↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/136

【幕間】ノウェムの思い~何もできなくても~

幕間──ノウェム視点での話。

ノウェムは碧の具合の悪さを吐露するが、同時に依存される喜びがあり、複雑な心境だった──






「で、ノウェム。碧ちゃんとやることやってんの?」

「お前に言う義理はない」

「ならば私が聞こう。桐人から聞いたが、触れ合う(・・・・)ことをしているそうだな」


 ノウェムさんとウヌスさんとドゥオは休憩室で話していた。

 ノウェムは話もせずにさっさと碧の元に戻りたかったが、碧が隠れているのが分かったので、適当にドゥオをあしらいつつウヌスの言葉を吟味していた。



「桐人め……だとしたら何を言いたい?」

「触れ合いの頻度、減ったか増えたか、それを知りたい」

「一ヶ月前と同じくらいになった。碧が襲撃され、私が庇ったのを見てからな」

「どっちが求めるの?」

「教えてやらん」

「ケチ」


 ノウェムはドゥオにケチと言われたが、知ったことではなかった。

 碧が近くで聞いているのだ、彼女のプライバシーはできるだけドゥオから守りたかった。


「悪化してるということか?」

「デスクワークも元々苦手だったのだ。それなのに、頭が本調子じゃない状態でやらされて、ストレスになっているのだろう」


 ノウェムは心配そうにため息をついた。

 その様子を見てウヌスが言った。


「ドゥオ、選べ。今すぐ護衛任務に戻るか、私にスプラッターの刑を処されるかだ」

「護衛任務に戻ります!」


 ドゥオが全速力で護衛任務に戻ったのを見計らって、ウヌスは腕を組み、ノウェムに尋ねる。


「で、私には洗いざらい喋って貰うぞ。レティシア様と桐人から命じられているのだからな」

「碧の事でか?」

「お前のこともだが、今は碧様のことだ」

「……」


 ノウェムは若干、自分と碧にはプライバシーというものが無いのかと嘆きたくなったが、そうも言ってはいられないと覚悟を決める。


「で、彼女がお前を求める回数はどうなっている」

「一ヶ月前ほどではないが、戻ってきている」

「それに関してお前はどう思う」

「個人的には嬉しい、だがそれは碧の精神状態が良くないからそうなっているので素直に喜べん」


 ノウェムは再び、心配そうにため息をついた。


「碧様をどうしてやりたい」

「救いたい、だが彼女の傷を癒す方法が私は分からない」

「それは私も同感だ」


 ウヌスが珈琲を口にすると、ノウェムは嫌そうな顔をした。


「その珈琲とやら上手いのか?」

「インスタントのだが、いい値段のものだ。普通のブレンド珈琲と錯覚するくらい美味いぞ」

「苦いから嫌だ」


 甘い物の良さを知ったノウェムには、苦いものも固形食も、できれば仕事以外では避けたいものになりつつあった。


「珈琲はブラック一択だ」

「そんな物を飲むくらいなら、泥水をすする方がマシだ」

「御子様舌め」

「なんとでも言え」


 憎まれ口を叩きながら碧が社長室に戻る音がしたので、ノウェムは紅茶を持って出ていく。


 これから予想もしない事態になるとも知らずに──



「……読めない、読めないよぉ……」



 碧が文字の大半を読めなくなり、デスクワークすらできないと嘆いた。


 ノウェムたちは思った。

 本当は、デスクワークも休ませて、もっと休養を取るべきだったのではないかと。



 自分はここに居てもいいのかと悩むようになった。

 何度も言い聞かせても、碧はそれを受け入れられない様子だった。



 自傷行為に走るようになった。

 頭を壁に打ち付けたり、自分の手を、もう片方の手で叩いたり。

 その程度なら、まだ良かった。


 ついにはカッターナイフを手にして自分を傷つけた。


 ノウェムには到底許しがたい行為だった。

 最愛の人が、自分を傷つける行為に走るほど追い詰められていたとは。

 考えさせれば考えさせるほど碧が追い詰められていくならば、考えさせなければいいとノウェムは判断した。



 だから触れ合いよりも一歩進んだ(・・・)行為をした。

 女性同士でする行為の知識は、頭に嫌でもインプットさせられていた。

 レティシアが女性からそのような目で見られた時の代わりになるために。


 皮肉な結果だと、ノウェムは自嘲する。


 更に進んだ行為では、どろどろに蕩けたような表情を浮かべ、声を上げるのを聞いていた。

 これが欲しかったと思うと同時に、もう少し、この行為はしないでおきたかったと思う気持ちもあった。


 それを一日三回以上繰り返したある日、会社が襲撃された。


 ドゥオとトレースは整備室前の護衛を、セムは美奈の護衛を、ノウェムとウヌスは撃退をメインに動いていた。


 敵を叩きのめし、パワードスーツのコアを破壊しながら、ある存在が来ていたことに気付いた。

 パワードスーツを着た碧だ。


「⁈ 碧、何をしている⁈ 部屋に戻れ‼」


 そう言った矢先、背後を取られた。


 その直後──


「ノウェムさんに触るなああああ!」


 碧が跳び蹴りを喰らわし、そのまま回転蹴りで周囲を一掃する。

 緊張感に張り詰めていた空気が崩れる。

 私たちにとっては、良い方向に。


「よっしゃ行くぞ」

「ええ」

「はい!」


 ドゥオの声にトレースとセムが応じる中、碧はその場にへたり込んだ。

 ノウェムがパワードスーツを着用したまま碧を抱きかかえた。


「全く、君はなんて無茶をするんだ!」

「だって……ノウェムさんの無事が大事だから……」


 碧はがくりとうつむいた。

 ノウェムには、碧が気を失っていることが分かった。



「碧……」


  後始末をウヌスたちに任せ、ノウェムは碧の名前を呼んだ。


「君はなぜ、あんな無茶をするんだ……」

「……だから」


「碧?」


 ノウェムは碧の声に耳をそばだてた。


「ノウェムさんが、大切、だから……」

「そうか……死ぬのは怖くないのか」

「死にたくないよ……でもノウェムさんがいないのはいや……」

「そうだな、そうだったな」



「後で桐人に見て貰おう、今は眠るといい」

「うん……」


 碧はそう言うと深い眠りに落ちた。

 うなされる気配はなく、ノウェムは穏やかにそれを見つめた──






ノウェム視点と、碧の意識を失った所より先ですね。

次回はその言葉の先から始まります。


碧はノウェムの為なら恐怖にも勝てます、でも普段は負けっぱなしです。

今はそれ位脆いんです。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。