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23.気まずい~碧の初恋~

ノウェムのとある言葉で、関係がギクシャクしてしまった碧とノウェム。

その日ノウェムは社長室に現れず、碧は碧で気まずくて突っ伏していると──


 ノウェムさんの吐露というか告白というかそう言う内容の言葉を聞いた翌日。


「……」


 私は社長室、書類の山に囲まれた机の上で突っ伏していた。

 非常に気まずくなったことにどうしようかと悩んで居る。

 ノウェムさんは今日は見かけてない、朝起きたらいなかった。


「あら、どうしたの碧さん」


 そんなことを考えていると、社長室にレティシアさんが入って来た。

 そうだ今日はレティシアさんが来る日だったと失態を犯した自分に更に凹む。


「すみません、レティシアさん……ちょっと色々ありまして」

「何? 私が相談に乗れる事なら言って?」


 レティシアさんは不安そうな顔で私に近づいた。


「……ノウェムさんとの関係がギクシャクして」

「え?」


 私の一言に、レティシアさんは信じられないという顔をしていた。


「レティシアさん、桐生桐人って人がどういう奴か知ってますか」

「勿論よ、知り合いだもの」


 ヤッパリ知り合いか、じゃなきゃノウェムさんの情報なんて知れるはずもないよな……うん、多分。


「その馬鹿がノウェムさんのこと侮辱したらしいんですよ」

「あら」


 私の言葉に、レティシアさんは何か分かったような顔と、呆れの混じった顔をした。


「で、私てっきりレティシアさんに関することで侮辱したんだと思ってたのでその場で抗議の電話入れようとしたんですが止められたんです」

「ノウェムに?」


 レティシアさんは困り顔をして私に問いかける。


「で、ノウェムさんが言ったんですよ、ノウェムさんが侮辱内容は私に関することだって」

「まぁ」


 レティシアさん、なんでそこで嬉しそうな顔するんですか?

 こっちはかなり不味い状況なんですが。


「で、ノウェムはなんと言ったの?」

「それだけです」


 本当それだけ。

 そっから先は何も言葉も貰ってない。

 ノウェムさんも気まずいのか今日は社長室来てないし。


「それだけ?」

「はい、それからノウェムさんが気まずくなったらしくて、こっちも気まずくなっちゃって……」


 レティシアさんの質問に、私は頷き、そして気まずくなったことを話す。

 本当、一体何をいいたかったのやら、さっぱり分からなくて胸がもやもやする。


「あらまぁ」


 レティシアさん、困った表情してらっしゃるが、ガチ困りなのはこちらである。

 みっちゃんも「何かあったの?」だし、兄さんたちも「何した?」だし、宗一お爺ちゃんも「何があったんじゃ」って聞くけど内容が内容なだけに話せないんですよ。


「ようやく、ここまで来たのね」

「へ?」


 ここまで来たって、何が来たんですか?


「分かったわ、ノウェムと話してくるわ」

「え?」


 レティシアさんはそう言うと社長室を出て行こうとした。


「大丈夫私に任せて、ね。……セス」

「はい」


 レティシアさんがにこりと微笑んで私に言う。

 そしてセスさんの名前を呼ぶと、セスさんがすっと姿を見せた。


「私が戻ってくるまで碧さんの護衛をお願いね。トレース、護衛お願いね」

「勿論です、レティシア様」


 金髪のオールバックの品の良さそうな男性がついて行った。


「貴方も苦労してますね」

「ノウェムさんの方が苦労してると思いますよ」


 セスさんに言われて私は首を横に振る。

 だって、セスさんたちは護衛とか色んなことをやっているんだろうから、苦労もすごいことだろう。


「そういう所です、普通は道具(私たち)に苦労しているなんて言わないです」

「どういうことですか」


 私達という言葉が別の意味に聞こえた。

 だからどういうことか尋ねてしまった。


「私達はモナル社の為に作られました、ノウェムその中でもレティシア様の為だけに作られたのです」


 ノウェムはレティシアさんの為だけに作られた?

