44.ノウェムの機嫌変動~みっちゃんの才能~
一度痣だらけになるまで喧嘩したはずのノウェムとトレースだったが、碧が様子を見ると二人とも傷が完治していた。
そんな二人に碧は会社で喧嘩しないように忠告する──
「やはり桐人の奴は好かん!」
「会社でボロボロになるまでバトルしてるノウェムさんが言っても説得力ないよ今は!」
私はノウェムさんの傷を手当てしようとしたが、本人もトレースさんも断った。
「なんで? 手当てしないと傷口からばい菌が入るよ?」
「いえ、私たちは免疫力も人の何倍もありますし。また、治癒能力も人の数十倍あります」
もう一度ノウェムさんの打撲痕を見ると、すでに消えていた。
「もう会社では喧嘩しないでくださいね!」
「かしこまりました」
「わかった」
「喧嘩したら私からレティシアさんに言いますからね!」
そう言うと、困り顔になるトレースさん。
ノウェムさんは非常に複雑な顔をしていた。
「じゃあ碧、仕事に戻るね」
「うん、みっちゃんお願い」
「碧、さっさと書類の山を片付けるぞ」
「うへぇ……」
私はノウェムさんの言葉にげんなりする。
「ノウェムの愛情表現はわかりにくくて困りますね。そう思わないですか碧様」
「あー……周囲の目を気にするのがねぇ」
「碧、頼むからそういうのは言わないでくれ」
「いや、事実だし」
ノウェムさんはぐぅの音も出ない様子だ。
「独占欲という奴ですか? ノウェムも一丁前に持つようになったのですね、レティシア様が聞いたら喜びそうです」
「?」
「ああ、こちらの話です。では、周囲の見回りに戻ります」
そう言ってトレースさんはいなくなった。
「まったく、監視されていると思うと落ち着かん」
ノウェムさんはそう言って私と共に社長室に向かう。
「そう言えば、新しい戦艦っていつ納品なの?」
「もう納品されてるぞ」
「嘘⁈」
「見に行くか?」
「うん!」
社長室を出て戦艦を置くスペースを取っている場所に向かう。
「うわ……スマートに見えて何かゴツい」
前よりも大きい戦艦だった。
……というか、こんなの置くスペースあったっけ?
お父さんとお母さんこれも考慮してたのかな?
死んじゃった今となっては分からないけど……
「まぁ、色々搭載しているらしいからな」
「わぁ……」
「一応中を確認するか?」
「う、うん……」
中に入ると、とにかく広かった。
色んな意味で。
中に入ると、とにかく広かった。
通路も広いし、設備も充実している。
何かキッチンもあったし、人数以上の部屋もあるし、宇宙食も常備されてたし、あと……パラシートゥスの特効薬もかなり常備されていた。
「それとこれを」
ちょっとメカメカしいブローチを渡された。
「最新型のパワードスーツだ。つけておくといい、古いのは回収する」
「わかった」
そう言って古い方を渡して、新しくつけた。
青いコアっぽい箇所が綺麗に光っている。
「では、出ようか」
「うん」
戦艦から出ると、トレースさんがいた。
「あれ、トレースさん。見回りは?」
「いえ、その前に用事を思い出しました」
「用事」
「レティシア様から碧様の私服も自動分解再生機能のものに変えるので渡してほしいと」
「あ、いいです──」
よ、という前にノウェムさんが私の前に立った。
「男のお前に任せられん、セスを呼べ。もしくは私の次に作られたデケムを」
「全くこう言う時は嫉妬するんですから」
「うるさい、黙れ」
こういうところだけ面倒なんだよなぁ。
「ノウェムさん、私気にしないから」
「碧、私が気にする」
「別に下着渡せって言ってるんじゃないんだからいいでしょう?」
「下着だったら更に問題だ!」
怒鳴るノウェムさん。
ああ、こういう時面倒臭いな、どうしよう。
「ちょっと用事があってきました」
セスさんが目の前に現れた。
