62.桐人製新型パワードスーツ~性能とかがヤバい~
休日出勤の翌日、レティシアから通信が入って来た。
応答すると、謝罪されるが、碧は余計な心配をかけまいと大丈夫のように振る舞う。
そこへ、ノウェムが入って来て要望を出すが、全力でやっていると言われ──
休日出勤が発生した翌日に自室でのんびりしていると、レティシアさんから直々に連絡が入った。
『ごめんなさいね、どうしても緊急らしかったから』
「いえ、お酒飲む前だったから良かったんですが、飲んでたら使い物になってないかもしれなかったので……」
流石に産後で体調は良くなってきているとはいえ、まだ本調子ではないレティシアさんに愚痴は言えない。
「レティシア、ナンバーズ以外の連中のパワードスーツの性能と、戦艦開発を拡張したらどうだ?」
『これでも全力でやってる方なのよ……』
ノウェムさんの言葉に、レティシアさんは困ったように言っている。
まぁ、確かにあんなパワードスーツほいほい作れたら苦労はしないし、戦艦も簡単に作れたら私たちが休日出勤する必要もなかった訳で。
『あ、そうそう』
「なんだレティシア」
思い出したかのようなレティシアさんの反応に、何か嫌な気配を感じ取ったのか眉をひそめるノウェムさん。
『桐人がパワードスーツを完成させたから、そっちに行くって』
「来るな」
相変わらず桐人兄さんの名前を聞くだけでこの反応だ。
まぁ、それは桐人兄さんが悪いんだけど。
「そもそも何故私が奴の作ったパワードスーツを着ねばならんのだ……」
ブツブツと文句を言い出してる。
『何者かが横流ししたことが発覚してるんだから、それより遥かに高性能なパワードスーツを作れる桐人に頼るのが一番なのよ』
「そ、そうだよ! 桐人兄さんお仕事には真面目だから安心して!」
レティシアさんが優しい声色で宥め、私も必死に宥める。
だけどノウェムさんは渋い顔。
そんな話をして何とかレティシアさんと私でノウェムさんを宥めていると、自室をノックする音がした。
「はーい」
扉が開くとトレースさんがいた。
「失礼いたします」
「トレース、何だ?」
「何かあった?」
入室したトレースさんは丁寧に頭を下げた。
私とノウェムさんは何があったのか聞く。
「桐生桐人様と、高橋咲良様がいらっしゃいました」
『あら、来たみたいね、じゃあ一旦通信を切るわ』
スピーカーモードだったのでトレースさんの言葉を聞いたレティシアさんは通信を切った。
ノウェムさんを見ると心底嫌そうな顔をしている。
「ノウェム、貴方が桐人様を嫌っているのは分かりますが、ここは我慢しなさい」
「それができたら苦労はせん!」
あーもー。
桐人兄さん、本当に色々余計なことをしでかしてくれたよね?
「貴方がそこまで言うなら、護衛任務レティシア様に直談判して私かドゥオのどちらかと交換しますよ?」
「何だと⁈」
トレースさんの提案に焦るノウェムさん。
私もすぐに話を合わせる。
「そうだねー、せっかく作ってくれたパワードスーツを着ないで、命の危険が増えるかもしれないのに、そんなんじゃ私も考えないとねー」
「碧⁈」
トレースさんの提案にのっかったことに驚いている。
というより、私の発言に純粋にうろたえている。
「特にドゥオでしたら、碧様に積極的に接触するでしょう」
「着用する! あいつの作ったものを着用して任務に臨む! だから私を護衛から外すな!」
トレースさん、わりとえげつない。
ドゥオは女癖が悪いって聞いたことがあるから、ノウェムさんの焦りも相当だったんじゃないかな?
