26.秘蔵のお菓子と爆弾発言~どうしてこうなった~
碧はノウェムが碧の秘蔵の菓子を食べたことをクラレンスたち四体に詰め寄られるのを聞く。
それは特別なお菓子あることを知ったノウェムは休憩室を飛び出し、代わりにセスが入って来て──
秘蔵のお菓子をノウェムさんと一緒に食べた次の日のこと。
「ふんふーん♪」
鼻歌を歌いながら通路を歩いていると、声が聞こえた。
私は気配を消して耳をそばだてる、休憩室からだった。
「ノウェム」
「何だレイジング、クラレンス、メフィスト、ガンツ」
ノウェムとレイジングたちが話してる?
「昨日お嬢の部屋で何をしてた?」
「菓子を貰って食っていた」
あやっべ、次の反応分かるわ。
「「「「それ、お嬢の秘蔵のお菓子だぞー⁈」」」」
四人が絶叫。
「ひ、秘蔵⁈」
はい、秘蔵のお菓子です。
中々買えないガトーショコラでございます。
お値段もそこそこ。
ミモザの目玉商品、人気商品。
稀少なカカオと稀少な卵を使用した代物です。
ミモザで販売された場合並ばなければいけないレベルの代物です。
だから前もって美奈ちゃんのお母さんにこっそり告知して貰って朝早起きして並ぶ代物です。
午前五時に並んで買えます。
ちなみにお店の開店は午前九時です。
午前五時前だと警察官に職質されちゃうんで色々不味いんですよ。
一回職質されました。
その時は「ケーキを買ってお母さんとお父さんを喜ばせたくて」で誤魔化しました。
嘘はついてない、お母さんたち用のケーキを買ってあるし。
そして鈴蘭の和三盆の干菓子。
お茶との相性が抜群な、優しい甘さが特徴。
どっちもすっからかんです。
今度買いにいかないとなぁ。
「お前よく食べて無事だったな⁈ 涼と順が食べた時は『私のガトーショコラと和三盆の干菓子ー!』ってラリアットを二人に喰らわせてボコボコにして金巻き上げてたんだぞ!」
レイジング、誇張表現すな。
拳骨一発で代金請求しただけ!
「そ、そんな秘蔵のお菓子だったなんて……碧は『ノウェムさん気にせず食べてください』と笑顔で……」
そりゃあ恋人があんなにご機嫌斜めなんだもん、お菓子でご機嫌になるなら秘蔵品でもだしますよ。
「買ってくる! 碧の護衛を頼むぞセス!」
「はいはいー、全く」
休憩室から飛び出すノウェムさん。
セスさん、いつからいたの⁈
「お、お嬢ちゃん、いつからいたんじゃ⁈」
ガンツがセスさんがいたことに驚いてる、私も驚いている。
「碧さん、そろそろ出て来てください」
「バレてた?」
ばつ悪そうに私は覗き込んでから、休憩室に入った。
「私とノウェムには」
セスさんにはバレてたかそれはしゃーない。
ノウェムさんかーどうしよう、今諸事情でガトーショコラとか買えないんだよなぁ。
「お嬢様⁈ どこから聞いてたんです⁈」
「私の部屋で何してたってとこから……」
明らかに焦っているクラレンスに呆れたように言う私。
「それにしても、秘蔵のお菓子ですか……あのミモザのガトーショコラと、老舗の鈴蘭の和三盆、どっちも入手は現在困難ですよ」
「それねー」
セスさんの言葉に、そうだねーと言わんばかりに返して気付く。
なんでそんな情報知ってるの⁈
「え、その情報入ってるんですか?」
「ええ、名物のガトーショコラに使ってる素材は金持ちが買い占めているから手に入らない、和三盆も同様」
金持ちめ、もっと別のことに使え!
庶民の数少ない贅沢を奪うんじゃない!
「最近鈴蘭がよく店を閉めてるのはそういう訳だったんか……」
「ええ」
ガンツがそういうとセスさんは頷く。
「あー! もー! その金持ち憎たらしい!」
思わず言葉にしてしまう、それほど私は怒っている。
金持ってりゃ何してもいいわけじゃねーんだぞ!
