50.株の話~レティシアを狙う影~
株の話をしに来て慌てる碧だが、ノウェムに強制的に落ち着かされ、話合いを始めることに──
「パニクってすみません……」
「いえいえ……」
レティシアさんはホットミルクを飲みながら苦笑していた。
レティシアさんのセリフの後、
『うわーっ‼ そうだった、株ー‼ どうするのが正解なの、誰か教えてー‼』
取り乱したところをノウェムさんに落ち着かされて、応接室で今に至る。
ただ、ノウェムさん、皆の前でキスして黙らせるのはどうかと思いますよ⁈
セカンドキスも皆に見られてちょっと今私ふて腐れてますからね!
「ノウェム、謝ったら。あんな家族の前でキスするのを見られるのは碧ちゃん的にはむくれる原因だから」
レティシアさんは優しく笑って言った。
「碧ちゃんは、二人きりの場所でキスするのが夢なんだものね」
「ちょっと待ってその話誰から聞きました?」
「貴方のお母様から」
「お母さんー⁈」
何してくれとんの?
娘のプライバシー侵害するのマジでやめて!
特に子どもの頃からの夢とか憧れとか言うのもマジやめて!
って、文句言いたいけど既に亡くなってる……
「……」
一気に凹む私。
「碧、どうした?」
「文句言いたい相手が亡くなってるのに気付いて凹んでる……」
陰鬱な声で返事をする。
ノウェムさんが頭を撫でてきた、けど回復しない。
今回ばかりは色々とダメージがでかすぎる。
「私のせいね、ごめんなさい……」
「いえ、いいんです」
「……両親の死が絶対ただの事故じゃないんです、それは分かってるけど、じゃあどうやってってなってしまい……」
「碧さん、今は深く考えないで、あまり深入りすると貴方への危険度が増すわ」
「でも……!」
「調査はウチの会社の子たちと桐人に任せましょう」
「桐人兄さんも協力してくれてるんですね」
「ええ『萌木夫妻には恩しかねぇよ』との事でした」
「桐人兄さん……」
桐人兄さんなら任せられる。
そう思うと少しだけ肩の力が抜けた。
どうやら安心した顔をしていたらしい。
「……随分信頼しているんだな」
「そりゃ桐人兄さんだし」
ノウェムさんが少しだけ不満そうな顔をした。
「さて、株の話をしましょうか?」
「はい……」
「私が保有する株は10万株あります」
「えっと一株いくらで……」
「借金20億を10万株で割ったので一株2万円ですね」
全部買い戻せる……でも、それじゃ不安だ。
「あの、お願いがあるんですけど……」
「何ですか?」
「失礼なのは重々承知なんですが……」
言わなきゃだめだと思った、自分はまだ未熟だから。
「私、社長就任してまだ一年も経ってませんし」
「社長としてはまだまだ未熟ですし、半分くらい……いえ、それ以上でもいいので株を持っていてくれませんか?」
モナル社との繋がりがなくなるのは正直怖い。
「ふふ。では、譲渡価格は……そうですね。5万株で10億円にしましょうか」
「は、はい! それでお願いします!」
「お金には困ってませんが、配当はそうですね。配当は決算に応じてで構いませんわ」
「それなら……あ、でも配当が低くなっちゃったらすみません……」
「その時は言わないわ。そこそこの配当だったとだけ答えるから」
……副社長さん、本当に信用されてないんだな。
いや私もいい印象ないけども。
だって此奴が来たから私社長になる決断しちゃったんだよ?
あの場所で?
