【幕間】各自の思惑
碧やノウェムたちを取り巻く周囲の思惑の話──
「ここ最近、仕事きついよー!」
「それを言ったら社長やってる碧が一番きついだろう」
げんなりしてるメフィストにレイジングが言う。
「現場とデスクワークを両立させてるんだぞ」
「そう言われれば」
「それでこの間寝込んだだろう」
「ええ。あれは流石に無理をし過ぎだったかと」
レイジングの指摘にクラレンスが同意する。
「それにしても……」
「どうしたガンツ」
「あの二人、あのキス以来進展しとるんかの?」
どんがらがっしゃーん!
ガンツ以外のロボット達が激しく体勢を崩し音が鳴る。
「なんじゃなんじゃ! 故障か⁈」
音を聞きつけた宗一が周囲を見渡す。
「いや、ちょっと会話で戸惑う内容だっただけだ、宗一の爺さん」
「そ、そうだよ! ちょっと戸惑う内容があっただけ!」
「ええ、ですから宗一様はお気になさらず……」
レイジング達が慌てて訂正する。
ただし内容を詳しく言わず。
「そうかの、じゃあ儂は部屋にもどるぞ」
そう言って足音が遠のくのを聞いてメフィスト達は安堵の息を吐いた。
「ガンツお前なんてこと言うんだよ!」
小声でメフィストが言った。
「いや、だって気になるじゃろ」
「それはそうだが、お前は話が飛び過ぎなんだ」
レイジング達四人は小声で話し出した。
「だって、裸の付き合いしとるじゃろ」
「本人達から『風呂に入っているだけ』と聞いているし嘘はないだろう」
「正直一緒に入浴されているという事実でも私は色々と不安なのですが……」
「だが、それ以上踏み込んでたら明らかにお嬢に変化が出るだろう」
クラレンスはため息をつく。
「それもそうですね」
「ファーストキスの時はしこたま怒られたのぉ……」
「アレ私たちが原因の事故でしたからね……」
「お嬢さん的にはロマンチックの欠片も無かったんだろう」
レイジングがあきれた様に言う。
「……ともかく、お嬢に変化があったら共有するぞ、落ち込んでいたらノウェムを問い詰める、そうじゃなかったら聞かない、いいな?」
「わかったよ」
「了解です」
「勿論じゃ」
そう言って、各自自室に戻っていった──
「パトリ社は借金完済ですね」
碧とノウェムが帰ったころレティシアは口を開いた。
「ええ、でも株式はまだ私が保有しているわ、その買い取りの話も近いうちしないと」
「萌木夫妻との約束ですか?」
「ええ、借金返済までは株を全部預かっていてくれ、貴方なら信用できるってね」
「なるほど……」
「やっぱり私だけが株を預かって正解だったわ。副社長が同席していたら自分にもと言い出して売り飛ばしていた可能性があったもの」
「信用してないんですね」
「仕事はできても、そういう信用がないのよ、あの人」
「同感です」
レティシアははぁ、とため息をつく。
「それに少しだけ、嫌な予感がするのよね」
「何にですか?」
「気にしないで、まだ確証がないから」
「あまり抱え込まないでくださいね」
「ええ、一応お父様に相談しておくわ」
「それがいいでしょう」
「仕事ならお父様は有能だから」
「私たちを助けてくださった時も素晴らしかったですよ」
「娘の友達と聞いて娘に格好いいパパを見て欲しかったんでしょうね?」
「そうでしょうか?」
「多分ね」
レティシアは茶目っ気たっぷりにロゼッタにウィンクをした。
「レティシア様、そろそろ家に帰りましょう」
「そうね、ロゼッタ。後の事は頼むわ」
「お任せ下さい」
セスとレティシアがいなくなった後、ロゼッタは呟いた。
「レティシア様がここまで仰るのなら……やはり副社長に何かある? 独自に調べてみましょう」
そう言って部屋を後にし、鍵を閉めた──
「──」
「貴方、何そんなにふて腐れているの」
慎次は妻の美代に言われてぶっきらぼうに答えた。
「碧君はいい、真面目で美奈を守ってくれている。あの子が男の子だったら私は美奈を託したいと思った程だ」
「碧ちゃんは美奈の病気を心配してくれてるものね」
車の運転をしながら慎次は口を開く。
「順という兄は逆玉だがそれを調子に乗ってないのが好印象だ」
「美奈から聞いたら『碧曰く「ある日突然兄貴を貸してくれと言われて貸したら帰ってきたときには婚約者になって結婚式の日が三日後だった、なんだか私はとんでもないものに巻き込まれた気がする」』って」
「貸してた間に何があったんだ……?」
慎次は運転したまま、軽く首を傾げる。
「碧ちゃんから聞いたらしいけど『レティシアさんにぐいぐいなんか迫られて気がついたら父親公認の恋人というかわずか一日で婚約者になっていた』だって」
「押しに弱いのか……いや、待て。一日で婚約? 理解できん」
「多分借金していた会社の社長さんだから失礼できず押し切られたのね、でも本人は今幸せそうだからいいみたいよ、碧ちゃんからきいたけど」
「だが借金は返済できたんだろう?」
「ええ、借金は全額返済できたって」
美代の言葉に、慎次はふむと呟いて言った。
「……それで一緒にいるなら、やはり自然と家族関係ができたのだろう、ふむ悪くないな」
美代はそれに微笑む。
だが、その次に慎次はあまり愉快ではなさそうな表情をした。
「だが、問題は涼という青年だ」
「ああ、涼君ね」
「合コンを情報目当てとはいえ、していたのは良いとは言えん」
「本人も失敗続きで諦めたって言ってましたものね」
美代も困った表情をする。
「どうしてあんな奴に美奈が惚れたのかわからん」
「こら、貴方。美奈は良い子よ。人を見る目はあるわ」
「だが最初の会社であんな目に遭ったじゃないか!」
「それは運が悪かったとしか……」
「殴り込みに行きたかったんだぞ、私は!」
「犯罪者になるから止めてくださって本当に助かりました」
怒鳴り声を上げる慎次を美代は宥める。
「でも、碧ちゃんが助けてくれたのでしょう? モナル社の方に情報をお渡ししたら賠償金がたっぷり支払われたでしょう?」
「それでも美奈の傷ついた心は癒えん!」
「それくらい知ってますわ、でも少しだけすっきりしたと美奈は笑って言ってましたわ」
「それは知っている」
「それに碧ちゃんのお兄さんですよ、悪い人ではないわ」
「問題児ではあるようだが……悪人ではないのは分かっている」
慎次は美代の言葉に渋い顔をしながら運転を続ける。
「私は美奈を応援するわ、でも碧ちゃんには言えないわね。多分『うちのダメ兄貴をみっちゃんには紹介も任せるのもできません!』とか言いそうだもの」
「想像しやすいな」
慎次はニヤリと笑う。
美代は呆れたように笑う。
「だから涼君、気付いてくれないかしら」
「俺は気付かないでいてほしいがな……」
「貴方ったら」
美代はそんな夫を見て苦笑した。
娘を大事に思う気持ちは分かる。
だが慎次は、それ以上に娘を心配し過ぎているのだった──。
各自の思いや考えが出ていると思います。
あと、幕間なので、碧とノウェムの出番は今回無しです。
名前だけは出ていますが。
レイジングたちの碧とノウェムの関係への思い。
レティシアの不安。
美奈の両親の思いと願い。
感じ取っていただけたでしょうか?
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




