1.それは突然に~今日から私が社長!~
ずっと書こう、書こうと思っていた作品です。
神森と平行してちまちま更新していきます。
「私、萌木碧社長になりました!」
高校三年生の春を迎えたばかりの少女は言ったのだ。
残された兄二人と、家族同然のロボット四人、祖父役の宗一お爺ちゃんの前で。
みな、あっけにとられていた。
夜、知り合いのところへ出かけてくると言って車に乗っていった両親は。
死体になって戻ってきた。
衝突事故、目撃者はおらず。
ドライブレコーダーは何故か画像がない。
車は見るも無惨に凹んでいた。
不審な事故。
でもどんな事故であっても関係ない、私の、両親が、死んだことには。
泣いた。
大声を上げて泣いた。
何故こんな事になったんだろう。
明日、相談したいことがあるから安全運転で帰ってきてねって言ったのに。
どうして。
「株式会社パトリの社長さんのお子さんでいらっしゃいますか」
悲しみに暮れる時間もくれないまま、神様は無慈悲に次の試練をよこしてきた。
「はい、そうです……萌木敦の娘の、碧です」
涼兄さんは大学に行った。
順兄さんは自室から一向に出てこない。
宗一お爺ちゃんは今、家族同然のロボット四人のメンテナンスを行っている最中。
だから、私が出るしかなかった。
「初めまして、レティシアと言います」
「はい……」
「ああ、ごめんなさい。私はモナルって会社をやってるレティシア・キーア。と言う者です」
「もしかして、あの、モナルですか」
「はい」
マジかー……
モナル社ってあのモナル社?
学生の私でも知っているよ、宇宙規模で事業を展開する大企業だもの
「私は良いのだけど副社長がそれでは示しがつかないと騒いだのでお金の話をしに来たの」
「お金?」
聞いてないぞ、そんな話。
「それでね、会社パトリを設立するに当たって二十億円貸したの、貴方のご両親に」
「にじゅうおくえん」
「ええ、20億円」
そういえばお父さん達、会社作るからってなんかロボット達用の設備新しいのに変えてたなぁ……
二メートル強位のサイズのロボットだからね大体皆、大型のじゃないから安く済んだって言ってたのに……
二十億⁈
ちょっと待って20億⁈
元々庶民だった私達が出せるようなお金じゃないじゃない!
「返してもらわないと、副社長がここを売り払うなりしたほうがいいとわめくんだけどそうしたくないの。どうすればいいかしら」
そんなの決まってる。
「私が返します! 一生かかってもこの会社の社長になって返します!」
勢いでそう言うと、レティシアさんはにこりと笑った。
「そう言ってくれると思った」
そう言ってある紙を見せてくれた。
「昨日ご両親とお会いしたのは私たちなの、その際もしも自分達に何かあったとき、誰かが継ぐように仕向けてほしいと」
お父さん、お母さん、もしもがあったよ、畜生。
「でも、貴方はまだ学生だからちゃんと卒業してから社長業務を携わってちょうだい、それまでは私も手伝うから」
「え、いいんですか?」
私は驚きを隠せなかった。
「ええ、本当はお金の回収なんてしたくなかった位、大切な友達の娘さんが社長を継ぐんですもの、頑張って私が支えなきゃ」
「……有り難うございます」
私はぺこりとレティシアさんに頭を下げた。
「──と言うわけで、私社長になりました!」
「「「はー⁈」」」
兄二人と家族同然のロボットたち、宗一お爺ちゃんのみんなから素っ頓狂な声が上がる。
「おい、俺が来るまで待てなかったのか?」
次兄の涼兄さんがなんか言ってるが首を振る。
そんな余裕は無かった!
