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54.仕事は真面目~謎の強襲者と新たな借金500億~

給料の入金後、会社に帰るとドゥオが真面目に仕事をしないと口論になった。

どうしたものかと悩んで居ると、会社の入り口の方から悲鳴が聞こえ──



「さて、今月のお給料を振り込みに行きましょう!」

「ああ」


 ノウェムさんに必要な荷物を持ってもらい、銀行へ向かって各自の口座に給料を振り込む。


「あれ? トレースさんのお給料は税金込みで40万円なのに、ドゥオさんは20万円……何でですか?」

「ドゥオが仕事をさぼってると宗一から報告があってな、少し痛い目見て貰おうと言う訳だ、レティシアにも報告している」

「メカニックの仕事をサボってるんですか?」


 メカニックって確かに大変だけど、やりがいあるよ?


「『めんどくせぇ』って真面目にやらないそうだ」

「トレースさんは?」

「宗一からは『順たちより真面目に取り組んでおる』と言われてな。しかもメフィストたちだけでなく戦艦や戦闘機の整備まで手伝っているそうだ」


 本当に仕事熱心だなぁ、ありがたい。


「100万円出してもいいと言ったんだが、本人が『40万円で十分です』と言ってな」


 け、謙虚すぎるよ、トレースさん……


「ドゥオさんは」

「『なんじゃあの若造! 真面目にやらんにも程がある! 手抜きばかりしよる!』だそうだ」

「ふふ、宗一お爺ちゃんのものまね上手だね、面白い」


 ノウェムさんにそう言うと、ノウェムさんは困った顔をしていた。


「いや、今はそう言うのではなく……」

「そうだね、これは結構真面目に考えなきゃいけない」


 そう言って会社に戻ると、説教されてるドゥオさんがいた。

 見知らぬ顔まで混ざっている。


「ドゥオ、君は仕事というものがどれほど重要か分かっているのかね?」

「レティシア様からの依頼のメインは涼様の護衛だけど次に整備士、メカニックとしての仕事も重要」

「だから給料が下がってるんですよ、貴方だけ!」

「だって面倒くせぇんだもーん!」


「こりゃダメだ」


 お仲間さんたちからの説教も通じてない。

 するとノウェムさんが怖い顔をしていた。


「いいか。碧の借金は返した。だが、また何か起きて借金が増える可能性は十分ある。その時、お前は──」


 ノウェムさんに頭をわしづかみにされたドゥオさんから、めりめりと嫌な音が聞こえた。

 気のせいじゃないよね⁈


 どうするべきか考えていると──


「きゃああああ!」


 咲良ちゃんの悲鳴が聞こえた。

 嫌な予感が背筋を走った。

 慌てて会社の入口へ駆け寄る。

 みっちゃんはぐったりと倒れ、顔色は土気色だった。

 そのすぐ近くでは、パワードスーツを着た男に撃たれたらしい咲良ちゃんが血まみれで倒れている。


「『アダム』は何処だ‼ ださねぇとこの女にもう一発薬ぶち込むぞ! 二回目だから死ぬかもな!」


 みっちゃんの首に注射器のようなものを近づけて男は叫んだ。


「セム!」


 ノウェムさんが名を呼ぶと、一人の青年が音もなく会社の中から出て来た。


「すまない、私の所為だ。社内が安全だと思ってたから」

「いいから『アダム』は何処だ! 出て来やがれ!」


 この男何言ってるの?

 そもそも「アダム」って誰⁈

 ん……アダム?

 もしかして……桐人兄さんのこと⁈


「俺の可愛い妹に、何しやがったテメェ」


 次の瞬間、桐人兄さんはパワードスーツの男の背後にいた。

 そして何のためらいもなく首をねじ切る。


「ひっ⁈」


 思わず悲鳴が上がる。

 桐人兄さんは迷いなく自分へ注射を打った。

 成分を体内で解析するつもりなのだろう。


「何してんのー⁈」


 それでも、危ない行為に叫ばずにはいられなかった。


「あーなるほど、これはそういう奴ね。即効性じゃなくて体内で増殖するタイプか」

 あっけらかんに言う桐人。

「碧」

「何?」

「後3時間以内に対処しないとこの子死ぬ」


 思考が一瞬停止した。

 みっちゃんが、死ぬ?

 え、嘘、そんなのヤダ?

 だってやっと明るくなってきて、幸せそうなのに……!


