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51.涼誘拐される~結果ドゥオが入社した~

レティシアが無事に帰還し、安堵する順。

モナル社に捕縛された者の行く末をノウェムに碧が尋ねていると、クラレンスたちが部屋に飛び込んできて、涼が誘拐されたと報告してきた──




「あー……心臓に悪かった」

「同感だ」

「どうしたの?」

「レティシアさんが襲われたんだ」


 通信機が鳴る。


「レティシアは!? レティシアは無事なのか!?」

「無事じゃなかったらもっと焦ってるわ。落ち着け順兄さん」


 私の肩を掴んで揺さぶる順兄さんに私はそう言い返した。

 順兄さんに肩を揺さぶられながらも、何とか通信機をスピーカーモードに切り替えた。


「はいもしもしー」

『レティシアよ、ごめんなさいね。助けて貰って。依頼として1億入金させてもらうから』

「へ⁈ ちょ、それは貰いすぎでは……」

『いいのよ、私も赤ちゃんも無事だったのだから。今は家でゆっくりしてるわ』

「レティシア、無事なのか⁈ 本当に無事なのか⁈」


 スピーカーモードだったので順兄さんが声を荒げる。

 今までこんな順兄さん、見たことがない。


『順さん、大丈夫よ。それにこういうのは慣れてるわ』

「慣れないでくれ、頼むから……」


 懇願するような声と仕草。

 やっぱり順兄さん、レティシアさんのこと……本当に大好きなんだな。


『仕方ないわ、幼少時から誘拐未遂とかそういうのがあったのだもの』

「でも、慣れないでくれ……自分を大事にしてくれ、頼むから……」

『分かったわ、出産までは家で大人しく軽めの運動してるから』

「そうしてくれ……」

『貴方も気をつけて帰って来て下さいね、順さん』

「……分かった」

『トレース、お願いね』

「畏まりました、レティシア様」

「……順兄さん、送り迎えしようか?」

「いやそれは……」


 順兄さん、自分の事だとこうなんだよなぁ。


「順様、レティシア様の件もありますし、ノウェムと碧様にも送り迎えを頼みましょう。幸いお二人は戦い慣れているご様子」

「それが一番複雑なんだよ……碧が喧嘩慣れしてるのは分かるけど、戦い慣れするのはちょっとって……」

「仕方ないでしょう、がむしゃらだったんだから」

「じゃあ今後は後方支援とかに回るか?」

「それは無理、ノウェムさん一人に任せるのは負担が大きすぎる」

「確かに、今回もセスと……ドゥオと、私と碧で、何とか無事に終わったからな」


 ノウェムさん、本当にドゥオさんの名前を呼びたくないんだな。


「本当それね……まぁ私はパワードスーツ着た連中のめしてただけだけど」

「連中は全員尋問待ちでしょう」

「喋るのそれ?」

「喋る? いいえ喋らせるんだ」


 ……モナル社だけは敵に回したくない。


 兄を無事に家に送り、戻って来た私たちはお風呂の中でのんびりくつろいでいた。


「ところで、黙秘権ってないの?」

「警察に捕まったならあるだろうが、モナル社が確保したならそんなものはない」

「あ、さよですか」

「徹底的に喋らせる」

「どうやって?」

「それは企業秘密だ」

「知らない方がいいんですね?」

「そういう事だ、さて風呂から上がるか」


 風呂から上がり体を拭いていると──


「「「「大変……うわあああ‼」」」」


 クラレンスたちが入ってきた瞬間、慌てて顔を覆った。

 ああ、まだ下着姿だった。

 これでは話が進まないのでさっさとボディースーツを着用する。


「で、何があったの?」

「涼が誘拐されたよ!」

「涼兄さんが⁈」

「『ちょっとコンビニ行くからついてきてくれ』って言うからついて行ったんだ。そしたら出た瞬間、変な奴らに連れていかれた!」

「また!? 何なのもう、この街どうなってるの⁉」


 また通信機が鳴る。


「はい!」

『こちらドゥオ! いやーやっちまいましたー! お兄さんは無事なようだけど誘拐犯追ってるから急いで来てくれないかな?』

「分かりました!」

『ノウェム-、俺が嫌だからってボイコットすんなよー』

「誰がするか!」


 ノウェムさんは怒鳴り付け、私たちはパワードスーツを装着する。


「お前たちは装甲車でGPSを追ってこい」

「二人は?」

「碧は私が連れていく」

「はーい」


 小脇に抱えられ、そのままノウェムさんがブースターでどこかへ向かい始めた。

 向かってる方向には、そう言えば昔使われてた倉庫があったなぁと思い出す。


「何でこっちに向かっているんだ奴らは?」

「理由は知らないけど、そっちに昔使われた倉庫があるよ、今は放棄されてるけど」

「無事涼を助けたら調査団を向かわせるか」

「無事ならいいけど……」

『おーい通信聞こえてるー?』

