100.パラシートゥス迎撃任務~異変と桐人の仕込み~
パラシートゥスの迎撃戦を依頼される碧たち。
レティシアはまだ碧が心配なようで、ウヌスとノウェムに碧を見ているように言う。
そしてワープすると異様な光景を目にして──
『今日の依頼はパラシートゥス迎撃任務です。木星付近に近づいてます』
「了解しました!」
『碧さん、くれぐれも無理しないでね……』
レティシアさんが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫です! 無理だと思ったら、ちゃんと撤退します!」
『なら良いのだけど……ノウェム、ウヌス、ちゃんと見ていてね』
「分かっているレティシア」
「勿論です、レティシア様」
うーん、この過保護っぷり!
まぁ、仕方ないか。
今の私は、あんまり仕事ができない状態だし。
「では総員準備!」
「「「「「「「了解!」」」」」」
戦艦に乗り込み、ワープ可能区域まで上昇してワープする。
「あれ? いつもより少ない⁈」
パラシートゥスの群体は、虫食いの帯のようにところどころ途切れていた。
『諸君、パラシートゥスの数は少ないが気を引き締めてくれたまえ‼』
いつものお偉いさんの激励。
大型が2体、中型が10体。小型と高速型もまばらに散らばっているから、無理はしなくて済みそうだ。
減圧室に入り、体を無重力に慣らしてから戦闘機に乗り込み出撃する。
大型個体のうち1体はウヌスさんが撃墜し、もう1体の大型個体と中型・小型個体も、出撃していた戦闘機で撃墜できた。
「これで無事お仕事完了だね!」
「そうだな……」
「ノウェムさん?」
ノウェムさんは、何か気がかりなことがあるような声で答えた。
「どうしたの」
「怪しい」
『ノウェムお前もそう思うか』
『こちらガンツじゃ! 周辺から離れるよう伝える! ワープエネルギーを感知した。ワープしてくるのはパラシートゥスだそうじゃ!』
「⁈」
「碧、一時離脱するぞ!」
「う、うん!」
『こちらウヌス、離脱する』
次々と、戦闘機がワープ先として指定した地点から離脱していく。
宇宙空間が大きく歪む。
そして──
無数のパラシートゥスたちが姿を現した。
「嘘でしょう⁈」
大型個体は30体以上、中型個体は100体以上、小型と高速型は数え切れないほどいる。
『クラレンス‼ 主砲発射は可能か⁈』
『可能ですが、この数だと、次の発射まで30分も待っていてはじり貧になりますよ!』
ウヌスさんの言葉に、クラレンスは慌てた様子で答えている。
それもそうだ。
目の前には、絶望という名の紫の輝きが広がっているのだ。
『クラレンス、コンソールに「出力上昇」という項目があるだろう。それを押せば、10分間隔で主砲を発射できるようになるはずだ!』
『ワープで帰れなくなりません!?』
『桐人はワープ用のエネルギーとは別に設計していると言っていた。いいから、主砲を発射したあとに押せ!』
『は、はい! では、主砲発射!』
私の戦艦が主砲を発射し、小型と高速型の半数を消し飛ばした。
しかし、大型と中型は無傷だった。
「碧、無理せず撤退してもいいんだぞ」
「ううん、ノウェムさん。やれる、やらなきゃ!」
「無理そうなら、即座に帰還するからな!」
「うん!」
私たちはパラシートゥスの群体に突っ込んでいく。
「右に10体! 左に10体! 下に30体!」
「了解!」
ノウェムさんは上方向に避けて追撃ミサイルを放つ。
パラシートゥスを撃墜していく。
「ウヌスさんは⁈」
「ウヌスなら、大型個体を1体、中型個体を10体撃破済みだ! 今、補給に戻ってる!」
「マジあの人の何ができないの⁈」
「知らん!」
と愚痴り合いながら、パラシートゥスを撃破していく私たち。
『主砲発射準備完了しました!』
「うっそ、もう10分たったの⁈」
あまりにも忙しすぎて体感時間的に30分くらい経過したと思った。
「碧、離脱するぞついでに補給だ!」
「うん!」
一度戦艦に戻り補給する。
そして戦闘機に乗り込み、待機すると──
『主砲発射ー!』
クラレンスの声が聞こえた。
大型個体は残り5体まで減り、中型個体も約8割を撃破できていた。
「これなら、いける!」
「行くぞ、碧!」
「うん!」
再びパラシートゥスの群体に突撃するように戦闘機を飛ばす。
弾丸と追撃ミサイルで敵を撃破していく。そして、さらに10分後──
『発射準備完了です!』
「離脱!」
「ああ、勿論だ」
戦闘機たちが離脱し、そして──
『主砲発射──!』
三度目の主砲発射で、ようやく全てのパラシートゥスを撃破できたように見えた。
『こちらガンツじゃ、パラシートゥスの残存勢力0、ワープしてくる兆候も無しじゃ』
「ようやく、終わった……」
私は椅子の背もたれに、ずるっともたれかかった。
「今日はこれでお終いにするぞ」
「そうだねー……桐人兄さんにはお礼を言わなきゃ」
「……言いたくはないがな」
「もう、ノウェムさんたら」
相変わらず桐人兄さんへの態度はこうなんだから!
