【幕間】碧の知らぬところで~事故についてと、ノウェムについて~
ノウェムが来るまでと、来た時起きたハプニング、幕間。
ほの暗い灯りに照らされたモナル社の秘密のラボの最奥部で、ゴポゴポと、液体に満たされたポッドの中に、マスクをした人が1人眠っていた。
液体が抜かれる音がして、プシューと音がなり、蓋が開く。
「……」
男性の骨格を持ちながら、女性の身体的特徴も備えた異質な存在が、裸のままポッドから身を起こした。
「ご機嫌よう、お目覚めはいかが? ノウェム・アルモニア」
レティシアがその存在に声をかける。
「レティシアか、私はどれ位寝ていた」
「ほんの一年よ」
その異質な存在──ノウェムはレティシアに問いかけた。
「そうか」
レティシアの答えに納得したのかノウェムは静かにうなずいた。
そしてもう髪や肌に付着していた液体は乾いており、ノウェムは服を身につける。
「要件は何だ」
「護衛よ」
ノウェムの問いかけに、レティシアは即答する。
「誰の、いつまで」
「期間は未定、護衛対象は──」
レティシアは写真と書類等を見せる。
「萌木碧。株式会社パトリの新社長」
「……新社長? あそこは萌木夫妻が──」
ノウェムは首を傾げると、レティシアは目を伏せがちにして首を振った。
「亡くなった。いいえ、殺されたわ」
「……誰にだ」
重い空気にも圧にもレティシアは動じなかった。
「分からない、今しらみつぶしに捜索を開始したところよ」
「そうか……」
レティシアの答えに、ノウェムは短い言葉を口にした。
「それとご家族たちも護衛してくれないかしら」
「厄介な仕事だ」
レティシアの依頼に、ノウェムはため息をついた。
だが、表情は無表情のままだった。
「ごめんなさいね」
「いや、それが私の仕事だ」
レティシアの謝罪に、ノウェムは首を振った。
レティシアはそれをなんとも言えない表情で見つめてから、穏やかな微笑みを張り付けた。
「給料は私が払うから、貴方は彼女の護衛をしつつ社員として仕事をして」
「了解だ」
ノウェムはそう言うとレティシアに着いていった。
後日、碧が襲撃された際、ノウェムはそれを撃退することとなった。
「葛木昭夫さん、パトリの副社長として責任者に着いてくださりありがとうございます」
「副社長という責任者といっても名ばかりのですよ」
白髪交じりの髪をなでながら、日に焼けた恰幅のいい壮年の男性はレティシアにそういった。
「しかし、兄貴と義姉さんが亡くなるなんて……」
「私、少し貴方が関与していたと疑っていました、会うまでは」
レティシアの言葉に男性──碧の叔父である昭夫は不快そうでもなく、さも当たり前だと言わんばかりの表情をした。
「やっぱり疑われるか」
「ええ」
レティシアは告げる。
昭夫はため息をついた、そしてレティシアは語り出す。
「あの日萌木夫妻が向かった先は家ではなく、貴方の家。そこで事故があった」
「『お前にも伝えたいことがある』って電話がきたからな、突然」
昭夫はレティシアにただ事実を伝えた。
レティシアは頷く。
「ええ、それは私も見ました、そして誰に電話をしたのかも聞きました」
「……アンタたちがやったってのはないか?」
昭夫が疑いの目を向けるとレティシアは首を振った。
不快な顔ではなく真剣な表情になった。
「それなら私は真っ先に警察を入れず自分の部下たちにあの家を家宅捜索させていますよ。警察が介入したのに、おかしいから私は今あなたに聞いているのです」
「……俺が知る限りじゃ、兄貴は何か掴んだらしい、それの内容の一部なら俺は持って居る」
レティシアの言葉で昭夫の疑念は少し和らいだ。
すると昭夫は何か重要そうなことを言い出した。
「‼」
レティシアの表情が固まる。
「アンタも持ってるんだろう? 兄貴から貰った情報の一部を」
「ええ……」
互いに持って居た情報を見せ合う。
其処には世間に公表したら大問題になるような内容がつまっていた。
非合法の人体改造計画。
とある寄生生命体を寄生させるために、生き物の受精卵に人の遺伝子を組み込む計画など。
「この情報だけでも世間的にヤバいな」
「これは私が保管していいですか」
昭夫は眉をひそめた。
それを見て、レティシアが提案する。
「いいよ、保管してくれ」
レティシアはメモリを受け取り、ネット回線を繋いでない小型パソコンに情報をインプットさせた。
「保険です」
レティシアはメモリを鞄の中に入れ、パソコンもしまう。
「貴方は責任者として見守るのがいいでしょう、何も知らない体で」
「分かっているとも」
昭夫が帰ると、レティシアはふーと息を吐き出した。
「誰が、あのご夫妻を……そして碧さんを狙うということは碧さんは何か知っているか鍵となる……?」