「あ、セスさん」
「碧様、ご機嫌よう。レティシア様が『トレースではノウェムが怒るでしょうから、セスが行きなさい』とのことで参りました」
「レティシア、最初からそうしてくれ……」
ノウェムさんは額を抑えていた。
「じゃあ、服を袋詰めするので、それもっていってください」
「はい、お手伝いします」
「……」
ノウェムさん、また不機嫌そうな顔してる。
「……ノウェムさんも手伝って、これでも服の量多いから」
「! 分かった」
いつもの様子に戻った。
ほんと、機嫌が良い時と悪い時が分かりやすくなってきたな。
私たちの部屋に行き、服をセスさんの持ってきた袋に詰めていく。
「碧さん、アミュレスのお洋服が好きなんですか?」
「はい! 派手な感じじゃない落ち着いた可愛い感じが大好きで……ズボンに使うレースの使い方も素敵で……」
「レティシア様もアミュレスのようなブランドを立ち上げたいと言ってましたよ。本人曰く『お父様が「社長なんだからもっと良いブランドを着なさい」と言っていて』と愚痴ってましたよ」
「……モナル社さん、アミュレスの株持ってましたよね? じゃあアミュレスにハイブランドラインを作ってもらったらいいんじゃないですか?」
「……その手がありましたか、レティシア様にご相談してみます」
「……碧、何かジーパンとタートルネックと夏用のシャツが大量に出て来たんだが」
「あ、それ家用。流石に家でアミュレスの服は着ないよ、お外用」
「パジャマはどうする?」
「あーどうしよう」
ノウェムさんの言葉に、若干困る。
時間かかるだろうな。
「パジャマは今日中に持ってきますのでご安心を」
そう思ってたらセスさんの予想外の発言。
これはありがたい。
「では、お願いしますね」
「では」
セスさんは一礼すると、一瞬でその場から姿を消した。
「……相変わらず動き早いね、貴方達」
「まぁ、そういう風に作られてるからな。ただセスは車で来たようだ、服を傷めないためだろう」
「なるほど」
私たちが服の整理を終えて社長室へ戻ると──
「碧ー! 今日の分終わったよ!」
そう言って書類を持ってみっちゃんが入って来た。
「早ー⁈」
みっちゃんの発言にはその言葉しかでない。
なんであの会社の連中は、こんな優秀な人材を潰すことしか考えなかったんだろう。
まぁ、今はモナル社の傘下になって、所謂ホワイト企業になっているらしいけど。
元いたパワハラ連中がどうなったかは知らない。
正直、知りたいとも思わないけど。
「碧、確認作業と、パソコンに送られたものの確認だぞ」
「分かってますよー……」
デスクワークマジしんどい。
「私が倒れたらみっちゃんに社長代理やってもらいたい」
「え、そこはノウェムさんでしょう?」
「ノウェムさんは補佐だから」
「……そうだな、美奈は残念ながら今はまだ社長は早い」
「その内引き抜きされて社長抜擢されることもあるかもね」
「それはないよ」
とみっちゃんは苦く笑うが、それに私はなんとも言えない表情を浮かべるだけだった。
ノウェムさんの言葉は、みっちゃんがいつかトラウマを乗り越えたら、本当に起こりそうな未来だったからだ。
その頃には、私ももっと胸を張れる社長になれているだろうか。
……いや、ならなきゃいけない。
そう思いながら、私は再び書類へと向き直った。
新しい戦艦にパワードスーツ入手回でもあります。
また碧の服を自動分解再生機能をつけるために服を渡す。
セスが来て対応しますが、碧はノウェムにも手伝うよう頼みました。
理由は、ノウェムが不機嫌にならないためです。
あと美奈は仕事のできが相変わらず早いです。
社長としての心意気を新たに碧は頑張るでしょう。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