まぁ、口説かれても無視決め込むつもりですが私。
「はいはい、分かったら行きましょうねー」
「お二人はグラウンドでお待ちしていると」
嫌そうな顔のままノウェムさんは頷き、私に押されながらとぼとぼと歩き出した。
トレースさんは2人がどこで待っているかを教えてくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、これも仕事です」
私がトレースさんにお礼を言うとそう返された。
うーん、仕事熱心だなぁ。
宗一お爺ちゃんが褒めるのも分かる気がする。
そしてグラウンドにいやいやモードのノウェムさんを連れて行くと、品がよく、レースや刺繍が可愛い青いワンピースを着た咲良ちゃんと、いつも通り真っ黒な服を着ている桐人兄さんがいた。
「おーい、碧、ノウェム! 持ってきてやったぞ!」
手を振る桐人兄さんに、ノウェムさんは心底嫌そうな顔をする。
そして歩みを止めた。
押しても動かない。
もう、こうなったら仕方ない。
「はいはい、ドゥオに私が口説かれていいんなら戻っていいよ!」
「それは嫌だ!」
半ば脅しのように言うと、ノウェムさんはしぶしぶまた歩き出した。
そしてグラウンドの咲良ちゃんと桐人兄さんの側まで歩み寄る。
「碧、お前も大変だなぁ」
桐人兄さんはあきれ顔で言ってきた。
まぁ、その原因の大半は桐人兄さんなんだけどね。
と思っていると咲良ちゃんがどこか申し訳なさそうな顔をしているのに気付いた。
「咲良ちゃん?」
「う、ううん、何でも、何でもない、の」
ぎこちなく言う咲良ちゃん。
桐人兄さん、何かしでかした?
いや、そんなことは無いか。
「はい、こっちの白いのがノウェム、青いのが碧のだ」
「パワードスーツのカラー?」
ブローチ型と時計型の二種類渡される。
ノウェムさんのは白を基調としたもので、私のは青を基調としたものだ。
「じゃあ、試しに装着してみろよ。どっち使ってもいいから」
私たちはブローチ型をつけて、スイッチとなっているコアを押す。
ノウェムさんのものは純白で、今までの無骨なパワードスーツとは違い、スマートな印象を受ける形状だった。
ノウェムさんは軽くシャドーボクシングをしていた。
「動きは以前より遙かに動きやすい、碧は──」
そう言ってノウェムさんは固まった。
トレースさんが鏡を持ってきて私たちの前にやって来た。
「ちょっと、失礼します、碧様こちらを」
トレースさんは苦笑いをしていた。
様子をずっと見ていたのだろうか。
そう思いつつ、鏡に映ったパワードスーツの自分を見る。
「なんじゃこりゃー⁈ これパワードスーツじゃなくて変身ヒロインの衣装じゃない⁈」
可愛さとか可憐さに振り切ったようなパワードスーツだった!
「おい、桐人、貴様どういうことだ⁈」
「大丈夫お前さんのと強度と性能は一緒だから、それに碧が可愛いの着用してると嬉しいだろう?」
ノウェムさんが桐人兄さんに詰め寄る。
桐人兄さんはヘラヘラと笑いながら言うと、ノウェムさんは唸った。
唸らないで否定してよ……
「随分と可愛らしいデザインですね」
トレースさんもそう言った。
バイザー部分は以前と同じくらいの広さだが、それ以外は――耳のようなパーツが丸みを帯び、腰の部分は後ろの部分がスカートのような形状になっていて、スタイルも女性と分かる曲線になっていた。
他にも色々と言いたいことはあるけれど、何か天使みたいにも見える、なんでこうなった⁈
私が困惑していると、咲良ちゃんが申し訳なさそうに口を開いた。
「ご、ごめんなさい‼」
「ど、どうしたの咲良ちゃん」
「き、桐人が碧ちゃん用のデザインを可愛くしたの、私が言い出したからなの……」
なんですと?
「碧ちゃん、女の子だから可愛い方がいいんじゃないっていったら桐人も『それもそうか』って」
咲良ちゃーん!
だから気まずそうにしてたのか!
ノウェムさん、このデザインになった理由が咲良ちゃんと聞いて怒るに怒れない様子だ。
「ちなみにデザインは咲良にも協力してもらったんだぜ?」
「……」
桐人兄さんのその発言にパワードスーツ姿のまま額を抑えている。
多分、色々と葛藤しているのだろう。
「……確かに似合っている。それは認める。だが性能だ。性能と強度を試すぞ」
ノウェムさんは最終的にそう結論づけて、話題を変えた。
「んじゃあこれ」
桐人兄さんは二枚の板を並べた。
「お前さんたちの最新型より硬い素材でできている、ぶち抜いてみろ」
「いや、そんなに簡単にいわな……」
バキィン!
大きな音と共にノウェムさんがパンチをした板に穴が空いていた。
「ちょっと私も試してみても?」
「いいぜ」
トレースさんがパワードスーツを装着した。
前見た敵が来ていた奴だから多分最新型なんだろう。
拳がぶつかり鈍い音が響いた。
「これは……冗談ではないようですね、最新型でもぶち抜けないとは」
トレースさんは手が痛んだらしく、パワードスーツを解除してさすっている。
「ほら、碧もやってみろ」
「う、うん……」
私も黒い板の前に立つ。
「せーの!」
バキィン!
