【幕間】真相に一歩近づく~指摘する桐人と激怒するノウェム~
幕間:碧がいない時の出来事、キメラ達の殲滅と桐人の首絞め事件の裏側
「此奴ぁ、すげぇな人間の遺伝子組み込んであるキメラたちだ」
「……」
こちらへ猛スピードで近づいてくる黒い獣たちを見て、戦艦から距離を取った桐人たち。
桐人は大群に感心したようにいい、咲良は黙りこんだ。
「ちがう、でしょ? 人間を素体にしてる、でしょ?」
「おや、やっぱり咲良にはバレるか」
咲良は苦しそうに息を吐く。
それを桐人は悲しげに見つめていた。
「私のナノマシンがそう叫んでるの」
「適合者なだけはある」
自身の胸元をつかんで言う咲良に、桐人は悲しげに笑って言った。
「だが殲滅が目的だろう」
パワードスーツを装着したノウェムが問う。
「アンタ俺には冷たいな」
「貴様の言動が問題だ。咲良さんだったか、貴方も碧同様参加しなくて良かったのですよ」
ノウェムは桐人に冷たく言い放つが、咲良には丁寧に穏やかに言った。
「いえ、私が原因でもありますから」
「そうですか、どうか無理をなさらないで」
咲良はノウェムの申し出を断った。
ノウェムは咲良のナノマシン発言が気になったが問わないことにした、ただ無理をしないようにいった。
無理をしたらきっと碧が悲しむと思ったからだ。
「はい」
「やっぱ俺に冷たいー!」
優しく言うノウェムに、咲良は少し安心したように微笑んだ。
一方桐人は自分への態度を嘆くフリをした。
「黙れ来るぞ」
桐人の言葉を切り捨てるように言つつ、敵の攻撃範囲内になったことをノウェムは伝えた。
「咲良、ぶちかませ」
桐人のその言葉に咲良は頷くと、機械のつばさを広げて声を発した。
「LaAAAAAAAAA‼‼」
音波兵器に吹き飛ばされていくキメラ、そしてその上から降り注ぐ黒い槍は咲良のつばさから放たれたものだった。
一瞬にして多くのキメラが串刺しになり、身動きが取れなくなりそのまま桐人のマシンガンで穴だらけになり絶命していく。
ノウェムも、追尾性のあるビームや弾丸を連射し、キメラの掃討に手を貸す。
二十分後──
「俺の探知能力ではキメラはもういないが、そっちはどうだ?」
「同じだ、だが気になることがあるからこのキメラを調査する」
そう言ってノウェムは、転がるキメラの死骸へ歩み寄った。
「おお、そうか。じゃあ俺は先に帰るぜ」
「そうしろ」
ノウェムは桐人を冷たく突き放すように言った。
「失礼します……」
「君は苦労しているな」
頭を下げて戦艦に戻ろうとした咲良に、ノウェムは「心」からのねぎらいの言葉をかける。
「ははは、そうですね」
ノウェムの言葉に、思わず咲良は苦く笑った。
二人がいなくなったあと、パワードスーツの腕の部分を解除し、キメラの死骸の爪の部分を自分の肌で引っ掻いた。
血があふれ出る。
その傷跡をバイザーの機能でデータを取り、レティシアへと送った。
血が止まり傷が塞がる頃には返事が来た。
『ノウェム! この傷のデータは⁈』
「アルジャン社を襲撃しに来たネブラのキメラの爪でつけた傷のデータだ」
レティシアの驚愕の声が聞こえた、どうやら向こうはデータを読み取ったらしい。
『……碧ちゃんのご両親の体についてる傷の痕跡とほぼ一致してるの』
ノウェムにはレティシアの怒りがこもっている声に聞こえた。
「……」
『残留した爪のデータも酷似しているわ』
無言だったが、レティシアの言葉にノウェムは確認するように言った。
「なるほど、つまり──ネブラの連中も絡んでいると」
レティシアの盛大なため息が聞こえた。
『全く、一番厄介なテロリスト集団じゃないの』
ノウェムにレティシアが頭を抱えるような声で言うのが伝わってきた。
「取りあえず、内密にしておくか」
『それでお願い。知られたら、あの子確実にネブラのアジトを探すとか言い出して死にに行くような行動取るわ!』
ノウェムの提案にレティシアが賛同した。
そして碧の行動を予測するようにレティシアは喋った。
「……それは受け入れがたい」
その言葉にノウェムは顔をしかめたが、それに本人は気付いて居なかった。
『……ノウェム、碧ちゃんをくれぐれもお願いね』
「勿論だ」
通話を終了し、ノウェムは戦艦へと戻った。
桐人が料理をすると言い出したのに、ノウェムが拒否を見せると、碧がホットケーキを作るといいだし、料理室に向かっていった。
「で、お前さん。碧ちゃんとどういう仲なの?」
「……護衛と護衛対象、それだけだ」
