8.依頼料の喜びと親友との再会~ハラスメントくたばれ~
テロリスト鎮圧の依頼料入金されたのを見て喜ぶ碧。
しかし、借金返済後に不安を抱える碧に、とある人物からメールが届く──
「素直に喜んでいいのか分からないけど、この間のテロリスト鎮圧の件で結構入ったおぜぜが、大分残ったー! 借金返済、借金返済♪」
私は嬉しくて小躍りしてしまう。
色々とさっ引かれたが、五千万という破格の案件だった。
人の命かかっている分、上乗せだ。
「さて、喜ぶのもここまで、ここから今回のワープ燃料とか色々引かれるから……」
「残るのは四千五百万だな」
「おお、それでも上々……ってうわ⁈」
ノウェムさんがぬっと出て来たので驚いて椅子から転びそうになった。
「全く危なっかしい社長だ」
体をノウェムさんが支えてくれ、私は体の姿勢を正す。
「もう、ノックしてくださいよ」
「五、六回ノックしても出てこなかったから入った」
やっば、私そんなに浮かれてた?
「まぁ、これも人件費、ロボットたちの給料で一部解けるんだけど、それでも充分残るから……社長の私の給料もう少し下げちゃダメ?」
上目遣いで書類を持って尋ねてくる。
我が家では私がおねだりするときの仕草で、無理難題以外は大抵私の要望が通った。
だが。
「ダメだ、君の給料は君が社長として社員たちの責任を背負っている証でもある、簡単に引き下げるものではない」
「う゛ー……」
ノウェムさんには効かないのであった。
そうだよね、この人私の護衛もかねてるんだった。
そうそう甘い顔してくれないよね……
「そんなに社長の給料を抑えたいというなら幾らでも借金すればいい、君だけでなく従業員の給料も減るがな」
「それはダメー!」
私のはいいんだ、でも他のみんなのはダメなんだ!
借金なんてこれ以上余計にしてたまるもんか!
それに不安もある。
「早く借金返せたらいいんだけど、そうすると怪しい依頼とかも入って来そうで怖いんだよねー……」
そう、今私はモナル社からの依頼しか受けていない。
だが、モナル社から独立してやっていくようになると「他」からも依頼が来るようになるかもしれない、その依頼の善悪の判別ができるか正直不安だ。
詐欺グループとか犯罪グループの悪事に手を貸すなんて死んでもごめん!
だから心配で仕方ない。
「それなら、モナル社が君の次に株式を多く保有すればいい、そうすれば君に文句を言えるし、私の契約期間は君が社長をやめて引退するまでだ」
「そんなに?」
私はおっかなびっくりに聞く。
だってそんなこと聞いてないもの。
「その間に君は良い男性と巡り合えばいい、無論レティシアのお眼鏡に叶わなければならんし、君の身内のお眼鏡にもかなわなければならないがな」
「う゛……そ、そこら辺の出会いは涼兄さんに任せるよ……最近合コンとかに連れて行かれてるみたいだし」
「そう言えばそうだな」
ノウェムさん、どうやら次兄である涼兄さんの動向も把握しているみたいだ。
「どこからか、株式会社パトリの筆頭株主はモナル社の社長という話が漏れて、そこからパトリに働いて居ることがバレたらしい」
嫌な予感がする。
「それで……」
「女性陣は引っ張りだこ、男性陣には会社に便宜を図って入れろと言われているので現状合コンに出たがらないが無理矢理だされているらしい」
「哀れ……」
そういうことしか言うことは無かった。
「そういう君はどうだ? 社長になることは公言していた様子だが」
「あーだから大半と縁切った、男紹介してとか、融通してとか、便宜を図ってとかで、今残っているのは一人」
「……相当切って残ったのは一人か」
「そうだね……ん」
私用のスマートフォンが鳴る。
「……あ、みっちゃ……楠木美奈ちゃんからだ」
「残った一人のことか」
「うん」
メールを読むと「今日、空いてますか。会いたいです」という内容。
会うのは久々だし、うんと御洒落しないと。
でも、つけまつげとマスカラは苦手だから、ファンデーションとかチークと口紅だけにしよう。
