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17.桐人の真実

桐人の正体が明かされる。

それはあらゆる環境に適応できる特殊な生命体ルプスと名付けられた存在だった──


 グラウンドで話す内容ではないので会議室に皆で集まった。


「桐人さん人間じゃ、無かったの?」

「うん。三百年以上前に作られた生体兵器『ルプス』」


「あらゆる環境に適応して生存することを目的に作られた存在だったらしいの」


「そして、生き残ったのは桐人だけ」


 リーネさんの質問に、咲良ちゃんが答えた。

 そんなの初めて聞いた、桐人兄さんがそんな存在だなんて。


「待て、そんな話聞いたことが無いぞ」

「そりゃそうだ、宇宙開発政府のデータベースのブラックボックス中の更にブラックな中にしか置いてないねぇし、今じゃ俺以外開け方分からない代物だしな」


 それじゃあわかんないよ!

 その上、何か訳ありみたいな言い方だし!


「しかし、三百年以上前に作られてあの性能だと? 他の者はどうなったのだ?」

「……成功したのは一人だけだったらしいの」


 咲良ちゃんは絞り出すようにいった。


「つまり他のルプスは、あの男のような存在ではなかったと?」

「ええ、ナノマシンの暴走や、実験などに耐えられなくて桐人以外死んだそうよ」


 人間の業がここにも……


「では、何故君はついになるナノマシンが適応できた?」

「遺伝子のいたずらって桐人は言ってた。偶然(・・)私が適合する遺伝子を持っていた、それだけなの」


 じゃあ、咲良ちゃんは適応しなかったら死んでいた?

 そう考えると怖くて仕方なかった。


「……だからその上サイボーグにも改造を?」

「改造は最低限です。筋肉とかそう言うのの強化とナノマシンをより定着させるもの。ナノマシンの力の方が強かったの、あの機械みたいな姿はナノマシンの力によるもの」


 ノウェムの質問に咲良ちゃんは淡々と答える。

 なんとも言えない表情が痛々しかった。

 もう質問をやめさせようと思いはしたけれども、知りたかった。

 私の知らない咲良ちゃんと桐人を。


「ねぇ、そのことを知ってるのは……」

「私の両親に、桐人とアルジャン社の方々とノワール社の一部、そしてモナル社とテトラ社の社長さんと──」


 そこまで言って、少し躊躇いがちに口を開いた。


「碧ちゃんのご両親もだったの」

「‼」


 驚きのあまり言葉を失う。

 お父さんもお母さんも知っていた。

 私だけ知らなかった。

 胸の奥が少し痛んだ。


「……ねぇ、ノウェムさん」

「どうした、碧」


 ノウェムさんは心配そうな顔をしていた。

 私の中に憎悪が芽生え始めていることに気付いているのかもしれない。


「もしかして、ネブラの連中がお父さん達を殺したの?」


 血反吐を吐くように尋ねた。


「それは──」

「碧、ソイツは早合点だぜ」


 ノウェムさんが答える前に桐人兄さんが答えた。


「桐人さん……」

「処理はすんだのか」


 ノウェムさんの言葉に、桐人兄さんはぶっきらぼうに返した。


「おう」


 桐人兄さんは面倒そうに手をひらひらさせた。


「桐人さん。貴方のこと咲良ちゃんから聞いたよ……」

「はは、驚いただろ?」


 私が言うと、桐人兄さんは笑っていた。


「人を、恨んでるでしょう?」

「当然だろ」


 あっけらかんとした態度で桐人が言う。


「……小さい頃からの付き合いなのに、そんな様子見せなかったじゃない」


 思わず本音が出る。

 小さい頃の桐人兄さんはちょっと面白いお兄さんという認識だったのだ。

 その認識がガラガラと音を立てて崩れて居るのだから結構しんどい。


「あー、萌木家と小鳥遊家、高橋家と、キーア家とその親戚たちには三百年前に恩があるからな。あ、キーア家ってのはモナル社を設立した家な」


 なんでキーア社にしなかったんだろう、まぁ、それはいいか。

 それよりも……


「恩?」

「ああ、この家たちは俺の事情を知りながら政府に報告しなかった、秘匿してくれたんだよ。それどころか俺の後ろ盾にもなってくれた。だから今度は俺の番だってことで、宇宙開発政府と、その政府を黙認してた地球政府を脅して活動してるって訳」


