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97.順の不安と子育て雑談~スプラッターの刑について~

順からの通信で、レティシアが何とかあの後は無事に帰れたと知り安堵する碧。

酷く疲れている様子なので、労るように言う。

碧も大変だなぁと息をつくと、ノウェムからレティシアが10億入していた事を知らされ驚き通信を入れる──




『レティシアの車が傷だらけで帰ってきたんだが、また襲撃か⁈』


 レティシアさんが帰宅したらしいのを、順兄さんのその言葉で確認し、ほっとする。


「あー、うん。でも、護衛も増えたから、何とかなったよー」

『そ、そうか……何か酷く疲れているんだが……』

「甘い物食べさせるか、紅茶いれてあげるなりして、リラックスさせてあげて」

「分かった」


 順兄さんとの通話を終えると、私はふぅと息を吐き出した。


「みんな、大変だな」

「碧、レティシアから今回の件で10億入金されたぞ」

「は⁈」


 驚いてレティシアさんに通信を入れる。


『ふぅ、順さんの甘い紅茶は生き返るわ……あら、碧さん。どうしたの?』

「どうしたんです10億って!」

『あの車、最新型のパワードスーツでようやく壊せるくらい頑丈な車なのよ……なのに集団でこられて危うく私が死ぬところだったのだから、10億くらいはぽんと払わないと……』

「やっぱりアイツ今のうちに始末しておくべきでは?」


 ノウェムさんが言う。


 しかし、レティシアさんの言葉は否定だった。


『駄目、準備をしないと、せっかくのネブラへの情報源が失われてしまうわ。今、桐人が準備してる』

「……」

「あの、ナンバーズのパワードスーツは……」

『全員桐人が作ったわ、ノウェムのをモデルに』

「何で私はエンジェルちっくなん……」

『可愛い上に強いなんて最高じゃない?』

「ですがねー……」


 咲良ちゃんが選んだから、悪意ないから別にいいし。

 ノウェムさんが気に入ってるからいいんだけど、このパワードスーツでガキ扱いされたのがちょっとショックなんだよねぇ……

 私もう成人してるし、21歳になってるし。

 去年はお祝いできたけど、今年は色々ありすぎてお祝いできなかったんだよなぁ……




 それにしてもモナル社って凄いよなぁ。

 調乳ポッドを作るのも凄いけど、その温度で完全に溶ける粉ミルクも開発しちゃってるんだもん。

 あ。


「テオ君とミネルヴァちゃんは卒乳済みですか?」

『テオは完全卒乳、ミネルヴァはまだちょっとミルクを欲しがってぐずるわ』

「はぁ……」


 1歳くらいで卒乳する子もいるけど、2、3歳で卒乳する子もいるし、気にする必要ないんじゃないかな?


『お言葉ですが、レティシア様。卒乳の多くは1歳から1歳半ほどと言われていますが、2、3歳まで卒乳に時間がかかる場合もございます。気にせず、子ども達に合わせましょう』

『そうね、それが一番ね』

「えっと、もしかしてトレムさん?」

『はいトレムです』

「えーとデケムさんは?」

『現在本社の指定された区域に行って「指導」を受けている最中かと』

「ああ、なるほど……」

『レティシア様、スタイルを直すのは重要ですが、無理はなさらず』

『私、この言葉が欲しかったのよ……!』


 あーデケムさん、スパルタでスタイルとか戻すための運動レティシアさんにさせてたから、レティシアさん泣きそうな声になってる。

 言っちゃ悪いけど、グレイズさん、最初からデケムさんのこと桐人に頼んでおけばこんな事態にはならなかったのでは?


