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10.結晶生命体パラシートゥス~私社長ですから~

新入社員として美奈を、社員達に紹介する碧。

そこで色々な会話が飛び交う中、レティシアから緊急の連絡が入る──




「──と言う訳で、今日から働いて貰うことになった楠木美奈さんです。みんな顔は知っているでしょう」


 会社の休憩室で、みっちゃんを紹介する。


「勿論」

「お嬢様のご友人ですよね」


 レイジングとクラレンスがそう言うと皆納得したように頷く。


「うん、一人しか残らなかった」

「碧……そういう話は止めてくれ、今の俺には重い」


 きっぱりと言い切る。

 それを聞いた、知り合いという知り合いから合コンに誘われまくってる涼兄さんが呻くように言う。


「あー、知り合いにパトリのこと知られて、合コンで釣り餌にされている次兄さん、ちっすちっす」


 涼兄さんをディスる。

 だって、合コンの後、グダグダと帰ってきて文句言うのヤダもの。

 毎回毎回グダグダと文句聞かされる私の身にもなれ!


「お前、仮にも兄だぞオレ⁈」

「しらんがな」


 そこまで合コンが嫌なら、全員ブロックすりゃいいのに。


「オレは他の会社の情報を得るために合コンに参加しているというのに……!」


 涼兄さんが拳を振るわせて言う。


「事実?」


 反射的にノウェムさんに聞くと、ノウェムは即答した。


「事実だが、一度たりとも成功していない。話を聞こうとする度にパトリの会社内情や給料について聞かれてそれを誤魔化すのに全力を投じている」

「ワァ……」


 ノウェムさんからの返答に私は遠い目をする。

 そんな状態の私の手をみっちゃんが掴む。


「……本当にいいの?」

「いいよー。今日は事務作業を手伝って──」


 レティシアさんから貰った通信機が鳴り響いたので、急いで出る、とっさにスピーカーモードにしてしまった。


「はい、レティシアさん⁈」

『碧さん⁈ ごめんなさいね‼ 最近面倒な仕事ばっかり振ってるのに、今日のは格別面倒なのよ‼』


 最近レティシアさんの依頼は鎮圧系が多い、特にロボット暴走によるもの、たまにテロリストや強盗、誘拐とかもあった。

 そのお陰で今月返せるお金が結構大きくなりそうな感じだがそんな話をするために電話した訳ではなさそうだ。


「格別面倒とは」

『結晶生命体パラシートゥス、知ってるわね』


 その名称に息を飲む。

 地球政府も宇宙政府も共通の「人類の敵」たる存在だからだ。

 寄生の名を持つ結晶生命体。

 人間にも機械にも寄生し、精神や制御系を乗っ取る。

 唯一寄生できないのは動植物や微生物だけだ。


「……勿論です」

『その駆除を、お願いしたいの』


 私は息をのむ。

 駆除、というのはつまり、被害が出ていることを指しているのが何となく分かったからだ。

 人が寄生されたら、私は撃てるのだろうか。

 無理だ。


 そう思っていると、ノウェムさんが答えた。


「人間に被害が出ていたなら、薬を投薬すれば良いのだろう?」

「薬?」


 困惑している私をよそに、ノウェムさんが続ける。


『ええ、戦艦に特効薬は積んであるわ』

「ああ、分かった、それで行く。だが寄生されたのが機械やロボットなら破壊する、悪いな」


 ノウェムさんが通信を切る。


「薬は戦艦の冷却室に入っている」

「あの、薬って?」


 私は混乱しながら問いかける。


「人間に寄生したパラシートゥスを除去薬があるんですか?」

「ある」

「なんで?」

「モナル社が開発した」

「は?」


 いや、本当なんで?