「はーい聞こえてますがー?」


 ドゥオさんからの通信がパワードスーツに届く。


「要件は何だ」

『んー涼は無事、でも周囲にロボットがおびただしい数いてちょっとなぁってなってる』


 丁度私たちもその地点に来るとうじゃうじゃとロボットが蠢いていた。

 動きを見れば分かる。

 意思なんてない。

 ただ命令だけで動く戦闘用ロボットだ。


『お嬢様!目的地点に到達しました』


 クラレンスの通信が割り込んできた。


『おお、そちらさんのロボットもか、丁度いい、暴れてくれね?』

「そういう訳だから暴れて頂戴」

『了解です!』


 クラレンスたちが飛び出して暴れ始めるとロボットはそちらに集中し出した。

 隙間――いや、「道」ができる。

 私とノウェムさんは、その「道」を駆け抜けて倉庫へ侵入した。


「ちっ! もう来やがった!」

「丁度いい! おい、お前! 両親から譲り受けたものはないか!」

「会社と借金しかないわ、ボケ!」

「そんなことはないはずだ!」

「……何言ってるの?」


 言っている意味が分からない。


「さっさと白状しねぇと兄貴がどうなっても」

「黙れ!」


 正拳突きでコアを破壊して吹っ飛ばす。


「な、何だこいつ!? くそ、こうなったら兄貴の方を……」

「うちの護衛対象に手ぇ出そうってのは感心しねぇなぁ?」


 振り返ると、ドゥオさんがパワードスーツ姿の連中を全員床に転がし、いつの間にか涼兄さんまで救出していた。


「ドゥオさん、兄を助けてくださってありがとうございます」

「いやぁ、命令だしね。寧ろうっかりミスったのをカバーできたからありがたい」

「レティシアとロゼッタには報告しておくからな」

「ちょ、止めてー!」


 止めるように言うドゥオさんを無視してドゥオさんの事をレティシアさんに報告していた。


『ドゥオ、貴方に私は涼さんの護衛を任せたわよね? なのに誘拐されたってどういうことかしら?』

「い、いやー。パトリのロボットがいるから大丈夫かなーって」

『任務変更を命じます。碧さんにはお願いを、ドゥオをパトリに入社させてください。メカニックとして』

「えぇ!?」


 隣を見ると、バイザー越しに非常に嫌そうな顔をしているノウェムさんがいた。


『ノウェム、貴方が嫌なのは分かるわ。だから馬鹿したら即刻報告して頂戴、トレースに締めてもらうから』

「……わかった」

「あーということは……ノウェム先輩チーッス! 彼女さんと色々お楽しみになれるブツ持ってきますよ!」

「持って来るな‼」


 ノウェムさん、ガチで切れてる。


 翌日、割とそこそこの荷物でやってきたドゥオさん。

 ノウェムさんとトレースさんは若干嫌そうな顔で何か確認に行く。

 ノウェムさんが箱を開けた瞬間、真顔になり、トレースさんが秒速で箱を閉じた。

 その後、パワードスーツを着用したノウェムさんにドゥオさんが追いかけられていた。

 ドゥオさん、本気の焦り顔。

 ノウェムさんバイザー越しにも分かるガチギレっぷり。

 トレースさんは額に手を当てて、やれやれと肩をすくめていた。


 数十秒後、あっさり捕まったドゥオさんは、パワードスーツを脱いだノウェムさんに股間を重点的に踏まれていた。

 我が家の男性陣は誰一人止めようとせず、全員そっと股間を押さえていた。

 トレースさんが呆れて1分ほどで止めに入り、二人を説教していた。

 何を持ってきたのか気にはなるが、トレースさんとノウェムさんがそろって。



『見ない方がいい、というか見ないでくれ』

『碧様は見ないほうがよろしいでしょう』



 との発言をしたので見ないことにした。

 ……結局、何を持ってきたんだ、あの人?






レティシアは無事安全に家に帰れた様子です。

順もそれを知るまで気が気でなかったでしょう。

ちゃんと夫婦なのです。

そしてノウェムと普通に風呂に入ってる碧、ノウェムの怖い会話に深く突っ込まない選択をします。

賢明ですね。

流石にうら若き乙女の下着姿を見るのはクラレンスたちでもアウトだった様子。

そして涼、実はドゥオに護衛されてましたが、ドゥオがちょっと目を離した隙に誘拐されたのが今回の事件の発端です。

なのでドゥオは新入社員として入社を命じられました。

ドゥオが持ってきたブツはご想像にお任せします。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
いやぁ、レティシアの姐さんの押せ押せで結婚したかと思ったけど碧ちゃんも思った通り順兄さん本当に姐さんのこと好きなんですね!これにはわたしもニッコリ(^^) 涼くん誘拐されちゃったね。けどすぐに助け出さ…
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