親が死んで悲しんでる時に来るんじゃねぇと思ったわ。
せめて四十九日過ぎてから来いよな。
レティシアさん、暴走しすぎるから勝手にくると思って仕方なくきたんだろうなあの喪服姿じゃ……
なんか腹立ってきた。
「何であの野郎は四十九日待てなかったんだ畜生ー!」
思わず叫んでしまった。
イライラのあまり。
「あ……すみません! すみません! 胎教にも悪いこと言ってすみません!」
「いいのよ、碧さんの怒りは最もだから」
「レティシアさん」
「彼ね、あのあと『母の墓参りに行きたい』って言い出した時『あら、親を亡くして四十九日も経っていないお家を訪問すると言って暴れたのは何処のだれだったかしら』って言って凹ませたわ。後で謝罪しますっていってたけどその様子じゃ……」
「謝罪なんて一つも貰ってません!」
私はきっぱり言い放った。
「やっぱりね。ところで謝罪はいる?」
「口より先に手が出そうなんでいりません」
顔を見たら本気で殴ってしまいそうだ。
「色々教えてくれてありがとうございます」
「ええ、これからもよろしくね」
「じゃあそろそろ帰りましょうね。順さんがそわそわし出しているようだし」
「あー奥さんの体が心配なんでしょう順兄さん」
「またね、碧さん」
「はい、また」
そう言ってセスさんたちと共にレティシアさんは帰って行った。
その後セスさんが株式譲渡のデータを送ったので、私とノウェムさんはレティシアさんの口座に10億送金した。
「……ん? そう言えば今まで私レティシアさんに配当ちゃんと払ってない‼」
「そこは萌木夫妻との書面で『配当は会社運営が軌道に乗ってからにする』とレティシアが記載していたから本決算と中間決算の時送金すればいいんだ」
「うわぁ、益々お金稼がないと……」
「碧、あくまで稼いでる時の話だ、稼げてない場合はそこまで払わなくてもいいんだぞ」
「え?」
「君、ちゃんと契約書を読んでいないな。ほら、ここに書いてある」
ノウェムさんが指差した箇所を見るとちゃんとそう記載されてあった。
「よかったー……でも会社のためにこれからも頑張らないと!」
「頑張るのは良いことだが、それで体を壊しては元も子もない」
「あはは、それもそうだね」
私は立ち上がる。
「よし、仕事……」
そこまで言って社長室に山積みになってる書類を思い出す。
「……デスクワークやだぁ」
「そういうな」
げんなりした私の通信機がなる。
「はい⁈」
『セスです!』
「セスさん⁈」
予想外の人物からだった。
『碧様! 追われています! 助けてください!』
「ノウェム」
「今回は私たちだけで行こう」
そう言って装甲車に乗り込みノウェムは猛スピードで向かう。
レティシアさんたちの車はパワードスーツ部隊に包囲され、その周囲では合成獣まで暴れ回っていた。
「自動操縦に切り替えた行くぞ」
「うん」
パワードスーツに身を包み、敵の顔面を掴んでそのままアスファルトへ叩きつける。
砕けた路面にめり込んだ敵を放置し、次の一体を掴んで横殴りに振り回した。
巻き込まれた二体がまとめて吹き飛ぶ。
合成獣が一匹飛びかかってくるが、ノウェムさんが一刀で切り捨てていった。
「おう、碧ちゃん助かったわ!」
「えっとドゥオさん?」
全然見かけなくなったので久しぶりに見て少しだけ驚いた。
「ノウェムに会うと余計なこと言うから車走ってる時の護衛やれっていわれてやってたわけ、ちょっと鬼じゃねセス? 60キロ以上出してるんだぜ」
「それについて行ける貴方にびっくりです」
そう言いながら車に張り付いている合成獣をドゥオさんは一瞬で真っ二つに切り捨てている。
私は、またやって来た武装した敵に蹴りを喰らわし怯んだところで回転蹴りを当てて昏倒させたり、投げ飛ばしてぶつけ合わせて何とか倒した。
「ドゥオ、離れろ」
合成獣を全て殲滅したノウェムさんがやって来た。
セスさんが頭を下げる。
「ありがとうございます、助かりました」
「いえ! あのこういうのもアレなんですがレティシアさん外出控えたほうがいいですよ……」
「そうですね、碧様からの進言ならお聞き下さるでしょう」
「本当にそうしてくれるといいんですが……」
レティシアさんが出産するその日も、こんな襲撃が起きたら――
そんな嫌な予感が胸から離れなかった。
株の保有率、レティシアから全部買い取ると思いきや、碧、色々考えてます。
そして、帰り道レティシアが狙われる事態に。
どこからか同行していたらしく、車と併走したり、しながら車に張り付く合成獣を切り裂くドゥオ。
出産時に何か起きるかと不安になる碧、さてどうなることやら。
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