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24.初恋が実らないと誰が言った?~ファーストは事故チュー~

レティシアにノウェムが屋上で待っていると言われた碧。

屋上に向かうと、ノウェムが碧を待っていて──




「碧さん」

「あ、レティシアさん」


 社長室で待っていると、レティシアさんが戻って来た。


「屋上でノウェムが待ってるわ。会いに行ってくださる?」

「わ、分かりました」


 逃げたりしないよね?

 と不安になりつつ屋上へ向かう。


 ギィ……と扉を開ければ屋上から街を眺めているノウェムさんがいた。


「……ノウェムさん?」


 恐る恐る声をかけると、ノウェムさんはゆっくり振り向いた。


「碧、君に話したいことがあるんだ」

「うん……」


 ノウェムさんは私に近づいて来て手を握った。


「私は君を……その」

「……」


 考える仕草をし始めて、上手く言葉がでないようだった。

 とりあえず私は無言で待つ。


「えっと……君の事を……」


 何か言葉が見つからないようで、口ごもるノウェムさん。

 そしてハッと何かに気付いたかのように、手を離してから扉を開けた。


 金属音がぶつかり合う音などが聞こえた。


「「「……」」」


 ガンツ以外の「家族」の三人がいた。


「メフィスト、クラレンス、レイジング、何してるのよ……」


 私は三人を見て、これがのぞき魔という奴かと。


「いやその、なぁ」

「それはその」

「えっとね?」


 三人は多分ノウェムさんの告白を見に来たようだ。

 もうどうしようも無いなこれ。


「お前ら……」


 ノウェムさんの声に怒りが混じる。


「ええい、人が一世一代の行動を取ろうとしているのを見世物扱いしてるんじゃない!」


 ノウェムさんの怒声に三人は逃げ出した。


「全く……クソが……なんと言えばいいのか余計分からなくなった!」


 ノウェムさんは苛立っている、まぁそれもそうだろうノウェムさんにとってはまさに「一世一代の行動」に値するのだから、見世物にされてはたまったものではないはずだ。

 なので今度は私が手を握る。


「ノウェムさん」

「碧?」


 私が名前を呼ぶと声は落ち着いたものになる。


「よく聞いてね、私も言うの結構神経使うから」

「ああ……」


 どこか怯えた声に聞こえた。


「私、ノウェムさんのことが好きです! 恋人になってください!」

「‼」


 ノウェムさんは目を開いて驚いていた。


「でも、私は……」


 ええい、もう一押しか!


「私はノウェムさんと一緒に人生を歩みたいんです! だからその第一歩として恋人から始めましょう!」


 普通は友達から始めるのかもしれない。

 でも私達にそんな悠長な時間はない。


「わ、私でいいのか?」

「ノウェムさんがいいんです! 疑うんなら今ファーストキスをノウェムさんにしますよ!」


 それでも、信じられないのかうろたえるノウェムさん。

 なので、私もなりふり構っていられない、自分のファーストキスだって捧げるつもりだ。

 正直キスするのちょっとだけ怖いし、恥ずかしいけど。


「う、疑ってないけど、ファーストキスは欲しい……」


 ああ、もう。

 この可愛い困ったちゃんは!


「ノウェムさん、屈んでください」

「わ、分かった」


 私はノウェムさんにキスをしようとしたすると──


「「「「お嬢ーちょっと待ったー!」」」」


 メフィストやクラレンスたち四人が屋上に駆け込んできた。

 それでずるっと、足を滑らせ──


「「⁈」」


 私がノウェムさんを押し倒す形でキスすることになりました。

 はい、ファーストキスは事故チューでした。

 四人締める。


「あああああああああ! お嬢様のキスがああああ!」

「キスはまだ早いって言おうとおもったのにー!」

「間に合わなかったクソがぁああああ!」

「……これ、儂等が原因じゃないか?」


 ガンツだけ冷静に判断していた。

 本当その通りだよ。


「クラレンス、メフィスト、レイジング、ガンツ……」


「私のファーストキスこんなオチになったのはアンタ達が来たからだー! 私の恋路を邪魔すんなー!」


 その言葉を始めに、四人をコンコンと説教し続けた。

 説教が終わったあと、二人きりにまたなった。


「……恋人、になったんだな」

「うん」

「その、よろしく頼む」

「こちらこそ」


 私はノウェムさんを抱きしめた、ノウェムさんも私を抱きしめ返した。




「せっかくのファーストキスが事故チューだなんてオチサイテーですよ!」


 夜、自室のベッドに座りながら、私は通信機でレティシアさんと話していた。


『あらあら、それは大変だったわね』

「罰として明日四人にまた来た幼稚園の依頼を振るつもりです、少しは反省しろっての!」


 レティシアさんは微笑ましそうに言うけど、こっちはかなり頭にきてます。

 あの四人が出張らなければ事故チューなんてオチにならなかったのに!

