔を真っ赤にして混乱しているようだ。
「ノウェムさん、私だって普通の女です。もちろん性行為は怖いですが、ノウェムさんとならしたい位の肉欲はあります。幻滅しますか?」
ノウェムさんは私の発言に混乱しつつも答えを探している様子だった。
私は腕を組みじっと待つ。
「わ、私も、きみとそういう、ことをして、みたい! 本当は裸で抱き合って寝たい!」
私は顔を熱くしながらも思わず笑ってしまう。
「じゃあ、今週の金曜日、一緒に寝ましょう。依頼は入れないようレティシアさんに誤魔化して頼みます」
真っ赤になって視線を泳がせるノウェムさんを見て、思わず笑ってしまった。
それでも仕事は待ってくれない。
私は咳払いをして机へ向き直った。
その夜、レティシアさんに連絡する。
「レティシアさん、ちょっといいですか?」
『はいはい、何かしら?』
電話の向こうでは順兄さんが悪戦苦闘しながら赤ちゃんをあやしているBGMが聞こえた。
「今週の金曜日の夕方から土曜日まで仕事一切入れないでください。ノウェムと仲を深めたいので」
『あら、それなら仕方ないわ。ノウェムと仲良くやってちょうだいね?』
通信は切れる。
……これ、絶対バレてる。
まぁ、いいか。
とりあえず、それまでお仕事頑張りますか。
私はベッドに入った。
すると、ノウェムさんもやって来てベッドに入って私を抱きしめた。
金曜日まであと数日。
不安や期待、怖さなど色んな感情がごった煮になりながら、それでも私は眠りについた──
今回はパワードスーツの補足と、ドゥオの馬鹿により碧がノウェムに問いかける話となっています。
碧は勇気をもってぶっちゃけます、ノウェムは真っ赤になりながら答えました。
さて、金曜日はどうなるのでしょうか?
まぁ、R18展開にはならんのですが、どうあがいてもR15までです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




