96.ナンバーズを増やす理由~レティシアの頭痛と胃痛~
桐人が新たなナンバーズを創ったことに、激怒し実父のグレイズに通信機で連絡を取るレティシア。
今後の予定も聞かされ、桐人がナンバーズを増やしていくことに賛同していることに怒りを覚えるレティシアは桐人を睨みつける。
だが桐人は──
桐人兄さんから衝撃の事実を聞かされたレティシアさんが、グレイズさんに通信機で連絡を取った。
『おお、レティシア。どうしたの……』
「この馬鹿親父! どうしてまたナンバーズを増やしたの! 今度は桐人に頼んで!」
『し、仕方なかろう? 今後はナンバーズを増やしていく方針で桐人とは話を進めている』
「はぁ⁈ 桐人どういうこと⁈」
レティシアさんは桐人兄さんを睨み付けた。
「今後、子どもが増えるとなると護衛対象が増えることになる。ネブラを倒したとしてもモナル社に恨みを持つ人間は多い。だから護衛を増やすに越したことはない」
『そうだ』
「ノウェムのような子を作るというの? 感情がなく、自分の身を犠牲にして護衛対象者を守るような子を!」
「いや、そういうのじゃねぇよな。ウノ、ドゥム、トレム」
「はい、桐人様」
「勿論です桐人様」
「おっしゃる通りです、桐人様」
緑の髪に緑の目、白皙の少女。
赤髪に銀メッシュを入れた、焦げ茶色の目をした色白の男性。
褐色肌に銀髪のロング、青い目の女性。
この三人が姿を現した。
「レティシア様、初めまして。私は新型人工生体兵器№11、ウーンデキム。通称ウノとお呼びください」
緑髪の少女はそう言った。
「レティシア様、初めまして。私は新型人工生体兵器№12、ドゥムデキム。通称ドゥムとお呼びください」
赤髪に銀メッシュの男性はそう述べた。
「レティシア様、初めまして。私は新型人工生体兵器№13、トレデキム。通称トレムとお呼びください」
最後の自己紹介の後、レティシアさんが卒倒しそうになるのをセスさんが抱き留める。
「問題児になるような奴はいないから安心しろ。あとウノはセスを少しモデルにしたが、セスより感情表現が豊かだ。トレムはデケムを元にさらに改良して、子どもの育児や妊婦、経産婦、産前産後などの対策を柔軟にとれるようにしておいた。これで碧が妊娠しても安心だな」
「どうしてお父様はデケムを作る時に桐人に相談しなかったの!」
トレムさんの説明を聞いた時にレティシアさんは別の意味で嘆いていた。
そりゃそうか、ハードスケジュール入れられて苦労してたって言ってたもんなぁ。
「ってそういう問題じゃないわ! 桐人もどうして一言言ってくれないの!」
「だって言ったらお前反対するだろ全力で」
桐人兄さんはスパナをくるくると回しながら言った。
「当然じゃない。だって──」
「ナンバーズは、お前たちモナル社を守るための剣であり盾であり、またそれを使う者でもある。守りたい人数が増えちまったら増やすしかねぇだろ」
「でも!」
「ナンバーズには人権はない、まぁ公からみりゃそうなるわな。戸籍も偽造戸籍しか持ってない」
「……」
「それでも、俺らルプスよりは遙かにマシだ」
ルプス。
桐人兄さんが言っていた内容が本当なら、あまりにも非人道的な扱いだ。
たしかにナンバーズも、ちょっと非人道的なことはあるけど、そこまで酷くない。
ノウェムさんの件は物申したいけどもね!
