46.碧ダウンする~重労働による発熱~
重労働をした翌日。
碧は体の異常を感じ、ベッドから起き上がれなくなっていた。
ノウェムはそんな碧に──
重労働の翌日──
体が鉛のように重い。
関節まで痛く、起き上がろうとしても腕に力が入らない。
頭はぼんやりして熱っぽく、瞼を開けているだけでも辛い。
ベッドから出る気力がでない。
「碧、どうした?」
「……ノウェムさん、体温計」
「ちょっと待ってくれ」
そう言ってノウェムさんは非接触式の体温計を取り出し、額へかざした。
「38.1……完全に体調を崩しているな」
ノウェムさんは不安そうに私を見る。
「本当に疲労だけなのか?」
「うん、怠くて疲れがすごいだけだから……」
「風邪ではないのか?」
「風邪じゃないとは言いがたいけど……咳もないし、喉とか鼻とかにも異変はないし……」
「……それなら昨日の連続の依頼がきっかけで今までの疲れが出て、今の状態になったのだろう」
「……」
日々のデスクワーク。
現場でのプレッシャー。
七件連続の依頼。
……心当たりしかなかった。
「今日は会社は休みだ。美奈たちにも連絡するし、ロゼッタにも報告しておく」
「私一人で大丈夫だから、ノウェムさんがみんなを率いてお仕事して……?」
少しでも借金を返したかったから、そうお願いすると、ノウェムさんは呆れて言った。
「君を置いて現場へ向かうくらいなら休む。それに恋人としても護衛としても、病人を置いて仕事へ行く気はない」
「う゛ー……」
「と言う訳で、今日一日は君の看病だ、ゆっくりしなさい。何か食べれるか? 食べたいものはあるか?」
「……卵雑炊……」
「分かった。作ってくるから、ちょっとだけ待っていなさい」
そう言って私の頭を撫でてくれた。
少しすると、順兄さんたちが部屋へ入ってきた。
「碧大丈夫か?」
「大丈夫、働き過ぎで疲れが出ただけだから……」
「本当に……大丈夫か?」
涼兄さんの問いかけに答えると、順兄さんが心配そうに聞いてきた。
「順兄さんは念の為マスクしなよ……風邪だったらレティシアさんに移して大変なことになるから……」
「ごめんね、碧。そんなに大変だったのに気付かなくて……」
「仕方ないよ……みっちゃん、気にしないで」
「しかし、そこまで無理しないといけないほど仕事が多いのはどうかと儂は思うんじゃが」
宗一お爺ちゃんが渋い顔するし、みっちゃんも悲しませちゃった、反省。
でも、すこしでも元気なふりをして見せなきゃと笑ってみせる。
「あはは……借金返せる額が増えると考えておくよ」
「お嬢、ほんと、無理せんでな」
「お嬢様、お体をお大事に」
「お嬢ちゃん、無理はしちゃだめだよ」
「お嬢さん、無理は無しだぜ」
ガンツたちにも心配をかけちゃった。
またみんなに心配かけちゃったな。
「お前達どけ、今日はメンテ以外は休日だ。クラレンス達はメンテナンスを受けておけ、宗一さん、メンテナンスは頼みました」
「勿論じゃ任せておけ! ほれ行くぞ順! 涼!」
兄さん達は宗一お爺ちゃんにお尻叩かれながら部屋を出ていった、ちょっと情けないんだよなそれ……
「えっと私は……」
みっちゃんが困ったように周囲を見回す。
「セス、そこにいるだろう」
「勿論」
「二人でゼリーとか体に優しいものを買ってきてくれ、あとスポーツドリンクとか」
「分かりました、えっとセスさん、よろしくお願いします!」
「うん、よろしく。じゃあ行こう」
「よろしくお願いします、美奈さん。では行きましょう」
二人は部屋を出て行った。
「──で、トレース。お前は戦艦のメンテナンスの監視を頼む」
「了解ですよ」
トレースさんが部屋を覗き込んで居て、すっと姿を消した。
「……監視って必要なの?」
「あの三人がメンテナンスしてくれれば監視は不要だが、モナル社から来た者たちだからな」
「?」
「金に目がくらんでモナル社を裏切る行為をしかねない奴も出てこないと限らない、もしくは家族を人質に取られて何かするかもしれない、そういう案件がある」
「……モナル社で働いてるって公にするのってリスク高いんですね」