板に穴が空いた。
ちょっと力を込めたパンチだったのに。
「威力は十分だな。じゃあ、後は耐久テストな」
「……ここまでやったんだからもういいんじゃない?」
板に穴を開ける程度でも凹んでないのが分かるから私はそう返事をする。
「いや、耐久テストは必要だ」
「じゃあ、一回脱いでくれ」
私達はパワードスーツを解除し、桐人兄さんに渡した。
桐人兄さんは二つのパワードスーツを並べると二つ穴が空いたランチャーらしきものを取り出した。
「よっと」
「ちょ、ちょっと待ってください、桐人様! それは大型戦艦も一発で粉砕する代物では⁈」
はい?
何でそんな物騒な代物桐人兄さん持ってるの?
疑問だらけだ。
「自動操縦モードで上昇させてっと」
「自動操縦モード?」
桐人の言葉に首を傾げる私。
「着用しているものの生命が著しく脅かされたときに発動するようにした機能だ、積極的に避難行動に出て安全を確保するんだが、今回は俺が操縦してるので固定でっと……この高さでと」
かなり上空に浮かぶパワードスーツ。
「おらよっと」
ミサイルらしき物体が二つ放たれる。
そしてそれはパワードスーツに命中し──
激しい爆発音が響き渡った。
いや、この音聞くだけでアウトじゃないか?
「あー音とか音波での攻撃はシャットアウトできるようになってるからこれ位大丈夫だぜ。ほれ見ろ」
桐人兄さんは、私の抱いた疑問に答えつつパワードスーツを地面まで下ろす。
そこには無傷のパワードスーツがあった。
「どうなってんのコレ⁈」
「まぁ、企業秘密ということで。対艦ミサイル二発程度で壊れるようなら渡さねぇよ。だがもしこれを上回る奴が出たら即教えろ、また上のを作り上げてやる」
それを企業秘密と言い切る桐人兄さん、貴方本当にどういう脳みそしてるの?
というか、その性能を企業秘密で済ませていい代物なの?
いや、本当に。
その上これよりヤバいのが出たら教えろとか言ってるけど、本当に出たらどうしてくれるの⁈
いや出てほしくないからね⁈
「まぁ、という訳だ。とりあえず今は安心して使え」
桐人兄さんがそう言うと、パワードスーツが消え桐人兄さんの手の中に戻っていた。
桐人兄さんは装着用のブローチ型のを返した。
「ねえ、なんで腕時計型も」
「あ、そっちはお前らの声で『装着!』って言うと装着するタイプね。大半のパワードスーツがブローチ型だから時計型はカモフラージュになるだろ」
腕時計型のを作った理由も聞くと、何か納得してしまう。
「ん、じゃあパワードスーツ装着時に装着って間違って言ったらどうなる」
「いや、その時は何も起きない」
「なるほど」
そこら辺もしっかり考えて作ってるんだなぁ……
だがしかし。
「なんで私のだけこんな可愛い仕様になるのー咲良ちゃーん……」
「ご、ごめんね……」
咲良ちゃんには申し訳ないが本音を言う。
「私パワードスーツだけは無骨で格好いいのが好きだったのに!」
「じゃあ次回あったらそうするか」
桐人兄さんが頷いていると──
「いや、次回も碧はこのままで」
「ノウェムさん⁈」
ノウェムさんの発言に驚く私。
「……似合っていたから」
「もう……」
そう言われたら私は反論できない、惚れた弱みか。
「じゃあ、次回も同じデザインか、用事も済んだし俺ら帰るわ、じゃあな!」
「お邪魔しました……」
満面の笑顔で手を振って帰って行く桐人兄さんと、頭を何度も下げてから桐人兄さんを追いかける咲良ちゃんを見送る。
「これで不安材料の一つは無くなりましたか」
「そうだね」
私とノウェムさんは頷きあう。
さて、休もう休もう。
「トレースさんも休んでくださいね、休日なのにすみません」
「いえ、碧様とノウェムのことをレティシア様から任されましたから」
トレースさんはにこりと笑った。
うーん、本当にレティシアさんは心配性だ。
その後はようやく、誰にも邪魔されない穏やかな時間を過ごすことができた私たちだった──
碧とノウェムの桐人製のパワードスーツお披露目会です。
とんでもない性能のパワードスーツだと思ってくださると嬉しい限りです。
あと、碧のパワードスーツは可憐とか可愛い感じになってるんだと思ってくださると幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
誤字脱字報告等ありがとうございます!
次回も読んでくださるとうれしいです!




