1.それは突然に~今日から私が社長!~
ずっと書こう、書こうと思っていた作品です。
神森と平行してちまちま更新していきます。
「私社長になりました!」
高校三年生の春を迎えたばかりの少女は言ったのだ。
あっけにとられる者たちの前で。
夜、知り合いのところへ出かけてくると言って車に乗っていった両親は。
死体になって戻ってきた。
衝突事故、目撃者はおらず。
ドライブレコーダーは何故か画像がない。
不審な事故。
でもどんな事故であっても関係ない、私の、両親が、死んだことには。
泣いた。
大声を上げて泣いた。
何故こんな事になったんだろう。
明日、相談したいことがあるから安全運転で帰ってきてねって言ったのに。
どうして。
「株式会社パトリの社長さんのお子さんでいらっしゃいますか」
悲しみに暮れる時間もくれないまま、神様は無慈悲に次の試練をよこしてきた。
「はい、そうです……萌木敦の娘の、碧です」
兄達は学校と引きこもり、私が出ることになった。
「私は良いのだけど副社長がそれでは示しがつかないと騒いだのでお金の話をしに来たの」
「お金?」
聞いてないぞ、そんな話。
「ああ、ごめんなさい。私はモナルって会社をやってるレティシア・キーア。と言う者です」
モナルって言えば大企業じゃないか。
数年前までツヴァイフルングって大企業と喧嘩してたけど、今は協同で事業をやるようになったあのモナルか?
「もしかして、あの、モナルですか」
「はい」
マジかー……
「それでね、会社パトリを設立するに当たって二十億円貸したの、貴方のご両親に」
「にじゅうおくえん」
そういえばお父さん達、会社作るからってなんかロボット達用の設備新しいのに変えてたなぁ……
二十億⁈
「返してもらわないと、副社長がここを売り払うなりしたほうがいいとわめくんだけどそうしたくないの。どうすればいいかしら」
そんなの決まってる。
「私が返します! 一生かかってもこの会社の社長になって返します!」
勢いでそう言うと、レティシアさんはにこりと笑った。
「そう言ってくれると思った」
そう言ってある紙を見せてくれた。
「昨日ご両親とお会いしたのは私たちなの、その際もし自分達に何かあったとき、誰かが次ぐように仕向けてほしいと」
お父さん、お母さん、もしがあったよ、畜生。
「でも、貴方はまだ学生だからちゃんと卒業してから社長業務を携わってちょうだい、それまでは私も手伝うから」
「え、いいんですか?」
「ええ、本当はお金の回収なんてしたくなかった位、大切な友達の娘さんが社長を継ぐんですもの、頑張って私が支えなきゃ」
「……有り難うございます」
私はぺこりと頭を下げた。
「──と言うわけで、私社長になりました!」
「「「はー⁈」」」
みんなから素っ頓狂な声が上がる。
「おい、俺が来るまで待てなかったのか?」
涼兄さんがなんか言ってるが首を振る。
そんな余裕は無かった!
「順を出すってのは?」
「コミュ障にそれはきついでしょう」
「お前だってそうだろう?」
「つうか父さん達以外全員コミュ障よ。全く」
「お嬢様、荷が重くはありませんか?」
クラレンスが私に問う。
「いいや、荷が重いどうこうって話じゃない、やるしかないのよ。二十億よ借金二十億! 返さないとだめな額でしょう!」
「それは、そうですが」
「とりあえず涼は大学止めずにそのまま卒業目指して、順は養う当てないから会社で働いてもらう! ニートを養う余裕はもう我が家にはない!」
「……」
順兄さんは不服そうだが、事実だ。
ニートを雇うだけまだマシだと思ってちょうだいよ。
「母さん達の死亡保険は?」
「それで返せると思うの?」
「……返せないんだな」
当然よ。
というか、これが当分の我が家の生活資金になるんだから、大事にしないと。
「私は高校卒業したらパトリで働くのに専念するから社長だし」
「……」
「涼は卒業してから本格的に手伝って、お願い」
「……わかった」
「しかし、碧ちゃん。大丈夫なんかの?」
「モナルの社長さんがいろいろと教えてくれたりするので、多分大丈夫かと。父と母の友人みたいですし」
宗一お爺ちゃんは不安そうに言いましたので私はそれをなんとかしようと思い、言いました。
「そんなことは儂も知っとる。敦と桃子さんがモナルの社長の友人だってのはみたことがあるからな」
「じゃあなんで……」
「碧ちゃんにだってやりたいことはあっただろう? なのに社長だなんて」
やりたいこと、と言われて私は困る。
そう、やりたいことが無かったのだ。
そのことを両親に相談するために、私は帰りを待っていた。
やりたいことを決めて進学した涼兄さんとは違う。
私は、やりたいことはない。
だけども、やらなくちゃいけないことはある。
この家を、家族みんなを守ることだ。
そのためならどんな事だってする。
……犯罪行為以外は。
家族を、守りたい。
みんなを守りたい。
それだけは確かにあることだから。
「やりたいことは、家族を、みんなの居場所を守りたい、それが私のやりたいこと。だからいいの」
「そうか……よし、儂ら皆碧ちゃんを──社長を支えるぞ!」
「「「「おう!」」」」
「と言うわけで、私の進路は家を継ぐことになりました」
「本当にそれでいいの?」
先生が尋ねる。
「はい」
「わかりました……ぐれぐれも一人で抱え込まないように」
「はい、で先生」
「何でしょう?」
「進路が決まったんでバイトしたいんです、家と会社に少しでもお金を入れるために」
「バイトのことなら生徒指導の先生に相談なさい」
「はい」
「──という訳でバイトさせてください」
「わかりました、バイト先が決まったら用紙を提出してくださいね」
「はい」
「レティシアさん! バイトしたいんで紹介してください!」
「どれがいいかしら」
ばさっと紹介状を提示される。
難しそうな奴のなかで異彩を放つ物体があった。
「これで!」
「あの……これジョーク半分で入れたんだけど、いいの? お給金はいいけど……」
「もちろんです」
「……わかったわ、店長には雇うように指示を出しておきます」
「有り難うございます!」
さぁ、準備は整った。
私の借金返済と、会社として実稼働するまでの生活資金などを集めるための生活が始まった──
主人公碧はこうして社長になりました。
次の話は早速幕間が入ります。
彼女の周囲がどうなっているのか、幕間がちまちま入りますがご容赦を。
なるべく、碧の視点で書きたいのです、メインは。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




