47.借金完済‼~ロゼッタの過去と碧とノウェムの恋路~
今月入ってきた金額を確認する碧。
残債のことを尋ねられ、計算し全額返せることが判明。
歓喜の声をあげる──
「これが今月入る報酬全額だ……税金を差し引いても」
「えっと……478億8千9百万……」
「残債はいくらだ?」
「……返せる!」
私は歓喜の声を上げる。
借金を背負った日のことを思い出す。
あの時は十年かかると思っていた。
正直途中で潰れるかもしれないとも思っていた。
でも、みんながいた。
ノウェムさんがいた。
だから返せた。
だからここまで来られた。
もう借金に追われなくていい。
そう思った瞬間、胸の奥が少し熱くなった。
「だな、よくやった。何せあの後もパラシートゥス案件が連続したからな」
「本当にそれ」
そう、今月はロゼッタさんからパラシートゥス案件の依頼がぞくぞく来た。
国の研究所でパラシートゥスが発生したという依頼が立て続けに舞い込んだ。
だからなんであんな危険な存在を兵器活用したがるんですかね!
お国の偉い人のことは分からんわ!
それと、また火星、木星付近でパラシートゥス迎撃戦が二件入った。
必死になってノウェムさんと片っ端から撃破していったっけ。
それから他の細々とした案件をやったりして──
「良かった……10年かかると思ったのを一年近くで完済だー!」
「では入金してくる」
ノウェムさんと共に銀行へ行ってモナル社に残りの借金178億5千万を返済。
そして連絡し、モナル社の支社へ。
「レティシアさん⁈」
「レティシア⁈」
ロゼッタさんだけじゃなくレティシアさんまでいた。
「あ、安定期入ったからって危ないですよ!」
「大丈夫よ。セスたちがいてくれたから」
「レティシアさんに何かあったら私悲しいです……」
「ありがとう、ロゼッタにも言われたわ」
「当たり前です、社長は……私たちの命の恩人なのですから」
「命の恩人?」
「もうその話はやめて頂戴、実際貴方達を救ったのはお父様なのだから……」
レティシアさんは複雑な表情。
「碧様は口が堅いと思われるのでお話します、私はレティシア様の家の分家者です」
「それ聞いたような」
「はい、私には父と母、弟がいました。ですがある日、父が浮気相手と家の資産を持ち逃げして行方をくらませたのです」
「うへぁ」
これはこれで泥沼だ。
「母は母名義で様々なところで借金をさせられていたらしく、そういったことで倒れてしまいどうすることもできない私にレティシア様はおっしゃいました『ロゼッタ困ってるの? じゃあ助けてあげる! 友達だもん!』」
ロゼッタさんは続けた。
「レティシア様はすぐにご当主様へ相談し、借金も母がやったものではなく父名義へ変更させました。そして父と浮気相手を見つけ出し、持ち逃げした資産と慰謝料、養育費を一括で支払わせたのです。」
うわ、あのお父さん、やればめちゃくちゃできる人だったんだ。
……いや、レティシアさんのお母さんも、お母さんの浮気相手も徹底的に追い詰めていたし、それもそうか。
「お陰で母は元気になり、仕事を貰って働き、私たち姉弟を養い育ててくれました。今は楽隠居して私の夫と元気に会話しております」
「ロゼッタさん結婚してたんだ……」
「3歳と1歳の子どももおりますよ」
「子どもまで居た! 二人ともおいくつ⁈」
「私もレティシア様も30です」
「え?」
若々しい20代半ばより若く見えるレティシアさんとロゼッタさんを見る。
思わず聞き返した。
「30⁉」
嘘でしょう⁈
順兄さんと同年代だと思ってたよ!
「姉さん女房だった……レティシアさんめっちゃ若くて美人だしロゼッタさんも若くて美人だから騙されたー! ちくせう……」
何か若干世の中の年齢というものを信じられなくなった。
「それを言ったら、萌木さん夫婦も相当でしたよ」
「……そう言われれば確かに」
ウチの両親、お父さんは50で、お母さんは48歳だった亡くなった時。
だが、生前言われた。
『碧さんのお父さんとお母さんわかいねーいくつ……え? うそでしょう?』
である。
……うち、若く見える家系なのかな。
「ところで弟さんは?」
「モナル社傘下の病院で内科医として働いて居るわ」
「ほー……お医者さん、相当頭いいんでしょうね」
「かなり努力したのよ、あの子」
「すごい努力家だったんですね」
「ええ」
ロゼッタさんといい、弟さんといい、努力家の人なのかな?
