27.順とレティシアの結婚式~色々と不安もつきもの~
順とレティシアの結婚式の話になり。
意識を取り戻した碧が問いかけると明後日と言われ、ドレスもなにもない彼女は頭を抱える──
「そういうことで、借金の方に売った訳では無いので借金は返済お願いしますね」
「順兄さん、借金増やした?」
意識を取り戻した私は、会社の応接室集まった中の順兄さんをジト目で見る。
「婚約指輪とかの代金は私持ちなので増えてませんよ」
「順兄さん……」
二人の指輪に輝く大粒のダイヤモンドと白金の指輪の部分。
「情けなくてすまない、だが俺の給料じゃこの指輪は買えない」
「デショウネ」
順兄さんがめずらしく喋っているのを聞いて、私は遠い目をした。
「で、結婚式はどうするんですか?」
「身内だけの結婚式にする予定ですから」
「ならよかったー」
大手を振って結婚式をしようものなら私の正体がバレて色々と困る。
「モナルの社員さんたちとそのご家族、私は私の父と母方のお祖父様とお祖母様を、父方はなくなっていますから」
「えっと式の予定は?」
どこか悲しそうに言うレティシアさんの発言をなんとか明るい方向に持って行くように私は日時を聞いた。
「明後日」
「「「「「「明後日ー⁈⁈」」」」」」
全員で絶叫した。
「ちょっと待って、私ドレスも着物もない!」
私は頭を抱える。
流石に学生時代の服で出るのは痛い、色んな意味でイタイ。
「私は着物が一応……」
「スーツとネクタイはある、大丈夫!」
「儂は紋付き袴で行くかの」
みっちゃんと、涼兄さんと宗一お爺ちゃんは大丈夫そう。
じゃあ、準備できてないの私。
「うわー! 準備できてないの私だけ⁈」
「大丈夫、今から買いに行きましょう、ノウェム」
私は頷いた。
ノウェムさんは静かに目配せしていた。
「分かった」
「セスは見守りお願いね」
セスさんの見守りをお願いしているようだ。
なら安心だ。
「美奈さんはご家族の方にご連絡してね。と言ってもレティシア様がもう連絡してるけど一応」
「は、はい」
レティシアさん既に報告してるならいらなくない?
と思ったが野暮なので言わなかった。
みっちゃんが席を立ってスマートフォンで電話をしている。
さて再び問題に戻る、それは私の着るものだ。
「私が払うから安心してね」
何をどう安心しろと言うのだ。
とツッコみたかったが、ツッコまなかった自分を誰か褒めて欲しい。
そのままレティシアさんと、格式高そうなお店へ。
コサージュなどのアクセサリーも選んでくれた、バッグも。
私が好きなブルーのドレスにしてくれたが、値段は見てない。
怖いから!
「あの、これ借金に入ります?」
帰りの車で恐る恐る聞いてみると、レティシアさんはにっこり笑った。
「義妹になる子へのプレゼントが借金になると思う?」
「アッサーセン」
としか言えなかった。
「あの、レティシアさんのドレスは?」
「見たい? 今このお店にあるのよ、案内してくださる?」
「かしこまりました」
店員さんに案内され、個室に行くと。
其処には綺麗なマーメイドラインのドレスと、腰までの長さの綺麗な刺繍が入ったヴェールがマネキンに飾られていた。
そして隣には、ふんわりとしたお色直し用の真っ赤な薔薇のようなドレス。
どちらもレティシアさんに相応しい品のある代物だった。
「これを来たレティシアさん、絶対綺麗!」
「ふふ、ありがとう!」
きっと素敵な結婚式になるんだろうな、そんな風に考えていた。
「順兄さん」
帰ってきてから順兄さんに聞いた。
「……何だ?」
「日本式、西洋式?」
西洋風ならかなり難しい気がする。
「式は洋式だけどそれ以外は日本式」
「……良かった──ってご祝儀なんぼ⁈ 100万⁈」
よし、なら大丈夫って、そうだご祝儀⁈
レティシアさんレベルなら100万とかじゃないとダメとかないよね⁈
「ああ、だからご祝儀はいらないわ。身内婚だし」
「結婚式のお金は⁈」
レティシアさんがにっこり笑って否定するので私は続けて不安に思っていた結婚式の費用を支払うのか尋ねた。
「私が全額出すわ」
「やべー! 罪悪感しかないんですがー⁈」
予想通りの答えに私は頭を抱える。
罪悪感しかないわ!