「ノウェムさん、会いに行っていいよね」
「勿論だ、だが私も同行するぞ、席は別に取るが」
「うん、ありがとう」
本当、仕事に真面目だなぁとなんか納得した私。
いつも待ち合わせてしている商業施設RINRINのアイスクリーム屋の前にあるフロアの椅子に座って待つ。
「♪~♪」
一般ピーポーには私が社長だなんてことは知られてない。
株式会社パトリの社長をやってるが、表向きに出ているの叔父さんとレティシアさんだ、二人には頭が上がらない。
「……碧?」
「あ、みっちゃんン⁇」
思わず声が裏返ってしまう。
卒業すぐ会った時は綺麗だった長い髪もバッサリ切られており、顔もやつれて、目の下はコンシーラーなんかでは隠しきれないほどのクマができていた。
彼女が大学を卒業して二ヶ月、この二ヶ月の間に美奈に、みっちゃんに何があった。
「あの、今あんまり持ち合わせないからその……」
「……私のおごりでいいから、上の階のレストラン行こうよ。いつものファミレス」
「……うん」
涙までこぼして泣き始めたので私は腕を掴み、慌ててエレベーターに飛び込み、上の階のファミレスの窓辺の席に行く。
ちょうど平日だから空いてるし。
「みっちゃんどうしたの⁈ 大学出て大企業バルトロ社に入社したって聞いたけど……」
みっちゃんは頭が良い。
だから飛び級をしまくって今年、私と同じく学校卒業となった、みっちゃんは大学だが。
そう聞くと、みっちゃんはボロボロと泣き出した。
「あ、ああゴメン! まずは何か、食べよう!」
「うん……」
私は冷製苺パフェ、みっちゃんは苺プリンを選んで食べた。
食べ終わること、少しだけ落ち着いたらしく会うとき見せる穏やか笑みが見えた。
「……何が、あったの」
「……会社、やめちゃった」
「え⁈」
「頑張ってやった事全部取られて、セクハラもパワハラもされて、毎日無能だと言われてもう、辛くなってやめちゃったの……」
多分、何か掴んでたら壊していたと、思う。
それ位怒りがわいてきた。
「でも、バルトロ社からそんな噂聞いたことなかった……ねぇどうして?」
「……レコーダー系等はセンサーで取り上げられちゃうの、それで尋問されるの『こんなものを持ってきてなんのつもりだ!』って」
「くそ、証拠がないと……」
「あるの」
「へ?」
証拠がないと思っていたら、みっちゃんはあると言った。
「モナル社のレコーダーだけはバルトロ社のセンサーに反応しなかったの、だから証拠はあるの、でも怖くって……」
「話は聞かせていただきました」
キター‼
どこから来たんだレティシアさん!
ファミレスは貴方には似合いませんよ‼
「その証拠私に預けてほしいの、それと貴方のことも教えてほしいの」
「あ、あの、碧。この人」
「大丈夫、この人は信用できる、なんせモナル社の人だからね」
「え⁈」
社長とは言わなかったよ、言ったら大変だからね。
「お名前は楠木美奈さんでしたね、お話聞かせてください」
そう言って連れて行かれるみっちゃん。
「大丈夫だよね、みっちゃん」
「彼女は無事だ、バルトロ社は知らんが」
「デスヨネー」
遠い目をして私はお会計に向かった。
碧がバッサリ切った友人たちの中で唯一切られなかったみっちゃんこと楠木美奈、新キャラ登場です。
セクハラやパワハラは何処でも起きうるものだと思います。
美奈はそれにあい、髪も切られ、精神も摩耗し鬱状態になっています。
美奈がなんとかレティシアに着いていったのは他でもない嘘をつかない親友である碧の言葉を信じたからです。
レティシアとノウェムは美奈と碧が座ったテーブルの前のテーブルに座って聞き耳立てて待機してました。
さて、美奈はどうなるのか、美奈をこんなにしたバルトロ社はどうなるのか?
お楽しみにして頂ければ嬉しいです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