 じゃあ、やっぱり大事な人はレティシアさんじゃ……

 そう思うと、何故か胸がズキズキと痛みを訴える。


「……だったらレティシア様がノウェムさんの大事な人、では?」

「確かにレティシア様のことはノウェムも大事です、でも貴方の大事と違うのです」


 私の言葉にセスさんは違うと言いたげな表情をした。

 そして続けていった言葉の「大事」の意味の違いが私には分からなかった。


「私の護衛と社員として働くことをノウェムさんがレティシアさんに言われたのだけなんですけど」

「でも、貴方はロボットも道具(私達)も人扱いしてます、レティシア様以上に」


 私は事実を伝えた。

 そうだ、ノウェムさんが私の護衛と社員として働くように言ったのはレティシアさんだ。

 でも、セスさんは私の言葉に対して好意的に、それでいて何かを指摘するように言った。


「それは……」

「だから傷ついてほしくない、だから先陣を切る、そして怒られる」


 セスさんの指摘は図星だった。


「うぐ」


 指摘されて、なんとも言えない声を出してしまう。

 大事な家族だから、傷ついてほしくない。

 ならば社長の私が突貫すればいい。


 パワードスーツが私を守ってくれる。

 パワードスーツを過信はしている自覚はある。

 でもそれでも、家族を危険な目に遭わせたく無かった。


「ノウェムは貴方が本当に好きなのですね」

「え?」


 セスさんの言葉に私は目を丸くする。


「スイーツ巡り、ノウェムは甘味に夢中、そんなノウェムを甲斐甲斐しくお世話する貴方を幸せそうにみていたのですよ」

「ええ⁈」


 そんな顔してなかったぞ、ノウェムさん!

 嘘だ!

 アレは絶対甘味を堪能できて嬉しそうにしてる笑みのはずだ!


「嘘ですよね⁈」

「本当です、ノウェムの『姉』である私が言うのですから」


 思わず聞き返すと、セスさんから驚きの一言が飛び出す。


「へ?」

「モナル社が作った新型人工生体兵器は№9まで。ノウェムが一番年下なのです。私は№6」


 あんぐりと口を開けてしまう。

 こんな少女の姿をした子がノウェムさんより年上?

 いや、年を取らないようにする研究は聞いた事があるけど……


「あのノウェムのだらしない顔、あの馬鹿(ドゥオ)が見たら爆笑してノウェムに顔面かち割られてたと思いますね」


 ドゥオって以前来たひとだよね?

 えーそういう風になっちゃうの?


