【幕間】キーア家と桐人~余計な一言が多い桐人~
パトリ社の借金の裏側の出来事。
レティシアから明かされる事実と、グレイズの行動に頭を痛めるレティシア。そして愉快犯桐人。
「借金また増えたらしい……」
「そうみたい、戦艦を破壊されたのがちょっと不味かったわ」
一軒家で編み物をしていたレティシアは、苦笑しながら順にそう言った。
「本当は同じ物を前と同じ値段で売りたかったんだけどね、その型だと常時パラシートゥス防壁バリアを置く場所がないし、置く場所を作ったり色々すると結局元値で売るより高くなっちゃうから最新型を八割引きで売ることにしたの」
「八割引で200億ってことは、本来の開発費は一兆円規模なのか⁈」
順は驚きの声を上げる。
「そう、それくらいパラシートゥス対策には莫大なお金が掛かるのよ。」
「それで100億増えたのか……」
「でも、碧ちゃんならきっと返済できるわ」
「貴方がそこまでいうなら信用しますが……」
順はため息をついた。
「何かあったの?」
「ここ最近帰り道に義父さんが『頼むからレティシアを説得してくれ! レティシアに会えないのは勿論、孫を3ヶ月も見られないなんて地獄だ!』と毎日のように来るので俺もトレースさんも、困ってるんですよね。トレースさんは『一応取締役なので無碍にはできませんし』って困ってるし、俺もレティシアのお父さんなんであんまり無碍にするのは……ちょっと」
レティシアは笑ってない笑顔になった。
「セス、クソ親……こほん、お父様に連絡を」
「レティシア様ごまかしきれてませんよ」
セスは呆れた顔で通信機で連絡を取る。
『こちらグレイズ』
「セスです、お嬢様からお話が」
『‼ 今すぐ変わってくれ‼』
通信機の向こう側では酷く焦った声が聞こえてきた。
「お父様、私音声録音でお伝えしましたよね?」
『いや、それは……』
言い訳を考えるような沈黙が少し生まれた。
『つい会いたくなってしまって……』
「そうですか。なのに、懲りずに私の旦那様とトレースに迷惑をかけて……いい加減にしていただけませんかねこのクソ親父」
『れ、レティシア! どこでそんな言葉を!』
レティシアは意地の悪い笑みを浮かべていった。
「貴方もよーく知ってる方ですわ」
『‼ 桐人か‼ あの馬鹿男‼ 頭もいいし、腕もいいが、人のヘイトを買うのは更に天才的だからな‼ 文句を言ってやる』
「桐人さんなら『知るか馬鹿野郎』でガチャ切りすると思いますけど?」
順ははらはらとした表情で通信と音声を聞いていた。
『ぐむむむ……』
「お父様には見合いや政略結婚ではなく、私の意思で結婚したのを尊重してくれたのは感謝します。が、それはそれ、これはこれ」
『……』
「子どもが1歳になるまで会わせない期間を延長します。もし改善してくださるなら、産まれてすぐ子どもを会わせますわ」
『‼ わかった‼ もうしない‼ 大人しくロゼッタと共に会社経営の方に専念する‼』
「それでお願いしますね」
『ああ‼』
通信が終わる。
「全く、困ったお父様だわ」
「……」
「ごめんなさいね」
「あの……桐人って桐生桐人?」
「ええ!」
順は恐る恐る聞いた。
「ど、どんな関係?」
「お父様から聞いた話では、随分昔からのお付き合いだそうですわ。唯一、お父様の血を引く私だけが桐人さんに会わせていただきましたわ」
「へ、へぇ」
「その間お父様がいらっしゃらないので色んな言葉を教えて貰いましたわ!」
「……桐人さん、何やってんの」
順は深いため息をついた。
「順さんは桐人さんと何か?」
「碧ほどなついてなかったけど、尊敬はしてた……ただ、まぁ俺がいじめというかそういうので自主退学した時に関係者の人生全部破滅させたって笑って言ってたのが非常に怖かった……」
「きっと順さんも、桐人さんにとっては大事な弟のような存在だったのでしょうね」
「悪い人じゃないんですが、やることが過激すぎる……」
「それはまぁ……否定できませんわ」