「気にしない気にしない」
ご祝儀も何も要らない、身内での結婚式。
小さな結婚式場 (モナル社所有の)で行うそう。
「ケーキとか料理とかの発注は⁈」
「彼を預かっている間にみんなすませたわ」
まぁ、レティシアさんのお金でやるものだ、文句はない。
文句はないけど──
「もう少し早く言って欲しかった」
「ごめんなさいね、準備が長引いて今言ったのよ」
「いやだからって階段飛ばしすぎじゃありません⁈」
物事には順序がある。
が、レティシアさんにはその順序は通じないようだ。
ドレスを見せてもらったが、二晩寝ても現実味がなかった。
そして二日後、結婚式会場に連れてこられた私達。
本当、こぢんまりとした結婚式場だった。
私たちはまず式場へ向かった。
見せてもらった純白のマーメイドラインのウェディングドレスを身にまとったレティシアさんと、白いタキシード姿の順兄さんが並ぶ。
二人は誓いの言葉に「はい」と答え、指輪を交換した。
キスがなくて良かったー!
あったら私には刺激が強すぎるよ!
ちなみに、レティシアさんはお父さんと、順兄さんは宗一お爺ちゃんがバージンロードを歩いた。
レティシアさんとレティシアさんのお父さんの表情は柔らかく、穏やかなものだった。
宗一お爺ちゃんは嬉しそうにしており、逆に順兄さんは緊張した面持ちだった。
そして食事会場に向かい、
食事……料理は美味しい、いや美味しすぎた。
ヤバいよ、舌肥えちゃうよ。
前菜も、副菜も、主菜も、飲み物、デザート全部美味しすぎるんだもん。
みっちゃんのお父さんは「コレを作ったのはどれほど場数をこなしたシェフなのだ」とかブツブツいっていた。
みっちゃんと、みっちゃんのお母さんはにこやかに食べていた。
ため息をつく私にノウェムさんが声をかけた。
「どうした、何かあったのか?」
「こんな美味しい料理食べたら舌が肥えて摂生とかが難しくなる気がして怖い」
本当それ、舌が肥えちゃうのは不味い。
ノウェムさんは笑った。
「ならば、舌が肥えても良いように稼がなくてはな」
「そういう問題かなぁ?」
お色直しから戻ってくると、レティシアさんは真っ赤なドレスを身につけていた。
そして、順兄さんとケーキの食べさせあいっこしていた。
一段落ついたので話しに行くことにした。
「順兄さん、結婚おめでとうーところで婚姻届けはいつ出すのー」
「褒めてる顔じゃないな、まぁ気持ちは分かる。婚姻届は昨日だした」
そんな会話をしているとスタッフさんが騒がしく対応していた、そして会場の中に入ってきた。
「レティシア! 僕が悪かったやり直そう!」
金髪の美青年……若干ボロボロの輩がやってきた。
レティシアさん、笑ってるけど顔に筋浮かんでますよ。
「どちらだったかしら、ああ、ロバートね。私を騙そうとして十股かけた最低男」
「最低だな」
「なんだ、その愛想の悪い日本人は!」
ボロボロの男──ロバートという男は順兄さんをそう言って侮辱する。
愛想が悪いのはテメェが来たからだよ、さっきまでめずらしく微笑んでたんだぞ。
「私の旦那様よ」
「う、うそだ‼ そんなはずない……僕の方が……」
「残念だけど、順さんの方がずっと素敵よ」
ロバートなる不法侵入者は崩れ落ちそのまま会場から追い出された。
「誰が此処のことを喋ったのかしら、後で調査しないと」
そういうレティシアさんはめっちゃ笑顔が怖かった。
ちなみに、バラしちゃったのはナンバーズのドゥオという方で、ノウェムさんのナンバーズ以外に締められ、レティシアさんからもキツい仕事を言い渡されたそうである。
一瞬だけ哀れに思ったが、よく考えれば完全に自業自得だった。
うん、別にいいか。
そういうことで、レティシアさんの家に婿入りした兄貴は護衛付きでパトリに来て仕事をするようになった。
それもレティシアさんとの結婚時に出した条件らしい。
メンテナンスをする人が減るのは私には痛手だったので助かった。
ただ──
「貴方、今日も頑張ってね」
「ああ、頑張る」
「これ、お弁当、こちらではそういうのを余裕がある人が作るのでしょう」
あれだけ働いて居て自分が余裕あるってどんだけだよレティシアさん。
と思いながら、弁当を受け取る順兄さんを見た。
「じゃあ、トレース護衛をお願いね」
「かしこまりました」
そう言って、護衛を兄につけて仕事に向かうレティシアさん。
多忙なのに、大丈夫か?
体壊さないか?
と、若干不安になった──
「あ、碧さん、今度からお義姉さんって呼んでくださいね」
「それは無理ですー‼」
車に乗る前にそう言ったので思わず叫んでしまった。
いや、無理だよ!
順とレティシアの怒濤の結婚式。
西洋風だけど日本式といったのは海外の結婚式とは若干ことなることを意味しました。
キスもせず、神父の台の所にある指輪を交換させました。
本当はリングボーイとかやれそうな子がいたらいいんですが登場してないのでそうしています。
ちなみに碧が色々と情けなくなっている理由は後察しできるかと。
レティシアがパワフルなのが分かりますね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




