第27話 パンはスタッフが美味しくいただきました。
ひたすらにパンを目の前にして、ピンクとグレイが笑っていた。
「で、何でパンなの?」
「いや知らないですし……。」
「セイラそれどうすんの!」
ゲラゲラ笑い、お腹が痛いとのたうち回る。
いや、謎なんだが?
一番私が謎なのだが!?
ちなみにパンはジャムパンでした。
潰れたところからデロリとはみ出るジャムが、ちょっとホラー……。
「……私、ジャムパン好きじゃない。」
若干理解が追いつかずに落ち込む私に、ノーマンがヒョイとパンを取ると、半分に割った。
そして『証拠隠滅』と言って、半分をライリーに、もう半分を大きな口で一口で食べた。
ライリーも笑顔で半分を受け取ると、上品に手で割りながら一口一口平らげていった。
……カイルの人肌パンは、こうして隠滅されたのだった……。
てかマジでなんだったんだろうか!!
カイルの奇妙なその行動は、それから夏休み入るまで幾度となく突発的に行われたのだった。
え!?餌付けかな!?
私餌付けされてる……!?
パンはその都度クリームだったり、チョコだったりとバリエーションを変えてくるところが対象者を飽きさせない感じで良いとは思うのですが、気味悪さが勝ってしまい一口も私の口に入ることはなかった。
……仲良くノーマンとライリーが半分こしてたよ。
なんか毒味みたいで悪いことしてる気分になったが、まあよしとしよう。
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テストも無事赤点回避して、ホクホクと夏休みの計画を3人で練る毎日。
お母様やパパの許可も取れ、ライリーもノーマンも夏休み中、うちの別荘に滞在することになった。
もちろんお母様とウー様も一緒に。
パパは王都での仕事が終わり次第来るとか言ってたけど、どうだろうなぁ。
めっちゃ号泣してたから、もしかすると来れなさそうな匂いがしている。
あーあ、かわいそうに……。
パパの分もお母様と仲良く楽しんでくるからね……うふふ。
ああー、楽しみだなぁ夏休み。
そう思いながら大きく背伸びをする。
別荘へは毎年夏休みに行っているんだけど、すっごい田舎な感じで私はすごく好きな場所。
近くの川で釣りが出来るし、川遊びに、虫取りに、夜は満天の星を見ながらキャンプもいいなぁ。
私はとにかく楽しみで仕方なかった。
……が、まさかそんな気持ちが一瞬で崩れ去るなんて思いもしなかった。
「……え?お母様、今なんて?」
コポコポとお母様のお気に入りのポットがいい香りのお茶をカップに吐き出している。
それを目で追いながら、交互にお母様を見つめていた。
「あなたの従兄弟が同じ学園にいるって言ってたでしょ?
あの子がね、あなたに会いたいって言っているらしくて、ジニーおばさん……お母様のお姉さんなんだけど、ジニーおばさんと一緒に夏休み中遊びに来ることになったのよ。」
「ピャアアアアアア……!」
『お母様、私アンディに会いたくないって言ったじゃないですかー!!』
『……セイラ、心の声と口から出る声が、多分逆だなこりゃ。』
スタスタ骨型ビスケットを片手に、後ろを歩いているウーが独り言のように呟いた。
突然の奇声を上げた私に驚いて、カップを持つ手が止まっているお母様。
私は涙目で抗議した。
「……お母様、入学式の後の時に、私、お願いしたやつ忘れてますか?」
「……お願い?」
「アンディ先輩がちょっと怖いから、会いたくないんですって……」
「!!」
お母様、今多い出したのか『ハッ』とした表情をしている。
ご丁寧に小指を顎につけながら。
「そ、そ、そうだったわね。あらどうしましょう……。
もういらっしゃいって言っちゃったけど、急いでお断りのお手紙を出すわね!
大丈夫よ、セイラちゃん。お母様に任せて!」
と、とても頼りにならなそうなガッツポーズでお母様は慌てて席を立ってどこかへいった。
すごい脱力感に、息を吐きながら溶けている私に、ウーが鼻で笑った。
『……まぁ、無理だと思うぞ。
何せママの実家はちょっと遠い。
すでに出発している可能性が高いからな。』
ワフワフと腕組みをして意地悪そうに笑う。
『しかも家が遠いから、うちに来たらしばらく滞在すること請け合いだな。
諦めるしかない。』
「諦められるかあああああ!!」
この癒し系犬畜生め!
思わず椅子の背もたれにあったふわふわクッションをウーに投げつける。
ふわふわなので、ウーに辿り着く前にポスンと落ちたのだが。
それをみてまた、ウーは楽しそうに『フスー』っと鼻で笑った。
結局。
ウーの予想通り、ジニーオバさま御一行はすでにこちらに出ていた様子。
お母様が手紙を出す前に、出発したとの手紙が届いた。
それを泣きながら伝えに来たのだった。
私バカのパパは覚えていたらしく、『何としても早く帰ってアンディをセイラから守ってあげるからねー!!』とおっしゃってたらしいですが、まず帰って来れなさそうなので戦力外通告。
先日までの晴々とした『夏休み楽しみ☆』な気持ちはあっという間に、暗黒に突き落とされた気分となった。
何とか思考が停止した頭で色々対策を練ってみたが、不安しかない。
だってアンディはヤンデレだから。
無理やり婚約させられた挙句、監禁されたくない。
そんなの絶対やだ。
だがどう同じ屋敷の中で、ステルスしながら避けるかというのも思いつかず……。
私は思いつく限りのアンディのイベントをノートに書き殴った。
そんな絶望感満載な気持ちで私は、夏休みを迎えることとなる。




