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22.ノウェムの変化~今大事な人は~

ノウェムの変化について語るレティシアとセス。

そしてノウェムの思いと碧の困惑。



「全くせっかくの和スイーツ巡りだったのに、やな横やり入った!」


 パトリ(会社)に戻ると、レティシアさんは、カツラとサングラスを取った。


「本当よね、美奈さんだったかしら。説明が上手でとっても助かったわ」

「説明下手でサーセン」


 レティシアさんの発言に若干ヤケになる。


 私は地頭は良くない。

 要領も良くない。

 愛想も良くない。

 正直社長になったのを若干後悔している。


「私じゃなくて涼兄さんならもっと上手に会社を回せたかな」

「それはないと思うわ、貴方だからみんなは貴方を必死に応援して協力しているし、それにノウェムも──」


 現場に行くのは嫌がりそうだけど、それ以外の社長業務なら涼兄さんできそうだし。

 そうぼやいたらレティシアさんが否定した。

 みんなは私だから頑張ってくれてるのかな?

 なら答えないと。

 あと、ノウェムさんが何だろう?


「ノウェムさんも、何です」

「……貴方じゃなきゃあそこまで変わらなかったわ」


 レティシアさんは嬉しそうに微笑んで私に言う。

 はて、ノウェムさんが変わる?

 甘味好きで、ぶっきらぼうで、でもちゃんと見てくれてる人だと思うけど。


「⁇」


 何が変わったんだろう?

 私は意味が分からなくて首を傾げる。


「遅くなった、男共に絡まれてな、警察に突き出すのに苦労した」


 ノウェムさんが入って来た。

 ちょっと待て警察って出たけど何あった⁈


「あら、どうしたの?」

「どうしたんです、ノウェムさん? もしかしてみっちゃん……えと美奈に何かが?」


 レティシアさんの言葉に続けて、私はみっちゃんに何かあったのではと不安になって問いかけた。


「彼女がブロックした男たちと、暴力行為などで賠償金を払わせた奴らが家の前にいてな、叩きのめしたのはいいんだが正当防衛を主張しても中々聞かない──」

「その警官の名前教えてくださいます?」


 レティシアさんはスマートフォンを手に取ってにっこり笑っている。

 めっちゃ怖い笑顔だ。

 ノウェムさんが警官の名前とか所属とか言っていた。

 多分なんか恐ろしいことになる。

 その警官は悪いけど悪くないので同情は一応する。


「それと、まだ自分の立場が分かって無いお馬鹿さんたちに、自分の立場を理解してもらいましょうね」


 にっこにこな笑顔だがめっちゃ怖い。


「レティシア様のあの笑顔怖いんでしょう、分かる」

「あ……セスさん、でしたか。え、ええ」


 私の怯えを感じ取ったのか、セスさんが話しかけて来た。

 同意の言葉を私に伝えてきた。


「セスって呼んでくれてありがとう。私は新型人工生体兵器№6だからsex(セクス)が正式名称なんだけど、文字がアレだから社長たちはセスって呼んでるの」


 あーラテン語でセクスは文字にするとアレになっちゃうからねぇ。

 女の子につける名前ではないよね、うん。


「ではセスさん、今後も何かあったら宜しく」

「うん、でも貴方の事ならノウェムがなんとかしそうだから」


 さっきもレティシアさんに言われたけど、ノウェムさん何か過去にあったの?

 それから何か変わったの?

 もし、重い過去があったなら聞かないし、聞けないけど……


「そうですか……」

「うん。あと、ノウェムがいない時は私がちゃんと護衛するから」


 何かを変えてるのはレティシアさんやセスさんの共通認識らしい。

 でも、私は何を変えているかさっぱりのまま。


 そんな私に、セスさんはノウェムさんがいない時は護衛をしてくれるといった。

 本当に真面目な人なんだなと思った。


「ありがとうございます」


 先ほどまでの見た目相応の口調ではなく、大人びた、いや、淡々とした表情と口調でセスさんは言った。


「碧様」

「ん? 何ですかセスさん」


 なんか様よびがちょっと違和感あるが、我慢しよう。

 セスさんが呼んでいるということは私に何か伝えたいことがあるからのはずだ。


「ノウェムは変わった」

「はい?」


 またノウェムさんが変わったという話をし出した。

 そんなに重要なことなのだろうか?