「なぁに、今後はノウェムみたいなのは作らないぜ。ノウェムは例外中の例外だ」
レティシアさん、反論したいみたいだけど、思いつかないようだ。
「……それより、桐人兄さん、戦艦の整備終わった?」
レティシアさんのストレスが溜まる前に、私は話題を変えた。
「終わらねー! クソが、あんな設計誰がした! 俺か、俺だな!」
そう言って桐人兄さんは地団駄を踏んだ。
「咲良ちゃんは?」
「あー不法侵入者来ないように見張り頼んだ、だから咲良のためと俺のためにスポーツドリンクくれね?」
「はいはい」
私は休憩室に戻り、半分凍ったスポーツドリンクを取り出して、戻った。
そしてそれを桐人兄さんに渡す。
「いつ頃終わりそう?」
「明日の朝までには終わらせてやるよチクショー!」
半ば自棄っぱちで叫ぶ桐人兄さんは、スパナを持って戻って行った。
「……ありがとう、碧さん、話題を変えてくれて」
「いや、良いんですよ」
「駄目ね、私は……ナンバーズの子たちの事になると感情が抑えられないの」
「ノウェムの件があったからですか」
「それもそうだけど、セスたちが皆私たちの代わりに手を血に染めてると考えるとどうしても罪悪感が湧いてしまうわ」
「……」
レティシアさんなりの、美学なのだろう。
「それではレティシア様、私どもは任務に戻りますので」
「お体をお大事に」
「デケムの指導の件はお任せください。お子様方と旦那様の護衛は私が引き受けます」
それぞれそう言って一瞬で姿を消した。
レティシアさんは重いため息をついた。
「どうしたんですか?」
「いえ、一瞬あのハードな運動から逃げられると思った自分に自己嫌悪をして……」
「あ、あははは……」
笑うしかない。
下手なフォローだとレティシアさんが余計気を遣う。
「では、レティシア様、一度ご帰宅しましょう」
「そうね……碧ちゃん、ノウェム。また来ますね」
「はい、レティシアさん」
「レティシア、気をつけろ」
「ええ」
私たちは二人を見送った。
それから30分もしないうちに通信機が鳴った。
「はい!」
『セスです! 車が襲撃されています! お願いします!』
「ノウェムさん!」
「ああ」
私は通信機でウヌスさんとクラレンスたちに装甲車に乗るように指示を出した。
そしてクラレンスが装甲車を猛スピードで走らせていると──
「アレはモナル社の最新型のパワードスーツ……と以前見たタイプよりもタチの悪そうな合成獣だな」
パワードスーツを装着して、私とノウェムさん、ウヌスさんが飛び出す。
「どけぇえええ!」
私は襲撃者の二人の首を掴み、ガツンと頭部をぶつけ合わせ、よろめいている隙にパワードスーツのコアを破壊し、道路に放り投げる。
「このガキ!」
「うるさいなぁ、これでも成人してるわよ!」
殴りかかってきた相手の拳を避け、足払いして、そのまま回転蹴りでコアを破壊する。
相手が道路に転がっていくのを眺める。
「ノウェムさん、ウヌスさん!」
ウヌスさんは、隊長らしき相手と互角に見える戦いをしていたが、それは相手の実力を測っていただけのようだった。
「なるほど、ネブラはこの程度で部隊長になるのか。もう把握した用済みだ」
首を掴み、地面にたたきつけると、そのまま車から飛び降り、相手のバイザーにかかと落としをして、バイザーを破壊した。
ウヌスさんが口の中を確認すると、戻ってきて首を横に振った。
どうやら自決用の毒を口の中に仕込んでいたようだ。
ノウェムさんは、十数匹いた合成獣の最後の一匹を相手にしていた。
襲いかかってきた爪を指で挟み砕いてその爪で合成獣の喉を貫いた。
合成獣はもがき苦しんでいたところに、ノウェムさんは頭をつかみ、ばぎゃ、と音を立てた。
すると、合成獣は動かなくなった。
「レティシアさんは⁈」
車に駆け寄ると、レティシアさんとセスさんが出てきた。
「助かりました……」
「……他にも数は居たはずだが……」
「失礼、手助けが必要かと思い」
ドゥムが出て来た。
よく見ると、ドゥオを爽やかにしたような感じに見えた。
「ねぇ、ドゥムさん、あなたの外見モデル、もしかしてドゥオ?」
「ええ、一応。創造者様曰く『ドゥオの外見を爽やかにして中身好青年にしたらどうなるかな』とか言ってました」
「……桐人」
レティシアさんが眉間を抑える。
「今すぐドゥオと変わってパトリに来てほしいくらいだな」
「そ、そんなにドゥオは問題ありなんですか?」
「「「大ありだから毎日困ってる」」」
私とノウェムさんとウヌスさんの声が、同時に出た。
それを見たレティシアさんは頭を抱えそうな顔をしていて、セスさんは頭痛薬が必要かまで確認してきた。
セスさん、必要なの多分頭痛薬じゃなくて胃薬の方だと思う。
と、思ったが何も言わないことにした──
新しいナンバーズ登場回です。
問題児を創らなかったといっているがレティシア的にはそう言う問題じゃないんでしょうね。
でも、桐人の言うことは最もです、グレイズも。
守る相手が増えるなら、守り手を増やさなければならない、至極同然の事です。
そして帰りに車を襲撃される中でウヌスは敵戦力の値を図る冷静さを持っていましたが、ドゥオの事に関してはやはり碧やノウェムたちのように頭痛の種なのでしょう。
レティシアは胃痛と頭痛で大変そうです、ストレス性の。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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