第四十五話 知将、第9999王女?
「ウヅキお姉様が組織再編成を計画したですって!?」
永遠のお子様であるはずの彼女が、このようなまともな計画をたてられるなんて……。
こんなの、おかしいですわ!
「本当にウヅキお姉様が?」
にわかには信じられないわたくしは、ウヅキお姉様にお尋ねしました。
「そうよ! さあ、偉大な姉である私を、褒め称えなさい!」
「さ、流石ですわ、ウヅキお姉様。すごいです」
「フフン、そうでしょう!」
ウヅキお姉様は満足したようで、胸を張ってお威張りになるのです。
わたくしが妹のように可愛がっていたウヅキお姉様が、こんなに立派になられるなんて……。
これまで彼女の成長を見守ってきたわたくしは、彼女が立派に成長なさったことに対して、喜びとともに一抹の寂しさを感じるのでした。
二つの感情がないまぜになってわたくしの胸に去来し、わたくしの頬には一筋の涙が流れました。
それを見て慌てるようにおっしゃるウヅキお姉さま。
「なっ!? 何泣いてるのよ! そんなに嬉しかったの!?」
「ええ、ええ。とっても嬉しいですわ! ウヅキお姉様、ありがとうございます」
わたくしが涙を拭いながらお礼を言いました。
「何よ、今日は随分素直じゃないの。調子が狂っちゃうわ」
ウヅキお姉様はフンと鼻を鳴らし、お続けになります。
「本当なら、組織に一番貢献している私が一番偉いポストに就くべきだけど、特別に! その地位はサツキに譲ってあげるわ! 感謝しなさい!」
「ええ、ありがとうございます」
「じゃあね! 私は建設現場の監督をしなければいけないから!」
ウヅキお姉様は、後ろに控えていたセバスチャンさんからヘルメットを受け取ると、それを被って建設現場へと歩いていかれました。
わたくしは彼女を見送って、その場にお残りになったセバスチャンさんに言いました。
「ウヅキお姉様はご立派になられてしまいました。あんなに賢くなられてしまって……。もうおバカなウヅキお姉様はどこにもいないのですね」
すると、セバスチャンさんは微笑みながらおっしゃいました。
「サツキ様、ご安心ください。お嬢様はおバカなままですよ」
「え? どういうことですか?」
「お嬢様は、この私に組織再編計画を考えるよう命令なさったのです。この計画は私が考えたものなのです。それを自分の手柄だと宣伝することで、皆様にチヤホヤされたかったのでしょう」
「では……ウヅキお姉様は賢くなられたワケではなく……」
「ええ、普段通り、賢いフリをなさっているだけです。ちなみに他のメンバーの皆様にも、計画を考えだしたのはお嬢様ではなく私だとお知らせしてあります。バレていないと思っているのはお嬢様だけです」
「まあ! わたくし、安心いたしましたわ! やはりウヅキお姉様は永遠のお子様ですのね!」
「その通りでございます。そして、お嬢様がおバカであるのは、女神様によって定められた世界の法則なのです」
セバスチャンさんは力強く断言なさいました。
わたくしも彼のおっしゃることに全面的に同意いたしますわ。
***
その後、マーチお姉様は『碧眼の狼』の皆さんを引き連れて、『治安維持省』へとお戻りになりました。
わたくしは家に戻り、遠征が成功したことをツバメお姉様に報告します。
もちろんツバメお姉様は喜んでくださいましたわ。
スヴィーニツお兄様は『鉛の心臓』を手に入れることができずに、『天運の短剣』を完成させることができなくなったのですから。
他のメンバーの皆さんも自分のことのように喜んでくださいましたわ。
わたくしはメンバーの皆さんをリビングに集め、今後の方針を決定する会議を開きます。
メンバーの皆さんは、わたくしがいない間にやってくださったことを説明してくださいました。
まず、本部と支部の建築の開始と、その運用方法の確立。
これはウヅキお姉様――ではなくてセバスチャンさん――が計画し、実行してくださいました。
建築費は、『魔術クラブ』に所属する上級貴族の皆さんが出してくださいました。
次に、400人の部下の方々の運用方法ですが、こちらは全員で考えてくださったようです。
わたくしの家や周辺地域の治安を守る200人の部隊は、元ブラック商会のホワイトさんがまとめてくださっています。
昨日からすでにパトロールも行っていて、地域の皆さんにも宣伝して回っています。
王位継承権下位の王子や王女の争いを収めるための200人の部隊は、なんとウヅキお姉様がまとめてくださるというのです。
お子様のウヅキお姉様に任せるのは不安です。
ですが彼女がどうしてもやりたいとゴネるので、セバスチャンさんとミナヅキが補佐として付くことになりました。
まあ、部下の方々は優秀ですので、そこまで不安になることはないのかもしれません。
なにせ彼らは、あれほど無能なボームお兄様の尻拭いをされていたのですから。
昨日のうちに『幸福評議会』の皆さんのことを調べてくださったのは、エミリーさんとミナヅキでした。
二人の調べによれば、『幸福評議会』の主なお仕事は『壺』を売る事なのだそう。
彼らはその幸運を呼び寄せるという壺を、いろんなお宅へ持っていき、訪問販売なさっているのです。
もちろんその壺などには幸運を呼び寄せる力なんてありません。
つまり詐欺です。
彼らは、主なターゲットである上級貴族の方々にその怪しげな壺を売りつけては、大金をせしめているようです。
やはり『幸福評議会』は、紛れもなく悪い組織だったのです!
わたくしは、皆さんがやってくださったことに対してお礼を言います。
「皆さん、組織のために色々手をつくしてくださり、本当にありがとうございます」
するとヤマト先輩が、
「いいんだ。これは僕達がしたくてしたことだ」
と言ってくださいました。
他のみなさんもヤマト先輩のおっしゃったことに頷いてくださいます。
わたくしは皆さんのお心遣いに感激しましたわ!
皆さんに出会えたことが、わたくしの幸せです!
わたくしが感激していると、ウヅキお姉様がおっしゃいます。
「で、サツキ。これからどうするの?」
わたくしは彼女に頷き、メンバーの皆さんを見回して言います。
「もちろん決まっていますわ! 今度はこちらからスヴィーニツお兄様を攻めましょう! 手始めに、彼の組織『幸福評議会』を完全に潰して差し上げますわ!」