「あんなノウェム見たことない。いつでも氷みたく冷たいのがノウェム」

「まぁ、最初は確かにそうでしたね」


 最初はまぁ、初対面だから冷たいというか距離感が取れなかったんだろうと思っていた。

 私は。

 でも、セスさんの言葉に疑問が浮かんだ、いつも氷みたく冷たいのがノウェムさん、だと。


「でも今は違う、はにかんで笑うなんてしない、スイーツを食べて美味しそうになんてしない」

「セスさんのは……」


 笑わない?

 美味しそうな顔もしない?

 私は思わず目を丸くした。

 ではセスさんは?


「私は、私達はプライベートと仕事で分けてる。今回は半々だったから楽しかったけど仕事として緊張感もあった。でもノウェムはいつも見たいなとがった緊張感がなかった」

「?」


 セスさんは両方あるんだ、じゃあノウェムさんは無かったの以前は?

 それにとがった緊張感?


「ノウェムは、私達の中で特別に作られたの。レティシア様を守るために、そのためだから感情の部分を大きく欠如させて作られたの」

「……」


 言葉を失った。

 ノウェムさんが最初の頃、あんなに距離を置いていたことや、人の輪に入ろうとしなかったこと。

 空気を読まないように見えたのも、その感情の欠如が原因だったのかもしれない。


 何故、守るためだけでに感情を欠如させて作ったのか、それこそ非人道的ではないのか?

 じゃあ、男性の体つきなのに女性の生殖器なのは──ああ、非人道的なことばかりではないの⁈

 一体だれがそんな風にノウェムさんを生み出したの⁈


「ノウェムはレティシア様の前では笑ったことがない、いつもされるがまま」


 セスさんの言葉に、驚きで声が、言葉がまだ出ない。

 だって、ノウェムさんは今はあんなに笑ったり、怒ったり──


「だから、ノウェムにとって貴方は特別、それを理解してほしい。レティシア様の願いは貴方がノウェムを変えてくれることだから」

「……セスさんは?」


 私が、ノウェムさんの、特別?

 レティシアさんの願いが私がノウェムさんを変えてくれること?

 レティシアさん、貴方はどんな思いで私の護衛にノウェムさんをつけたんですか?


「ノウェムは私より辛い目に遭ってきた。だから――人間的に言うなら。『幸せ』になってほしい。」


 そう言ってセスさんは頭を下げた。


 私も頭を下げ返す。


「ん、やっぱり貴方お人好し」

「え、そ、そうですかね」


 セスさんにお人好し呼ばわりされる。

 確かにそういわれると否定できないな……その所為で学生時代いいように利用されてたし。

 もうそんな生き方はしないつもりだけど。


「でも言う時は言う、そこはしっかりしてる」

「は、はは」


 セスサンからの指摘に、もう苦笑いを浮かべるしかない。


「今回の和スイーツ巡り、ドゥオが護衛したいっていったけど、レティシア様に却下されてた。『今のノウェムを冷やかす貴方は入りません』って」

「ひ、冷やかす」


 ドゥオって人、ノウェムさんのこと冷やかすの?

 そんな人に来られるのは嫌だなぁ……

 今日来たのがセスさんで良かった、厄介事はあったけどそれ以外は楽しかったし。


「茶化すともいえます。確かに今日の貴方とノウェムを見てたらドゥオは冷やかしてノウェムは不機嫌になってたでしょう。レティシア様はそれは望みません」


 レティシアさんにとって、ノウェムさんは特別なんだろうな、でもその人を私の護衛した……

 氷のように冷たかったというノウェムさんは最初のころだけ、今のノウェムさんが私にとっての当たり前。


 何故レティシアさんは、私ならと思ったんだろう、それとドゥオって人なんで不機嫌にしちゃうんだろう?

 ああ、もう!

