32.宗一の過去~本当の家族は~
パラシートゥス案件がテレビで隠されて放送されているのを見て複雑な心境の碧。
美奈の処理能力のはさやに悩みつつも社長業務を務めていると、ノウェムから不法侵入者が来ていると聞き──
R国の研究所の事件はテロリスト襲撃事件とされた。
データ流出こそ防がれたものの、メインコンピューターは完全に破壊され、研究所も大きな被害を受けたらしい。
「やっぱりパラシートゥスの話題は禁句なんだろうねぇ、どこの国も」
社長室で呟きつつ、デスクワークに勤しむ。
「みっちゃん仕事早いから私の方が悲鳴上げるよ、本当!」
みっちゃんの優秀さには舌を巻く。
みっちゃんの処理速度が速すぎて、確認する私の方が追いつかない。
「碧」
「何、ノウェムさん」
「美奈が具合が悪いと言っていたから送って来た」
みっちゃんやっぱり病気になりやすくなってるのかな、心配だな……
「熱はない。ただ疲労だそうだ」
「ありがとう」
みっちゃんに何かあったら私の心臓に悪い。
というかご両親に申し訳がたたない。
「美奈にも護衛はついている、安心しろ」
「そうか、なら良かった」
みっちゃんにも護衛がついてるのか、なら安心だね。
そんな話をしていると、外が騒がしい。
「どうやら、ロボットの運動スペースに不審人物たちが来たらしい。ドゥオが全員捕縛している」
ロボット達のスペースに誰か不審者がきたらしい。
不審者?
こんな真っ昼間から?
私は不安を抱えながら、向かった。
「親父! 金があるんだろう! 助けてくれよ!」
「俺達借金取りに追われてるんだ! 助けてくれ!」
「お父さんお願いよ!」
宗一お爺ちゃんに向かって言っていた。
「宗一お爺ちゃん、この人たちってもしかして」
「儂と縁を切った赤の他人じゃ」
宗一お爺ちゃんはそう言い放った。
「何だよ! 母さんと俺達を放置して働いてばかりだったくせに!」
「そうだそうだ!」
「そうよ!」
その言葉にカチンと来た。
こいつら、マジで何も知らないんだな。
「一言もの申す」
「いいんじゃ、碧や。お前さんが此奴等に何か言われるのは我慢ならん」
「それはこちらも同じですよ、宗一お爺ちゃん」
宗一お爺ちゃんははぁとため息をついて、目深く帽子を被った。
「宗一さんは奥さんの治療費を稼ぐために働いていたの。遊び歩いていたわけじゃない。仕事と病院を往復しながら、家事もこなしていたのよ」
「え」
「は?」
「何よそれ」
「それを知ろうとしたことあった?」
「お袋、そ、そんな話聞いてない!」
「だから貴方達は何も知ろうとしなかった、でしょう?」
まぁ、ウチも若干似たところがある、そういえば、お父さんとお母さんも最後に「話したいことがある」と言っていた。
あれは何だったのだろう。
もしくは残せなかったのか。
気になって仕方が無い。
が、今はそれは置いておく。
両親が何をしようとしていたのか気になって、私達は調べた。
会社を立ち上げようとしていたのは、知っていた。
だが、借金のことは知らなかった。
今の会社はお父さんたちの望み通りの会社なんだろうか、と不安にもなる。
「知る権利を放棄した貴方達は、空音さんが亡くなった途端遺産の一部を貰って縁を切った、そしてその遺産の一部を売り飛ばして得たお金で豪遊して、それでも、足りなくなって借金をした、違う?」
図星だったようだ。
「全く、空音はあれほどお前達に愛情を注いだのに恩を仇で返すとは亡くなった空音も浮かばれんわい」
「う、うるせぇ、うるせぇ! お袋が亡くなってまた働き出したお前が──」
その声を遮るようにして、私は事情を説明した。
「それは私の両親が見つけたから、亡き妻を弔い続ける孤独で優秀な元整備士がいると聞いて、宗一さんを説得して連れてきたの、勿論遺骨も一緒にね」
「あの二人に頼まれたんじゃ、息子と娘を頼むとな。我が子がああなったなら、儂はこの子達に愛情と技術を注ぎ込もうと決めたんじゃ」
「そして実際実行してもらっています、なので──」
「貴方たちの入る余地はもうないのですよ」
最後通告を突き付ける。
「じゃあ、俺、こいつらを借金取りに引き渡してくるんで!」
ドゥオさんはそう言って三人と一緒に姿を消した。
「元身内の件に巻き込んですまんの」
「いえ、いいんですよ。でも仮にもお子さんでしょう、大丈夫ですか?」
「あやつらが遺骨だけは大切にしていたなら話は違った」
遺骨、宗一お爺ちゃんが持ってるもんね……
「あやつらは何があったのかは知らんが『遺骨はくれてやる他のもんは俺達のものだ!』と言って空音の持ち物を大半持ち出した、残ったのは遺骨と」
宗一お爺ちゃんは作業服のジッパーを下ろしネックレスに通した二つの指輪を見せた。
「結婚指輪とアルバムだけじゃ」
「……結婚指輪とアルバムだけでも残って良かったですね」
「そうじゃなぁ……」
宗一お爺ちゃんは遠くを見るような目をしていた。
どうすればいいんだろ。
「おーい宗一の爺さん! メフィストがまたガンツに抱きついて反射的に殴られてちょっとおかしくなってるから見てくれね?」
「全く! お前さんらは学習せい!」
ネックレスを隠し、作業着を整えた宗一お爺ちゃんは怒鳴った。
レイジングが呆れたように肩をすくめている。
まぁ、仕方ないか。
宗一お爺ちゃんが修理に取りかかるのを、私とノウェムさんは見守る。
「型が古いと難しいと聞くが、そうなのだな」
「部品とかの仕入れが大変なんじゃ、まぁ借金した中身にどの形状、形式の部品を作れる設備があったから苦労はせん、材料調達だけじゃ」
「その部品、お爺ちゃん作れるの?」
「儂を誰じゃと思っとる、碧。コレでも天才メカニックで部品の内容もバッチリ覚えておるわい!」
「そうだった、うんそうだよね!」
元気になった宗一お爺ちゃんに安心する。
「まぁ、たまに作るのが面倒で老舗に取り寄せ頼むがの」
「やっぱり面倒なんだ」
「当たり前じゃ、よーし終わったぞ、メフィスト! 次からガンツに突撃するんじゃないぞ!」
「わかったよ、うー痛かった」
メフィストは心底痛そうに頭をさすっている。
人間的に言えばたんこぶができてる感じなんだろうねきっと。
「じゃろうな、後ろから抱きつかれたから反射的に殴ったわい」
「全面的にメフィストが悪いね」
「学習せん奴は何度でも殴られるんじゃ」
「それ絶対また殴られるやつだー!」
宗一お爺ちゃんは呆れながら笑って言った。
相変わらず、驚かせるのが好きなメフィスト、ピエロ型のさがかしら。
まぁ、これは本人に「学習」してなおしてもらうしかないわね。
宗一の過去の話です。
親子のすれ違い、そして恩を仇で返す実子と。
恩に恩で返す血のつながりのない家族(碧たち)。
宗一の部屋には今も奥さんの遺骨があります。
ちゃんとお墓にいれるのがいいんでしょうけど、宗一はしませんでした、自分がなくなった時一緒に入れて貰うのだと決めているからです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