「順を出すってのは?」
「コミュ障にそれはきついでしょう」
長兄の順兄さんはいじめでひきニートになったのに出すのは鬼でしょう。
「お前だってそうだろう?」
「つうか父さん達以外全員コミュ障よ。全く」
私は呆れのため息をつく。
「お嬢様、荷が重くはありませんか?」
元フェンシング用のロボットだったクラレンスが私に問う。
「いいや、荷が重いどうこうって話じゃない、やるしかないのよ。二十億よ借金二十億! 返さないとだめな額でしょう!」
「それは、そうですが」
クラレンスは何か反論したそうだったが、反論が思いつかないようだった。
「とりあえず涼兄さんは大学止めずにそのまま卒業目指して、順兄さんは養う当てないから会社で働いてもらう! ニートを養う余裕はもう我が家にはない!」
「……」
順兄さんは不服そうだが、事実だ。
ニートを雇うだけまだマシだと思ってちょうだいよ。
「母さん達の死亡保険は?」
「それで返せると思うの?」
涼兄さんの言葉を否定する。
五千万じゃ雀の涙だし、なにより生活していかなきゃならない。
「……返せないんだな」
順兄さん、当然よ。
というか、これが当分の我が家の生活資金になるんだから、大事にしないと。
「私は高校卒業したらパトリで働くのに専念するから社長だし」
「……」
私の言葉に涼兄さんはなにか不服そう。
「涼は卒業してから本格的に手伝って、お願い」
「……わかった」
でも、最終的には涼兄さんは応じてくれた。
「しかし、碧ちゃん。大丈夫なんかの?」
「モナルの社長さんがいろいろと教えてくれたりするので、多分大丈夫かと。父と母の友人みたいですし」
宗一お爺ちゃんは不安そうに言いましたので私はそれをなんとかしようと思い、言いました。
「そんなことは儂も知っとる。敦と桃子さんがモナルの社長の友人だってのは聞いたことがあるからな」
「じゃあなんで……」
宗一お爺ちゃんは私に、困ったように笑いながらいいました。
「碧ちゃんにだってやりたいことはあっただろう? なのに社長だなんて」
宗一お爺ちゃんに言われて私は言葉につまった。
やりたいこと、と言われて私は困る。
そう、やりたいことが無かったのだ。
そのことを両親に相談するために、私は帰りを待っていた。
やりたいことを決めて進学した涼兄さんとは違う。
私は、やりたいことはない。
だけども、やらなくちゃいけないことはある。
この家を、家族みんなを守ることだ。
そのためならどんな事だってする。
……犯罪行為以外は。
家族を、守りたい。
みんなを守りたい。
それだけは確かにあることだから。
「やりたいことは、家族を、みんなの居場所を守りたい、それが私のやりたいこと。だからいいの」
「そうか……よし、儂ら皆碧ちゃんを──社長を支えるぞ!」
私はそう宣言した、すると宗一お爺ちゃんはそう言って皆を鼓舞する。
「「「「おう!」」」」
みんな応えてくれた。
「……ところで、うちの会社って何する会社?」
涼兄さんの言葉に思わず、頭を抱えたくなった。
「警察の業務代行とか宇宙警備代行とか、特殊部隊の代行業務とかそういう危険な仕事がおおいの!」
「マジか」
涼兄さん、お父さんたちから話聞いて無かったなこれ。
「まぁ、たまに安全な保育園の業務代行とかあるけど、基本は危険なお仕事なの!」
「分かった、お前は無理するなよ」
と、涼兄さんが言ったが、多分色んな意味で私は無茶すると思う。
「と言うわけで、私の進路は家を継ぐことになりました」
「本当にそれでいいの?」
進路担当の先生が私に尋ねる。
「はい」
「わかりました……ぐれぐれも一人で抱え込まないように」
先生は穏やかに微笑んでくれた
「はい、で先生」
「何ですか?」
私は決めていたことがあった。
「進路が決まったんでバイトしたいんです、家と会社に少しでもお金を入れるために」
そう、五千万なんてあっという間になくなってしまうかもしれない。
メフィストたちロボット……いや「家族」の整備やエネルギー代、私と涼兄さんの学費、その他諸々であっという間になくなりそうだ。
「バイトのことなら生徒指導の先生に相談なさい」
「はい」
先生は微笑んで教えてくれた。
「──という訳でバイトさせてください」
「わかりました、バイト先が決まったら用紙を提出してくださいね」
生徒指導の先生の元に行きバイト先とかを書く用紙を私は貰った。
「はい」
「レティシアさん! バイトしたいんで紹介してください!」
「どれがいいかしら」
ばさっと紹介状を提示される。
難しそうな奴のなかで異彩を放つ物体があった。
「これで!」
「あの……これジョーク半分で入れたんだけど、いいの? お給金はいいけど……」
レティシアさんは私の選択に苦笑いを浮かべていた。
「もちろんです」
「……わかったわ、店長には雇うように指示を出しておきます」
私はレティシアさんの言葉に安堵し、感謝の言葉を伝える。
「有り難うございます!」
さぁ、準備は整った。
私の借金返済と、会社として実稼働するまでの生活資金などを集めるための生活が始まった──
主人公碧はこうして社長になりました。
次の話は早速幕間が入ります。
彼女の周囲がどうなっているのか、幕間がちまちま入りますがご容赦を。
なるべく、碧の視点で書きたいのです、メインは。
2026/05/27加筆修正しました。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