 もっとロマンチックなファーストキスだったかもしれないのに。


『あら「四人」は子どもが苦手なの?』

「いえ、子どもが苦手なのがレイジングだけです、他の掃除とか細々としたものが残りの三人への罰です」


 レティシアさんの発言に少しだけ頭を冷やし、落ち着きを取り戻す。

 そして冷静に、誰が何を苦手かを伝えた。

 戦闘型特化のレイジングは子どもが苦手。

 クラレンス、メフィスト、ガンツは掃除や細々したものが不得意。

 特にガンツ。


『大変ねぇ』

「普通、告白現場から出ていけって言われたのに人数増やして戻ってきますか⁈」


 レティシアさんは微笑ましそうな声を出してる。

 宥めているつもりなのか分からないが、また腹が立ってきた。


『あらあら』

「クソ、私の覚悟を決めた告白を聞かれてたと思うと……あああああ! もう、あの四人許さないー‼」


 今回ばかりは怒り心頭状態を落ち着かせられない。


『碧ちゃん、ちょっと落ち着いて。貴方の所のロボットさんたちは貴方の「家族」なんでしょう? それは気になるわよ』

「兄さんたちと宗一お爺さんは来ませんでしたよ⁈」


 レティシアさんの指摘に言い返す。

 そう、特に涼兄さんあたりは覗き見に来そうな感じなのに来なかった。

 後で聞いたら「お前にしめられるのが目に見えてる」ということで来なかったらしい。

 大正解だよ、あの四人も見習って欲しかった!


『まぁ、人それぞれだから』

「今回ばかりはマジで怒ってますから」


 相変わらず宥めてくるレティシアさん。

 だが、私は怒り訴える、だって、せっかくロマンチックとか純情的にいってたのにオチがアレなんだもの!


『あらあら』


 レティシアさん、困ってるような声をだしているが、今回ばかりは許せない。

 私もノウェムさん同様「一世一代」の覚悟で頑張ってやった告白に茶々入れられたんだから!


『取りあえず、そんな状態じゃ緊急性の高い依頼は任せられないから、落ち着いてね』

「……はい」


 レティシアさんのその一言に一気に頭が冷静になる。

 そうだ、私借金山ほど残ってるんじゃん!


「……お仕置きはそれで終わりにします」

『さすが碧ちゃん、社長さんなだけあるわ。いい子いい子』


 子ども扱いである。

 だが実際私は子どもである、18過ぎて成人しているが20歳未満なので子ども扱いなのは変わらない。


『ああ、そうだ私用でお願いがあるんだけど』

「なんです?」


 私用とはなんだろう?

 レティシアさんが、仕事依頼でお願いしてくるのが謎だ。


『順さんを貸してくださらない?』

「へ? 宗一お爺ちゃんじゃなく? 順兄さんを?」


 順兄さんと聞いて目を丸くする。

 メカニックとしては凄腕になったが愛からわず人見知りの激しい順兄さんを借りたいとはどういうことなのだろう?


『そうよ』

「……?」


 何故順兄さんかやっぱり分からなかった。


『前々からお話したいと思ってたのよ、貴方のこととか家の事を彼の目線で聞きたくて』

「それなら涼兄さんがいいのでは?」


 それなら会話能力が一番長けてる涼兄さんがいいのでは?

