14.スポーツロボット会社アルジャン~再開と悲しい思い出~
ロボットスポーツを生業にしているアルジャン社に向かった碧。
メンテナンスをアルジャン社に言った面々でこなしている時、碧が言ったある人物の名にアルジャンのロボットや社長たちが反応し──
「え、アルジャン社に行くの?」
みっちゃんが大荷物を抱えてて、戦艦の前にいる私に声をかけて来た。
遠出することになるので、しばらくの間会社をみっちゃんに任せることになった。
ただし、電話は全部こちらに来るようにしてるので、取る必要はないと言ってある。
みっちゃんはそれに安堵していた。
どれだけみっちゃんにトラウマを植え付けたんだ、あの会社。
滅べ!
ってああ、モナル社に株式全部買い占められて乗っ取られたんだよね。
はは、ざまぁ!
「アルジャン社か……」
宗一お爺ちゃんが気難しそうな顔をしている。
順兄さんと涼兄さんも不安そう。
今回メンテナンスのために同行してくれることになった。
『アルジャン社じゃと⁈ ダメじゃダメじゃ‼ 順と涼の二人だけには任せられん!』
という訳で宗一お爺ちゃんも同行急遽することになったのだ。
なんで任せられないんだろう?
まぁ、後で分かるよね!
「──そう言えば、アルジャン社の人が良ければロボット同士で手合わせできるならしたいって」
書面で来た内容を思い出しながら私はメフィストたちに言う。
「うへぇ、僕は遠慮するよ、僕はピエロだからね」
「オレもだ、オレは戦闘型だ」
メフィストとレイジングは乗り気じゃなさそう。
「力比べくらいならしてやらんこともない」
「剣技なら私に任せてくださいお嬢様」
ガンツとクラレンスだけはやる気がある。
「それじゃあ、アルジャン社へしゅっぱーつ!」
「「「「「おー!」」」」」
「……」
スイーツ巡りの時とは違い、今回はノウェムさんはのってくれなかった。
残念、でもいつかはと思いながら戦艦に乗り込む。
戦艦をワープ許可地点まで上昇させる。
そして、ワープ機能も使えばあっという間に。
「到着ー。アルジャン社さんはここか」
私の会社よりちょっと大きいくらいの建物だった。
白い建物、白亜とも行ってもいい。
銀色のチームのマークが上のほうに書かれていた、銀の翼のマークだった。
「ノウェム?」
先に行こうとする私をノウェムが止める。
「誰がいるか分からない、私が先を行く」
その表情は冷たいというよりも、不安が表れていた。
まるで、まるで私を庇うことが当然であるかのように。
ノウェムのそんな表情をみたらそうするしかない。
ノウェムは先を歩き、チャイムを鳴らした。
『もしもし?』
「モナル社から依頼を受けた株式会社パトリの者です」
初対面の相手なのでノウェムさんも丁寧に対応した。
『おお、来てくれたか‼ 丁度皆最近の連続試合で色々と疲弊していてな‼』
「それはよかったです」
扉が開く。
茶色の髪に茶色の目、日に焼けた肌の壮年の男性が現れる。
筋肉質でスポーツ用のシャツとズボンをはいている、監督役かな?
「よく来てくれた、私はブランツ・アルジャン。アルジャンチームの監督をしている」
「監督さんでしたか。私は社長補佐のノウェム・アルモニア。こちらが社長の萌木碧です」
ノウェムさんが監督さん──ブランツさんに代わりに挨拶をしてくれ、紹介もしてくれた。
「ん? もしやそちらのお嬢さんが……」
「お初にお目にかかります、萌木碧、株式会社パトリの社長を務めさせて頂いてます」
私は丁寧な対応を心がけようと丁寧に挨拶をする。
「私の姪のリーネより幼いが、数年前のリーネを思い出す、私の兄でリーネの父が失踪し、会社を継いで苦労していたのは今でも思い出せる」
何か思い出に浸っている。
父親が失踪ってそれ凄い苦労してるよね、リーネって人!
