42.木星防衛戦線~まさかの事態~
木星付近でパラシートゥスの大群が現れたと朝から聞かされる碧。
すぐに準備をし、戦艦に乗り込みワープする。
そしてノウェムをサポートしながらで戦闘機でパラシートゥスを迎撃していくのだが──
「ふぁ……」
「起きたか」
既に着替えているノウェムさんがいた。
「今は……8時か……」
私はふぅと息を吐き出し、パジャマからボディースーツへ着替え、その上から自動分解再生型のスーツを身につける。
パワードスーツ装着時には自動で分解され、解除と同時に再構成される特殊スーツだ。
これはレティシアさんからパワードスーツを受け取った際、一緒に支給されたものだ。
ちなみにノウェムさんの服は私服も含めて全部これらしい。
「さて、朝ご飯だ朝ご飯」
と思って、部屋を出ると通信機から緊急通信の音。
「はい⁈」
『碧様、申し訳ございません。こんな朝から、今度は木星付近でパラシートゥスの大群が現れてこちらに進行中とのことです』
「わかりました! 現場急行します!」
私はノウェムさんへ視線を向けると、既に戦艦に乗るメフィスト達に緊急連絡を取っていた。
「でも空きっ腹は無理!」
身を翻して冷蔵庫からゼリー飲料を一個取り出す。
このゼリー飲料一個で1日に必要な栄養の3分の1が摂れる優れものだ。
胃の中で膨らむので、お腹も結構満たされる。
ゼリー飲料を一気に飲み干し、ゴミ箱に捨てると、急いで戦艦に乗り込む。
「上昇して、指定ポイントにワープ!」
「了解」
ノウェムさんが操縦してワープする。
そして見た光景は──
「え、アレマジで私等でやるんですか?」
「……火星政府、月面政府、宇宙開発政府、モナル社、テトラ社が出動しているが、相当困難だと思っておいてくれ」
遠方には宇宙を覆い尽くすような紫の帯が伸びていた。
「ええい、死んだら祟って出てやる! 行こうノウェムさん」
「その前に脱出するから安心しろ」
「俺達も行くぞ」
「よし行こう!」
「クラレンス戦艦を頼むぞ、もしパラシートゥスが寄生を試みようとした時は……その時は小型艇で即座に脱出しろ、いいな」
「嫌なフラグ立てないでください!」
ノウェムさんと共にパラシートゥスの群体を撃墜していく。
「ノウェムさん! 左から10!」
「分かった!」
追撃ミサイルでパラシートゥスを消滅させる。
「また左20体!」
「ああ!」
パラシートゥスを撃墜していくと違和感を感じる。
「……妙だな、何か隠しているような」
ノウェムさんも違和感を覚えたらしい。
次の瞬間、私は急接近する個体を見つけた。
「……ノウェムさん、上昇して!」
私の言葉に即座に反応して上昇する。
猛スピードのパラシートゥスが一体、戦艦へ向かっていく。
その瞬間、背筋が冷えた。
「クラレンス! 落とせる⁈」
『無理です! 動きが速すぎて――うわぁ!』
通話はそこで途切れ、私たちの戦艦から小型艇が猛スピードで飛び出した。
『ノウェムさん、貴方が嫌なフラグ立てたからですよ!』
「す、すまん」
ノウェムさんは本当に申し訳なさそうな声を出した。
「もーノウェムさんのせいにしないの! ……戦艦落ちたら何処にいけばいい?」
『碧様、私の戦艦に帰還するようにしてください。対パラシートゥスの防護バリアが貼ってありますから安心してください』
「クラレンス、聞こえたー! 先に行ってて」
『お、お嬢は⁈』
戦艦まで落とされたんだ。
こうなったら少しでも戦果を稼いでやる!
「ムカつく! 手当たり次第ぶっ壊してから帰ってやる!」
「……碧が言うならそうしよう」
あの戦艦100億すんのよ!
同じ値段でモナル社の戦艦なんて買えないってマジで!