レティシアは髪をかき上げる。
「ブレックル社に、レディン社……どっちも裏では悪評が目立つわね……」
ふぅと息を吐き出した。
「私も清廉潔白ではないけども、萌木夫妻は何を一体掴んだというの、他に」
「……人工的な兵士の製造はある種黙認されている。でも──」
少し無言になってから確認するように口を開いた。
「|人を無理矢理改造して兵器にするのは禁じられている《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》連中はそれをやっている、裏社会の人間にだけど……」
「その上今は禁止されてる|ロボットの意思を無視して戦闘用に改造までやってる」
はぁ、とレティシアは持ってきたスムージーを飲む。
「頭が痛いわ、これだけでも頭痛の種なのに、まだ山のように隠されているんだから」
眉をひそめて、真剣な眼差しをして独り言を言う。
その後、何かを決意したようにレティシアは髪を結ぶ。
「私も少し動かないとね」
そう言って個室を後にした。
株式会社パトリの会議室で、メフィストたちロボットが、話合っていた。
「なぁ、聞いたか借金のこと……」
「お嬢が『にひゃくおく』ってぼやいてるぞ」
レイジング達は借金の額が倍増したことに脳みそがパンクしている碧を心配していた。
「二百億……」
「返済、できるのかなぁ?」
クラレンスが呟き、メフィストが不安げに言う。
「返済できるのかな? じゃねぇよ、メフィスト。するんだよ、お嬢さんのためにも」
「そうですね、お嬢様はそのために働いてるんです」
レイジングが叱咤激励すると、クラレンスが立ち直る。
「う、うん。でも気になることがあるんだよ」
「なんだ?」
メフィストは違うことが気になるようだった。
それにレイジングは問いかける。
「ノウェム、って奴の事だよ。お嬢ちゃん、大丈夫かな」
「あー貞操的な意味でか?」
メフィストの言葉に、ガンツが単刀直入にメフィストが疑問に思ってるだろうことを口にした。
「「「ガンツ言葉を選べ!」」」
三体はガンツに食ってかかる。
「お、おう、すまんかった……」
「私に何か用か」
会議室で騒いでいるのを聞きつけたノウェムがやって来た。
「おい、お前お嬢に手を出したら」
「できないぞ」
レイジングの言葉にノウェムは即答した。
「どういう意味だ?」
「証明しよう」
「は?」
ずる
レイジングが最後まで言う前に、ノウェムはチャックに手をかけてボディースーツを一気に脱いで見せた。
「「「「ウワァ──⁈⁈⁈⁈」」」」
四体が絶叫する。
「なんじゃなんじゃ!」
ノウェムがボディスーツを着直していると宗一がやって来た。
「メフィストにクラレンスに、レイジングにガンツまで! なんじゃ顔赤くしよって!」
「こ、こいつ、ついてない!」
メフィストが顔を真っ赤にして宗一に言う。
「は⁈」
「だから、ち○こがないんだよこいつ!」
宗一は何のことか分からず混乱する。
メフィストが顔を真っ赤にして続けた。
「男なのにか⁈」
宗一も目を丸くした。
「男とは言った覚えはないですが」
「じゃ、じゃあ女か」
ノウェムはきっぱりと否定した。
宗一は気になり問いかける。
「いやどちらでもない」
「「「「「は?」」」」」
ノウェムの答えに、全員が思考を停止させる。
「だから、私は彼女に無体を働くなどせんよ」
ノウェムはそう言ってその場を立ち去った。
後に、碧に聞いてみると。
「あー医学的には色々呼び方があるらしいけど、『カ○ト○ーイ』って奴が近いのかな、昔はそう呼ばれてたらしいけど、そういう人かな」
と別に驚きもせず、のんきにしていたという。
ちなみにこの知識を教えた罰として順と涼は宗一にこっぴどく絞られて、メンテナンス等の方の勉強でもびしばししごかれたそうな。
「俺は言ってないのに‼」
「……俺等のエロ本とかからだろ」
宗一にしごかれながらも愚痴を言い合う涼と順。
「BL本買った兄貴が原因だろう⁈ 俺無罪なのにー!」
「じゃかあしい! つべこべいわんで次じゃ次!」
宗一の厳しい勉強と整備実践の練習は夜になるまで続いた。
「……宗一といったかあの老人」
ノウェムはしごかれている2人をみて呟いた。
「あの老人は怒らせないようにしよう」
そう言ってその場を立ち去った──
念の為○で伏せさせて頂けました。
まぁ、分かる人は○に入る文字とか内容分かるんでしょうが……
そういう意味でレティシアはノウェムを碧の護衛に推薦しました。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。
2026/05/28加筆修正しました。




