39.とある一日~レティシアを狙って⁈~
とある日、レティシアがパトリへやって来た。
それに慌てる碧は兄の順に来ないように言えなかったのかというと、自分の説明下手を指摘され止められなかったと言われ頭を抱える碧。
そこで、碧はセスとは別の新しいナンバーズと出会い──
「父のことでごめんなさいね」
そう言ってレティシアさんが謝罪に来た。
「ちょ、レティシアさん、安静にしてなきゃダメですよ! 兄貴も何か言って──」
「俺が伝えるっていったけど、多分上手く伝わらないからって言われた……」
「順兄さん……」
レティシアさん、順兄さんの性格把握バッチリじゃないですか。
「多分来ないと思うし、家に来たらお引き取り願ってるから、セスたちが」
「今の主人はレティシア様ですので」
「ありがとうセス」
セスさんは頭を下げた。
「そしてそちらが──」
「レティシア様の妊娠中の健康管理の為に作られたデケムと申します」
「お父様、内緒でまたナンバーズ作成再開してたのよ」
レティシアさんの口ぶりからすると、ナンバーズの製造は止めたつもりだったのに、お父様が勝手に新型を作ったらしい。
まさに子の心親知らずだ。レティシアさんが激怒するのも無理はない。
「親の心子知らずという言葉があるが、この場合は子の心親知らず、じゃなぁ」
宗一お爺ちゃんもあきれたようにため息ついてるし。
「そう言えば気になってはいたんじゃが、ノウェムと碧が子どもが欲しい時はちょっと特殊な方法を使う必要があると聞いてな」
宗一お爺ちゃん、それ、今聞く。
「あら、ノウェムと碧ちゃんの子に興味が?」
「二人は恋仲じゃろ、ノウェムが馬鹿しない限り上手くいけば結婚じゃが……ノウェムの下半身男のものがついとらんからどうしたものかとな」
「方法は残念ながら企業秘密で教えられないんです」
「そうか、残念じゃ」
「ただ、碧ちゃんがちょっとだけチクッとします」
何が「チクッ」となんだ?
「その『チクッ』が気になるんですけど?」
「碧ちゃんのブライダルチェックに問題がなければ、あったらまた別の方法です」
「ふむ、様々な方法を持っておるんじゃな」
「ええ」
「なら良いわい。碧は子どもが欲しかったら社長さんに頼むといい」
「だから宗一お爺ちゃん気が早いって」
私は呆れのため息をつくとその瞬間、背筋を氷でなぞられたような悪寒が走った。
反射的にパワードスーツを装着し、レティシアさんの前に飛び出した。
ガンッ!
凄まじい衝撃音が響いた。
手の痺れと、腹部に来た衝撃に耐えながら私は周囲を見渡した。
「此奴か、私の恋人とレティシアの命を狙ったのは」
黒い生き物が、ノウェムさんに首を掴まれもがいていた。
ごきゃり
という音と共に生き物は垂れ下がり、動かなくなった。
「デケム、これを研究所に運べ。私は護衛警戒レベルを上げる」
「かしこまりました」
ノウェムさんの指示に従い、静かにデケムさんはノウェムからその生き物を受け取り姿を消した。
「いったあ~~!」
パワードスーツを脱いで出た言葉がソレだった。
「無謀なのは君も同じだろう!」
「だって誰も気付いて無かったでしょう?」
「そう言えば……」
「何で気付いたんだろう私だけ」
首を傾げた。
通信機がなる。
「はい?」
『よぉ、碧。俺だ』
「桐人兄さん⁈」
『その様子じゃ、β-001型って呼ばれる対ナンバーズ用生物兵器に襲われた後だな』
「β-001型?」
『モニターを出せ』
「う、うん」
通信機からモニターを投影させる。
空中で固定したそれに映ってたのは先ほどのバケモノ。
「あ゛ー‼」
『そいつらな、モナル社のナンバーズだけは反応が遅くなるように隠蔽工作されてんだ』
「えっとつまり?」
『感知できるようになるナノマシン作っといたから送って注入しろ』
