4.大浴場にて~裸の付き合い~
碧、ノウェムと裸の付き合い、語り合い。
「づーがーれーだー」
依頼を終えて会社に戻ってきて、私はパワードスーツを脱いでから突っ伏した。
「つかれるのは君の考えなしの突撃にあると思う」
「でーすーよーねー」
ノウェムさんの皮肉に、私は唇をとがらす。
つい一時間前の事、銀行強盗が発生し、現場に急行した私たち。
逃亡を図るパワードスーツの男たちに私はそのまま突撃し、車ごと貫き、強盗たちはパワードスーツで助かったが気絶していた。
逃げようとするヘリに飛び移った私は強盗犯たちを叩きのめして拘束し、最後はロケットランチャーで無人になったヘリを撃墜した。
幸い人質も負傷者も出なかった。
犯人達は全員確保され、警察に引き渡された。
警察官に「やりすぎ」のお小言を貰い、会社に来ていたレティシアさんにも「少し考えて行動をね」とたしなめられ、宗一お爺ちゃんには「碧、お前死ぬ気か馬鹿もん!」とこんこんとお説教を喰らったのだ。
それが終わったのが先ほどー。
「つかれたー温泉か銭湯いきたいー」
「温泉? 銭湯?」
首を傾げて、ノウェムさんは私の言葉を理解しようとしているようだった。
「そうだ、つかれたし一緒に行こう⁈」
「いや、私は……私は昨日入ったばかりの人間……だぞ?」
「うちでは社員は家族みたいなものだからね、だから行こう!」
「……家族、か」
ノウェムさんはためらったが、私は気にせず言う。
「家族風呂なら他のお客さんに見られないから大丈夫!」
「……承知、した」
ノウェムさんはなんとも言えない表情をしていた。
いやぁ、性別は不詳でもついてないなら裸の付き合いもありだよね!
「おう、お嬢さん。何処へ」
「近場の大浴場! 大浴場招き猫のところ!」
レイジングに尋ねられたので行き先を教える。
小さい頃からお世話になっている大浴場。
ゲームとかアニメともコラボするのでよく通ってた。
「誰と行くんだ?」
「ノウェムとーじゃねー」
「……」
るんるん気分で私はその場を後にした。
が、後ろで「お嬢ー⁈」と聞こえた気がしたが無視した。
15分ほどあるいて大浴場招き猫の入り口に到着。
「いらっしゃいませー……あら、碧ちゃん!」
「女将さんご機嫌よう!」
この大浴場招き猫の女社長さん。
現場主義者なので仕事場にもいる。
皆からは女将さんと呼ばれている、ちなみに年齢は不詳でも、若々しい。
女将さん曰く「女はミステリアスのほうがいいのよ」とのこと。
なので聞いていない。
「元気そうで何よりだわ」
「ははは、元気じゃないとやってられないんですよ。あ、家族風呂大人二枚で」
両親が亡くなった時葬式に来て私の落ち込んでいる姿をよく覚えているのか、安心した表情を浮かべている。
元気そうだと指摘されたが今の私は、社長なので元気じゃないとやってられないので、元気と言っておいた。
「家族風呂ね、丁度空いているわよいいところが」
「でも、お高いんでしょう」
お、女将さんのいつものビジネス漫才か、いいでしょう。
のって差し上げます!
「それが今なら大人一人で三時間千円~~! しかもしっかりとしたサウナとか色んな設備完備~~!」
「やだ~~! やす~~い!」
私たち家族と女将さんのやりとりだ、昔からのご贔屓さん限定の奴。
「……」
ノウェムさんは、なんか得体の知れないものを見ている目をしてる。
そんな目でミナイデ。
「……取りあえず、休めるんだな」
「そう! じゃあ、二千円!」
そう言って私は千円札二枚を出す。
「え」
「だって、ノウェムさんを連れてきたのは私だもの。お金は私が払うの!」
驚くノウェムさんにそう言って、鍵を貰い家族風呂のエリアへと歩いて行く。
「あ゛~~しみるわ~~」
「……」
銭湯のお風呂は家のお風呂とはまた違う味わいがある。
まぁ、若干お年寄り臭いセリフを言った気がするが。
それにしてもノウェムさん、何かなんとも言えない表情をしてるな本当。
「あ、じじ臭いとか思ったでしょう」
「いやその、普通このような体でも男要素はあるのに、一緒にこうして風呂に入るのはどうかと……」
なるほど、そういうことね。
一応体つきは男性よりだから気にしてはいたんだ。
「男性の裸は見慣れてるよー何せ、親父が風呂上がりに裸族だったからね、最初はビビったけどもう慣れたし」
「はぁ……」
私はノウェムさんをみて言う。
「ノウェムさんは家族みたいなものだからね、だから気にしないで!」
「……レティシアから頼まれた新入社員なのに?」
ノウェムさんは何か変なものをみるような目で私を見た。
「家族経営って悪いイメージあるから、私の代では払拭したいの! で、もし私の次に次ぐ人が出たら、その人は血のつながりは無くていい。会社を、社員を大事にしてくれるなら」
「まだ社長になってあまり経たないのにそこまで考えてるのか……」
私の考えにノウェムさんは少し感心した顔をする。
それにしても表情わかりづらいなぁ。
ひきニートの順兄さんの相手してこなかったら私も分からないレベルだぞこの表情の変化。
「まぁねー」
「……その割りには猪突猛進すぎる」
「うぐ」
図星を指されて、私は言葉を失う。
「君は彼らが、ロボットたちが大切なんだな」
「そうよ! 小さい頃から一緒だったの!」
ノウェムさんの言葉に私は笑顔で返す。
そう、物心つく頃にはもうみんないた。
メフィスト、クラレンス、レイジング、ガンツ、みんな私の大事な家族!