「大丈夫よ、今その人貧乏人になるか金持ちのままでいられるかの瀬戸際にいるから」
「へ?」
セスさんの言葉に間の抜けた声を出してしまう私。
なんか恐ろしいことを聞く気がする。
「レティシア様が直談判に行ってるらしいわ」
「……それ以上は聞きません」
レティシアさんが何かするんですね、分かりました。
それ以上は聞きません。
「それが得策」
レティシアさんが何かやっているということは確実に悪い方向には動かない、私にとっては。
だが、対峙した相手は地獄か天国かの二択になっているだろう。
「哀れ……あんなことしたばっかりに」
「碧!」
バンと扉を開けてノウェムさんが入って来た。
「ノウェムさん、どうしたの?」
「すまない! 昨日食べたものが君の秘蔵の品だと知らずにほとんど食べて……」
箱を大事そうに抱えてノウェムさんが入って来た。
そして謝罪してきた。
だが、私は怒っていないから別に気にしていないのだ。
「あはは、いいのよノウェムさん。だってあんなノウェムさんみたら食べられてもいいかなって思えるもの」
ノウェムさんは必死そうな顔をしているが、私は思っていることちゃんと伝えると、ノウェムさんは少し安心した顔になった。
「引きこもりになっていた順と、卒論で糖分欲しさで食った涼には激怒していたのに……」
「糖分補給するならあの二人の場合、家に普通に置いてあるどら焼きとか、マシュマロとかチョコレート良かったはず! なのにあの二人は私のガトーショコラと和三盆の干菓子をむさぼり食った! 兄妹故に許せなかったの!」
二人を哀れむレイジングに私はきっぱりと述べた。
「あの二人毎度毎度怒らせるのよ私のこと! 秘蔵のお菓子だけじゃなく好物の辛口スナックやポテトチップス、私の勝手に食うのよ! 隠してるのに! 不法侵入反対!」
「あー……それは二人が悪いよね」
メフィストがあきれたように言った。
「本当それよ! ……あれ、ノウェムさん持っているのって」
「ガトーショコラは無かったが他のチョコレートを使った洋菓子と、麩まんじゅう という不思議な菓子は何とか買えたんだ」
そう言って休憩室のテーブルに置いて中身を見せた。
本当だ、鈴蘭の麩まんじゅう だ、もう片方はミモザの洋菓子。
箱が特徴的だからわかる、鈴蘭は鈴蘭の家紋のような模様が入っている。
ミモザはミモザの花束が描かれているから。
「わざわざ、代替品買いに行ってくれたの⁈」
「すまない! 本当に……」
私はふぅと息をついて、ノウェムさんに尋ねる。
「お店に無茶言ってない?」
「言ってない」
真顔で尋ねる私の問いをノウェムさんは私の言葉を否定した。
「開けろとかも?」
「言ってない」
続けての問いにもノウェムさんは否定した。
「ならばよろしい、一緒に食べましょう。ガンツ、宗一お爺ちゃん呼んで」
私は笑顔になってガンツに宗一お爺ちゃんを呼ぶように言う。
「あれ、涼と、順は?」
「涼は美奈ちゃんの帰宅に付き添い、順は未だレティシアさんの所から戻らず」
メフィストが首を傾げて言うので、私は説明した。
本当、涼兄さんはすぐ帰ってくるだろうけど、順兄さんいつになったら戻ってくるの?
レティシアさん、何考えてるの?
「まだ帰ってきてないのか順の奴!」
「何でだろうねぇ」
レイジングが驚愕の声を上げる。
私も首をひねるしかない。
「あ、そうか聞いてないんだ」
「何を?」
セスさんが思い出したように口を開いた。
「貴方達の長兄の萌木順さんは、レティシアと婚約することになったの」
私は持っていたスマホを手から落としたが、ノウェムさんが床にぶつかる前に拾った。
「「「「「き……」」」」」
「「「「「「聞いて無いー‼」」」」」
私たちは絶叫した。
それを聞いて何事かと宗一お爺ちゃんがやって来て丁度涼兄さんも帰ってきて、話を聞いて絶叫した。
「ノウェムさん知ってた⁈」
「いや、全く」
ノウェムさんの反応的に嘘ではなさそうだ。
「セスちゃんは知ってたの⁈」
「うん、レティシア様から正式発表まで口止めされていたので」
セスさんは知っていたらしい、だよね、レティシアさんの護衛だもんね!
でも叫びたい。
「正式発表ってなにー⁈」
「嘘だろう? あの人見知り激しい順が結婚⁈」
あの引きこもり、コミュ障の長兄が婚約⁈
しかも相手がレティシアさん⁈
何があったの⁈
混乱していると、順兄さんが帰ってきた。
「……ただいま」
「兄さん! レティシアさんと婚約って本当⁈」
いつも通りのぼそぼ声で喋っている。
私はそれを何とか聞き取りながら確認した。
「……ああ」
「何が⁈ どうして⁈」
順兄さんがぼそりと呟いた。
「人を裏切らなさそうな誠実な面が気に入ったとか言われて婚約を押し切られた……」
「レティシアさーん‼」
思わずレティシアさんの名前を呼んでしまう。
「はーい、何かしら」
「うちの兄貴と婚約ってマジですか⁈ 考え直した方がいいですよ⁈」
言っちゃ悪いが話さない、ぶっきらぼう、何考えてるか分からない!
そんな兄をオススメする勇気はない!
「でももう婚約指輪まで作りましたし、私のお父様にもご挨拶しましたし」
そう言ってレティシアさんと順兄さんは指輪をはめている左手の薬指を見せた。
キラリと輝く指輪とまんざらでもない兄の顔を見て私は卒倒した。
「うそだろぉ……」
気を失う前の言葉はそれだけだった。
支援者が身内になるなんてどんなどっきりだよ。
そう思いながら私は意識を暗転させた。
ノウェムがやけ食いしてしまったお菓子は、特別なお菓子で、以前兄である、順と涼がこっそり食べたら鉄拳制裁と食ったから代金払えとしめあげたしろものでした。
兄妹だからこそしめられ、ノウェムだからこそ甘く対応した碧。
そこをまだちょっと理解できてないノウェムさんは碧は実はもっと食べたかったんじゃないかと思って代わりになる甘味を探しにミモザと鈴蘭を訪れます。
鈴蘭は運良く開いてたので麩まんじゅうを購入できました。
季節物限定ということで麩まんじゅうを買ったようです。
さて、レティシアと順の婚約何があったんでしょうね?
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