レティシアは困ったように笑った。
「……ところで、お腹大丈夫? さっきので凄いストレスになってたりしない?」
「レティシア様、ホットミルクです」
「ありがとうセス」
レティシアはホットミルクが入ったカップを口にした。
「ああ、落ち着くわ」
「……レティシア様、順様がおっしゃるように無理はなさらないでください」
「セスは心配症ね」
「ノウェムがいないのですから」
「そう、ノウェムはいないの。ノウェムには碧ちゃんがいるから」
「……」
「美奈さんの件はごめんなさいね、私の不手際だったわ」
「いえ、碧の暴走で無事に助けられたので……」
「そこまで大切な方でしたの⁈」
順の言葉にレティシアは驚きの声を上げる。
「美奈さんは、碧にとって唯一の親友なんですよ」
「そうでしたのね……」
「だから社宅で暮らす事になったって時は割と喜んでましたよ」
「それは良かったわ」
「ただ、すぐ会社に行けるんでデスクワークがはかどるらしくて、気付けば書類の山ができあがるんですよね」
「……」
「碧がそれに発狂しながら対処してます」
「美奈さんにもう少し抑えるように言った方がいいかもしれないわね」
「自分、会話できないので無理です」
「トレース、ノウェムも言い出しにくいと思うから貴方から言って頂戴」
「かしこまりましたレティシア様。では順様の護衛時に」
「お願いね」
ふぅと、空になったカップをセスに渡してレティシアは遠い目をした。
「お父様のことだから、桐人さんに鬼電してる頃ね」
あきれた様に言った。
「よし、調整終わり、少しずつ良くなってる」
「ごめんね桐人、私が誘拐なんてされなかったら……」
「いや、アレは俺のせいだ。お前は悪くない」
咲良の体の調整をしていた桐人は咲良に服を見せた。
「アミュレスの服を買って自動再生機能を付けたぞ、お前が好きなのこう言うので合ってるか?」
「──うん!」
咲良は満面の笑みを見せた。
その時、通信機がビービーと激しくなる。
「ああ、もううるせぇなぁ。咲良着替えていいよ」
「うん」
桐人は通信機に出る。
「はぁい! どちらさまぁ⁈」
『桐人、お前私の娘になんて言葉を教えてくれたんだ!』
「今頃その文句かよ」
桐人はどかっと椅子に腰をかけて、呆れたように言った。
『クソ親父と言われたのだぞ! 可愛い可愛い愛娘に! その上、孫の顔を見るのに三ヶ月禁止とか一年禁止が嫌なら大人しくしろと言われた! お前の入れ知恵だろう!』
「ま、多少はね」
『昔は私にそんな口を利かなかったのに! 何故娘にそんな言葉とか教えた!』
通信機の向こう側では金切り声が響き、桐人はうるさそうな顔をした。
「お前は『会社の為になることを教えてくれ』って言ったし、レティシアは『私の知らないことが知りたいわ』って言ったんだよ。」
『だからって口を悪くする必要があるかー!』
桐人は通信の向こうで激怒するグレイズを鼻で笑った。
「お前が変な行動取らなきゃ良かっただけだろ、これから俺用事あるからな、じゃあな馬鹿野郎」
そう言って一方的に通信を切った。
「……桐人って味方からヘイト買うのすごいよね」
咲良が着替え終えて、なんとも言えない表情で言った。
「憎まれ役って大事じゃん?」
「……桐人、それトラブルメーカーの間違いじゃない?」
「かもな!」
桐人は悪びれる様子もなく笑った。
桐人の言葉に咲良はどうしようもないなぁとあきれのため息をつくのだった──
実はかなり値段を下げて碧の会社に売り渡していた事が発覚。
多分、順は口が裂けても言わないでしょうが。
ノウェムは気付いても喋らないでしょうが。
一方グレイズは娘にかなり拒否されている模様、仕方ないね。
桐人は桐人で、電話の相手が誰か分かっているからの対応。
愉快犯です。
レティシアがたまに口が悪くなるのは桐人のせい。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