「お願い桐人! 助けて!」

「条件がある」

「条件?」

「碧、お前の友達のせいで咲良はあの状態だ、死なずに済んだから良かったものの俺は心底頭にきてる」

「碧、お前に会社として責任を背負う覚悟があるなら助ける。治療費500億」

「500億⁈」


 涼兄さんが焦った声を上げる。

 なんで涼兄さんが焦るのよ。

 払うのは私たち会社なんだから。


「あ、利子はなしな、月々の支払いで結構」

「……いいわ、払う。何年かかってでも払ってみせる!」

「よし、医療室貸してくれ、すぐ治療に移る。セムだっけか、碧の友達を運んでくれ、俺は咲良と荷物で手一杯だ」

「かしこまりました」


 青年──セムさんがみっちゃんを連れて行く。


 治療が開始して二時間が経過した。

 みっちゃんの両親に報告はしたが真実は言えないので、ただひたすら祈るしかなかった。

 みっちゃんが倒れ、たまたま居合わせた医者が危険な病気だと判断して手術を行っている――そう説明するしかなかった。


 桐人兄さんが医療室から出てきた。

 肌つやが戻ったみっちゃんがすやすや眠っている。


「全身に出来始めていた腫瘍は全て除去しました。ウイルスも特効薬で抑え込んであります」

「ありがとうございます!」

「本当に、ありがとうございます!」


 みっちゃんのご両親が泣きながら頭を下げている。


「いえいえ、じゃあ次の手術があるので」


 そう言って戻っていった。

 きっと咲良ちゃんの治療だろう。


「では、美奈を宜しくお願いします」

「はい」


 帰って行った二人を見送ると、咲良ちゃんが出て来た。


「ごめんなさい! 私の所為で碧ちゃんの友達巻き込んで!」

「どういう状況だったの?」

「会社の入口で碧ちゃんたちを待っていたの。でも碧ちゃんのお友達が『中で待っていてください』って言ってくれて、中に入ろうとしたら突然現れて……」

「で、人質を取られて大怪我したと。」

「防犯装置とか増やすか……」


 私はため息をついた。


「まぁ、つーわけで借金500億の返済頑張れよ」

「え? 何がどういう?」


 咲良ちゃんは混乱中。


「護衛が社員を守れなかった。その結果、お前は巻き込まれた。守れなかった責任は会社が負う。それだけだ」

「何で⁈ 彼女特殊なウィルスが入った液体注入されて一気に気絶したのよ⁈」

「それで何もできなかったんだろう?」

「それは、そうだけど」


 咲良ちゃんは反論しようとしたが、桐人兄さんはそれを許さない口調でいった。


「これはけじめだ。怪我したのが俺だけなら無料でも良かったが怪我したのはお前だ。そして彼女は碧にとってはお前以外の数少ない親友だ。だから碧に問いかけたんだ、500億払うだけの覚悟はあるか、とな」


「責任を押し付けたい訳じゃない。会社が社員を守れるか。それを見たかった」


 ……やっぱり桐人兄さんらしい。


「社員がしでかしたなら会社で責任を取るのは当然だわ、だから気にしないで」

「碧ちゃん……」

「あの、お取り込み中すみません」

「どうしたのトレースさん」

「目覚めた美奈様にドゥオが治療と借金のことをバラしてしまったらしく美奈様号泣しておられます……」


 は?


「ドゥオは?」


 もう此奴は呼び捨てでいいや。


「現在、締め上げながら反省していただいております」

「余計なことしやがって。借金のことバレたら、みっちゃんが気に病むの分かってたのに」

「碧、それは流石に無理があるぞ」

「……無理か」


 私は肩を落とした。

 また借金が増えた。


 ノウェムさんは真面目な表情で、私の肩を抱いて言った。


「また頑張ればいい」

「……うん!」


 それでも、みっちゃんが助かっただけで十分だった。







ドゥオ不真面目キャラ確定です。でも、ちゃんと理由はあります。

それはそれとして、美奈が命の危機にさらされました。

護衛として密かに配置されたセムというナンバーズの失態です。

会社付近なら安心だろうと、丁度桐人と同じナノマシン持ちがいるからと気をぬいてしまったのです。

前回美奈の存在が忘れられていたのはセムが守っているのを分かっていたからです。

で、桐人は桐人で咲良が大怪我して怒り心頭ですが、それ故冷静に会社として責任を持てと碧に突きつけます、ある意味親心のようなものです。

碧も理解して応じます。

借金500億になりましたが、碧は必ず返すでしょう。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
ドゥオってバカなんですか??なにバラしてんの??セムもなに気ぃぬいてんの?揃いも揃ってバカばかりか??ナンバーズってノウェムさんたちみたいな真面目な人だらけかと思っていましたが、そうではないようですね…
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