「そうか……だから彼らは君に過保護なのだな」
「そう、今でも私が何かあると『お嬢ー‼』って四人とも、絶叫するの、いや三人かな? ガンツはそんなに驚かないから」
ノウェムさんの言う通り三人は特に過保護だ。
ガンツは割とおおらかだが、最近叫ぶ回数増えた気がする、なんでだろう?
「……四体、ではないのだね」
「うん、私にとって、家族だから」
ロボットだから「体」と数える人が多いけど私は「人」として数える。
これが長年私が彼らと共に生きてきたあかしだから。
と言ってもまだ十八年も経ってないけどねー、大体十数年くらいかなぁ、いや十五、六年位かな?
「今頃、会社は阿鼻叫喚だろうな」
ノウェムさんは、頭にのせたタオルで顔を拭いて言った。
「どうして?」
「……分からないというのが罪だな」
呆れるノウェムさんに私は首を傾げた。
二時間近くたっぷり温泉を堪能し、飲み物も飲んで、サウナでデトックスもしてすっきりして家路につくと──
「おい! ノウェム! お嬢に何かしなかっただろうな⁈」
レイジングがノウェムさんに突っかかってきた、もうなんで?
「何もしてない」
「嘘ついてるんじゃないだろうな!」
ノウェムさん、少し鬱陶しそう。
レイジングがまた怒鳴り散らしてる。
まったくもう、この過保護さんは。
「嘘ついてないよー寧ろ私がノウェムさんの体ぺたぺた触った」
「「「お嬢ー‼」」」
ガンツ以外の三人の絶叫に耳を塞ぐ。
「もう、一体何なのよ!」
思わず、呆れてしまう。
「嫁入り前なのに、そんな無防備な!」
「嫁に行く気も、貰う気もないけど?」
クラレンスの言葉に私は、思ってることを言葉にした。
だって、私結婚できなさそうだし、そもそもいじめのせいで男女不信が若干あるし。
「なに? 碧、儂は聞いておらんぞ!」
宗一お爺ちゃんが話しに混じってくる。
「だって借金二百億だよ、結婚は兄貴に任せる」
そう言って、順兄さんと涼兄さんを見る。
「え、マジ?」
「……無理」
涼兄さんと順兄さんが顔をこわばらせる。
「碧、儂はお前さんの花嫁姿を見たいとおもってるんじゃぞ?」
宗一お爺ちゃんが悲しそうに言う、でも結婚できなさそうだし。
「お嬢の結婚は俺達の目に叶った奴だけだ!」
「ええ、そうですね!」
「うん!」
レイジングと、クラレンスとメフィストが、叫ぶ。
君らのお眼鏡にかなう人って相当ハードル高くない?
「お前さんら過保護じゃの」
ガンツが呆れたように言った。
うん、過保護だ本当に、こういうのもあるから結婚する気は無い。
昔からメフィストたちは過保護だ。
私が泣いて帰って来ると「いじめか⁈ よし締める‼」と相手の家に乗り込んで脅すのをどうにかするのが本当に大変だった。
お陰で「ロートルロボットたちのお嬢様」なんて悪口も言われた。
その時は殴り返した。
確かにロートルかもしれない、でもそれを他人が言うのは絶対許せない。
勿論私も言わない。
廃棄寸前だったメフィスト。
型落ちで引退したガンツ。
戦闘用に改造され捨てられたクラレンス。
同じく型落ちになったレイジング。
訳ありの皆だけど、私の大事な、大事な家族。
心配されるのは嬉しいけど、過保護はちょっと勘弁して欲しいお年頃な今日この頃。
「ノウェムさん、また大浴場いっしょに行こうね」
「え、あ、ああ」
ノウェムさんとはなんとなく長い付き合いになりそうなのでそう声をかける。
ノウェムさんは少し戸惑ったように言った。
「「「お嬢ー!」」」
絶叫する、メフィストとクラレンスと、レイジングの三人。
相変わらず、ガンツ以外は過保護だなぁ。
と思う今日この頃でした──
碧は結構明るいですが、根っこでは諦めていることも実は多かったりします。
だからこそ、早く借金返済したいのもあるのでしょう。
ノウェムはノウェムで自分の体を見てある意味「興味を抱かない」「普通に接する」碧が非常にめずらしくて戸惑っているのが本音です。
またロボット三体はめっちゃ過保護です、ガンツはお嬢(碧)の性格を把握した上で達観しているのですが、他の三体は分かってるからできないのです。
宗一がいった花嫁姿が見たいは彼の本音です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。
2026/05/28加筆修正しました。




