【幕間】社員達、社長である碧について語る~色んな碧~
幕間、戦艦の名前の由来と、色々と大変な碧。
戦艦を正式に登録した日の事だった。
「ところで、お嬢ちゃんなんでもっと戦艦に格好いい名前つけなかったんだろうな」
「ウラノメトリアじゃったな?」
ガンツの言葉にメフィストたちは頷く。
「意味はたしか──」
クラレンスが言う前に、誰かが言った。
「ウラノメトリアは、西暦1603年にドイツのヨハン・バイエルが出版した、全天を包括した世界初の星図書の事だ。社長に何故この名をつけたか聞いたよ。皆が何処に行こうとも、必ず戻ってくるようにと、光をたどって戻ってくるようにと」
ノウェムだった。
そして通りすぎていった。
「「「「……」」」」
「「「「お嬢ー‼」」」」
四体は感涙のまま、社長室に突撃した。
しかし、タイミング悪く書類の山と格闘中だった碧は、勢い良く四体が社長室に入った振動で書類の山に押しつぶされた、
「むぎゅう」
「「「「お嬢ー!」」」」
「……元気が有り余ってるねぇ、皆。だったら幼稚園のこどもたちがロボットと遊びたいって依頼が来てるから行ってこーい!」
瞬時にパワードスーツに身を包んで追い出した碧。
「ちょ、ちょっと待て、あんな小悪魔どもの相手だと⁈」
レイジングは慌てる、何せ彼は元戦闘型ロボット。
子どもの扱いなど慣れていない。
特に大勢の子どもは。
「言い訳はきかん! 行ってこい!」
「……これ以上怒らせる前にいってくればいい、後は私が何とかする」
「すまん……」
「ごめんなさい……」
「もうしわけない……」
「わりぃ……」
バイザー越しにでも分かるふくれっ面をしているのを見て、こりゃあダメだと四体は目的地の幼稚園に向かった──
「「「「「「あそんであそんで!」」」」」
「オレは子どもが苦手なんだー!」
「おにごっこ?」
「じゃあいくよ、わたしたちがおに‼」
「なんでしょうなるー!」
子どもの集団から逃げ回るレイジングを少し離れた場所から見送っていたクラレンスたち。
「こどもは手がかかりますからね」
「七歳までは神様の子ども、という言葉があったそうじゃな昔は」
「それ位あっけなく死ぬんだよなー」
「そういうのもあって、レイジングにはいい仕置きになるでしょう」
「あの、パトリのロボットの方ですよね、お願いに掃除も入っていたのですが……」
「こっちが儂等への仕置きじゃな」
「あのやりとりだけで私達への仕置きになる要素を出してくるのが末恐ろしい、さすがお嬢様! 私共の社長!」
「感激してないで掃除しようよ!」
「そうじゃな」
帰る頃には全員へとへとになって会社に戻り洗浄室で体を洗い、報告書を書いて提出した。
提出する際碧は「次からは気をつけてね」とむくれた風に言ったのを見て、書類の山がある碧の大変さに、四人は頷くだけだった。
「碧ちゃんは生き急ぎすぎてるわ、これじゃあ借金返すどうこうじゃなくなるわ」
「はい、社長」
レティシアの言葉に秘書のロゼッタが頷く。
「しばらくは安全な仕事だけを回しましょう」
「借金返済速度が落ちると焦りそうですが……」
「そこなのよね、問題は」
レティシアははぁとため息をついた。
「ノウェムを護衛につけたとは言え、まだ碧ちゃんが狙われ続けているのは分かっている……」
「そう言えば、碧様がたまに利用される大浴場の女将様ともお話をしましたが、どうです」
「彼女は脅されて、それを跳ね返したの。今護衛をつけてるわ、聞いた所によると、碧ちゃんが偶然を装って死亡したように見せかけろと言われたそうよ」
「風呂場は危険ですね」
「だからノウェムが護衛について行ってるのよ」
その言葉に無表情だったロゼッタが驚いた。
「大丈夫なのですか?」
「大丈夫よ、五感だけでなく第六感も優れてるからあの子」
レティシアはそう言ってため息をついた。
「ただ、色々となりふり構わない状態ならないか心配なのよ碧ちゃんが」
