85.お仕事の説明~開く傷~
碧はロゼッタから慈善事業の一環として幼稚園に自分たちがどのような活動をしているか話すという依頼を受けた。
碧は依頼を受けて、評価も上々だがとある視線が気になり──
『今日は子ども達とのふれあいの依頼です、あまり報酬は出せないですが』
「別にいいですよ、で、場所は?」
『すみれ幼稚園です。どうやら、貴方達のお仕事に興味があるという保護者様が多く……』
まぁ、何度か顔出ししてる所だしね。
『あ、パラシートゥスの研究の件だけは内密にお願いします。あと、パワードスーツはまだ保管しておりますよね?』
「はい」
『でしたらそちらをお使いください、流石に桐人様オリジナルのを出すと大変なことになるので……』
「分かりました」
私は通話を切った。
「おーい、今回は子どもと保護者さんたちとのふれあいの仕事だよー、場所はすみれ幼稚園、行ったことあるから分かるでしょ?」
「げ⁈」
レイジングが露骨に嫌そうな顔をした。
「なぁ、お嬢。頼むよ、子どもの相手は俺は苦手なんだ!」
「そんなこと言われてもねー」
何故か人気があるレイジング。
次いでクラレンスとメフィスト。
ガンツは割と見慣れている工事現場型だから、若干人気がない。
レイジングは元戦闘型だから格好良く見えるのだろう。
元スポーツロボットのクラレンスも。
メフィストは単純に子どもの扱いが上手い。
ただし、赤ん坊を除く。
「碧、私は何をすればいい?」
ノウェムさんが尋ねてきた。
「モナル社から購入して保管していたパワードスーツを着用して、どんな仕事をするか説明するのを手伝ってほしいの」
「承知した」
「一応、先ほど資料がタブレットに届いたから、これを見ながら読めばいい。私も手伝おう」
ウヌスさんがやって来て、タブレットを渡してくれた。
「ありがとう、じゃあ明日だからみんなで頑張ろう! あ、ドゥオとみっちゃんとセムさんは留守番ね」
「また俺留守番⁈」
「教育に悪い。それに、みっちゃんとセムさんは事務だから」
私はきっぱりと言い、自室に戻った。
そして翌日。
「はじめまして、みなさん。私は株式会社パトリの社長の萌木碧といいます。こちらの方々は社員の方々です」
「「「「わー!」」」」
ちっちゃい子たちが集まり拍手をする。
めずらしくお母さんらしき人だけでなくお父さんたちもいる。
何でだろう?
「私たちの会社は危険な仕事を取り扱っています。ロボットの暴走の鎮圧、銀行強盗の捕縛、テロリストの鎮圧、パラシートゥスの防衛戦にも参加しています」
「あのー戦艦とかは……」
お父さんらしき人が手を上げて質問してきたので私は苦笑しつつ答えた。
「流石に、戦艦内部は企業秘密なのでお見せできません」
「貴方当然でしょう!」
「いや、だってあのパラシートゥスを迎撃してるんだろ、気にならない訳がないじゃないか!」
お父さん方はうんうんと頷いている。
「しゃちょーさんはなにをしているのですか?」
「私も現場に向かい、指示を出したり、鎮圧や捕縛などを行っております」
「わーすごーい!」
「かっこいいー!」
女の子達がぱちぱちと拍手をする。
「しゃちょーさん、そっちのロボットさんたちはー?」
「彼らはロボットの鎮圧や、危険物の解体などを請け負っています。ロボットなので、人に怪我を負わせることは法律上禁止されています」
「なるほどー」
「では、実際に仕事で使っているパワードスーツを見て貰いましょうか」
そう言うと、ノウェムさんとウヌスさんはパワードスーツを身につけた。
モナル社製のものだ。
「「「「「おお~~‼」」」」」
「「「「「わぁ~~‼‼」」」」
歓声が上がる。
男の子たちとお父さんたちの声だ。
「先ほど、危険な仕事を主にやっていますが、人命救助や瓦礫除去などの作業も行っております。社員のロボットたちにも手伝ってもらっていますが、私たちもパワードスーツを着用して作業しています」
「社長さんもですか?」
「はい、私も現場で働いていますが、まだまだ若手なので熟練のこの二人に指導していただいています」
そして、ふぅ、と息を吐き出した。