「それ位、ノウェムは幸せそうな顔をしてたのです」


 セスさんはそういうけれども、そんな顔してなかった。

 私がしたのは、子どもの口元についたものを拭くような感覚で、ノウェムさんの口元についたあんこを拭っただけだ。

 ノウェムさんはその時も無表情だった。

 でも、今思えば何か違った気がする。


「碧様も大分鈍いんですね」

「それは自覚してる」


 セスさんに指摘されたが、それは自分でもよく分かっているので肯定する。


「え?」


 驚くセスさんに私は理由を言った。


「クラレンスたちが、私に恋心を抱いてる男子や女子を追い払ってたから、それの行動で好かれていたって自覚したから」


 そう、桐人兄さんやクラレンスたちが片っ端から追い払ってたから、それまで自覚することは全く無かった、だから鈍いのは自覚済み。


「……過保護ですね、貴方の会社のロボットたちは」

「家族です」


 セスさん的にはロボットなのだろう。

 確かにクラレンスたちはロボットなのは事実だけど、家族だと私は思っているから訂正する。


「そういう所がたらしなんでしょうね、レティシア様が言ってるように貴方たらしですよ、無自覚だからタチが悪いです」

「でも、親類関係以外で友達と呼べる子は一人しかいないですが?」


 人たらしといわれても知らない。

 第一、本当にそうならみっちゃん以外とも縁を切ることはなかっただろうし。


「楠木美奈って事務の子でしょう? どう呼んでるのですか?」

「ええ、私はみっちゃんって呼んでるの」


 セスさんもちゃんと名前覚えててくれてたみたいだ、役割も。

 私は彼女をどうよんでいるか教えた。


「向こうは?」

「碧。私あだ名つけられるの嫌いだから。仕事時は社長だけど」


 昔大変嫌な思いをしたあだ名を付けられた覚えがあるのであだ名を付けられるのは嫌いになった。

 思い出したくないので、思い出さないでおく。


「不思議な関係ですね」

「ええ、そうね。向こうは天才で飛び級で大学の上一年飛び級で卒業、私は高校を卒業してここで社長。向こうはバルトロ社に入社して」


 でも、二週間であそこまでボロボロにしやがった元バルトロ社の奴ら許さん。


「みっちゃんをボロボロにしやがって……」

「そういえば、美奈さんをいじめていた連中ですが」

「?」

「全員今行方不明ですよ」


 私の思っていることが分かっているように、セスさんはみっちゃんを追い詰めた連中の現状を教えてくれた。


「二度目の接触で賠償金とか色々発生した結果、ヤミ金からお金借りたのが原因で行方不明だそうです、多分戻ってこないと思います」

「……」


 そのヤミ金紹介したのノウェムさんたちじゃないよね?

 ちょっとだけ不安がよぎった。


「お嬢様」


 何か色々考えていると社長室にクラレンスがやって来た。


「あ、クラレンス」

「そちらの方は?」


 クラレンスがセスさんをみて言う。


「セスです。レティシア様から碧様の護衛を頼まれました」

「……一ついいですか」


 セスさんは丁寧な口調で言って、お辞儀をした。

 そんなセスさんを見て、クラレンスは何か言おうとしていた。


「どうぞ」


 セスさんが促す。


「お嬢様は私共の大切な家族であり、娘のような存在であり、そして『お姫様』でもあります」

「はい」


 ちょっと、クラレンス!

 お嬢様と娘は分かるけど「お姫様」は止めてよ!


「ですから、自分に自己嫌悪しているような卑屈な(やから)には、お嬢様とまともにコミュニケーションが取れないような輩にはお嬢様を嫁には出せません」

「分かりました、でもそれ言うのは私じゃありませんよね」


 クラレンスはそう言った。

 自己嫌悪で卑屈な輩って誰だろう?

 順兄さんではないよね、この場合……

 セスさんは分かってるみたいだけど……


「確かに、でも言うべき相手に言ってきます」


 クラレンスはそう言って立ち去った。

 そんな人会社にいた?

 ……順兄さんではないよね、うん。 


「言うべき相手って?」

「ここでも鈍いの発動ですね、ノウェムに決まってるじゃないですか」


 ノウェムさんの名前がどうして出るの⁈


「ええ⁈」


 思わず驚きの声を上げてしまう。


「ノウェムは貴方の事が好きなんです、でも作られた理由からそれを認めることができないと自分に言い聞かせてるんです。だからレティシア様が説得に行ったんです」

「……」


 セスさんに言われて、私は何故か少し嬉しい気持ちになってしまった。

 え、ノウェムさん、私のこと、好き、だったの?


「碧さん、貴方はノウェムが好きですか」

「……分からないです、そういうの初めてだから」


 でも、分からない。

 だってそういう意味で人を好きになったことなんて一度もなかったから。

 でもノウェムさんといると、幸せな気持ちになれる。


「ノウェムといるとどんな気持ちになりますか?」


 セスさんは続ける。


「えっと、安心できて、それでいて時折どきっとさせられて、幸せな気持ちになれて、そのなんといいますか……」

「それはもう、貴方もノウェムに恋してるんですよ」


 え、ノウェムさんが私を?

 そんなこと考えたこともなかった。

 でも、そう言われると昨日の言葉も、今までの行動も、全部違って見えてくる。


「……私が引退したら契約終了」

「そこも踏まえて話合いに入っています」


 初めて、私はどうか引き裂かないでと祈ってしまった。

 神様、私とノウェムさんを離ればなれにしないで──






碧の恋自覚回です。

レティシアはノウェムにどのような対応を取るのか。

クラレンスの言葉はノウェムに響くのか。

そして恋を自覚した碧はどんな行動にでるのか。

次回以降をお楽しみにしてください。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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