【幕間】遊園地と依頼~桐人のやること~
碧達が帰った後、桐人は咲良と共に周囲のエリアを散策して回る。
桐人が辛口の評価をつけているのを見て、少しハラハラしていた。
ホテルに休み、翌日もエリアを散策して評価していると──
「さて、遊園地の見廻りいくか」
「大丈夫桐人? 辛口評論だから……」
「辛口で寄越せとレティシアからの命令だ。特にグレイズが手がけたエリアはそうしてくれ、だとさ」
桐人は咲良にそう言うと遊園地のエリアを見廻り、アトラクションを試遊しはじめた。
「ロボットと人間が遊べるって奴、少しロボット寄りだ。もう少し人間寄りにしたほうがいいって送っとくか」
「そうだね、ロボットと人間が一緒に遊べるのは良かったよね」
「そうだな、スタッフのロボットもいい働きだ、さすが俺」
桐人は自分が手がけたロボット故に自慢げに言った。
「正確にはハッキングされないようにしたでしょ」
「それだけでもかなり優秀だろ」
「もう……」
そう言いながら次のエリアに向かい、花畑をモチーフにしたエリアを吟味しているうちに夜になったので、ホテルに向かい、その日は休息をとった。
翌日、一日かけて他のエリアも回り、最後にロボットが遊ぶことをメインにしたエリアへ向かった。
アルジャン社のメンバーと一緒に。
桐人はメンバーの反応を元に感想を書いていき、メンバーに確認をとって送信を繰り返した。
「き、桐人。かなり辛口で送ったね」
内容を見た咲良は顔を引きつらせて言った。
「当然だ、奴の作ったものは超激辛で頼むって言われたんだからな」
「他のは辛口程度だったのに」
「さて、コロシアムもといコロッセオだがどうする?」
「拙者が行こう」
「刀一か、じゃ観客席で見てるから、反応をくれ」
「承知」
桐人たちは観客席へと向かった。
刀一が出ると、相手は双剣使いのロボットだった。
支給された武器を手に持ち、互いに構える。
『はじめ!』
ぶつかり合う音が聞こえる。
双剣使いもかなりの腕前らしく、刀一の隙を狙って警棒状の武器を振り回す。
刀一はその攻撃をいなし、そして一瞬の隙を捉えた。
ガン!
双剣使いの武器は弾かれ、刀一の刀を模した武器が首元に当たる。
『勝者は刀一──!』
「さっすがアルジャン社の剣豪刀一様だ」
相手は感心したように言った。
「お主名前は?」
「まだねぇよ。強いて言うならS001。俺はここのスタッフだからな」
「なんと……待て、お前の調整をしたのは誰だ」
「会長からの厳命で教えられない」
「さようか」
刀一はその場を後にした。
「桐人」
「おう、刀一、どうだった?」
「聞くぞ、ここのロボットたちの調整はお前がしたのか?」
「そーだぜー、だから辛口コメントどうぞー」
「せめて名前ぐらい与えてやれ」
「了解、それと他には?」
「もう少しロボットの権利に配慮してほしい」
「OKOK、めっちゃ辛口にして送るから待ってろ」
桐人はガタガタと打ち込み、送信した。
「さて、帰るか」
「俺達と一緒に帰らないか?」
「いや、急ぎの仕事があるんでな、咲良帰るぞ」
「ごめんね、みんな」
そう言って咲良はアルジャン社のメンバーに頭を下げ、桐人と一緒に足早にその場を立ち去った。
『桐人ー! 貴様あの辛口コメントと言う名前のディスりはー‼』
帰宅して早々に、グレイズから通信があったので桐人は地下の隠し部屋に行き、スピーカーモードにして話した。
「あっれー、おかしいなぁ。誰が書いたか分からないようにしたつもりなんだけどなー」
『すっとぼけおって! レティシアに何か言われたのか⁈』
「お前の施設だけは、激辛コメントよろしくと言われた」
『レティシアー!』
グレイズの絶叫が聞こえ、桐人はうるさそうに耳に手を当てた。
『私の何が悪いと言うのだ!』
「ロボットが遊べるという名目はいい。だが、コロッセオでの試合……あれ、武器を非破損武器にしておいたのだけは評価してやる」
『当たり前だ!』
「だが、ロボットが見世物になるのがレティシアは我慢できなかったそうだぞ、スポーツ試合ならともかく」
『むぐ』
「その上、スタッフロボットには名前無し、ナンバーだけと来た」
『うぐ』
「もう少しロボットに名前つけてやるくらいしてやれ!」
『ぐむむ……』
グレイズは反論できないのか、唸るだけだった。
「で、話はそれだけ? だったら切るぞ、俺は忙しいんだ!」