モナル社のパワードスーツに身を包み、バイザーだけを収納した。
「では、ふれあいタイムです。私もパワードスーツを着用しますので」
「だーかーらー、俺は子どもは苦手なんだー!」
「かっこいいろぼっとさんまって!」
「まってよー!」
「レイジングー諦めて相手した方がいいよー」
メフィストが子どもたちの相手をしながらレイジングに言う。
「そうじゃぞーレイジング」
「全くレイジングの奴は昔から子どもの扱いが苦手なままじゃな」
ガンツと宗一お爺ちゃんが呆れたように言う。
本当、レイジングって子ども苦手だよね。
「ノウェムさん、大丈夫ですか?」
「碧……助けてくれ……どうすればいいのか分からない」
子どもたちの相手に手慣れた様子のウヌスさんとは違い、子どもの相手の仕方が分からないノウェムさんは困惑していた。
レティシアさんとは違うしね、この子たち。
至って普通の子だもの。
「ウヌスさんの真似をすればいいですよ」
「こ、こうか?」
そう言って子どもたちの遊びに付き合い始めた。
よしよし、大丈夫大丈夫。
レイジングも観念したように、子どもたちに乗っかられている。
後で、高級エネルギードリンクをお小遣いから出してあげよう。
さて、それはそれとして。
「随分若い社長さんだけど、起業なさったの?」
「いえ、起業したのは両親です。ただ、その直後に交通事故で亡くなったため、私が社長になりました」
園長先生が尋ねてきたから正直に答えた。
「申し訳ないです、不躾な質問でした……」
「お気になさらないでください」
私はそう言って微笑んだ。
「しゃちょーさん、しゃちょーさんになるのはふあんじゃなかった?」
「とても。でも、家族と会社を守るために私は社長になったの」
「すごいね!」
「ありがとうございます」
あ、なんか親御さんの中に泣いてる人がいる。
「こんな若い子を残して亡くなってしまうなんて、辛すぎる」と言われている。
確かに、18歳になってから社長になったし……
若いと言えば若い。
多分、自分が早死にしてしまったら……と考えて泣いてしまったのだろう。
子どもを残して死ぬのは辛いものだ。
同情の視線が私に注がれる。
あまり気分の良いものじゃない。
だけど、それを飲み込む。
仕事、だから。
「はー、疲れた」
会社説明と慈善事業についての説明などで疲れた私は、ベッドに横になった。
人前で話すのは苦手だ。
今日はもう休んじゃおう。
お父さんとお母さんがいる。
待って、行かないで。
黒い影がお父さんたちを切り裂いて殺した。
死体となって転がるお父さんたち。
そして──
私は悲鳴をあげた──
「──‼」
脂汗をじっとりとかき、起き上がってその場にうずくまった。
心臓の動悸が収まらない。
汗も止まらない。
涙も止められない。
苦しい、苦しいよ。
「碧」
ノウェムさんが抱きしめてくれた。
「どうした? 悪い夢でも見たのか?」
「……お父さんたちが、殺される、夢……」
「そうか……」
「ノウェムさん、お父さんたちは……殺されたんでしょう?」
「……私からは今は話せない。だが、事故死ではないとだけは言える」
「……ありがとう。それだけで十分だよ」
未だに明かされないお父さんたちの死因。
事故死とは公に言われているものの、死体を見た叔父さんから、切り裂かれたような傷があったと聞かされた。
だから──
きっと何者かに殺されたんだ。
何故、警察はそれを隠す?
隠蔽しようとしている?
分からない。
許せない。
辛い。
「碧、休め。君には休息が必要だ……」
「眠れないよ」
「……では、疲れて眠るまで触れ合おう」
「うん……」
ボディースーツの上半身部分だけ脱いで、肌で触れ合う。
私は口づけをねだり、触れられることを望んだ。
悪い夢をかき消してくれるくらいの熱が欲しかった――
最初ほのぼの、あと不穏。
碧ちょっと病み始めてますね。
それがどう転ぶのか……次回以降をお楽しみに。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