 モナル社なんなの、ノウェムさんも何処まで知ってるの。


「モナル社が百年以上前から研究していた」

「百年以上前⁈」

「パラシートゥスが兵器利用される未来を予測していたからだ」


 たしかパラシートゥスが出現したのは二百年前、それなら納得できる。

 でも、どうやって研究を、あんな危険な存在を……

 疑問は尽きないが今はそこまで考えている余裕はない、緊急事態なのだ。


 出発準備をしていると、みっちゃんが何か言いたげな顔をしている。


「戦艦に乗って取りあえず、小型の戦闘機でパラシートゥスを破壊、その後、寄生された人たちを確保して薬で救助だ」

「分かった、よし、私とノウェムさんが行くから四人がオペレーターとかやって!」


 私はそう宣言する。


「「「「へ⁈」」」」


 四人は間抜けな声を上げた。


「何?」

「お嬢! 私たちがいきますので!」


 クラレンスの言葉に私は拒否の言葉を口にする。


「でも、貴方達が寄生されたら私が破壊するのよ⁈ 絶対嫌!」

「今回はそれがいい、それにこのパワードスーツはパラシートゥスに寄生されないような材質でもできている」


 機械が寄生されたら破壊するしかないのだ現状。

 と、思ったらノウェムさんの発言に私は驚いた。


「モナル社一体何?」


 何でも手を出しているモナル社が怖くなった。


 休憩室を飛び出して、会社の裏に置いてある戦艦に乗り込み、みっちゃんや、兄さんたちに見送られ上昇し、ワープする。

 月面都市の一角が紫色の結晶に覆われていた。

 建物を突き破るように巨大結晶が伸びている。

 モナル社の通信機でもようやく通信できる程の通信障害も発生している。


「お前達は戦艦のビームで破壊しろ、パラシートゥス用のビームは此処で発射する」

「じゃ、行ってくるから!」


 私とノウェムさんはパワードスーツを着用して、薬を背負って空中から落下し着地して、居住エリアに乗り込んだ。


 ゾンビの様になっているロボットたち。

 結晶体が不気味に紫に光っている。


 ビームで表面上の結晶を破壊して消滅させてから、一斉襲いかかってくるロボットたちをパラシートゥス用の小型ミサイルで破壊する。

 壊れてもロボットは怯むことなく、私を殺そうと、武器をたたきつけようとしたり、銃を向けて放ってくる。

 右肩が吹き飛ぶ。

 バランスを崩した瞬間、別のロボットが鉄塊のような腕を振り下ろした。

 咄嗟に回避。

 地面が爆ぜる。

 「パワードスーツ全体の破損規模43%」と表示される。

 確かにノウェムさんが言う通り脅威だったが、私はそれでもなんとか、パラシートゥスに寄生されたロボット達を破壊していった。


 パワードスーツの破損率が65%に達した頃、ようやく最後の一体を破壊した。

 無残なロボットの屍たちが転がる。

 最初はノウェムさんがこちらをやると言ったが私が断った。


 確かに、こちらより向こうの方が罪悪感が少ない。

 それどころか安堵感がある。

 私は社長だ。

 誰かに嫌な役目を押し付けるために社長になったんじゃない。

 汚れ役こそ、私がやる。


『碧か、薬が足りない、合流を頼む』

「! 分かった!」


 被害者は多かったらしく私は急いでナビを起動させて、ノウェムさんのところへ行く。

 ノウェムさんのところではパラシートゥスに寄生され暴れ出そうとしている人たち。

 その家族なのか、安全圏で祈るように見守る人たち。

 そして暴れる感染者を、防護服姿の職員たちが必死に押さえ込んでいた。

 パラシートゥスは皮膚に生えるように寄生していた。

 目は紫になり、浸食されている箇所も紫に染まり、暴れ出そうとしているのを防護服を着ている人達数人がかりで抑え付けている状況だ。


「薬!」

「そちらも頼む」


 薬の半分をノウェムさんに渡し、特効薬──エピペンに近い形状の投与薬を注入していく。

 脂汗がだらだらと出てくる。

 はやく助かって、そう祈りながら。


 一時間後──


 パラシートゥスに寄生された方たちは元に戻った。


「でも、なんで薬……」

「まだほとんどの国で認可されてないんだ、この薬」


 何でモナル社だけが薬があるんだろうと思った。

 最後まで言う前に、遮るように言ったノウェムさんの言葉に耳を疑った。


「ハァ?」


 思わず、声が出た。


「何でですか?」

「……言っただろう、パラシートゥスを兵器化したい国々がほとんどだ、もし特効薬があるなんてなったら、どうなる」


 ノウェムさんの問いかけに、私は足りない頭で何とか考えた。


「あー……自分たちは保有したいけど、国民には配りたくない」

「そういう訳だ」


 正解だった様子。

 ふざけるなよ、パラシートゥスがどんだけヤバいか分かってるのか⁈


「マジふざけんな。人が死ぬかもしれないものを兵器にしたいとか、頭おかしいだろ。」


 思わず声に出してしまう。

 それくらいイラ立っていた。


『お嬢、パラシートゥスの大結晶の破壊成功しました!』

『穴も自動修復機能で塞がったっていってるし、大丈夫だと思うよ!』


 イライラしているとこに、喜ばしい報告。


「パラシートゥスの反応は完全にこのエリアからは消失した、帰ろう」

「うん!」


 ノウェムさんの言葉に私は頷いた。


 ただ、この件は月面の政府側から公にしないでくれと言われた。

 マジふざけんな、お金の問題じゃないんだよこう言うのは。

 貰えるものだから貰ったけどさ、ノウェムさんとレティシアさんが言うから!


 あと、帰ってきたらみっちゃんに抱きつかれた。


『怪我してない? 本当に大丈夫? 無茶してない?』


 不安げなみっちゃんに笑顔で私は言う。


『大丈夫! ちゃんと帰ってきたでしょう!』


 サムズアップして笑顔で言う。

 それでも、みっちゃんは不安そうだった。


 うーん、どうしたものか。


 ちなみに、私とノウェムさんが三日かかる予定だった書類の山が、一時間で消えた。

 あまりの速度と正確さにノウェムさんも感心するほど。


『これは時給三千円は安すぎたか?』


 と言っていたが、山が三つ消えたところで顔色が悪くなったので帰宅させた。

 時給換算だとわりに合わないのではないかという話になり、ノウェムさんとみっちゃんのお給料について話合うことに。


 話合った結果、時給がいいときは時給。

 そうじゃないときは成果を見て判断、という風に切り替えることになった。


 あとで、もう一回契約書にサインして貰わないとねーと、書類を作っているノウェムさんに言うと「確認は君だぞ」と言われたので大人しく社長業を頑張りました。

 もーデスクワーク嫌いー!






謎の結晶生命体パラシートゥス。

何故人類に寄生し、襲いかかってくるのか。

そしてモナル社は何故その特効薬を持っているのか。

碧には謎が深まるばかりですが、それ以上にデスクワークに悲鳴を上げている様子。

碧は現場で働く方が得意なのは多分ここまで読んでくださった方方ならお分かり頂けたかと。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回も読んでくださるとうれしいです。

2026/05/29加筆修正しました。

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― 新着の感想 ―
レティシアさん、さすがっす!薬まで使ってるなんてやっぱりただものじゃないですね(;゜д゜) ゴクリ…。周りよりも一手も二手も先に行ってるなんて一体どこまで進み続けるのか…。碧ちゃんのモナル社への疑問は…
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