『ところで順さんの仕事復帰は?』

「それ悩んでるんですよねー、トレムさんとデケムさんで見てくれてるんですか?」

『はい、そうなりますね』

「じゃあ、近いうち育休を終わらせて、代わりに早く帰らせます」

『私もそうするわ、社長だけど、その前に母親ですもの』

「では、お願いします」

『ええ』




 通話を終えてからあ、と気がついた。


「順兄さんに、ドゥオのスプラッターの刑の話をするの忘れた」

「出勤するようになってから言えばいいのでは?」


 ノウェムさんが言うが私は首を振る。


「出勤して早々、心構えができると思う? あの順兄さんが」

「……できない気がする」

「だよね」


 もう一度通信する。


『はい、どうしたの?』

「順兄さん、います?」

『ええ、勿論。貴方ー』

『レティシア、どうしたんだ……』

「はーい、順兄さん。碧ですぞー。近いうち出勤してもらうようになる話、レティシアさんから聞いた?」

『聞いた』

「実はねードゥオって奴がねー」

『スプラッターの刑か?』

「なんだ知ってたの」

『涼からその刑がドゥオに執行された時の恐怖メールが四日に一度届く』

「涼兄さんェ……」

『スプラッターの刑って何なんだ、断末魔が聞こえる、肉塊になってるとか物騒なことしか書いてなかったが、そんなのできるのか?』

「あー、うん。それで大体合ってる」

『……マジか』


 あ、ちょっと順兄さんが会社行きたくないモードに入ってる気がするぞ?


「ドン引きした?」

『碧……何でお前平然としてる……』


 うっわ、凄いドン引き&げんなりした声してる!


「しばらくはドン引きしてたよー。でも、ある日を境にドン引きしなくなったね」

『ある日?』

「それは言わない、ノウェムさんの名誉のために」

『……わかった、けど……いきたくないな……』

「デスヨネー」


 まぁ、私も順兄さんの立場だったら行きたくないだろう、そんな状態の会社に。


「まぁ、実際肉塊になってるの見てるのはウヌスさんって人だけだから」

『……涼は見てないのか』

「多分、ウヌスさんが肉塊にしたって言ったのを聞いて怖いと思ったんじゃないの。真面目にやらなかったら殺される! って」

『……涼ならあり得るな』

「順兄さんはブランクあるけど、やっていけば戻るだろうし、宗一お爺ちゃんも怒るのはドゥオばっかりだから!」

『……怒鳴り声が、怖い』

「ありゃりゃ」


 まだ、過去のトラウマから逃げられてないというか、立ち向かえてないのか。


『大丈夫よ、怒られてるのは貴方じゃない、だからしっかりして』


 レティシアさんが順兄さんを励ましてる。


『……レティシアが言うなら、頑張る』

『ありがとう、順さん』


 完全に姉さん女房に、甘やかされてるな順兄さん。

 まぁ、それ位が丁度いいんだろう。


『レティシア様、順様。ミネルヴァ様がお菓子の半分を残しています、テオ様がその半分を食べてしまいました』

『分かったミルク作る……』


 順兄さんがバタバタと歩いて行った音が聞こえた。


『全くドゥオは……ドゥムと役割交代して貰おうかしら』

「役割?」

『ええ、情報収集、ドゥオの得意分野よ』

『是非、交換してください』

『分かったわ、ちょっと桐人に連絡するから』


 しばらく通信が途切れてから、繋がる。


『あのね、碧ちゃん、申し訳ないんだけど……』

「だけど?」

『桐人がドゥオ(馬鹿)を躾けるチャンスだから残しておけ、ついでにドゥムも入れて補助しろ、だって』

「ええええ⁈ 情報収集どうすんの?」

『何か桐人に考えがあるみたい』


 首を傾げる。

 何をする気なんだろう。


『……スプラッターの刑の話?』


 順兄さんが会話に入ってきた。


『あーうん』

『……涼の文面見るだけで分かるけど、俺はドゥオって人と合わない』

「だよねー!」


 陽キャに見えた陰湿野郎どもにいじめられたんだから!

 教師も見ぬ振り!

 桐人兄さんの怒りはMAXで、全員悲惨な末路!

 だもんねぇ……


「まぁ、ドゥオが何かしたらウヌスさんか宗一お爺ちゃんに言えばいいよ」

『うん、そうする……』


 気弱な兄さんだけど、会社には頑張ってくるんだろうな。

 多分、トレースさんが出迎えにいくんだろうな。


 順兄さんの復帰準備に向けて私たちは色々やりとりをし、一週間後に順兄さんが仕事復帰することが決まった──








レティシアの今までの苦労が垣間見えるのと、順が涼のメールもあってか復帰にげんなりしているお話。

やはり怒鳴り声はまだ怖い様子、自分に向けられたものじゃ無くても。

そして復帰が確定した様子、子育てと労働の両立は大変そうですが、トレムがいるから大丈夫でしょう。

レティシアも手伝うと言ってますし。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

感想有り難うございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
涼メール送ってたんか笑笑。4日に一度とか割と結構な頻度だな、というかスプラッターのメールを送って順兄病まないんかな…??わたしだったらそんな送られてたら会社行きたくないモード通り越して軽く発狂ものだよ…
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