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【幕間】大事なお嬢様のバイト先~会社について長兄と老齢のメカニックは語る~

碧が社長として働くまで何をしてたかと、家族でニートだった順とメカニックの宗一のやりとり。




「お嬢のバイト先、知ってるか」

 ガンツが仲間のロボットたちに声をかけた。

「いや、知らないな」

「……なんとか喫茶という奴らしいんだが、儂にはよくわからん」

 その言葉に、仲間のパトリ所属のロボットたちはガンツに詰め寄った。

「「「お嬢様 (さん/ちゃん)のバイト先に案内しろ」」」

 詰め寄られたガンツは「お、おぅ」と答えるしかなかった。



 そして、ロボットたちはやって来た、バイト先──メイド喫茶に。

「お帰りなさいませご主人様!」

 猫耳カチューシャをつけてフリフリの短いメイド服を着て、客に挨拶している自分たちの大切な「主人(女の子)」を見た。


「「「お嬢─────‼‼‼‼‼‼」」」


 ガンツ以外のパトリ所属のロボットたちは絶叫し、号泣した。

 清楚で、健気で、一途な自分たちの主人が、それらを殴り捨てて金を稼ぐために体を張っているのが分かったからである。

「お、お前ら、号泣しすぎじゃ! 儂も見た時はなんちゅーかっこじゃと嘆いたが……」


「メフィスト、ガンツ、レイジング、クラレンス⁈ 何でこんなところにいるの⁈」

 メイド服のまま、主人()が駆け寄ってくる。

「お嬢様、そこまで身を削らないでください!」

「お嬢さん! 私どもも働きます! ですからこのお店は止めてください!」

「お嬢ちゃん! オレも働くからそこだけは止めろ!」

 三体の言葉に碧は即答した。

「無理、給料いいし、待遇いいし、服装は目をつぶる、服への羞恥心は捨てる、卒業して社長職で稼げるようになるまでの辛抱よ」

「「「お嬢──‼」」」

 三体はまた号泣しはじめた。

「ああ、もう、ガンツ! この三人を止めてよ」

「儂には無理じゃて」

「もう、いいから帰った帰った! 仕事の邪魔! コレは社長命令です!」

「そういうことじゃ、戻るぞ、お前ら」


 ガンツは号泣しつづける三体を引っ張っていった。

 碧はそれを見てため息をついた。


「もう、皆に止められるからガンツに言わないように言ったのに……後で説教ね」

 そういって持ち場に戻り、笑顔になって客たちを招き入れる。


「お帰りなさいませ、ご主人様!」





「「「……」」」

 社宅兼住居にガンツたちが戻ると、ガンツ以外の三体は無言で暗くなっていた。

「やれやれ、どうしたもんかのぉ?」

「……」

「おう! 順か! お前さんは、確か宗一の奴の技術習得の真っ最中じゃなかったか、どうしたんじゃ」

「……あれ」

 碧の長兄であり、ニートだった順が小声で三体を指刺した。

「ああ、お嬢のバイト先見てきてさめざめと泣いてるんじゃよ、全くしめっぽい奴らじゃ」

「「「誰が湿っぽいだ (です)⁈」」」

 メフィスト、レイジング、クラレンスの三体が声を荒げた。

「順貴方知ってたでしょう。お嬢様があんなバイトしてたの」

 クラレンスに詰め寄られ、順は視線をずらした。

「やっぱり‼」


「おい! 順! まだまだ覚える事は多いんじゃぞ! お前は基礎からたたき込んでくれと社長に頼まれてるんじゃからな!」

「……」


 順はクラレンスを避けてまだまだ元気そうな老人──パトリ唯一のメカニックの宗一の元に行った。


「逃げ出したのか?」

「順はコミュ障の極みですからね」

「それ言ったら……お嬢ちゃんもコミュ障の極みじゃないかなぁ」

「「「……」」」

 三体そろって無言になる。


「失礼します」


 誰かが入って来た。

 その人物はモナルの社長レティシアだった。


「……バイト先、候補だしたの、その人……」


 宗一に頭をぐりぐり撫でられながら、小声で順が言った。

 四体は聞き逃さなかった。

「モナルの社長様! 何ですあのバイトは⁈ 他にいいバイトなかったんですか⁈」

 クラレンスがレティシアに食ってかかる。

「実は他のも用意してたの、ただあの子時給換算で見て一番高かったあのメイド喫茶を選んじゃったのよ。でもあのメイド喫茶人気なのよ、女の子も服が可愛いって、募集したら即座に埋まる位」