 だから、私達には優しかったんだ。

 でも──


「……」


 開いた口が塞がらない。

 何してくれてるんだこの人。


「何か頭痛くなってきた」

「だろうなぁ!」


 カラカラと笑うのがムカついたので桐人兄さんの腹部に一撃を食らわせてやった。

 めっちゃ痛がってる。


「……殴ってなんだけど、痛覚オンオフしてるの?」

「あの無邪気で優しいな碧がこんな暴力的に、お兄さん泣いちゃう!」


 桐人兄さんは顔を覆う仕草をするが私は遠い目をする。


「いや、誤魔化さないで」

「ははは、オンオフできるし、体の硬度も変化できる。殴るの分かって硬度低下させたからな」


 どうして、そんなことを。


「なんでわざわざ」

「だって、普段の硬度だと碧の手の骨が折れるだろ」


 ああ、人が嫌いとか言っていたけど、私のことを妹みたいに思っているんだ。


「碧、俺に構うのはいいが、そこの護衛にも構ってやれよ、すげぇ不機嫌そうな顔してるぞ」

「……していない」


 ノウェムさんを見ると、明らかに不機嫌そうな顔をしている。

 あれ、不機嫌になる要素あったっけ。


「レティシアが言ってただけあるな!」


 大笑いする桐人、不機嫌丸出しなノウェムさん。

 一体なんでこうなった?



「なんか、ノウェムが桐人さんと話したいからって応接室いっちゃった」

「桐人がごめんね、碧ちゃん」


 咲良ちゃんが言うが桐人兄さんがなんか多分色々悪い気がするので気にしないようにいうことにした。


「咲良ちゃんは気にしなくていいよ」


 私は手をひらひらさせて笑うと、咲良ちゃんは安心したように笑みを浮かべた。


「それにしてもその服……」

「わ、私の趣味じゃないよ? 桐人が私に着せたの……敗れても修復できる服なんだけどデザインが可愛すぎて……」


 ごにょごにょと何かいいたげな咲良ちゃん。

 そう言えば咲良ちゃん、ズボンスタイルでいつもジャージで御洒落はジーパンで制服以外でスカートはいたら何事⁈ って家族に言われる位だった気がする。

 でも、本当は私が着せて貰った色合いが落ち着いた可愛い服を着たそうにみていたのは覚えている。


「ちょっと色合いが可愛すぎるね、咲良ちゃんにはもっと落ち着いた色合いの服が似合うよ、アミュレスの服みたいな」

「ほ、本当⁈」


 咲良ちゃんは驚いた表情と嬉しそうな表情をした。


「うん、後でアミュレスみたいな服にするよう桐人にお願いしよう」

「うん!」


 咲良ちゃんは笑顔になった。

 うんうん、咲良ちゃんは笑顔が一番だよ。


「咲良、あのちびっこの咲良か?」


 会話に入りたがっていたレイジングたちが会話に入ってきた。


「ちびっこって十年以上前なら私もちびっこじゃない」

「そりゃそうか、そういえばなんで十年以上交流が無かったんだ?」


 そう言い出したので、忘れちゃったのかとあきれのため息を私はついた。


「正確にはお父さんたちが会社設立するっていった五、六年前から。それまでは私は単独で交流してたし、お父さん達も言ってたわよ。ただレイジングたちを連れて行ったとき、4回目位の頃貴方達咲良ちゃんとか泣かせて彩花姉さんやお父さん達にこっぴどく怒られたの覚えてない⁈」

「「「「……あ」」」」


 親戚の交流会、私と彩花さん以外のちびっ子たちを泣かせてしまったので、両親はレイジングたちを連れて行かなくなった。


 そりゃ怖いだろう、でかい物体につままれて空中に浮くのは。

 それで一人が泣いたら連鎖的に泣き出して、両親は土下座。

 それ以来レイジングたちを連れてくることはしなかった。


 全く、自分のしでかした事くらい覚えててほしい。


 うちの親戚一同は子ども達の教育に悪いとラフプレー横行していた頃のロボットスポーツは一切見せてないレベルだったんだから。

 ……スポーツマンシップにのっとってやる今のロボットスポーツをやるようになってようやく皆解禁になるくらいだった。


 一度学校の方針でロボットスポーツのラフプレーを見た清花(さやか)さんは「わたし、二度と見ないし、ロボットスポーツ見るくらいならずる休みする」って言ってたな。

 お姉さんの彩花さんは「私がこれを変えてやる!」だったな……


 彩花姉さん、貴方の願いは叶ったよ。


 そう思った。

 もしかして姉さん、貴方の賭けは──


 ロボットスポーツのラフプレーの横行(・・・・・・・・)を止めさせて正々堂々(・・・・)のスポーツマンシップに乗ったものにできるかどうかだったのか?


 一つの疑問が沸いたが、それを問いかける相手は今ノウェムさんと話し中だ。

 聞かないと、そういう思いが強まった。










桐人が碧や咲良たちに贔屓する理由が判明しました。

そして桐人の正体も。

桐人も人の形をしただけの存在だったのです。

そして、碧が過去を思い出し、そこで賭けの内容を想定します、果たして当たるのでしょうか。

また桐人とノウェムは何を話すのでしょうか?


ここまで読んでくださりありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

2026/05/31加筆修正しました。

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― 新着の感想 ―
なるほど、そういうことだったんですね。しかし依然として碧ちゃんの両親をコロコロした犯人はわからないままか…。まぁそりゃこんなすぐに犯人わかるわけないよねー!! 碧ちゃんは流してたけどわたしもキーア社に…
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