ノウェムは桐人の態度が鬱陶しくてそういうと、桐人は鼻で笑った。
「お前のあの態度でそれか⁈ ハハハ、ちゃんちゃらおかしくてへそで茶を沸かせるぜ」
「なんだと?」
桐人の態度がノウェムを「不快」にさせた。
碧の護衛につくまでは、何を言われても感じなかったのに、今は「不快」で仕方なかった。
「貴様は何がいいたい⁈」
声を荒げた。
ノウェムにとって初めてとも言える行為だった。
「なぁノウェム。お前さ、気付いてねぇのか? 今のお前、人間そのものだぞ」
その言葉にノウェムはどこか動揺していた。
「お前さ。碧ちゃんに惚れてんだよ。だからそんな面倒臭ぇ顔してんだろ」
「私は人工生命体だ決して──」
ノウェムの言葉に、桐人は鼻で笑った。
「『人間になることはない』? 笑わせるね! 今のお前は人魚姫のようなもんだ、碧という人間に恋をして、兵器から人間に変貌している!」
「──黙れ! 私は彼女にそのような感情を──」
ノウェムは否定したかった、いや否定しなければならなかった。
「抱いてない? 『嫌悪』している俺が彼女の知り合いであることを『不愉快』に思ったり、俺の料理を『拒否』したり、明らかに俺と碧深い仲だと知って怒り狂ってる」
「──黙れと言ったのが聞こえないのか!」
ノウェムは桐人につかみかかり、服の襟をつかむ。
「『新型人工生体兵器№9ノウェム』、レティシアを守るためだけに作られ、生殖機能も他のナンバーズとは違うものとして作られた兵器さんよ。お前は碧を傷つける気か? それなら俺もテメェを潰すぜ。碧は俺の大事な『妹』だ」
「貴様などに碧のことを口にされるだけで不愉快だ!」
ノウェムは「我慢」ができなくなりつつあった。
「不愉快で結構! それに男性体のくせに、女性器しか持たないお前が彼女を満足させられるか?」
ブチン!
ノウェムの中で何かがキレた音がした。
「貴様、碧を穢す気か! 私の碧を‼」
「ぐぇぇえ……締まる……」
首を絞められても若干余裕そうな桐人と、怒りにまかせて殺してしまおうとしているノウェム、どうしたらいいか分からずただただうろたえるだけで止めに入ることすらできない咲良。
「はーい、できた……ってノウェムさん桐人さんに何してんの⁈」
だが、その硬直はホットケーキとメープルシロップの甘い香りと共にやって来た碧にぶち壊された。
「ったくノウェムの奴俺のこと本気で殺そうとしやがって」
帰り道、首に残る痣をさすりながら桐人は呟いた。
「そ、そんなこと言っても、仕方ないでしょう!」
咲良は叱るようにたしなめる。
「図星だったから怒ってたもんなぁ」
「もう、反省してない!」
桐人の言葉に咲良はなんとも言えない顔をした。
「恋と書いて下心と読める」
にやりと桐人が言うと咲良はあきれのため息をついた。
「私は違うわ。愛って、相手の心を受け取ることだと思う」
「俺はまだ恋と感じたが?」
咲良の言葉に桐人が返すと、咲良はあきれた様に行きを排他。
「ノウェムさんのあれはもう愛よ、だからそれを侮辱されたから怒った」
「でも、同時に事実だから怒ったのもある。アイツは普通と違う体だから、自分が碧を幸せにできると思えねぇんだよ」
咲良は桐人をたしなめるように叱るが、効果がないようだった。
「そういう下世話なところが怒られるのよ」
「事実だからしゃーねーじゃん」
咲良はふぅとため息をつく。
「二人が傷つかない結果を望むの」
「それは俺も同じさ」
桐人はにやりと笑った。
「嘘くさい」
咲良はジト目で桐人を見た。
「いや、本当だって、信じてくれよ、咲良~~! 咲良ちゃ~~ん!」
「そういう所が信じられないの!」
怒った表情で咲良は桐人を見ると、桐人はそれに心の底からショックを受けた顔をした──
前回、碧が見てない場所でこういうことが起きていました。
桐人は大切に思っているからこそ下世話な発言までしてノウェムを激怒させました。
ノウェムは無自覚ですが「私の碧」と発言しています、それほどノウェムにとって碧は大事な存在なのです。
咲良と桐人の会話は、碧とノウェムの関係性の今後を示していると思ってください。
ちなみに最後の桐人がショックを受けたのが咲良に本気で怒られたからです。
可愛い妹分には兄代わりは勝てないようです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。
2026/06/01加筆修正しました。