どうしよう。
……パトリ社マジで終わった……
と考えつつもヤケになりながらパラシートゥスの大群を殲滅してやった。
反省も後悔もしてない。
「そうですか、戦艦が撃墜されたと……」
「修理費幾らです……?」
ロゼッタさんの前でしょげながら聞く。
「この場合同じ物を作ってもまた撃墜される場合があるので最新型を購入していただきます。これはレティシア社長からのお言葉です」
「えっとおいくら……ですか?」
「200億ですが、今回の戦果で100億引いて100億となります」
「つまり借金がまた、増えるってことですか?」
「ご名答でございます」
「今までの借金は48億5千万でした。新型戦艦100億と新型パワードスーツ20億を追加し、今回の戦果100億を差し引いた結果、現在の借金総額は168億5千万となります」
ロゼッタさんが哀れむように告げる。
「しんがた……ぱわーどすーつ?」
「はい。パワードスーツ等も新調するようにいわれました」
私は硬直する。
「合計168億5千万……うそぉ」
私は頭を抱え、項垂れるしかなかった。
レティシアさんはこっちの都合というか、如何に安心して運営できるかが重要視してる。
が、しかし。
「これはないよう……」
「碧、強く生きろ、今度の戦艦はパラシートゥスが貫けないバリアを常に貼っているから今回のような事は無い」
「ノウェムさん……」
「私も必死に働こう」
「うん……アルバイトでもするの? 疲れちゃうよ?」
「いや、それだけでは足りないかもしれない」
「?」
「場合によっては、体を使ってでも金を稼ぐ」
「ストーップ!」
思わず制止の声を上げてしまう。
「何処で覚えたそんな言葉」
「涼が読んでいた本だ」
「あのクソ兄貴ー!」
社外なのにブチ切れてしまった。
ロゼッタさんがこほんと咳をした。
「ノウェム、それは止めなさい。碧様も悲しむし、レティシア社長も悲しまれます」
「体を売るのはダメです!」
「まだ最後まで言っていない」
「言わなくていいです! ノウェムさん、お家に帰って話合いましょう」
「あ、ああ」
書類のやりとりを交わし、私たちは支社を後にした。
「ノウェムさん、貴方好きな人以外とでもできるんですか?」
「……訓練されたから、我慢はできる」
ノウェムさんは淡々と言った。
おそらくノウェムさんにそういう訓練を指示したのはグレイズさんだろうな。
レティシアさんは絶対しない。
「いいですか! そういうのは好きな人とするものなんです!」
「だが、私と君はそういう行為ができない、だったら──」
「わ、た、し、が、い、や、な、ん、で、す‼」
声を張り上げて言うとノウェムさんは驚いたような顔をした。
「レティシアと同じことを言うんだな……」
「そりゃ言いますよ」
私は思わずあきれ顔になった。
「ノウェムさん、パトリに来てから体売ったりしてませんよね!」
「してない」
「ならよかった、もしやってたなら恋人止める宣言してましたよ」
「そ、そこまでか⁈」
驚くノウェムさんに私はジト目でかえす。
「今後枕営業するとか、体を売るとか発言したら本気で恋人の縁切りますからね」
ノウェムは少しだけ視線を伏せた。
「……一つ聞く」
「何です」
「君が人質にされ、私の体と引き換えに解放すると言われたら?」
私は言葉を失った。
……そんな状況、考えたくもない。
「答えられません」
「そうか」
「そんな未来にならないように、一緒に頑張ればいいんです!」
「今使っているパワードスーツは、1着5億で買い取るそうだ」
「2着だから10億……」
「つまり158億5千万になったな」
「微々たるもの……だが、私はめげないぞー! 目指せ借金返済!」
隣で苦笑するノウェムさんを見て、私は少しだけ笑った。
借金も戦いも恋愛も。
まだまだ、これからだ。
……だからお願い神様。
次は高額報酬の依頼でお願いします!
できれば借金が2桁億になるくらいのやつ!
はい、借金が増えるお話になりました。
再び3桁億の単位に。
ですが、碧はめげません、何とか借金を返そうと努力するでしょう。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




