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9.裁きと新社員~無理しない範囲で頑張ります~

美奈とあった二日後、テレビと新聞を手にする碧。

テレビで放映されたニュースを見て驚愕する──




 みっちゃんと再会して、数日が経過した。

 休憩室のテレビをつけて、経済新聞を見ていると──


『バルトロ社の闇! 有能な人材潰しと証拠消しの非道な手口!』



 テレビで丁度放映されたのを見て目を疑う。


「ごほ!」


 飲んでいたお茶が気管に入り、咽せた。

 メフィストとクラレンスも驚いたらしく、エネルギードリンクを咳き込んでいた。

 ガンツとレイジングだけは動じずキューブをバリバリかじっていた。

 すごいなこの二人。


「大丈夫か?」


 背中をノウェムさんにさすられ、ぜぇぜぇと息を切らす。


「コレって……」

「見ない方が良いだろう」


 ノウェムさんの気遣いだが、知らなければならない。

 みっちゃんがどんなことがされてきたのかを。


「いや、見る」

「……そうか」


 私が知ろうとするのをノウェムさんは止めなかった。

 止めても無駄か、それとも、実際は知っておいたほうがいいと思ったのか分からない。


 私は画面に釘付けになる。

 罵声、セクシャルハラスメントとしか取れないもの。

 髪の毛を切る音や、水をかけるような音。


 ……私が怒鳴りたくなる程のものが入っていた。


 こんなのをやってたと?

 そしてみっちゃんをあんな風にしたと?

 許せるか?

 否、許すことはできない!


「この会社、戦艦で突撃してやる!」

「それはやめろ」


 ノウェムさんに静止される、しかし借金が増えようが構うものか!


「大丈夫だ、ほら会見を」


 怒りで立ち上がった私を再度座らせて、テレビを指さす。

 落ち着かせようとお茶を口にする。

 するとテレビに映ったのは──


『この度バルトロ社と関連子会社の株式を全て購入させて頂いたモナルの社長レティシアと申します』


 ぶーっと飲んだお茶を今度はふきだした。


『内部調査の結果が公表され、臨時株主総会が開かれました』

『その後私共モナル社が買収いたしました』


『また、バルトロ社にかつて所属し、パワハラ等で離職した方に賠償金を支払い致します。関係者への処分も順次進めて参ります』


『モナル社はより規模を広げるということですか?』


 記者がレティシアさんに尋ねる。


『はい、私共は必要があれば、共同経営、株式買い取りを積極的に行っていく所存です』


 私はリモコンでテレビの電源を消した。

 そして突っ伏す。


「レティシアさん、一体何者……?」

「味方なら頼もしく、敵なら恐ろしい存在だ」


 私の問いにノウェムさんが平然と答える。


「逆らわないでおこう……」


 私は体をぶるっと震わせた。

 他のみんなも今度は全員戦々恐々していた。



 それから二週間後の日曜日、少しだけ元気になったみっちゃんが会社に来た。

 勿論電話で「会社を伺ってもいい?」と聞いてきたからOK出したけども。


「みっちゃん、どうしたの? 会社を伺ってもいいって電話までいれて?」

「鬱が酷かったんだけど、あの女の人のお陰で大分よくなったの!」


 会社の応接室に通したみっちゃんはまだ少しやつれているがクマは少し薄れ、言葉にも元気が取り戻されていた。

 嬉しそうに報告するみっちゃんの様子をみて安堵する。


「おおー! それは良かった!」

「うん! それに諸悪の根源が没落するってスッキリするわ! 元社長や役員や、私をいじめてた人たちが、被害者たちのまえにスーツ姿で正座させられ土下座させられたの!」


 私が褒めると、みっちゃんは続けて怖い事を言った。

 いや、私は悪い事してないんだけど、そういう状況になったら私は怖い。

 真面目に生きよう。


「Oh」


 思わず驚愕の声がこぼれる。

 レティシアさん、怖い。


「モナルの社長秘書のロゼッタさんって方が、賠償金額の話をして、連中慌ててたわ! 路頭に迷う、家族がいる! って。でもロゼッタさんは無視して『貴方がたに拒否権はありません、書類にサインをし、謝罪を続ける。それが貴方がするべきことです、路頭に迷うのも、家族を失うのも自己責任です』って……」