「他のは?」

 メフィストが尋ねる。

「事務作業、保護活動、保全活動、etc……全部お金は出るのだけど、値段は事務よりあっちの方が上になっちゃったの」

 レティシアの言葉に三体は膝をついた。

「のう、社長さん。お嬢の負担を軽くしたいから自分の飯代位は稼げるようになりたいんじゃ、だから儂等にも仕事を斡旋してくれないかの?」

 ガンツの言葉に、微笑みを浮かべていた顔が笑顔になった。

 花が咲くような笑顔だった。

「勿論、皆様がおっしゃるならと、用意は致しております」

 その言葉に三体はたちあがり、詰め寄る。

「僕も何でもするよ」

「私もです」

「オレもだ」

「儂もじゃな」

「では、会議室をお借りしますね」

「ん……」

 順は指刺しをしてから宗一に殴られ、宗一がガンツたちに案内するように指示した。


「全くお前さんは、言葉を言わないにも程がある!」

「……」

「だからなんで言わないんじゃ!」

「……俺、無能だから」

「誰がそんなことを言った⁈」

「周りが……」

「大学、高校、中学の時お前をいじめていたという連中たちか⁈」

「……」

 順は静かに頷いた。

「だから、大学に行かなくていいと、説得したんじゃ、お前の親父さんとお袋さんは、会社を作る話は大分前から儂は聞いてたから、此処に住み込みでメカニックやっとったんじゃ」

「趣味じゃなかったんだ……」

「だーれが趣味だけで、廃棄処分や型落ち扱いの連中の整備したと思えるんじゃ! 全部前社長の(あつし)さんと夫人の桃子(ももこ)さんが、そう言うロボットを救ったり、慈善活動や、暴走ロボット鎮圧の事などを考えて万屋みたいに考えて会社を作ろうとしたんじゃ! モナルの社長さんはそれに協賛してくれて資金を出し、色々と今動いてる最中なんじゃよ!」

 宗一の言葉に順は静かに言った。

「だから、ニートでも、なにも、いわなかった、んだ」

「そうじゃ、仕事を覚えて貰って働いて貰えばいいと思っていたんじゃ」

「……」

 順の無表情に変化はない。

「順、お前は賢い子じゃ、いやお前だけでない碧ちゃんも、涼も、賢い子じゃ。ただ儂は一つだけ怒ってる事がある、何かわかるか?」

「……碧が社長になった?」

「そうじゃ! お前さんか、無理なら涼に社長になると言って欲しかった! 碧ちゃんはまだまだ幼い! 高校を出て成人扱いでも、酒は飲めない、たばこも吸えん! その代わり、お前たちは年齢的にも酒もたばこも問題無い! 若いから侮られる可能性が否定できんし、もし目をつけられたら儂はご夫婦に申し訳がない!」

「……悪い、おれ、できない」

「じゃから、碧を止めて涼にさせて欲しかったんじゃ」

「……多分無理、碧はいじめられても、人と上手く話せないけど、それでもまっすぐだから、止められない」

 順の言葉に、宗一ははぁ、とため息をついて白髪頭を掻いた。

「……そうじゃな、碧ちゃんはそういう子じゃ、傷ついても決して人前では泣かん、苦労人気質じゃ、だから儂等が皆で支えよう。碧ちゃんを」

「……わかってる、それくらい」

 順の言葉に、宗一は優しい笑みを浮かべて、順の頭を撫でた。







早速幕間はいりました。

幕間が入るときは可能なら二話更新を予定しております。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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