「そうだな、何せ他の事業でもトップ故恨みを買っている。技術者を引き抜こうとする企業もある」
「……そうなんだ」
「さて、丁度良い温度だろうし、食べられるか?」
「ん……」
何とか体を起こしてもらい、スプーンを掴むが上手く握れない。
「分かった」
ノウェムさんはそう言うと私に卵雑炊を食べさせてくれた。
お出汁をしっかりとった美味しい卵雑炊だった。
雑炊を食べた後は、水を飲み、再び横になる。
そばで、ノウェムさんが頭を撫でてくれて心地良い。
うつらうつらと眠りかけると、扉が開く音がした。
「全く面倒な目に遭いました」
「どうした?」
「その買い物帰りに怖い人達がきて……」
「美奈さんを攫おうとしていたので、全員叩きのめして後の事は処理部隊に任せました」
「そうか」
ノウェムさんがため息をついた。
「狙われる回数が増えているな」
「ええ、本当です」
セスさんも頷いた。
最近は狙われることが増えている。
最近は本当に、みっちゃんたちを一人で歩かせられない。
それが申し訳ない。
「みっちゃんが無事でよかった……」
「ごめんね、碧。心配かけて」
「いいの。私のせいで巻き込んじゃったんだもの……」
いや、マジで。
「買った物は冷蔵庫に入れますね」
そう言って冷蔵庫を開けたセスさんが一言。
「……碧様、もう少し食事に手間をかけてください、ゼリー飲料ばかりでは咀嚼の回数も減りますし、栄養も偏ります」
うぐ。
事実なので反論できない。
「ノウェム、どうにかできないのですか?」
「早朝の依頼が無ければ飯を食わせられるんだがな」
「分かりました。レティシア様に相談しておきます」
ひー!
後が怖いよ!
「では、美奈様、行きましょう。ノウェムに任せれば大丈夫です」
「はい……」
二人は部屋を出て行った。
そしてまた頭を撫でられてうとうとしてそのまま眠ってしまった。
「……ん」
目を覚ますと夜になっていた。
「熱は……36.2か。平熱になったな」
「ずっと看病してくれたんですか?」
「当然だ、私は君の恋人であり、護衛なのだから」
きっと前なら体調を壊しても護衛だからだったろう。
でも、その前に今は「恋人」がついている。
「えへへ……」
「どうした、笑って」
「好きな人と一緒にいられるって幸せだなって。看病してもらえるのも嬉しいなって」
ノウェムさんは驚いた表情を浮かべてから微笑んだ。
「さて、体調が良くなったから軽くシャワーでも浴びるといい」
「うん、そうする」
シャワーで汗を流し、風呂場から出てくる頃には新しいボディースーツとパジャマを渡してくれた。
私はボディースーツとパジャマを着用し、ベッドに潜る。
あれだけ眠ったせいか、もう眠気はなかった。
「ねぇ、ノウェムさん、お話少しする?」
「構わない、どうしたんだ?」
「んー寝過ぎたから寝られなくてね、そこでふと思っちゃったんだ」
「?」
「ノウェムさんと会わなかったら私たちどうなってたんだろう」
「……想像ができない、いやしたくもない」
ノウェムさんがぎゅっと抱きしめる。
何となくいい香りがする。
とても落ち着く。
「そうだね、私も想像できないや、したくないし。ノウェムさんと会えて良かった」
「私もだ碧」
「だからね、ノウェムさん。自分の命と体を大事にね」
「ああ、分かっている。君も自分の命と体を大事にな」
それから少し話をして、うとうとしはじめて私は眠りについた。
最初は抱きしめられて眠ることに戸惑っていた。
でも今は、とても安心する。
好きな人に包まれて眠れるんだもの。
碧、前回の七件もの労働で倒れる。
それ以外にも今までの疲労も蓄積されていたのもありましたが、前回のでとどめとなりました。
それでも借金返済の為にお金を稼ごうとする碧に、呆れるノウェム。
ノウェムに看護され、一日過ごすことに。
でも、二人の絆が深まった一日でもあったと感じてくだされば嬉しいです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




