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ミントは世界を楽園に!  作者: 溟yuu
教団のはじまり
9/29

第9話 綺麗なところ

 「....私は一度死んだ。あの墓場もきっと私が埋められていた場所なの」


 「でもなぜだか今こうしてここに居る、死んだらそこで命はおしまいなのに」


 「じゃあ....」


 「そうだよミントちゃん、あなたが私を(よみがえ)らせてくれた」


 心当たりはあった。手のひらから湧き出る(うるし)のような魔術。地面に流れて、それがエクサの埋まっていた場所だとしたら辻褄が合う。


 「あの魔術....」


 わたしの魔術が死者を甦らせた、そうとしか言えないのだ。


 「この命はミントちゃんのもの。あなたのために生きたい、けどね.....」


 エクサは苦しそうに向こうを向いた、涙が頬を伝っていることはわかった。


 「お父様のこと考えると....やっぱり許せないんだ」


 「....自分のために生きるのがいいよ、エクサ」


 その言葉で少しエクサの心は解けたようだ、少し微笑んだ顔でわたしに問う。


 「ありがとう、ミントちゃんはどうする?」


 俯き、言葉を探す。わたしに家なんてもうないのだから。


 そうなれば....もう、わたしに残っているものはひとつだけ。


 そこで朝日が差し込んだ、ミントの純白の髪が金色の光を反射していた。


 「わたしには帰りたい場所があるの。花が咲き誇って、日差しが心地のいいところ....」


 「そうなんだね....この(イーゼル)のどこか?」


 日のふもとで羽ばたく蝶を見ながらミントは言う。


 「少しちがうかも、でもエクサもきっと通りかかったことのある場所だよ」

 

 「そうなの? なんて言うところ?」


 「“メメント・モリ”、綺麗なところだよ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 これから宴会でもあるかのようなルビーレッドのドレスに身を包み、金色のシャンパンは片手で揺れていた。


 へスター・ベヒトルスハイムはふかふかのソファに寝そべり、夫に猫撫で声で言う。


 「ねえレオン〜、家で飲むはつまんないわ、あのビストロに連れて行ってよ」


 脚を組んで本を読む夫は、少し意地悪く返答する。


 「へスター、君はあそこに行けば飲みすぎてしまう。それに子供たちと遊ぶって約束してたじゃないか」


 「子どもぉ? どうでもいいよ、うるさいだけじゃん。そもそもレオンが欲しかったから産んだだけで、ちゃんと世話してよ〜」


 媚に負けた夫はため息をひとつ、本をぱたりと閉じて立ち上がった。


 「仕方ないなぁ、馬車を準備させてくるよ」


 へスターは寝そべったままシャンパンを一口含み、にやりと笑みを浮かべる。


 襟を整えながら廊下を抜け、レオンは蝋燭ひとつ灯っていないエントランスにたどり着く。


 「馬車を用意してくれ、早くしろデイヴァル」


 そこに立っている使用人にレオンは話しかけた。しかし突っ立ったまま何も言わない。


 「聞いているのか?」


 「わたくしは....わたくしは、アルバートでございます」


 暗がりでも分かるくらいに顔を覗かしてきた彼、その見覚えある様にレオンは絶句した。


 「へ....あぁ!?」


 わかりやすく腰を抜かして恐怖するレオン。目の前にいるのは間違いなく兄のアルバートが雇っていた使用人だ、自身の目の前で死んだ彼がそこにいたのだ。


 「近づくな近づくな!」


 構わず使用人のアルバートは右手首をゆっくりと擦りながら、こちらに近づいてくる。


 「レオン様....あれからずっと....右手が痛み続けてるのです....あぁ痛い痛い痛い....」


 「く、来るなぁっ!!」

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