「それもこれも、レティシア様の一言からです」
「そうなんですか……レティシアさん、友達だからって言ってお父さんに助け求めるの賢すぎません?」
「いえ、賢くないわ。お父様は私のために何でもしてくれたから友達も助けてくれるかなと思ったのよ」
「しかし、お父様もよくやりましたね」
「父曰く『あの男フィリアの結婚式で見た時から正直鼻について何かやらかすと思っていただけだ』と……どうやらロゼッタのお父様の事毛嫌いしてたみたいですよ」
レティシアさんの言葉にはぁ、となる。
人を見る目はあるんだな。
……まぁ、必要なら非情な手段も取る人だから、そこは正直ちょっと怖いけど。
「そう言えばレティシア様、あの男──父をご当主様はどうやって見つけたのですか?」
「ああ、後で聞いた話なのだけど実家へ直接乗り込み、被害総額を突き付けて『お前達が払うか、それともあの男に払わせるか二択だ、選べ』っていって実家の人は隠してたその人の住所とかバラして浮気相手と共に制裁したらしいわ」
「あ──」
実家も黒だったんか、だったら自分の身が可愛いわな。
「まぁ、その後お父様に聞いたら、その実家も何故か没落したそうなんですけどね」
「……」
後ろにレティシアさんのお父様の影がちらつくのはきっと私だけじゃないはず!
「ところでノウェム?」
「?」
先ほどから黙って聞いていたノウェムさんにレティシアさんが急に声をかけた。
「借金返済したんでしょう?」
「そうだな、レティシア」
「碧さんにプロポーズしないの?」
「ぶふっ⁈」
ノウェムさんが飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
げほげほ咳き込んでいるので背中をさすった。
ちなみに私にも寝耳に水の発言だ。
突飛すぎるよレティシアさん。
「い、いきなりなんだ!」
「ノウェムへたれだね」
「セス、少し黙ってくれないか?」
セスさんの指摘にノウェムさんは眉間にしわを寄せている。
「まだ心の準備できてないですし。それにノウェムさん、自分の体を大事にできてるか私まだ確認中なんで」
「碧⁈」
「それなら仕方ないわ、ということはプロポーズは碧さんから?」
「されたい側なんですけど、そうするしかないかなーと」
まぁ、本音。
ノウェムさんの耳まで真っ赤になった。
さーて、どうなる私達?
「それを言うなら君の行動も相当なものだぞ⁈ 社長なのに敵陣へ一人で飛び込む。危険地帯だと分かっているのに、パワードスーツを過信して!」
ノウェムさんが怒ったが、確かにとしか思えない、だがしかし。
「現場の辛さを知らない社長はやりたくないんですー」
ノウェムさんにそう言い返す。
「……まぁ、お二人とも、もっともな意見だからどちらの味方もできないわねぇ」
レティシアさんが困り顔で言う。
「レティシア様、碧様に甘過ぎです。現場の辛さは分かる必要は多少はありますが碧様の仕事はここ最近危険な仕事が連続してます」
「そうだったの? ロゼッタ報告してくれないと困るわ。報告、連絡、相談は重要よ?」
「申し訳ございません、パラシートゥス案件が続いたもので」
「パラシートゥス……一体どうやってあの群体を作っているのかしら、どこかに製造しているマザーみたいなのがいるのかしら」
「そっちの方があり得そうですよねぇ」
しんみり話す。
「まぁ、碧さんとノウェムの件は二人の問題だから頑張ってね。破局なんて許さないわよ?」
「「……」」
何か恐ろしい一言を聞いた気がする。
破局したらどうなるんだ⁈
何が起こるんだ⁈
「……破局しないように命を大事に動きます」
「私もだ」
「そうそう、二人とも命を大事にね」
にっこり笑うレティシアさんが怖かった。
借金は返せた。
次は会社も恋も、もっと頑張ろう!
それと……また借金しないように頑張ろう……
碧のモナル社からの借金は返済できました。
碧は頑張りましたからね。
碧たちですが、正確には。
次にロゼッタの過去話。
ロゼッタさんもまた苦労をした人であり、レティシアに恩を感じている一人でもあります。
そしてノウェムと碧の恋路はレティシアが別れたら許さないと脅しています。
ちょっと怖いですね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