「社長ならばそれはないかと」
「個人の依頼なら」
「‼ その手がありましたか……」
「ノウェムに監視の強化と一人で依頼を受けるような様子があれば即座に止めるように連絡をするわ」
「どうぞ」
ロゼッタは小型通信機を渡した。
「Hallo、ご機嫌いかが? ノウェム」
『要件を述べろ』
「物わかりが早くて助かるわ、もし碧さんに個人の依頼が来たとかその仕草があったら全力で止めて頂戴、確実に罠だから」
『本人にも一応言っておくべきでは、心配だから会社の実働部隊全員と毎回行動してね、と』
「それもするわ」
『ならいい』
通信はそこで終了した。
後日、実働部隊と毎回行動するようにレティシアが、碧に言うと「それ、株式保有者というか役員としての指導ですか……?」と不安がられたそうだ。
レティシアは、何か勘違いしている碧を宥めて説得するのに苦労する羽目になった。
「……」
「火星フグ美味しかったのぉ」
宗一の言葉に食した者たちがうなづく。
「でも、碧はあんまりくわなかったよな」
「美味しいものに舌が慣れたら、困るもの、節約節約」
そう言って、社長室に戻る碧を見送る順と涼と宗一。
「しかし、社長ならマナーを覚えなければならんはずじゃ」
「そうですね」
「……モナル社、相談」
ぼそりと呟いた順の言葉を拾い上げた二人は頷いて、連絡先に書いてあるレティシアの電話に連絡した。
『どちら様でしょうか?』
「え、えっと株式会社パトリの社長の兄貴の涼です、レティシア社長に相談が!」
『畏まりました』
しばらく待つ。
『はい、レティシアです。お待たせしてごめんなさいね。それでどんな相談ですか?』
「あ、あの碧が社長になったけど、アイツマナーとか全然知らないんですよ、ですから教えて欲しいんです。安心できる仕事が続いている今」
『ふふ、分かったわ、じゃあ明日伺いますね』
「へ、あ、はい!」
通話が終了し、涼は言う。
「後で、碧に怒られないかな、俺」
「うーん、どうじゃろ、多分怒る気力もないじゃろなー」
翌日、やって来たレティシアに碧が連れて行かれるのを見た三人。
何故かノウェムも同行していた。
帰ってきたとき、しなびたきのこの如く疲れきっていた碧は、即座にベッドに入って熟睡した。
「な、何があった?」
「丁度いいからダンスの簡単なのも覚えようというのも混じってマナー講座とかひっくるめてあれこれしてああなった」
ノウェムが見ていたらしいので解説した。
「おお……」
「哀れ……」
「ま、社長になったんじゃからマナーは必須じゃな」
「そうですね」
碧が社長として復活するのに、二、三日かかりパトリはノウェムと副社長の叔父昭夫と宗一が運営することになった。
復活した碧が言った言葉はただ一つ。
「誰だー! マナーなんてクソ風習つくったのはー‼」
だったそうな。
はい、幕間です。
ウラノメトリアって言葉、私の脳みそに結構残っていたので、ちょっと調べて碧ならこんな理由で使うだろうなと思ってやりました。
ロボットたちですが、レイジングは子どもが苦手です。碧が子どもの頃を思い出して凄く苦労したので苦手意識が強い。他のロボットは掃除などの細かいのが人間より劣るので碧はお仕置きとして用意されていた依頼の中で自分も同行すればいいと思ってたのを、同行しないというお仕置きを実行しました。
火星フグはかなり上質なフグだと思ってくださればいいかと。
碧とノウェム以外の三人がほとんど食べました、碧は行ってる通り、ノウェムは碧が食べないならそこまで食べるものじゃないんだろうという思考からです。
マナー講座では、碧はレティシアたちからビシバシマナーをたたき込まれました。
体で覚えさせられたので、忘れることがない位なのですが、本人としては「マナーはクソ」という結論が最後の一言につまっています。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




