53.「家族」の無事~涼のやらかしとノウェムの嫉妬~
戦艦の名称登録が済んでないと言われ、碧はポラリスと新しい戦艦に名前をつける。
その後、未だ閉じこもっている宗一たちのことを尋ねると、トレースとドゥオはすっかり忘れていたようで、碧は安否の確認に通信を取る──
「ところで社長」
「はい、何でしょうかトレースさん」
「新しい戦艦の名前、まだ正式登録していないそうですよ」
「やっべ、忘れてた」
忙しくて戦艦の名前登録を忘れていた。
とはいえ、ウラノメトリアを継承すると、もしまた撃沈された時に――前の名前だったから……とか言われそうで嫌だ。
「碧? あまり急がなくていいんだぞ?」
「いや、やれるときにやっておかないと……そうだ」
私は思いついた名前を口にする。
「ポラリス」
「ポラリス、随分可愛い名前だな」
ドゥオが首を傾げる。
「北極星のことですね」
トレースさんが補足した。
「うん、目印とかになるものがいいかな」
北極星って、迷った時の目印になるでしょう?
「もしポラリスが撃沈したらどうすんの?」
「縁起でもないこと言うな!」
ノウェムさんが怒鳴り、トレースさんは笑っていない笑顔を浮かべている。
「ドゥオ、少し黙っていていただけますか」
「スミマセン……」
ノウェムさんとトレースさんに言われて萎縮する。
本当に最初から言わなきゃいいのに。
「すみません、ドゥオは性格に難ありと言われており」
「トレース、仮にも俺の方が先なんだぞ⁈」
「それが何です? 仕事はともかく私生活では迷惑を周囲にかけまくってるではないですか」
「うぐ……」
「貴方も合コンに行くのは禁止ですよ、涼さんが行かないのですから、護衛の貴方が離れたら不味いでしょう」
「あのさ、ところで」
「「?」」
「鍵かけたまま放置された宗一お爺ちゃんたち大丈夫?」
「「‼」」
「見に行くぞ」
「その前に通信してみるね」
私は通信機を取り出す。
「宗一お爺ちゃん、順兄さん、涼兄さん、無事?」
『おおー! 碧、戻って来たか! 儂等は無事じゃ! 外はどうなっておる⁈』
宗一お爺ちゃんが通信機を取ってくれたみたい。
「もう大丈夫。全部片付いたから出て来て」
そう言って整備室の前で待機していると扉が開いた。
「おおー! 碧! 無事で良かったわい!」
宗一お爺ちゃんが手を握って嬉しそうに言ってきた。
「宗一お爺ちゃんたちが無事でほっとしたよ」
「全く、儂等も生きた心地がせんかったわい」
「全くだ……」
「俺、前世で何かした?」
「いやそれは知らんがな」
前世とか信じない涼兄さんがそんなことを言う辺り、本当に参っているらしい。
「そうだ! みっちゃんは⁈」
「会社の中にいるはず──」
「あの、何かあったんですか……? 凄い音に怖くなって気絶してて……」
「みっちゃーん! 無事で良かったー!」
みっちゃんが青ざめた顔で裏口から出て来た。
「あれ、なんで入り口の方じゃなくてこっちから?」
「表口、私じゃ開かないよう誰かが閉めたみたいで、裏口から……」
「すみません、それは私です」
トレースさんが申し訳なさそうに言った。
多分みっちゃんを守るためだったんだろう。
「開けてきてねー」
「了解しました」
トレースさんは会社の入り口の方へと行った。
私も心配で付いていくと、トレースさんが平然と何かを投げ飛ばしたのを目撃する。
次の瞬間、裏山の方からドォンッという爆発音が響いた。
「あ、あのトレースさん?」
「戻ったら入口に爆弾が仕掛けられていました。解除する時間が無かったので、山の方へ投げ捨てました」
「……」
「此奴もナンバーズだから、力業はするよなぁ」
「緊急事態でしたので」
「ナンバーズ……」
このノウェムさんを含むナンバーズ、一体どうして産まれたんだろう?
誰が協力したとしか思えない。
だとしたら……誰?
