16.テロリスト集団ネブラと桐人~咲良と二人の秘密~
碧と咲良がアルジャン社の外で会話するが、咲良は言いよどんでいた。
碧は気にしないといった時、ノウェムが現れ、何者かの攻撃を防ぎふたりをまもった──
「──ところで咲良ちゃんはどうして桐人兄さんと行動してるの? 確かに彩花さんと同じくらい可愛がられてたけど」
「えっとその……」
桐人兄さんをグラウンドでみんなが締め上げている間、私はアルジャン社の外で、久しぶりに会った親戚の咲良ちゃんに事情を聞くが、咲良ちゃんは言いにくそうにしている。
咲良ちゃんが言い淀むなんて珍しい。
こういう時は、大抵ろくでもない話だ。
「いいよ、じゃあ聞かない。咲良ちゃんのこと一応わかってる──」
「碧!」
ノウェムさんが一瞬でパワードスーツを装着し、バリアーを張って何かを防いだ。
桐人兄さんもやってきた。さっきみんなに殴られた痕が残っているが、もう薄くなり始めている。
「テロリスト集団、ネブラの連中だな」
「え⁈ アルジャン社ってそんな連中に狙われてるの⁈」
黒いパワードスーツを着た連中と、戦闘型ロボット達が現れる。
「──」
咲良ちゃんが何か言おうとしていたが、それどころではなかった。
「おーい、ノウェムとか言ったな」
「何だ?」
桐人兄さんがノウェムさんに声をかけた。
ノウェムさんはまだピリピリしてるけど、返事がちゃんとしてくれた。
よかった。
「お前はロボットを破壊しろ、ターゲットの確保と邪魔するものの破壊しかインプットされてない鉄の塊だそいつらは」
「……人間はどうする」
人間が率いているのは分かる。
ノウェムさんの問いに桐人兄さんは即答した。
「俺が殺る」
「ちょ、ちょっとそんなことしたら──」
私は思わず止めに入りかけるが、桐人兄さんが冷たく言った。
「こいつらは殺さないとまた出てくるんだよ、政府にこいつらの仲間がいるから」
「え」
そう言って、桐人兄さんはパワードスーツの部隊に向かっていった。
事情を聞く暇もない、ただ私は怯えるしかなかった。
ノウェムさんが飛び出すのが見えた。
剣が閃き、戦闘ロボットの腕が宙を舞う。
二機、三機と瞬く間に機能停止していく。
「目を閉じて耳も塞いで!」
咲良ちゃんは私を抱きしめてそう言った。
生々しい音が耳を塞いでも聞こえてくる。
肉が裂ける音、骨が折れる音、ヘルメット越しの断末魔。
──いや、怖い!──
ロボットの破壊音も、怖かった。
でもそれ以上に哀れだった。
自我を持たされない子たち、可哀想な子たち、破壊されなければ救われない子たち、哀れだった。
「げ! 特注のビームかよ! ……仕方ない咲良! 碧を最優先で守れ!」
「! 分かった」
めきめきと何か音が聞こえた。
咲良ちゃんの右腕が銀色へと変質していく。
肌の下から機械構造が露出する。
漫画や何かで見た様な、機械と人間が入り交じった姿を咲良ちゃんはしていた。
「LaAAAAAA‼」
咲良ちゃんの甲高い声は音波の壁になり、ビームを拡散させる。
そして、咲良ちゃんは腕を伸ばす。
腕は銃になり、眩しい光を放った。
その後爆発音が響く。
「さ、咲良、ちゃん」
「……怖がらせてごめんね……」
機械になった場所が人間の体に戻る。
服も自動で再生されていた。
「私、事故にあってサイボーグにされた上でとあるナノマシンが適合したらしいからナノマシンも入れられて……こんなのになっちゃったの、ごめんね、怖がらせて」
咲良ちゃんは悲しそうに言ったが、私は手を掴んで首を振る。
「怖くない、だって咲良ちゃんは私を守ろうとしてくれた! そんな体になったの、きっと凄い嫌だと思う! なのに──」
「ほぉら、咲良。碧なら受け入れるっていったろ、俺の勝ちー」
私の言葉に咲良ちゃんは笑顔で泣いた。
そして桐人兄さん、こんなところでも賭けしてたの⁈
全くもう!
「碧無事か?」
「無事だけど、この血のにおいは無理……」
耐えきれず咲良ちゃんから離れて地面に膝をついて吐き出しそうになった時、ノウェムさんがエチケット袋を出してくれて、私はそれに吐き出した。
ノウェムさんはそれを結び、近くのゴミ箱に捨てた。
「おいおい、持って帰れよ」
桐人兄さんがあきれた様に言った。
まぁ、最もだけど、掃除する人が大変になるだろうし。
「吐瀉物が固形化するタイプのエチケット袋だ」
「ならいいか」
何がいいんだと思いつつ、私はノウェムさんが用意したウェットティッシュで口をぬぐい、ペットボトルの水を口に含んでその場に吐き出した。
「あ゛ー……ようやく落ち着いた……毎回こんなんなの?」
「そうだぜ、咲良を狙ってな。だからアルジャンに来て護衛も頼んでいる」
何故アルジャン社に来るのかさっぱり分からない。
「どうして?」
「奴らスポ根精神だからよ、意思がない奴らを混乱させるのに持ってこいなんだ」
「い、意味が分からない」
いや、マジで。
スポ根精神がどう絡んだらそうなる?