 なんかノウェムさんのこと、知ってから色々言いたいことあるけど複雑な人生を歩んでいるのはよく分かる。


「セスー! ノウェムと会話が終わったから、そろそろ帰りましょう!」

「はい、レティシア様。では失礼します」


 そう言ってセスさんはレティシアさんと一緒に車に乗って帰っていった。


「碧、セクスと何を話していた」

「セスさんね。ノウェムさんを宜しくお願いしますって話」


 私はノウェムさんの言葉を訂正してから、事実を話した。


「私を」

「何か、今のノウェムさんいい感じらしいから!」


 私はレティシアさんとセスさんの言葉をそれっぽくまとめてみた。

 多分二人にとって今のノウェムさんはいい方向なんだろう。

 そう思いたい。


「いい感じ?」

「まぁ、そういうお話よ」


 ノウェムさんがよく分かってないみたい。

 でも、私はそういう話だったと区切った。


「そうか」


 どこか穏やかに微笑むようなノウェムさんを見て、ノウェムさんを怒らせた桐兄さんのことを、桐人兄さんのことを思い出した。

 桐人兄さんは、どうしてあんな風になったんだか……

 なんであんな風に演じてるんだか……


 ため息をついた。


「どうした?」

「桐人兄さんがノウェムさんに首締められた事件」


 ノウェムさんの言葉に私は思いだしたことを口に出す。

 あれはまさに事件だった。


「あの男か……‼」

「──桐人兄さんは元々あんな性格じゃなかったのよ」


 怒りに表情を変えるノウェムさん。

 私はため息をついて、私が知る事実を伝える。


「は?」


 ノウェムさんは信じられないような声をだしてる。

 まぁ、首絞める位嫌な事いわれたんだから信じられないだろうけど言うしかない。


「真面目だけど、私達が悲しんだら笑わせてくれる、そんな優しい人、それが桐人兄さんだったの──」

「だが、あの男は私の神経を逆なでした」


 私の言葉に信じられないと言わんばかりの表情を浮かべるノウェムさん。

 だからそう反論してきた、でも桐人兄さんのことなら私がよく分かっている。


「それは多分──」


 一息置いて、回答と思われる言葉を口にする。

 桐人兄さんがいたら「碧、正解! お兄ちゃんのことよく分かってるな」といいそう。


「ノウェムが大事に思っている人が、桐人兄さんの大事に思っている人だったからじゃないかな」


「……どういうことだ?」

「桐人兄さんね、過保護なの。『家族』に近づく相手は徹底的に調べるし、場合によってはわざと挑発して本性を見るの。」


 ノウェムさんの言葉に私は応える。

 桐人兄さんは、過保護、本当に超がつくほど過保護。

 お父さんとお母さんが結婚するときも大変だったってお父さんから聞いてる。


「なん、だと」

「ごめんなさいね、きっとレティシアさんのことで怒ったんでしょう? 桐人兄さんにはあとでキツくいっておくから」


 呆然とするノウェムさん、ああそうだよね。

 レティシアさんのための人だったんだからレティシアさんが大事なんだもの。

 桐人兄さんとレティシアさんの接点はわからないけど、あったことがあるんだろうねきっと。


 全く、レティシアさんの為に頑張ってきたノウェムさんを侮辱するなんて大馬鹿すぎるわよ、桐人兄さん!

 そう思ってスマートフォンを取り出そうとすると、手を掴まれた。


「ちがう」

「え」


 ノウェムさんが違うと言った。

 レティシアさんじゃないの?


「違う、レティシアじゃない」

「じゃあ、誰」


 誰なの、どうしてだろう、心臓(こころ)が痛い。


「違う」

「え?」

「違うんだ」


ノウェムさんは首を振った。


「レティシアじゃない」

「じゃあ誰なの?」


心臓が痛い。


なぜか苦しい。


するとノウェムさんは真っ直ぐ私を見た。


「碧」

「え?」

「君なんだ」


 ノウェムさんの大事な人はレティシアさんじゃなく、今は私?

 どういうこと?

 困惑している私にノウェムさんはそれ以上の言葉をかけなかった。

 まるで、それ以上の言葉を知らないように──







レティシアとセスがノウェムの昔、生まれた理由を語り。

それで碧がレティシアがノウェムの大切な人と勘違いするのですが、ノウェムが碧のことだと言った話です。

レティシアの為だけに作られたノウェムを何故レティシアは自分から遠ざけたのか。

レティシアにとってもまたノウェムが大切だからこそ、「人」ではなく「道具」扱いのノウェムを「人」にしてくれるだろうという碧の人柄などを見て託しました。

実際、碧が関わったことでノウェムは変化し、あの首絞め事件に繋がってますから。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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