『ノウェム、そう言うな。今回は桐人が新機能を追加してなかったら全滅の恐れがあったのだぞ』
「……」
ふて腐れてるなこれ。
『全く困った奴だ』
「でもこういう所が可愛いんですよねー」
『確かに』
「碧はともかくウヌスは止めろ‼ 私は可愛くはない!」
あー、私は良いんだ。
と、心の中でにやけてしまう。
『諸君、特にパトリ社の方々、ご協力感謝する、貴殿等が居なければ今頃我らは壊滅していただろう』
『そう言っていただき、感謝します』
『よければ表彰──』
「えー! そういうのは我が社は受け取らないと決めているので遠慮させていただきますでは!」
通話に割り込んで、通信機越しにクラレンスたちへ帰還を指示する。
「今すぐワープ! 帰宅帰宅!」
『は、はぁ』
加圧室で体を重力に慣らしてから出ると、そこは会社の敷地内だった。
どうやら、即座に戦艦のワープが完了していたようだった。
「桐人兄さん、ありがとー! あんな機能つけてたんだー!」
会社に戻り、自室でノウェムさんとウヌスさんと共に、スピーカーモードで桐人兄さんに連絡する。
『当たり前じゃねぇか、俺を誰だと思ってる』
「はいはい、桐人兄さんですよねー」
『何か投げやりになった! お兄さん泣いちゃう!』
「今すぐ通信切って良いか」
「駄目」
ノウェムさんはベッドに座って私を抱きしめたまま、唇をとがらせた。
本当分かりやすくなったなぁ。
「でも、どうしてワープ感知機能とかつけたの?」
『お前が最初に受けたパラシートゥスの案件、あれはパラシートゥスがワープしてきたんだよ』
「あ……」
そうだ。
パラシートゥスがいるなら戦艦が出る。
だから、木星や火星の防衛線を突破するのは至難の業のはず。
でもあのパラシートゥスの事件は月面だった。
『だから群体でワープするのも考えて追加したんだ』
「ねぇ、桐人兄さん、この技術他に……」
『渡さねぇよ? 馬鹿やらかすの見えてるから』
ははは、いつも通り、信用していない相手には冷たい桐人兄さんだったよ……
『だからお前らはパラシートゥス迎撃任務には積極的に出てくれ』
「うん、分かってる」
『あっ、そうだ! 分かっていると思うが、碧は無理すんな。今日は休め! 以上、通信終了!』
そう言って一方的に切られた。
「もう、桐人兄さんたら……」
「いや、桐人の言う通りだ休もう」
「碧様、そうしてください」
こう言われたら、反論できない私だった。
なので、ご飯を食べ、短編小説を読んで少しずつ慣らし、ノウェムさんとお風呂に入って、髪を乾かしてもらい、一緒にベッドに入ってぐっすり眠った──
ちなみにここで、伏線回収しましたね。
何故月面にパラシートゥスが突き刺さっていたのか。
まだまだ、さて章が新しい章に変わりました。
最終章です。
終わりが近くなってきました。
とはいえ、まだまだ続きます。
最後までお付き合いいただければうれしい限りです!
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるとうれしいです。