『いや、その相談に乗ってほしくて……』
「何だ?」
『……レティシアが中々孫の顔を見せてくれない!』
「知らねー!」
桐人はそう言って通信を一方的に切った。
「こちとら、ネブラの居場所突き止めるのに時間かかってるってのに……奴らどこにいやがるんだ? 本拠地もってないってことはないだろうし……」
愚痴と苛立ちを呟きながら、桐人はパソコンであらゆる場所の映像をハッキングし、ネブラの証拠がどこにあるのかを調べていた――
『桐人ちょっと良いかしら』
「すみません、桐人は今寝てて……」
ここ最近、大量の仕事を抱えていた桐人は、珍しく疲弊して眠っていた。
通信機が鳴り響いても起きない桐人の代わりに、咲良が通信に出た。
『あら、咲良さん、じゃあ良かった貴方でも良いのよ』
「?」
『この間の遊園地……テーマパークみたいなものだけど、どうだったかしら?』
「楽しかったです、とても!」
『のんびりくまが担当する場所に長い感想文を送って下さったのは貴方?』
「え、確かに送りましたけど、匿名なんですよね」
『公にはね。実際は誰がどう感じたかを調べるため、感想を送る前にその人の情報を入力していたのよ』
「え⁈」
咲良は驚愕の声を上げてから顔を真っ赤にした。
「その……いい年した大人がはしゃいですみません……」
『遊園地は誰もが童心に返って良い場所よ、気にしないで。むしろ喜んでもらえて嬉しいわ』
「いつ頃オープン予定なんですか?」
『一ヶ月後ね、その間に貰った意見で微調整して、色々とやるのよ』
「なるほど……」
『特にクソ親……お父様のところは念入りに調整しないとね』
「あ、あはは……」
桐人が超辛口の内容を送ったエリアだとわかり、咲良は苦笑した。
『もし、遊園地が本格的に開催したら遊びに来てね』
「桐人が大丈夫そうなら行きたいです」
『そうね、桐人は仕事が山のようにあるから……といっても、ほとんどが私の依頼なんだけども』
「そうなんですか……」
咲良は最近の桐人を思い出した。
ここ最近、桐人はレティシアから次々と仕事を押しつけられ、ろくに眠る暇もないほど働いていたのだ。
「うー……レティシア、それが分かってるならもう少し手心加えろー……」
「桐人、起きたの?」
「少し前にな」
そう言って桐人はソファーから起き上がり、欠伸をした後、背伸びした。
「で、何の用?」
『まぁ、クソ親……お父様と口論になったわ、勿論私が勝ったのだけど』
「何の口論?」
『お父様が担当したエリアに関する口論と──』
『私が子どもたちを中々見せないことの口論よ』
そこまで聞いて桐人はため息をついた。
「お前まだノウェムの件根に持ってるのかよ」
『当然じゃない』
「全く、根深いな」
『最初は貴方にも根に持ってたのよ』
「だろうな」
『でも、貴方は完全に感情を消去しなかった。思考も固定化しなかった。ノウェムが「人」に慣れるチャンスが、いずれ来ると分かっているかのように』
「当たり前だ、そんな大昔の思考知能がないロボットみてぇなの使ってなんになる」
『でも、貴方はナンバーズが増えることにためらいはないの?』
「それはないな、非人道的な実験に使う訳じゃないからな、あくまでモナル社を、レティシアお前達を守るためならまた作るのを手伝うさ」
『……貴方が非人道的な実験をされたから?』
「そういうこと、俺らルプスは実験動物、ナンバーズは違う、だからだ」
『その考えを私は理解するべきかしら?』
「しなくてもいーぜ、現状は無事なんだからよ」
『そうね……』
「じゃ、俺は仕事に戻るわ。お前さんもまだ育休中なんだから、無理するなよ」
『ええ』
レティシアとの通信が終わる。
「悪いな咲良、代わりに出て貰って」
「ううん、気にしないで」
「さて、仕事するか」
そう言って開発部屋へと向かう桐人を咲良はなんとも言えない表情で見つめた──
碧たちが帰った後の桐人達の動向を書きました。
桐人、遊園地から戻ったら戻ったで仕事が山積み。
通信に出ない程爆睡、珍しいことです。
ちなみに「緊急時」の通信音がなったら爆睡してても起きます。
この時は緊急時じゃなかったんですね。
レティシアもグレイズもまだまだ仲直りは遠そうです。
仕方ないね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