「わー……普段無口だからそんなに喋る絵図が想像つかない」


 ロゼッタさん、普段無口だからなぁ。

 レティシアさんと一緒に来てもほとんど喋らない、レティシアさんが喋ってばかりだからそんなイメージがわかない。


「そうなの?」

「うん、社長さんと一緒に来るんだけど、ついでにたまにくる副社長を無言で締め上げてるのばっかり見てる」


 本当それ、副社長を無言で締め上げているのばかり見る。


「ワァ……」


 みっちゃんは驚いてるが、嘘は言ってないぞ。


「それでお金に大分余裕がでたの!」

「良かったね、病気が寛解したら次の職場探し頑張ってみっちゃんの才能なら大丈夫よ!」


 大昔は寛解しても就職が難しかったけど、今はそんなことないし。

 きっとモナル社の、ううんレティシアさんがうまいことやってくれるはず!


「そのことなんだけど……」

「?」


 私は首を傾げる。


「碧、いや碧社長! 私を雇ってください! 事務でもなんでも致します!」

「ちょ、ちょっと待って!」


 えー⁈

 確かにみっちゃんは信頼にできるけど、仕事任せていいのかなぁ?

 まだ病気っぽいし!

 だから寛解してからって言ったんだけどなぁ⁈


「事務やデスクワークならやってほしいことが山ほどあるだろう」

「ノウェムさん……」


 すっと姿を現したノウェムさん。

 いつからそこに?


「彼女が病気なのは理解している、まだ鬱は寛解していない」

「……」


 ほらぁー!

 だからまだ休んだ方がいいよー!

 無理して働かなくてもいいじゃん!


「だが、働けないほどではないと主治医からお達しがきた、電話対応は無理だが、それ以外が得意というなら短時間か日数を短めにしてきて貰えばいいだろう。通勤もなんとかできると医師から伝えられている」

「う、うーん」


 ノウェムさんの提案に悩む私。

 確かに今デスクワークや事務は私とノウェムさんで手一杯だ。


「碧のお陰で私助かったの! あの時、碧が話を聞いてくれなかったら、私どうなってたか分からない!」


 うーん、助けたのはレティシアさんたちなんだけどなぁ。


「でも、今碧は会社の借金返済で大変なんでしょう? 人手も少ないし! お給料は少なくてもいいの! 働かせてください!」


 こうなったみっちゃんはてこでも動かない。

 仕方ない、私は条件を出すことにした。


「……いいよ、無理になったらすぐ帰る、無理そうなら休むが条件で!」

「本当⁈ 碧、わたし頑張るね!」


 みっちゃんは私の手を握った。


 それにしてもノウェムさん、そう言った情報どこから……

 あ、レティシアさんか。

 あの人以外に思いつかねぇや。


「給料はそうだな、時給三千円でどうかね?」

「そ、そんなに貰っていいんですか⁈」


 ノウェムさんの提案に、みっちゃんは驚いてる。

 まぁ、フルタイムで働いたら一人暮らしでもかなり余裕ある金額だもんね。

 というかフルタイムで働いたら兄さんたちの給料超えるし。


「わーい、時給換算かータイムカードあるよねー」

「全員タイムカードを使用している、使ってないのは社長である碧、君だけだ」


 だよねー、社長がタイムカード使うなんて聞いた事無いもの。


「……私もタイムカード押すべき?」

「面倒になるから止めろ」


 試しに聞いたら止めろと言われた。

 多分給料の件で色々私がなんとか給料下げようとするのを防ぐ為だな、その目は。


「むぐぅ」

「交通費はこちらで持とう、毎月申請してくれ」


 ノウェムさんは当然のことを当然の様に述べた。


「! そんなところまで……ありがとうございます!」


 私の代わりにノウェムさんが淡々と進めている。

 ノウェムさん、貴方が私の代わりに社長やってくれませんか?

