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92.碧の第一歩~立ち直りの第一歩~

ノウェムを助けようとした行動が碧にとって荒治療になり、碧の心に改善の兆しを見いださせた。

桐人は無理のない範囲で仕事を進め、ノウェムは碧が良くなるならと受け入れた、その矢先──



「碧……」


 ノウェムさんが私を呼ぶ声がした。

 私はうっすらと目を開ける。


「君は何故、あんな無茶をするんだ……」

「……だから」


「碧?」


 私の声を聞き取ろうと、ノウェムさんが耳を私の口元に近づけた。


「ノウェムさんが、大切、だから……」

「そうか……死ぬのは怖くないのか」

「死にたくないよ……でもノウェムさんがいないのはいや……」

「そうだな、そうだったな」


 ノウェムさんは優しく私に微笑んでくれた。


「後で桐人に見てもらおう。今は眠るといい」

「うん……」


 私はそう言うと目をつぶり、そのまま眠った──


 悪い夢を見ることなく。





「荒療治だな、これは」

「どういうことだ?」


 桐人兄さんがやって来て私を見るなりそう言った。


「悪夢でお前が殺されるのを見たのが原因で、碧はメンタルやられ始めたんだ。その瞬間を自分でぶち壊したことで、そこそこの改善が見られる」

「そこそこか」

「も、文字はまだあんまり読めないけど……」


 私はおっかなびっくりに言う。


「じゃあ、現場で少しずつ慣らしていくだけだな」

「休めとは言わないのか」

「無理そうなら休ませろ。仕事は一日二件まで。ノウェム、お前は碧のそばにいろ。以上」

「ノウェムさん、あし、ひっぱったら、ごめんね?」

「気にするな。しかし、桐人も酷なことをさせる」

「いいんだよ、桐人兄さんなんだから」

「しかしだな……」


 そんな会話をしているとウヌスさんがやって来た。


「パラシートゥスの大群が木星付近に接近中だとのことだ、協力願えるか」

「はい!」

「碧、いきなりそんなハードな……」

「大丈夫! 戦艦も桐人兄さんのお陰で新しくなったし、戦闘機も新型になってるんだから心配しないで! それにパワードスーツの補助もあるし!」

「……わかった」

「では、戦艦に搭乗してくれ。時間が惜しい」

「はい!」

「分かった」


 ノウェムさんは私の言葉に納得していないようだった。





「見るだけなら綺麗なんだけどね……」


 輝く紫色の結晶体の帯。

 何もしてこないなら、これを見てるだけでいいんだけど、積極的に人類を殺しにくるからシャレにならない。


「よし、指定場所に到着した、行きましょう碧様。ノウェム、碧様を頼むぞ」

「言われなくとも」


 減圧室でパワードスーツを装着し、そして戦闘機に乗り込む。

 少しだけ手が震えたが、深呼吸して落ち着かせる。


 大丈夫。

 私はやってこれたから、今回もできるはず。


「ノウェムさん、出ましょう」

「了解した」


 出撃する。



「右、20、下、30です!」

「分かった!」


 追撃ミサイルが発射され、パラシートゥスたちが消滅していく。

 心臓の鼓動が速くなるが、私は必死に耐える。


「っ……上、60! 下、20!」

「了解!」


 上下からの攻撃を回避し、互いにぶつかり合って消滅していくパラシートゥスに、ノウェムさんは弾丸を撃ち込む。

 パラシートゥスは少しずつ消えていった。



 30分ほどが経過した頃──


『お嬢! 主砲発射準備、整いました! 離脱を!』

「ノウェムさん‼」

「分かった」


 その宙域を離脱すると、私の戦艦ポラリスから主砲が放たれ、パラシートゥスたちを一掃した。


『大型は0、中型は2、小型は100です!』

「さっさと片付けましょう!」

「ああ、分かっている!」



『全艦感謝を、これで防衛できた!』


 私は力を抜いてしまう。


「良かった~~……」

「お疲れ様、碧。さぁ戻ろう」


 戦艦へ帰還すると、先に加圧室で疑似重力に慣らしていたウヌスさんが声をかけてきた。


「碧様、無理はしていませんか」

「は、はい!ちょっとだけ怖かったけど、大丈夫でした」


 私がそう言うと、ノウェムさんを見る。


「ノウェム、お前から見て碧様はどうだった」

「……怯えてはいたが、自分を奮い立たせようとしているのが分かった」


 げ、見抜かれてた。

 どうしよ、またお仕事無しはやだよ!


「……まぁ、復帰直後ということもあります。慣らしていきましょう。ただし、今日の仕事は碧様とノウェム、ここまでです。二人は戦艦で待機していてください」


「え、まだ私やれるよ?」

「そんな顔色でよく言えますね」


 加圧室の特殊な鏡を見る。

 バイザーを下げていたので顔を見ると血の気が引いていて、唇も青くなっていた。


「これ、私の顔?」

「そうです、だから無理をせず、一つずつ参りましょう」

「……うん」


 ウヌスさんに言われてそう返事をするしかなかった。

 先にウヌスさんがいなくなると、ノウェムさんが私を抱きしめて額にキスをしてくれた。


「大丈夫だ、碧。君は上手くやれている」

「ありがとう、ノウェムさん……」


 そうだ、まだこれからだ。


 ここから私のやり直しが始まる。

 立ち直るための第一歩だ。


 だから一歩ずつ前へ、前へ。

 その一歩が小さくてもいい。


 誰も責めない、誰も否定しない。

 私を認めてくれている、私を見守ってくれている。


 何より──最愛の人、ノウェムさんがそばにいる。

 さぁ、始めよう。

 もう一度社長として社員を引っ張るために──







碧仕事復帰第一回。

パラシートゥスを迎撃任務ですが、碧も言う通り、攻撃してこなきゃ綺麗な結晶体なんですよね、パラシートゥスは。

人類殺しにかかってるからタチが悪い。

これから、碧は少しずつ社長として、また仲間として働けるよう頑張っていくでしょう。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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