 順兄さん、本当喋らない人だし。

 ……まぁ『いじめ』っていう名前の犯罪行為の所為なんだけどね。


『だって彼合コンで引っ張りだこでしょう?』

「あははは」


 涼兄さん、まだ合コンから逃げられてなかったのか、と遠い目をしてしまう。


『セスをお迎えにやるから明日お願いね』

「え⁈ 明日、ですか⁈」


 突飛すぎる発言に私は戸惑ってしまう。

 明日だなんて順兄さんが心構えはできないよ⁈


『ええ、じゃあ』

「ちょ……」


 一方的にレティシアさんに通信を切られる。

 再度かけ直したが応答はなかった。


「……」


 私はのそのそと部屋を出て順兄さんの部屋に行き、ノックをする。


「順兄さん、ちょっと緊急なんだけど……」

「緊急……?」


 私の言葉に順兄さんは顔をしかめる。


「……モナルの社長さんが順兄さん貸してだって、拒否権はありません」


 順兄さんはその場にがくりと膝をついて項垂れた。


「なんか私や会社のこと順兄さん目線で聞きたいのもあるんだって、大丈夫だよ!」

「……俺は人が怖い」


 順兄さんの絞り出した言葉に心が痛い。

 でも、私用であっても今はレティシアさんに逆らえないというか文句が言えない。

 借金あるもんね、悲しいかな。


「そこは──頑張ってください、お願いします。これは社長命令ですので」

「……わかった」


 私の言葉に、項垂れたまま順兄さんは答えた、とても低い小さな声で。

 順兄さんはとぼとぼと歩いて部屋の扉を閉めた。


「本当、大丈夫かなぁ」


 私は不安を抱えながら自室へ戻る。

 自室兼相部屋のベッドがくっつけられていた。


「ん」


 ノウェムさんがぽふぽふとベッドを叩くので私は横になった。

 するとノウェムさんは私を抱きしめて、布団をかけた。


「……」


 恋人になったからと言って何をすればいいのか分からなかったのかな。

 だから、距離が縮まると距離感バグる人なのかな、とか思いながら私は眠りに落ちた。


 翌日の朝、高級車に乗ってセスさんがお迎えにやって来た。

 スーツ姿の順兄さんは死んだような目をしてセスさんに手を引かれて車に乗せられ連れて行かれた。


「順兄さん、大丈夫かな」

「大丈夫だろう」


 ノウェムさんの言葉を信じて、今度は昨日やらかした四人を見る。


「場所は以前行った幼稚園! クラレンスの運転でいってきて! 仕事をきっちりこなしてきてね!」

「「「「はい……お嬢」」」」


 四人には怒鳴り声で仕事に向かうよう指示を出した。

 こちらも全員意気消沈して幼稚園へと向かっていった。


 そして夕方──


「お嬢様、ただいま戻りました。もうあんなこといたしません、お許しください」

「お嬢ちゃん、あんなことしないからゆるしてよ!」

「お嬢さん、もう二度とあんなことはしない、だから頼むから幼稚園に派遣するのはもう止めてくれ! あの小さい命たちが怖い!」

「お嬢……頼む、儂等が悪かった。だからあんな細々とした作業はもうやらせないでくれ……」

 

 ボロボロになって帰ってきたクラレンス、メフィスト、レイジング、ガンツはそういって私に謝罪した。

 それを見た私は溜飲を下げて、謝罪を受け入れた。


「私への謝罪は?」

「「「「ノウェム、悪かった」」」」


 自分への謝罪がないのを不服に感じたノウェムさんがそういったら四人は土下座して謝罪した。

 ノウェムはそれを見て、頷いて許したようだった。

 うん、怒ってばっかりじゃ借金返済はできないからね!





ノウェムと碧が恋人になった&周囲の所為で事故チューなファーストキスになったお話でした。

それにしてもクラレンスたちロボットはやらかしましたねぇ。

一度目で引っ込んで大人しくしてれば良かったのに、二度目で止めに入っちゃったもんだから碧の怒りを盛大に買いました。

そのためお仕置きをきっちりと受ける羽目に。

四人とも意気消沈したのは「本気で怒られた」のを分かってるからです。

前回はまだ本気で怒っていませんでしたが、今回は本気で怒ってたので意気消沈です。

前回のは半ば八つ当たりでしたからね、今回は激おこですので。

そして連れて行かれた順、どうなるんでしょうね?


ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
うおおおおおお!!宴じゃ!宴じゃあぁい!!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆。(赤・ω・飯)ワタシガキタ けどいくら碧ちゃんが大好きだからって野次馬や邪魔はいかんと思います。碧ちゃんも怒ってたし、当…
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