第28話 青い剣、赤い剣
視界を埋め尽くすほどのスケルトンたち、波のように押し寄せる。
その隙間を縫うようにエクサは駆けた。直後、男の青い光球が打ち出され、がしゃがしゃとスケルトンたちの頭骨を砕いてゆく。
光球がエクサに当たれと願うのみ、それよりも男にとってはスケルトンたちの破壊が最優先。
――男の横目に映ったのは、狂走するエクサの姿。右手に剣を持ち、左手のひらの表面が赤色に煌めく。
「どうやってこのスピードで!」
エクサの手のひらより、圧縮された魔力が弾丸のように放たれる。矮星のような赤色の火球が次々にデコイたちを飲み込む
そして男をたった一人にした。
鈍化のデバフはかけている。なのにむしろ速くなっているわけではないか!
そ....そうか....。
エクサの腕や顔には赤い亀裂が走っていた。ところどころから火も噴き出している。
機関車のように自分の体を“熱”で動かしてやがるのか。そしてこのスピード、体への負荷は致命傷級!
そしてスケルトンの処理が完了した。
「そんなに命をかけられる相手なのかァ!!!!」
男のローブが剥がれ、黒髪長髪の素顔が明らかになる。彼はすぐにエクサの方に杖を向けて、青色の太い光線をぶっ放す。
――エクサは身を翻して躱わす。
「躱わすか、ベヒトルスハイム」
振り切ったように長い杖をエクサに投げつける。その代わりに青色の剣を、魔術で形成した付け焼き刃を、手中に形成した。
「来いっ!!」
エクサのスピードは流星の如く、目の前まで迫る。素早さに彼女の軍帽は吹き飛んだ。
ほどなく赤の剣と青の剣がぶつかり、魔力の衝撃波を散らす。
男とエクサは見合って、互いの目に宿る別々の炎を噛み締めた。
....1撃、2撃。
鉄を打ち付けるような甲高い音。
....3撃、4撃。
エクサの素早い剣が男の姿勢を崩し、男の重い剣戟がエクサの芯に響く。
そして5撃目。男の大きな横振りがエクサの胸を切り裂いた。
――浅い。されども体制を崩すには十分。
のけ反る彼女の喉元に、剣の狙いを置く。
「私もまだまだだな....」
そこで男が違和感に気づき、上を見る。
まるでスケルトンの隕石。幾体ものスケルトンが集合した塊が頭上より降ってきたのだ。
「?!」
すぐに男にのしかかる大量のスケルトン。男の剣一振りでその全てが吹き飛んだ。
されどもすでにエクサの姿がない。
「行かせてもらうよ....」
男の腹部から血が滴っていた。すでに彼を斬ったエクサは背を向け、歩き出す。
「ミントちゃんのところに」
男はばさりと倒れた。最後は何も言わず、ただ勝者へと朗らかな面を見せた。