「つまりこうだな『原理は分からないが、アルジャンのスポーツロボットと対峙した意思がないはずのロボットが意思があるようなバグを起こしエラーを引き起こさせて機能停止に持ち込んでいる』と」
「うわぉ! よくそこまで分かったなー!」
桐人兄さん感心して拍手してる。
「ってことは、アルジャンのスポーツロボットの人達呼んでればあの子たち破壊しないですんだの⁈」
「まぁ、そうなるわな」
桐人兄さんの肯定の言葉に、私はどうしようもない怒りを覚えた。
「何で呼んでくれなかったの!」
私は桐人兄さんを怒鳴る。
「碧、君が怒るのは最もだ、だが今それができるロボット達はメンテナンス中で動けなかった、そうだろう」
「その通り、だから破壊しかなかった。仕方なかったんだよ」
私は落胆する。
仕方ない。
辛い言葉だ。
「破壊してないロボットはどうしてたの?」
「モナル社とノワール社に引き取って貰って新しく生まれ変わらせてるぜー」
「そう、なんだ」
私は骸になったロボット達を見る。
「貴方達も、そうできたらよかったのに、ごめんね」
「相変わらずロボットに心痛めてるなぁ碧は」
骸となったロボットを撫でていると、桐人兄さんはそう言った。
「だって!」
「そうだな、物心つく頃から、ロボットたちはお前の『家族』だった」
そう、メフィストたち四人はそのころから私の家族だった。
だから「ロボット」たちにも幸せでいて欲しい。
「うん……」
それしか言えなかった、それ以上の言葉を言っても今はどうしようも無かったから。
「「「「お嬢ー‼」」」」
「みんな⁈」
メフィストたちがやって来た。
「手合わせとか終わる直前爆発音とかがして慌ててきてみたら、どうなってやがるこの状況」
「あ、テロリスト集団ネブラが俺の可愛い咲良と君らのお嬢様を狙ってきたから返り討ち……もとい殲滅しました、以上」
レイジングが状況確認を求める。
すると、桐人兄さんがそう言った。
え、咲良ちゃんだけじゃなく私も⁈
「警察沙汰にならんか⁈」
「ならねーよ、俺がいるから。咲良、お嬢ちゃんたちを連れて先にアルジャンところに行ってろ」
宗一お爺ちゃんがでてきて慌てる。
そんな宗一お爺ちゃんに桐人兄さんは咲良ちゃんに指示をだした。
「う、うん。皆さん戻りましょう」
「じゃが」
私は自分たちが何も役に立たないことを理解していた。
だから口に出した。
「……戻ろう、みんな」
「社長が、碧がこう言っている、戻るぞ」
ノウェムさんの言葉に皆は仕方なく頷いて、桐人兄さん以外全員でアルジャン社内部に戻った。
アルジャン社のグラウンドに戻り事情を説明した。
「またネブラの連中が⁈ くそロボット達に未来を与えられるチャンスだったのに」
「手合わせに時間がかかっていたのが失敗だったか……」
などなど、何かアルジャン社さんのスポーツロボットの方たち、後悔している様子。
どうやら桐人兄さんの言っていたことは本当だったらしい。
「それにしても、あの桐人とやら、どうやってパワードスーツを破壊して殺害までできたんだ……」
「そ、それは桐人が……」
ノウェムの呟きに咲良ちゃんが反応する。
咲良ちゃんが言いにくそうにしていたが、意を決したようにこちらを見て言った。
「人工特殊生命体で、その上で私のナノマシンの対になるナノマシン──アダムの保有者、だからです」
「……え?」
初めて知った事実、出会った頃から一向に年を取らない理由とあの異常な破壊力は、人ではないのだと知り、私は桐人兄さんが分からなくなった──
咲良が秘密にしていたことと、桐人の秘密の一部が明らかになりました。
咲良は体の一部をサイボーグ化させられているので荒事をすると相手が良くて重症、悪けりゃ死ぬので手出しはせず桐人と行動してまかせています。
ただ、今回のような自分目当てのテロリスト集団ネブラたちの場合は別です。
積極的に戦いに参加します。
また最期に対になるナノマシンという単語も引っかかると思いますが、次回以降をお楽しみにしてくだされば幸いです!
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。
2026/05/31加筆修正しました。