「それよりも、まずロボットたちの整備を、宗一さん、順、涼。できるか?」
「儂を誰じゃと思っている」
宗一お爺ちゃんはカッカッカと笑った。
兄さん達は不安げな表情。
まぁ、そうだよね。
これ、今までの整備は会社内だけど今回は派遣で整備してくれ、って依頼で自分たちがやらなきゃいけないんだもの。
「惣十郎の爺さん、休んでろって医者に言われただろ!」
「儂は生半可な腕前の奴は認めんぞ!」
惣十郎という名前に宗一お爺ちゃんがぴくりと反応し、無言で声のした方向へむかった。
私達も慌ててついて行く。
「儂がやる!」
「全く体壊しておるんならちゃんと跡継ぎ見つけておかんか」
わめくご老人に、宗一お爺ちゃんはあきれた様に言った。
「む……誰、そ、宗一か⁈」
白髪のお爺ちゃんが宗一さんを見て目を見開き、宗一さんは近づいていった。
「久しいな、惣十郎」
「宗一、お前嫁さんが亡くなってから子どもたちに絶縁されて一人田舎に引っ込んでたと聞いたが……」
そう言えばお爺ちゃんそんな話昔してたなぁ。
「お人好しのご夫妻が儂のことを見つけて、自分の『家族』たちを任せたいと言ってきたんじゃ、そういわれちゃあ動かないわけにはいかんじゃろ」
「そうか……」
惣十郎さん、宗一お爺ちゃんに事情を説明されて、なにか納得した様子。
「で、そいつらが助手か?」
「助手兼、夫妻の息子さんたちじゃ。娘さんはほれ」
そういって私の方を向く。
「今社長をやっとる」
「そうか……お前さんなら儂の『身内』を任せられる」
惣十郎さんの言葉に、宗一お爺ちゃんはにかっと笑った。
「ありがとうよ」
そうして、整備が開始した。
私も工具を持って作業に加わった。
社長だから見ているだけ、というわけにはいかない。
「ノウェムさん、そっちは終わりました?」
「終わりました。旧型でしたから少し大変でしたが」
確かに旧型ほど大変になるって言われてるもんね、何故か。
部品とかそういうのの問題だろうねきっと。
「ほぉ、どれ位の旧型だと思った?」
「約五、六年前の旧型、スポーツ型汎用ロボットN-001βだと思いました」
ノウェムさんはすらすらとロボットの方を述べた。
スポーツ型汎用ロボットの部分までしか分からなかったよ私。
「此奴は凄いなぁ、五、六年前とは言え、それを修理できる奴を久々みたぜ。最近の若い奴らは新型しか見ないから、どんどん旧型の整備方法を忘れちまう」
そうなのかー。
普通なら旧型も覚えていると思うけどなぁ。
「社長、一年周期で新型のスポーツロボットは開発されています。旧型で現役はめずらしいんですよ」
「あ、そうだ。彩花姉さんが言っていたなぁ。そのせいで廃棄されるロボットが後を絶たないのが私には許せないって」
「「「「「「「彩花だと⁈」」」」」」
メンテナンスが終わった、現在のアルジャンのエース達が私に詰め寄る。
「彩花のことを知っているのか⁈」
青いアメフト用のロボットが私に聞く。
「えっと、皆さんが言ってる彩花さんってもしかして」
「小鳥遊彩花……という名前ですか?」
全員が一斉に頷いた。
そして私より少しだけ年上の銀髪の女性が駆け寄ってきた。
「ねえ、貴方は彩花さんとどういう関係⁈」
「リーネ、落ち着きなさい。困っていらっしゃるだろう」
ブランツさんが女性──リーネさんを落ち着かせようとするが上手くいかないようだ。
それくらい彼女は動揺、いや違う、なんだろう、上手く言語化できないけど知りたがっているのは分かる。
「でも、聞きたくて!」
「私は──」
言いたくないこともあった。
そして言わなければならないこともあった。
「……彩花姉さんのいとこで、彩花姉さんの最期を看取りました」
アルジャン社の人々がざわめき出す。
ああ、そうか。
姉さん、貴方が在籍するといったチームがここなのですね。
そこで命を削りながら、病気をひた隠しながら、闘病生活を続けながら、チームに貢献をしていた。
「聞きたいんだ。彩花はいつから病気だった」
「おそらくアルジャン社に入社する一年前からです。十ヶ月ほど通院したのですがある日『私は賭けをすることになった、賭けるのは私の人生。人生を賭けて、現状を変えて希望を示そう』そんな事をいいだして、それから『私を入社させてくれるところ見つかったから、元気でね』と」
あの時、止めるべきだったのだろうか、今でも悩んでいる。
止めていたら姉さんは今も生きているだろうと思ってしまうから。
「彩花は……隠していたのか、最初からずっと、俺達に、あの日まで」
そうか、彩花姉さんが倒れた日、あの人がどこかへ電話をしていた日。
「……あの日、彩花姉さんが倒れて……それから仕事で手が離せないご両親の代わりに私が毎日見舞いに行っていました」
「誰かは分からないが俺達全員に連絡が来たんだ『もう、小鳥遊彩花の命の火は尽きる、後悔したくなければこの病院にむかえ』と病院に全員向かって目にしたのは酷く痩せて蒼白い肌の彩花だった……」
そう、もう彩花姉さんは限界だった、でも彩花姉さんのデータのお陰で特効薬ができて同じ病気の人は治っている、でもそれより聞きたいことがあった。
「聞きたいんです、どうして貴方達はまたアルジャンに? 他のチームで自分の──」
「彩花が言ったんだ『最期にみんなの試合をみたい』とな」
その言葉に胸が痛くなる。
「……でもそれは叶わなかったんです、だって姉さんは試合前に司会者の方たちが喋っている間に──」
言いにくかった、でも言わなければならないから言葉を絞り出す。
「亡くなり、ましたから」
「ああ……」
そうか、だからこの人たちはこのチームに残ったんだ、再び。
もう叶うことのない願いを叶えられなかったから。
私はかける言葉が思いつかなかった、だって私も──
頬を伝う涙を、ノウェムさんが黙って拭った。
その優しさに触れた途端、堪えていた涙がまた溢れた。
アルジャン社で働いて居た人物彩花という人物が色んなきっかけを生み出していると思っていただけたら幸いです。
また、彩花と碧は仲が良く、姉妹のようでした。
看取ったとき碧は悲しかったのです、そしてそれを思い出し、再び悲しんでいます。
ノウェムは悲しみに暮れる彼女を励ますより、側で涙を拭うことを選びました。
励ましてもここでは、空回りだと思ったからです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。
2026/05/30加筆修正しました。




