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ミントは世界を楽園に!  作者: 溟yuu
教団のはじまり
4/29

第4話 間違いなくゾンビ

 足首を掴んだその腕の力は強く、わたしは顔から転んでしまった。


 手はしっかりとわたしの足を掴んだまま、地面から這い出でる。


 全身を見せたのは土に塗れた何か。


 間違いない、ゾンビだ。


 恐怖を顔に浮かべたわたしの方を見ている様子だったが、すぐに動きを止めた。そして数秒の静寂ののち、ゾンビはブルブルと犬のように頭を振る。


 土の粒は無尽に飛び散り、わたしは目を覆い隠した。


 「あれ? ここは?」


 ゾンビの方から声がする。わたしはおそるおそる目を開けた。


 そこにいたのは生き血を欲さんとする腐った死体!....ではなく、桃髪の明るい表情をした少女だった。同い年くらいだろうか。白のワンピースに身を包み、とても幼く見えた。


 「....ゾンビ?」


 「ゾンビとは失礼! わたしはエクサ・ベヒトルスハイム、人間よ!」


 「エクサ....人間....?」


 「うん、ところであなたは?」


 彼女はまじまじとわたしの顔を眺めた。


 「赤い目....ネコの耳....」


 そして叫ぶ。


 「ま、魔物....アンデッド?!」


 「魔物はそっちでしょ。土から出てくるなんてゾンビみたい」


 「え?わたし土から出てきたの?」


 変だ、この子の現れ方はゾンビそのもの。なのに全くその気配は感じられない、ごく普通の少女だ。


 「覚えてないの?」


 「うーーーん。あー、そうかそうか」


 彼女は深く考え込んだ、そしてその末に出た答えは。


 「まったく覚えてないね」


 「ああ、そう....」


 「うん、でもどこから来たかは覚えてるよ。たしか....」


 「たしか....?」


 「あれ、思い出せないなぁ」


 「....なんなの」


 「まあいいや、あなたは誰?」


 「わたしはミント」


 「ここは?」


 「ここは墓地」


 「墓地....なんで墓地にいるの、地名が知りたいのよ」


 「家の外なんてわからない」


 「家は?」


 わたしは林の近くの家を指差した。


 「こんなに寒いのに、なんで外にいるの?」


 「いまは追い出されてる」


 「あら....どうすればいいんだろ」


 「うちにくる?」


 「....追い出されてるんじゃないの?」


 「なんとかしてみる」


 「やった」


 「うん、わたしも寒い」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「ごめんミント、さっきは....」


 母親のルチアは少し気まずそうに扉を開けた、暖かい部屋の陽気が2人を包み込む。


 「誰?」


 ルチアはエクサを怪訝に見つめた。


 「迷子らしい、今日だけうちに居てもいい?」


 「ああ....いいわよミント、ご飯も少しだけどあるよ」


 ルチアは2つの木製の皿に温かいスープを注いで、ミントとエクサの前の食卓に並べた。


 残りのスープは小さい陶器に。


 ミントとエクサは椅子に座り、ルチアは玄関の木箱をひっくり返してその上に座った。


 「色々と覚えてないんだって」


 「お家はどこか覚えてる?」


 「いえ、ミントちゃんのお母様....」


 「あら、礼儀が正しいのね....明日街にでも行って聞きにいきましょうか。ミントも来る?」


 「え、いいの? ルチア」


 ルチアはミントと目を合わせて頷いた。


 「それで、お名前は?」


 「エクサ....ベヒトルスハイムって言います」


 「ベヒトルスハイム....」


 ルチアは俯き、暗い表情でそう呟いた。


 「ルチア....?」


 「ええ....大丈夫よ。いきましょう、今夜はもう寝ようか」


 ぐっすりと眠る2人をルチアは食卓から見つめた。


 「....なんでこんなことに」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 その晩、月明かりが眩しく彼女を照らした。ルチアは石畳の上を震えた足でゆっくりと歩く。


 いつもは紅い唇も枯れたように乾き、その顔は青白い。


 手には白い布に包まれた少女を抱えていた。布には赤黒い血が染み込み、滴っていた。

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