疑問がわいたけど、聞くのはためらってしまったので心の中にしまっておくことにした。
「ノウェムさんたち、あの元々モナル社の人たちでしょう? 大丈夫なのかな、こっちに来ていて……」
「ああ、グレイズ様の護衛はウヌスが、レティシア様の護衛はセスとデケム。ロゼッタ様の護衛はクイーンと、クァットが担当しております」
「へ、へぇ……」
「モナル社のものたちは自分たちからモナル社であることを公言することはない、別会社の名前で自己紹介する」
「え?」
初耳だった。
モナル社って思っていた以上に物騒な会社なのでは?
「モナル社は敵が多い。だから社員は全員敷地内で生活する契約だ」
「そこまで?」
「生活に必要なものは全て揃っている。安全のためだ」
「不自由がないようにしてるんですね……でもどうしてウチが狙われるんです?」
「そこの合コンで兄ちゃんがパトリはモナル社と縁があることがバレたからだよ、兄ちゃんやらかしたんだ」
「涼兄さん……」
「悪かった! それは本当に悪かった!」
「みっちゃんと宗一お爺ちゃんと順兄さんに何かあったらまたアンタのエロ本机の上に整理してのせるからなジャンル別に!」
「止めろー!」
「碧ちゃん、そこは燃やすとかじゃね?」
「一応身内だからね」
「ドゥオ、普通に考えなさい」
トレースさんは呆れたようにため息をついている。
「え、ヤクザものとかだとそう言うのない?」
「ウチは一応健全な会社です!」
命がけの仕事は山ほど来るけどね!
「普通の会社は命がけの仕事とか早々簡単に来ないんじゃねぇの」
「Oh……」
クリティカルヒットした。
言われてみればそうだ、普通の会社は命がけの仕事はまず来ない。
いや、前から薄々気付いていたけど。
ウチの会社ブラック……?
……いや違う。
ブラックというより……
命懸け会社?
とか考えてたらドゥオさんはトレースさんにしめあげられていた。
「碧、ドゥオのたわごとを聞く必要はない」
「え、あ、はい」
ノウェムさんに抱きしめられて、少し落ち着く。
ちらりとトレースさんを見れば、笑ってない笑顔を浮かべながらドゥオさんをしめあげている。
「君はあまり気にしなくていい」
ノウェムさんがさらにぎゅっと抱きしめる。
多分トレースさん、女性人気高いんじゃないかな?
だから取られちゃうと思ってるんじゃないかな?
「あ゛ー死ぬかと思った」
「これ位じゃ死なないでしょう、貴方も私も」
しめあげるのを終えたのか、トレースさんとドゥオさんが会話をしている。
「ノウェム、私をそんなに警戒しないでください。貴方の大切な人を取る気はさらさらありませんよ」
「……」
トレースさんは肩をすくめてノウェムさんに言った。
「女性から人気があるからと言って敵視しないでくださいな」
「ドゥオよりはマシに思ってる、でも怖いからあまり碧に近づかないでくれ」
その言葉にカチンと来た。
「ノウェムさん、それ私が心代わりすると思ってるってことですか?」
「いや、その……私はトレースのように女性の扱いに長けてないから……」
私はノウェムさんに詰め寄る。
「そんなことで、私がノウェムさんからトレースさんに心代わりすることはありません!」
「碧……」
「みっちゃんが惚れる可能性はありそうですけど!」
トレースさん優しいし、ありえそうなんだよね。
「碧……それはない」
ノウェムさんは呆れたように首を横へ振った。
「へ?」
ノウェムさんは少しだけ苦笑いを浮かべた。
「気付いて無かったのか、ならいい。君はそのままでいてくれ」
「アッハイ」
みっちゃんが惚れない?
なんでだろう?
取りあえず、それは置いてとこう。
「あのーいつまでハグされていれば……」
「当分」
「えぇぇ……」
「嫌か?」
「嫌ではないですが、皆見てるので若干恥ずかしいです」
「公認だからいいだろう」
視線が生暖かい。
あーもう、恥ずかしい。
……でも、こういう不器用なところも全部ひっくるめて好きなんだよなぁ。
本当に、惚れた弱みってやつだ。
前回の答えで忘れられてたのは美奈でした。
宗一たちはメンテナンス室に放り込まれて引きこもらせていましたが、美奈は表口に鍵をかけていただけで、裏口は開いていたのでいることをすっかりドゥオもトレースも忘れてました、それは何故か?
次回分かります。
碧は美奈と付き合い長いのに美奈が好きな相手には全く気付いてません。
理由が理由なので仕方ないかと思いますが。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




