第19話 目覚める英雄
白い光が笑顔の防御魔術師たちの目に映る。
「え?」
ミントの放った光線は魔術師たちを瞬時に蒸発させて、彼らは消し炭と化した。
指揮をしていたブルベルは呆気に取られるも、すぐに盾を構えて己の身を守った。王宮の壁をたやすく抉り、その反対側の空にも光が伸びてゆく。
ブルベルは自身の全てを費やして、身を守る。自身に天体がのしかかるような圧迫、それを堪えていた....
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そして日が昇る頃には、王都は静けさが漂っていた。早朝、周辺国家の話題はミントたちのことで持ちきりだ。
「ミント教団? 知らないぞ、そんな宗教組織」
「アンデッド思想の連中だ。イーゼルが奴らに1議席を譲るという条件で、襲撃は止んだみたいだが」
「たったの1議席?」
「1議席は相当なものだぞ。これでイーゼル内での反アンデッド思想が揺らぎ、そして聖ルミナとのきな臭さは一段として増すことになる」
「おまけにフォルス・エイダがイーゼルに鉱山を明け渡したとのことだ」
「本当か? 本格的にアンデッドに支援されているわけだな」
「我らがベイガルド王国もいずれイーゼル側につくだろうな....」
「しかし奴らの行動はバラバラだ、経典を調べてみたが解釈がまるで統一されていない」
「教団の長が方向性を定めればよいのにな、逆に言えばあの組織に黒幕はいない。」
「普通に考えればそうだ。だが我々が一番恐れるべきなのは、その組織に黒幕がいるという場合だ。」
「奴らが崇拝しているという、ミントか?」
「もし部下を気ままに行動させていて、なおも崇拝されるような奴が....ミントが存在するのならば」
「間違いなく化け物だ....」
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朝焼けが顔を照らしていた、大きな穴が空いた王宮をミントは眺めた。彼女は段数のとても多い王宮の階段を登る。
「いて」
到着までに二回も階段で躓いた。二度とここには来ないと心に誓う。
そして到着する。
立派な聖女の像が建てられていた一番大きな中庭。落ち着いた空気が漂っていて、像の指先には鳥が一羽とまっていた。
英雄の墓、この下に眠っている人物を起こすことがミントの目的である。
ミントは近づき、像の下の土に触れた。すぐに像にヒビが入って砕け、そして地表にわかりやすく棺が浮かび上がってきた。
ミントは棺についたその金具を取り外そうとする。
「んんー....」
取れない。なかなかに強固な仕掛けである、ミントの指は赤くなってそれを痛がった。
「ヴァニタス....お願いしてもいい?」
大きな鎧のヴァニタスが現れ、何も言わずにその指で金具を砕く。
「ありがと」
木製の棺はやけに大きい。その蓋をミントとヴァニタスが持つ。
「よい....しょ!」
二人は蓋を開けた、とはいってもほとんどヴァニタスの力である。
棺の中を覗くと、鎖がぐるぐるに縛られた人物がいる。目隠しをされて、口も開かないように器具で固定されていた。
その人物はもじもじと身動きをとっている。
「葬られてるってより、封印に近いよねこれ....」
ヴァニタスは鎖を引きちぎり、棺の中の人物を解放した。
姿を現したのは水色の長い髪の女性。ぼろぼろの服を着ており、口の器具と目隠しを外すと眩しそうに目を押さえた。
美しく儚げな顔立ちだ。彼女は目をぱちぱちさせながらミントの方を見る。
「あなたからは少しだけ、ライカ様の香りがいたします....」
「え....?」
ミントは驚いた、その口から語られた言葉に対してではない。
「あなたももしかして、“トウキョウ”から来られたのですか?」
彼女が語る言語はミントのよく知る....天原無助のよく知る、“日本語”であったのだ。