「ちょっともっと説明頂戴!」
『んーとな、レティシアが身重なのは分かってなかったみたいだが、ナンバーズしかいないのを見計らってたんだろうな。まぁ対策はしといたからな。碧なら気付くと思ってた』
「何したの?」
『内緒。お前自身には何もしてねぇ。ただ、お前なら気付くと思ってた』
「一体どういうこと……」
『んじゃなー!』
通信が一方的に切られる。
「はい、レティシアです。あらロゼッタ? ええ、ええ分かったわ」
今度はレティシアさんの通信機がなり、レティシアさんは頷いて指示を出した。
「桐生桐人を名乗る人物から、ナンバーズ全員分の特殊なナノマシンが届いたそうよ。これから各支部へ送るそうです」
「桐人兄さんここでは名乗ってるんだ」
「公にできない案件だから、本名を使ったのでしょうね」
そうかと納得する。
モナル社のナンバーズという存在もある意味非人道的な存在だ。
表に公表されれば大問題になることは避けられない。
だからこそ、裏側で送ったのだろう。
本名で。
「……彩花姉さんの病気特効薬出すときは、匿名で出したのに……」
「モナル社経由でしたね」
「ええ……」
「モナル社としては会社保有の特許が増えたことは喜ばしいですが……」
「彩花お姉さんが死んだ事が悲しくて嬉しくない!」
ただ一人を治すためか、それとも多数を救うためか。
彩花姉さんは後者を選び、賭けをした。
そしてその賭けには、勝ったんだ。
でも、喜べない。
だって彩花姉さんがいないんだもの。
「彩花姉さんにね、もし病気がよくなったらお父さんとお母さんの会社で働いてねって約束したんです。でも約束は守られなかった」
「碧さん……」
「碧……」
「碧、彩花とそんな話を?」
「儂も初耳じゃ」
「まだ病院に運ばれて間もない頃だったからね。元気づける気で言ってたけど、今となっちゃあ私の後ろめたい過去だよ」
「碧」
ノウェムさんが抱きしめてくれた。
「後ろめたいことじゃない。彼女はその言葉を糧に、死の間際まで戦ったのだろう」
「でも……」
「文句があるなら桐人に言うべきだ。何故治療してくれなかったのか、と……私なら奴にそう問いただす」
「言ったよ、そしたら『もう重症でこれから特効薬作るのは間に合わないから緩和ケアに移動させた』だって」
「……あの男は」
「桐人兄さんも助けたかったって、でも賭けだからそうする訳にはいかなかったってさ」
「全く、厄介者め」
ノウェムさんは次々と悪態をつく、まぁ気持ちは分かる。
「だからねノウェムさん、死ぬような真似とか死なないでね」
「──分かった、だが君も今日のような行為はこれきりにしてほしい。私の心臓に悪い」
「うん、分かった」
私がそう頷くとノウェムさんは微笑んで頬を撫でた。
「では私は帰りますね」
「お気をつけて」
皆で見送る。
みっちゃんは具合が悪いと先に帰った。
仕方ないよね、でもなんであんだけの量短時間でこなせちゃうの?
デスクワークの天才?
「碧、書類の最終確認は君の仕事だぞ」
「分かってますー!」
むくれながら社長室に書類を持ち運んで、デスクワークに励むことになった。
それにしても、桐人が仕掛けた何かって何だったんだろう?
ふと首元のネックレスを見る。
青く煌めいていた。
「まさかね」
思い直し、私は書類と格闘を始めた──
レティシアが狙われる回でした。
妊娠中ということは知られていなかった様子ですが、それでも安心できないパターン。
碧がいなかったら今頃どうなっていたか……
そして碧視点での彩花への思い。
桐人への複雑な感情と、ノウェムの言葉。
色々と詰まっています。
桐人から貰った青い宝石の付いたネックレス、これが重要です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




