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ミントは世界を楽園に!  作者: 溟yuu
教団のはじまり
16/29

第16話 星空の街、少女の瞳

 イーゼルの王都、“エル・メメナス”。

 その名は輝く夜の街という意味。優雅な祭りと弦楽器の路上演奏、それを見ながら嗜む柑橘の果実酒なんて最高だと皆が言う。


 その都市は周辺国の中でも多くの人口を誇る。イーゼルは革命後、王政を撤廃。現在は共和制を敷いているものの、エル・メメナスの“王都”という呼称に変わりはない。


 この通りもかつては死臭に塗れて、血に溺れていたということは誰も覚えていない。その罰だとも言えようか、革命の憎悪が陰を潜めていた。


 ただ、今宵を待って....



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 持つのは白色の拳銃が一丁。あとは普段と変わらない。おそらくは王都への奇襲、そしてその余韻で反旗を翻した()()()()()が行われる。


 けれども傷が疼くのだ。その意思だけでも良い、抵抗の意を込めたこの対アンデッドのリボルバーだけは手放さずに死のうと心に決めた。


 いつものコートを羽織り、サングラスをかけ、靴を履き。バッハは自宅を去る。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



――星空のように煌めく、イーゼルの都。


 月明かりが王宮をよく照らし、男はその景色を恨んだ。


 「来てくれたのですね、バッハ神父」


 王宮へとつながる大通り、ミントは彼を迎えた。


 「お前は、あの時のネコ耳だな?」


 「ええ。もうじきここも賑やかになります」


 「()()()....?地獄の間違いじゃねえか?」


 懐から取り出したリボルバー拳銃を、ミントの方へと向けた。


 「あの時みたいにぶっ放してやろうか....」


 「....バッハ神父、わたしはあなたを迎えたい」


 「ふざけたことを言うんじゃねえアンデッド、耳に障るんだよ」


 「では一つだけ....」


ミントは人差し指を立てて言う。


 「あなたには撃てない」


 「戯言を....!」


 笑みか嘲笑かもわからないような表情。

目の前の少女は、何も言わずにゆっくりと近づいてくる。


 バッハは目に見えない圧力に屈した。拳銃を持った両手はガタガタと震える。


 やがて目前まで迫ったミントはリボルバーの銃身を掴み、そして自身の額に当てた。


 幼なく、自分よりも遥かに小さな少女。彼女の瞳の奥には地獄が見えた。圧迫されて、バッハは言葉を漏らすことすらもできない。


 「撃ちましょうよ、神父」


 「......」


 「撃たないのですか?」


 息が苦しく、鼓動がドラムロールのように聞こえた。そして少女はなだめるような手つきで拳銃を下ろした。


 共に神父は膝から崩れ落ちる。


 「お休みください.....バッハ神父。また、会えますから」


 少女は彼を優雅に通り過ぎた。

 ――そして間も無くして、宴が始まりの音を告げた。

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