【幕間】美奈の転機と決意~私を救う手伝いをしてくれた貴方に~
美奈について、碧に合うメールを送ってからの彼女の動向など。
自宅の化粧台の前で美奈は怯えていた。
外の世界が怖いのだ。
「美奈、無理しないでいいのよ? 碧ちゃんも忙しいだろうし……」
「でも、こっちから会おうって行って、それで向こうも会いたいって返してくれたのに会わないのは……嫌」
化粧をしようとする美奈の手が震える。
「大丈夫、お母さんがするわ」
美奈の母は、化粧品を美奈から受け取る。
そして美奈にナチュラルメイクを施す。
「うん、いつも通りの可愛い貴方だわ、RINRINまで送るから」
「うん、ありがとう、お母さん」
美奈は母に促されて、車に乗り込んだ。
車から降り、人混みがないことに安堵しながら、ガラスの向こうでスマートフォンをじっと見つめる、自分と同じナチュラルメイクの碧がいた。
深呼吸をして碧に近づいていった──
「……碧?」
「あ、みっちゃんン⁇」
美奈の様子に、碧が驚愕の声を出した。
やっぱり迷惑だったかなと思い口を開く。
「あの、今あんまり持ち合わせないからその……」
「……私のおごりでいいから、上の階のレストラン行こうよ。いつものファミレス」
いつものような、明るいお日様の笑顔で碧は美奈をみていた。
それが嬉しくて美奈は涙をこぼした。
「……うん」
泣き出す皆をみた碧は、美奈の腕を慌てて掴んでエレベーターに飛び込んで、ファミレスに移動した。
ファミレスは平日だからかがらんとしていた。
「みっちゃんどうしたの⁈ 大学出て大企業バルトロ社に入社したって聞いたけど……」
その言葉に、美奈はボロボロと涙がこぼれてしまった。
碧には悪意はないがその言葉は美奈の心を傷つける刃だった。
「あ、ああゴメン! まずは何か、食べよう!」
「うん……」
美奈は苺プリン、碧は冷製苺パフェを選んで食べた。
甘酸っぱい苺の甘みとプリンの柔らかな優しい感触に美奈の心は少しだけ落ち着き、美味しいという感情から笑みを浮かべられた。
「……何が、あったの」
躊躇うように碧が言うので、美奈は少しためてから言葉を吐き出した。
「……会社、やめちゃった」
「え⁈」
碧は驚いてる、それはそうだ。
「頑張ってやった事全部取られて、セクハラもパワハラもされて伸ばしてた髪も切られて、毎日無能だと言われてもう、辛くなってやめちゃったの……」
ぽろぽろと涙をこぼす。
喋っていて辛かった。
大企業バルトロ社がそんなことしてたなんて誰もしらなかったからだ。
美奈も入ってから骨の髄まで思い知ったのだ。
「でも、バルトロ社からそんな噂聞いたことなかった……ねぇどうして?」
碧は怒りのこもった声をだした、それは自分へではない。
バルトロ社への怒りだ。
「……レコーダー系等はセンサーで取り上げられちゃうの、それで尋問されるの『こんなものを持ってきてなんのつもりだ!』って」
「くそ、証拠がないと……」
碧は心底悔しがっている様子だった。
だからすがるように、助けを求めるように口に出した。
「あるの」
「へ?」
間抜けな声をだした碧に自嘲の笑みを向けてレコーダーを見せる。
証拠が入ったレコーダーを。
「モナル社のレコーダーだけはバルトロ社のセンサーに反応しなかったの、だから証拠はあるの、でも怖くって……」
「話は聞かせていただきました」
金髪の女性が声をかけて来た。
隣には中性的な人物がいた。
「その証拠私に預けてほしいの、それと貴方のことも教えてほしいの」
「あ、あの、碧。この人」
助けが欲しくて美奈は碧に何か言おうとした。
「大丈夫、この人は信用できる、なんせモナル社の人だからね」
「え⁈」
驚いた、バルトロ社が潰そうとしている会社の人だと美奈は知り驚いた。
役員とかそういう偉い立場のひとかと思考する。
「お名前は楠木美奈さんでしたね、お話聞かせてください」
何処で自分の名前を聞いたんだろうと思い美奈は驚き半分恐怖半分だった。
女性は手を包んで握り、「信用できる」と言った碧の言葉を信用して美奈はその女性について言った。
「再生してくださる?」
「は、はい」
リムジンのような長い車に乗せられた、テーブルまである。
美奈は再生ボタンを押した。
心臓がバクバクと脈打っていた。
バルトロ社で受けた「暴力」がフラッシュバックする。
思わず倒れそうになったのを、女性は支えた。
「よく、よく耐えましたね」
女性は悲しい表情を浮かべて美奈を抱きしめた。
「あの、他にもレコーダーとかあって」
「どうか、私を信じて渡してください、悪いようにはしません。碧さんのご友人に酷いことなどできませんわ」
碧とこの女性はかなり仲が良いというか交流しているのが分かった美奈は信じて残りの情報限全てを渡した。
それから二日後の日曜日。
バルトロ社に地球政府の労働管理署の緊急立ち入り調査が入ったと聞かされた。
それから一週間後。
同じようにバルトロ社のせいで鬱や病気を発症し止めた人やそうなる前に転職した人たちが集められた。
労働管理署の会議室に。
美奈は戸惑い周囲を見ていると、褐色肌に銀髪のスーツ姿の女性が、自分たちを追い詰めてきた連中をぞろぞろと連れてきた。
「正座をしなさい」
女性の言葉に頷く連中に全員が動揺する。
「私はモナル社社長秘書のロゼッタと申します。貴方たちを追い詰めた方々に直接謝罪をさせ、それから賠償金を支払うことにサインさせるために来ました」
自分たちを絶望させた連中が、今度は絶望の表情をしているのにざまぁみろと美奈は思った。
それから「ごめんなさい」「私が悪かったです」「申し訳ございません」など謝罪の言葉を聞いたが誰も許すはずもなく、全員一致で「賠償金を支払え」と言った。
慌てふためく連中をロゼッタが一喝し、震える手でサインさせていった。
その額は二十年位働かなくてもいい金額だった。
「……」
好き放題やっていた連中は一瞬にして不幸のどん底に落ちた連中を放置し、ロゼッタに促されるまま、帰路についた。
あの女性が何かしたことが分かった。
だから、美奈はあの女性を「信用していい」と言った碧のことを思い出した。
借金二十億やってらんねー、と自分の前でぼやく彼女。
でも、折れることなく働く彼女に、友に、親友に、恩返しがしたかった。
「碧、いや碧社長! 私を雇ってください! 事務でもなんでも致します!」
碧の会社に行き応接室で、碧にそうお願いした。
頭を下げた。
美奈はお金にこまっていない、今は。
だから。
──貴方を手伝いたいんです、手助けしたいんです──
病を抱えながらも、出した結論がそれだった──
美奈がメールを送って碧と再会した時と会社に入れて欲しいと言うまでの流れの話です。
美奈がかなり心の傷を負ったのが分かると思います。
ですが、それでも自分を救ってくれる手伝いをしてくれた碧に恩返ししたいという彼女の思いが伝わったのなら幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。
2026/05/29加筆修正しました。