 とすら思った。


 そのまま応接室でお茶を飲んでいる間に、別室で契約書類をノウェムさんが作ってくれたので、なんとかなった。


「ありがとう、碧。それとごめんね、こんな形で押しかけて……」

「いいよいいよ、他の連中と違うから」


 みっちゃんは申し訳なさそうだけど、私は気にしていない。

 他の会社をやってる辛さを分からず、入社させろ、奢れ、会社紹介してくれないかとか言ってきたムカついて縁切りした連中とは違うから。


「他の連中?」

「あ、こっちの話」


 誤魔化そうとすると、みっちゃんは私に近づいていった。


「もしかして、社長で枕やってるとか、馬鹿なこと言い始めた桃花たちのこと⁈」

「あーうん、まぁそうなる」


 みっちゃんに詰め寄られ、遠い目をしながら言う。

 ちなみに視線でノウェムさんに助けを求めたが視線をそらされた。

 この薄情者ー!


「私もブロックしよう、コレから此処(パトリ)で働くんだし!」


 そう言ってみっちゃんはスマートフォンで次々と私の元友だったりした女子陣全員をブロックしてしまった。


「そう言えば男子たちも色々ないことないこと言ってた! コレもブロック!」


 続けて男子たちもブロックし始めた。


「ふぅースッキリした」


 本当にすがすがしい笑顔だった。


「取りあえず、今日はもう帰るといい」

「は、はい」


 ノウェムさんがそう言うと、みっちゃんはすこしだけおっかなびっくりに返事をした。

 ノウェムさんと正式にあったの今日だし、やっぱりちょっと怖いんだろうね。

 知らない人だから。


「明日からお願いね、服装は自由だから」

「! はい! 碧社長!」


 私がそう言うと、みっちゃんは笑顔で帰っていった。


「うーん、うつ病って寛解が難しいけど、良い方向になるといいなぁ」

「彼女に必要なのは認められる場所だ、君たちが認めていけばいい」


 何せ長引く人は何年もかかることがあると聞いている。

 でも、ノウェムさんが明るい話題を出してくれた。


「そこは大丈夫、みっちゃんの実力は私よく分かってるから」


 にっと笑ってノウェムさんを見ると、ノウェムさんはふっと笑った。


「良い友に恵まれたな」

「本当ソレ」


 明日から頑張ろう、余計気合いが入った日曜日だった。







前半は前回話したバルトロ社がモナル社によって断罪されるのが放映されています。

所謂労基みたいな組織のガサ入れで株価急落したのを全部買い占めたのがモナル社です。

そしてその特集を碧たちが見たという感じですね。

レティシアの改革で、モナル社の傘下になり良い会社になるでしょう。

役員やパワハラなどした連中は賠償金などで罰を受けています、多分家族などから見捨てられるでしょう。


美奈は恩返しをしたいという純粋な思いで申し出をしました。

勿論鬱は寛解していません、できないことも多いはずです、ですがそれでも美奈の事を信頼し、よく知っている碧は彼女を受け入れました。

ノウェムも、レティシアから美奈の状況を聞いているので後押ししたのもあります。

美奈は電話対応などはできませんが、それ以外の書類作成などの事務はできます。

人と関わらなければいいので、そこは碧が対応するでしょう。

ちなみにロボットたちは美奈のことをよく知ってます、彼女が善人であることも理解しているので受け入れるのは早いでしょう。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

2026/05/29加筆修正しました。

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― 新着の感想 ―
会社潰すかと思ったら買収だった。レティシアさん本当に何者?? にしても、賠償金の話になったら家族を理由にして慌てるってだったらやらなきゃよかったのにと思わず思いました。ハラスメントされた人にも家族がい…
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